水曜雑誌会 (Wednesday Seminar)

水曜雑誌会は、恒星物理や太陽・プラズマ物理に関する論文、自身の研究等を紹介しあうセミナーです。

schedule

seminar in 2018a

前期の雑誌会の発表内容と予定です。

日付発表者(予定)題名・発表内容
4 月 11 日上田
X線観測によるAGN進化の研究:最近の進展

4 月 18 日小路口
タイトル:新星状天体期を経験したER UMa型矮新星RZ LMiの観測的特徴

概要:まず、水曜雑誌会が初めてのため、タイトルとは別に自己紹介を兼ねて 自身がやってきたことを紹介したいと思います。その後、タイトルにあります 新星状天体期へと変動したER UMa型矮新星RZ LMiの観測的特徴について、 論文化へ向けて詰め切れていない部分が多々ありますので議論していけたらと思います。

4 月 25 日谷本
I'd like to talk about two topics: (1) BAT AGN Spectroscopic Survey (BASS) and (2) X-ray spectral model from clumpy torus.

(1) I'd like to talk about the results of Ricci et al. 2017ab focusing on the relation between the Eddington ratio and the AGN torus structure by using BASS sample. Hard X-ray observations above 10 keV provide one of the least-biased AGN samples thanks to the strong penetrating power against obscuration.The 70-month Swift/BAT all-sky survey (14-195 keV) has currently detected 838 AGNs. However, we cannot investigate the Eddington ratio and the relationship with the host galaxy only by X-ray observation. This is because the black hole mass and star formation rate cannot be known only by X-ray observation. Therefore, it is important to observe AGNs not only by X-ray but also multi-wavelength. BAT AGN Spectroscopic Survey (BASS) is to complete the first large survey of hard X-ray selected AGN with optical spectroscopy. Especially, I'd like to talk about the results of Ricci et al. 2017ab focusing on the relation between the Eddington ratio and torus structure. (2) We constructed an X-ray spectral model from a clumpy torus in an AGN with a Monte Carlo simulation for Astrophysics and Cosmology (MONACO: Odaka et al. 2011). MONACO includes not only free electron scattering but also bound electron scattering to reproduce a Compton shoulder accurately. We investigated the torus parameter dependence of the X-ray spectrum such as the hydrogen column density, metallicity, covering factor, and inclination angle. We applied our model to the Circinus galaxy observed with Suzaku, XMM-Newton, and NuSTAR. Our model could reproduce the observed X-ray spectra. The results are as follows. (1) The structure of the torus little changes between Suzaku (2006) and NuSTAR (2013) observations. (2) The hydrogen column density from X-ray is about 40 times larger than it from infrared. This implies that the gas-to-dust ratio is different in the AGN environment.

5 月 2 日休会
GW

5 月 9 日前原
タイトル:全自動観測システムの構築とそれを用いた突発天体の観測

概要:これまで構築した木曽105cmシュミット+KWFCや岡山188cm望遠鏡+HIDES-F向けの 全自動観測システムについて紹介し、それらを用いた突発天体(GRB, gravitational microlensing event, classical nova等)の観測結果についても概要を紹介し たいと思います。

5 月 16 日野上
スーパーフレア星の研究の進展

5 月 23 日加藤
最近の恒星天文学の話題から抜粋です。恒星の解像観測とそれから派生した 話題を取り上げたいと思います。

5 月 30 日大西
タイトル:First WZ-Sge type Superoutburst in a Population II Cataclysmic Variable

アブストラクト: 2017年3月にPopulation II CV (Cataclysmic Variable)として唯一知られている OV Booがスーパーアウトバーストを起こした。Population II CVのスーパー アウトバーストの観測は今回が初めてである。 OV Booのスーパーアウトバーストの初期に、early superhumpと呼ばれる、 ダブルピークの微小な光度変動が観測された。通常のCVの観測から、 early superhumpは円盤が高さ方向に変形することによって生じると考えられている。 現在、Population CVの場合でも同じような変形が見られるのかどうかについて 調べるために円盤の再構成を行っている。その進捗について発表したい。

6 月 6 日榎戸
タイトル:Neutron star Interior Composition ExploreR (NICER)

概要:NASA が主導する Neutron star Interior Composition ExploreR は、中性子星の 状態方程式 (Equation of State) を、星の質量と半径の精密測定から解き明かす ことを目的として、2017年6月に打ち上げられ、国際宇宙ステーションに搭載 され、無事に運用を開始した。NICER はX線集光系とシリコンドリフト検出器 を組み合わせたモジュールを 56台搭載し、中性子星の表面放射が卓越する 1.5 keV で >1800 cm2 の大有効面積と <100 ns という高い時間分解能を実現 している。今回のセミナーでは NICER プロジェクトの概要と、いくつかの初期 成果などを紹介する。時間があれば、NICER のスピンオフとして考えている 超小型衛星の話題もするかもしれない(時間次第)。

6 月 14 日泉(談話会)
題目:ALMA高解像観測で調べるAGNトーラスの構造と物理的起源

概要:「超巨大ブラックホールへの質量降着により輝く活動銀河中心核(Active Galactic Nucleus=AGN)は、その周囲をドーナッツ状のガス・ダスト成分(トーラス)が取り囲んでいる。しかるに可視光帯における輝線の"見え方"が見込み角に依存して変化するのだ!」というのが、30年以上にわたるトーラスパラダイムの基本理念であり、多くの観測がこれを支持してきた。しかし最近では、この古典的描像では説明できない現象も報告され始めており、以前にも増して、(1) いかにしてそのドーナッツ形状 = 幾何学的に厚い構造を形成・維持するのか?(2) 詳細なトーラスの内部構造はどうなっているのか?といった基本問題の解決が望まれている。 こうした背景を念頭に、我々は、ALMAを用いたトーラス領域のガス・ダスト分布の探査を推進している。本講演では、最近傍AGNであるCircinus銀河の中心部における、COガスとCIガス輝線、ならびにダスト連続波の~5-10pc分解能の観測結果を紹介する。本研究では特に、トーラスは分子・原子といったガスの相に応じて異なる内部構造を持っており、その構造・力学は、近年注目されている「輻射駆動型噴水モデル」でよく説明できることが分かった。これは、「トーラスとはAGN近傍のインフローやアウトフローが織り成した"実効的にドーナッツ状に見える"構造である」という意見を支持しており、トーラスの物理的起源に迫る成果だと期待される。

6 月 20 日磯貝
タイトル:SPHによる再増光のシミュレーション(に挑戦 in texas)

概要:激変星やX線連星のアウトバースト後では、再増光と呼ばれる 小規模な増光現象を示す天体が数多く確認されている。 しかし、その機構についてははっきりと分かっていない。 Meyer & Meyer-Hofmeister 2015は再増光を以下のように説明した。 スーパーアウトバースト直後の円盤は磁場によって粘性が増加しており、 再増光を起こしやすい条件になっている。また、スーパーハンプによって 円盤外縁部から中心部へと質量が供給されているため、何度も同規模の 再増光を繰り返すことが可能である。 以上の説は定性的な議論にとどまり、数値計算による検証はできていない。 そこで今回、SPH法によって再増光が再現できないか、挑戦した。

6 月 27 日山田
Title: Growth of SMBHs in the early-to-local universe

Abstract: 銀河と超巨大ブラックホール(以下、BH)の共進化について、遠方宇宙と近傍宇宙に分けて紹介する。 遠方宇宙(z > 1)では、z ~ 2にBHへの質量降着の最盛期が見られる。この時代は高いbolometric 光度を示すQuasar や、FIR で高い光度を示すサブミリ銀河(SMG)などが支配的である。これらは中心が非常に明るく輝く活動銀河核(AGN)として観測され、BHの成長の重要な役割を果たしている。SMGは近傍宇宙での超/高光度赤外線銀河(U/LIRG)が赤方偏移したものと考えられ、近傍のU/LIRGを調べることでも多くの示唆を得ることができる。 近傍宇宙(z < 1)では、遠方に比べBHの成長は穏やかであるが、遠方よりは詳細に見ることができる。Koss et al. (2012)では、銀河の合体の距離が近いほどdual-AGNが引き起こされることを示している。そこで我々は、二重AGN を持つ合体直前のLIRGである Mrk 463 に着目して研究を行ってきた。その結果、Mrk 463は急激に成長しているSMBHを持つことが示唆された。他の合体進化の段階にある銀河とも比較をしつつ、合体銀河が果たす共進化の進化過程について議論を行う。 時間が余れば、最近に新たに取り組んでいる NGC 5135 についても紹介する。

7 月 4 日森田
題名: 超高光度X線源IC342 X-1の可視光とX線による多波長スペクトル解析

概要: 超高光度X線源は近傍銀河の銀河中心以外の場所で観測され、X線光度が10^39 erg/sを超える天体である。 その光度を説明するには、中間質量ブラックホールもしくは恒星質量ブラックホールや中性子星に超臨界降着が起きていると考えられている。 超臨界降着円盤では理論や観測から円盤の一部が輻射によって吹き飛ばされるアウトフローや円盤風の存在が示唆されている。 これを確認するためにIC342 X-1のX線と可視光による同時観測スペクトルを用いて 円盤再放射とコンプトン散乱モデルによる多波長スペクトル解析を行った。その経過を報告する。

過去の雑誌会の内容はこちらに。
2018 年度後期
2017 年度前期
2017 年度後期
2016 年度前期
2016 年度後期
2015 年度前期
2015 年度後期
2014 年度前期
2014 年度後期
2013 年度前期
2013 年度後期
2012 年度前期
2012 年度後期
2011 年度前期
2011 年度後期
2010 年度前期
2010 年度後期

水曜雑誌会では発表メンバーを募集しています!!

2018 年度世話人: 幾田
ikuta_[あっと]_kusastro.kyoto-u.ac.jp