<研究の動機>

口径が 20m 以上の次世代超大型望遠鏡では、単一鏡の望遠鏡を 製作するのは非常に困難なため、1m サイズの鏡を多数用いた分割鏡を 主鏡として持っている。この度、岡山に製作する 3.8m 望遠鏡は次世代超大型望遠鏡のプロトタイプという面もあり、次世代望遠鏡に必要な技術を日本独自に開発しようとしている。

<研究の目的>

今回の研究では、次世代望遠鏡に必要な技術の1つである PCS [ 位相測定カメラシステム ] を開発する。このシステムは、光学的に分割鏡間の鏡面段差を測定するもので、非接触センサの 原点をあたえるために不可欠なものである(位置センサの原点は徐々に変動するため、数日から 数週間おきに光学的な原点補正が必要)。現在、分割鏡を主鏡に持つ米国ケック望遠鏡では、 個々の分割鏡間の位相差測定は自然の星を用いて行われており、次世代超巨大望遠鏡でも 同様な手法を用いることが検討されているが、この方法では測定にかなりの時間がかかるた めに精度の良い調整を頻繁に行なうことができない。また、自然の明るい星を用いるために、 天文学的観測を行っている合間に望遠鏡の向きを変えずに分割鏡の位相状態を光学的に確認する ことができない。京大新技術望遠鏡ではそれにかわる新しい方法として、分割鏡の境目に 口径数cmの平面ハーフミラーを設置し、焦点面から波長可変のレーザーを短時間照射することで、 自然の星を用いなくても任意の望遠鏡の向きで短時間に分割鏡の境目での位相差を測定する方法 を検討している。このような自己基準光源を用いた位相測定技術が可能であることを プロトタイプ試験装置を製作して実証し、さらに新技術望遠鏡用の位相測定カメラシステムの設計 及び製作、最後に建設途中の新技術望遠鏡に取り付けて性能を実証することを目的としている。