水曜雑誌会 (Wednesday Seminar)

水曜雑誌会は、恒星物理や太陽・プラズマ物理に関する論文、自身の研究等を紹介しあうセミナーです。

schedule

seminar in 2016a

前期の雑誌会の発表内容と予定です。

日付発表者(予定)題名・発表内容
4 月 13 日休会
談話会

4 月 20 日野上
我々のスーパーフレア研究のこの1年の進展

4 月 27 日
論文紹介: Spectral and timing evolution of the bright failed outburst of the transient black hole Swift J174510.8 262411 Del Santo et al. (2016)

2012 年に Failed outburst を起こした Swift J174510.8-262411 を Swift と INTEGRAL で観測した論文です。アウトバースト中での 変動やスペクトルの変化を調査し、ハード状態において disk truncation 理論と矛盾ない結果を得たことを示した論文です。

5 月 4 日休会
みどりの日

5 月 11 日榎戸
タイトル: マグネターの磁気活動とX線観測の現状

概要: 孤立した中性子星である軟ガンマ線リピーター(Soft Gamma Repeater) と特異X線 パルサー(Anomalous X-ray Pulsar)は、10^14-15 ガウスという通常の中性子星より も2桁近くも磁場の強い種族「マグネター」であると考えられている。マグネター の特徴や最新のX線観測を紹介する。

5 月 18 日松岡
タイトル: 銀河および活動銀河核の化学進化+α

アブスト: 銀河および活動銀河核に着目した宇宙の化学進化の現状理解を これまでの自身の研究成果を交えながら紹介したいと思います。 また、現在進行中の研究(ALMAやNuSTARによる活動銀河核と 星形成活動の関係など)についても議論できればと思います。

5 月 25 日上田
次世代硬X線観測で狙うサイエンス:ミッシングブラックホールを求めて

6 月 1 日加藤
「激変星の最近の進展」

Kepler dataの 解析に至る最近の進展を、主にWZ Sge-typeの解明以降を中心に 近年の superhump 現象の理解の進展について紹介する予定。

6 月 8 日木邑
タイトル:Rebrightenings of WZ Sge-type Dwarf Novae & period bouncers

アブストラクト:   白色矮星(主星)と晩期型星(伴星)から成る近接連星系は 激変星と呼ばれる。この天体では、ロッシュローブオーバーフロー によって伴星のガスが主星側へと流れ込み、主星の周囲に降着円盤が 形成される。激変星の一種の矮新星は、可視領域での突発的な増光 (アウトバースト)を示す天体である。間欠的なアウトバーストは、 水素の部分電離に伴う熱不安定性によって降着円盤の状態が変化し、 ガスが円盤に溜まる暗い状態とガスが主星に降着する明るい状態を 交互に繰り返すために起こると考えられている。
  矮新星のサブグループであるWZ Sge型矮新星は、増光中に スーパーハンプ(周期的な光度の微小変動)が見えるスーパーアウト バーストを示す天体であり、メインのスーパーアウトバーストの直後 に再増光を示すという特徴を持つ。再増光は天体ごとに振る舞いが 異なり、AからEまでの5つのタイプに分類される。最近の統計的な 研究により、この再増光のタイプがWZ Sge型矮新星の進化の段階を 表していることが分かった (Kato 2015)。また、タイプBやEの再増 光を示すWZ Sge型矮新星の中に、激変星進化の最終段階の天体で あるperiod bouncerの候補天体が多く見つかってきた (Nakata et al. 2013, 2014, Kimura et al. 2016)。激変星進化の理論モデルでは、 period bouncerは激変星全体のおよそ70%を占めると予測されて いるが、現時点での候補天体は激変星全体の数%にも満たず、理論と 観測の間にギャップがある。
  今回の発表では、WZ Sge型矮新星の再増光とperiod bouncer 候補天体の発見について、最近の進展を紹介する。

6 月 15 日谷本
題名: 活動銀河核におけるトーラス構造今昔

要旨:  超巨大ブラックホール(SMBH)と母銀河は互いに影響を及ぼしながら、「共進 化」してきた。 しかし、母銀河からSMBHへの質量降着機構は、謎に包まれたままである。この問 題を解決する鍵が、 活動銀河核(AGN)である。AGNは中心のSMBHと降着円盤、その周囲のトーラスから なる。 このトーラスは、SMBHへの質量降着の役割を担い、SMBHと母銀河の共進化の鍵と なる構造である。  トーラス構造を推定するには、トーラス構造を仮定し、モンテカルロ輻射輸送 計算を行い、観測結果と比較する必要がある。 そのため、現在まで様々なトーラスからのスペクトルが計算され、観測結果へ適 用されてきた(今回は主にX線スペクトル)。 そこで本発表では、まずAGNにおけるトーラスモデルの歴史を紹介する。その 後、私が現在行っている、 モンテカルロ輻射輸送計算フレームワークであるMonacoを用いた、非一様トーラ スからのX線スペクトルモデルについて述べる。

6 月 22 日幾田
題目: 観測データに対する統計的手法の適用

概要: 光度曲線などの観測データから、理論値と合わせて物理量(パラメータ)を推定する手法としてベイズ推定がある。 ベイズ推定は、多数のパラメータの頻度分布を推定する際に用いられる。 本発表ではスーパーフレアの研究の進展と合わせて、以下の一連の論文の紹介を行い、手法を概説する。 また、多分野に対する汎用性を提示する。 Lanza et al. 2016 (http://arxiv.org/abs/1606.06055) Lanza et al. 2014 (http://ads.nao.ac.jp/abs/2014A%26A...564A..50L)

6 月 29 日休会
集中講義

7 月 6 日磯貝
タイトル:ヘリウム激変星におけるスーパーアウトバーストの観測的研究

アブスト:ヘリウム激変星(AM CVn型星)とは、主星が白色矮星、 伴星がヘリウム星またはヘリウム白色矮星であるような近接連星系であり、 降着円盤を持つためoutburstを起こす天体も多い。 ヘリウム激変星の降着円盤は、通常の激変星とは異なり主にヘリウムで構成されるが、 これまで発見数が少なく、outburstの詳細な観測は少なかった。 しかし、近年のサーベイ技術の発達により、 これまで見えて来なかったヘリウム円盤でのoutburstの振る舞いが観測され始めた。
今回は、近年アウトバーストを起こした2天体 ASASSN-14eiとNSV 1440について主に報告する。 これら天体では、これまで通常の激変星でのみ観測されてきたearly superhumpや double superoutburstがヘリウム激変星で初めて確認された他、 通常の激変星ではありえない、1年以上の長期に渡るsuperhumpや再増光が観測された。

7 月 13 日川室
- title X 線光度関数をもとにした超巨大ブラックホール成長プロセスの制限に向けて
- abstract 活動銀河核の X 線光度関数 [1/Lx/Mpc3] をもとにブラックホール (BH) 質量がどのように成長してきたのか議論されてきた。しかし、その議論のなか で、放射効率と Eddington ratio の間の縮退が完全には解けていない。そこで、 その縮退が解けた場合にどのようなことがわかりうるのかを紹介し、解くためには どうすればいいのか、X 線と電波観測の観点から議論したいと思います。

7 月 20 日勝川行雄さん
高精度高分散偏光分光観測で探る太陽彩層

太陽観測の重要課題の一つがプラズマ圧優勢から磁気圧優勢となる彩層、遷移層 そしてコロナでの磁場測定である。磁気リコネクションや磁気波動による熱化 過程を観測的に調べる上で必要不可欠である。その実現に向けて、飛翔体による 偏光分光観測であるCLASPロケット実験やSUNRISE気球実験を推進している。さらに、 これらを見据えて、ダイナミックな彩層の偏光線輪郭を再現するツールの開発にも 取り組んでおり、恒星の彩層スペクトル観測にも応用できる。

過去の雑誌会の内容はこちらに。
2016 年度後期
2015 年度前期
2015 年度後期
2014 年度前期
2014 年度後期
2013 年度前期
2013 年度後期
2012 年度前期
2012 年度後期
2011 年度前期
2011 年度後期
2010 年度前期
2010 年度後期

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2016 年度世話人: 磯貝
isogai_[あっと]_kusastro.kyoto-u.ac.jp