水曜雑誌会 (Wednesday Seminar)

水曜雑誌会は、恒星物理や太陽・プラズマ物理に関する論文、自身の研究等を紹介しあうセミナーです。

schedule

seminar in 2017a

前期の雑誌会の発表内容と予定です。

日付発表者(予定)題名・発表内容
4 月 12 日上田
1. 超高光度X線源の可視スペクトル(ULX研究会)
2. ブラックホール観測:現状と展望(高宇連研究会)

4 月 19 日野上
スーパーフレア研究のこの1年の進展と3.8m望遠鏡での研究計画

2016年度に我々のグループで進められたスーパーフレアについての 研究を、天文学会での前原さん、野津君、幾田君、行方君の発表をもとに レビューする。また3.8m望遠鏡でどういう観測計画を立てているかを 紹介する。

4 月 26 日榎戸
雷雲での高エネルギー物理学

粒子加速の仕組みを宇宙の多様な天体で理解することは、宇宙物理の大きなテーマである。希薄な宇宙空間での「磁場」による加速現象はこれまでにも議論されてきたが、近年、高密度な大気中で粒子加速が起きる稀な観測対象として、雷雲や雷放電の「電場」の役割が注目を集めている。特に、冬季の日本海沿岸には強力な雷雲が到来し、それに同期した放射線の増大が報告されており、絶好の観測対象である。我々は2006年に理研と東大で連携してGROWTH (Gamma-Ray Observations of Winter Thunderclouds) 実験を立ち上げ、雷雲の電場で相対論的な領域まで加速された電子からの制動放射ガンマ線を観測してきた。2015年からは、専用の小型測定器を石川県に多数設置して加速現象の誕生、発展、消滅までをマッピングする新規プロジェクトを展開し、学術系クラウドファンディングや現地の高校や大学の支援を得て観測を拡大している。2016年度には、511 keV の対消滅線の信号など多様性に富んだ複数の雷雲に同期する高エネルギー放射を検出できている。本プロジェクトの最新成果を議論したい。

5 月 3 日休会
憲法記念日

5 月 10 日加藤


5 月 17 日前田
超新星の未解決問題と早期発見・分光の重要性

5 月 24 日若松
スパースモデリングを用いた矮新星のエクリプスマッピング

矮新星は白色矮星と伴星からなる近接連星系であり、伴星から輸送された物質が 主星の周りに降着円盤を形成している。この降着円盤内での不安定性により 主星に物質が降着する際に解放された重力エネルギーを起源として、降着円盤が 突発的に増光する。 エクリプスマッピングとは、食の観測から円盤の輝度分布を再構成する手法である。 従来のエクリプスマッピングでは最大エントロピー法(MEM)が用いられてきたが、 これは円盤内の局所的構造がなまるなどの問題があった。そこで、近年盛んに研究 されるようになってきたスパースモデリングをエクリプスマッピングに組み込み、 より精度よく再現する手法(TVM法)を研究している。これについて議論する。

5 月 31 日志逹
NuSTARとSwiftによる超高光度X線源IC 342 X-1の観測

6 月 7 日小田
銀河マージャ―と活動銀河核

銀河と SMBH は互いに影響しあって「共進化」してきたことが示唆されてきた。共進化を説明するシナリオとして、ガスの豊富な銀河同士が衝突・合体して楕円銀河まで進化するというmajor merger仮説がある。合体によってSMBHへの急激な質量降着現象であるAGNが引き起こされ、同時に、爆発的な星形成が進むことで母銀河もまた急速に成長する。したがって、銀河とSMBH の共進化を考えるうえで、合体前後における銀河の性質を理解することは非常に重要である。 そこで本発表の前半では、銀河進化の中でも銀河のmergerに焦点を当て、埋もれたAGNとの関連を議論した論文Ricci et al. (2017) を紹介する。加えて、後半では近傍のCompact GroupであるArp 318を取り上げ、X線スペクトル解析の結果について詳細を述べる。Arp 318の一部は銀河合体の初期段階にあたると考えられ、本研究によってトーラス柱密度の変動など興味深い結果を得た。

6 月 14 日幾田
適応的交換モンテカルロ法を用いたスーパーフレア星の多次元パラメータ推定

フレアとは星表面にある黒点の磁気エネルギーを解放して起こる爆発現象である。ケプラー衛星による太陽型星(G型主系列星)の観測データから、最大級の太陽フレアの十倍から一万倍ほどのスーパーフレアが多数報告された(Maehara et al. 2012, 他)。そのスーパーフレア星の光度曲線には準周期的な光度変化が見られ、これはスーパーフレアを引き起こすような巨大黒点が星表面に存在して大きさを変化させながら差動回転しているためだと考えられている(Notsu et al. 2013a&b, 他)。 これまでの研究で、差動回転や黒点の生成消滅といった多次元パラメータから理論的な光度変化を構成しマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を用いて最適化することで、その多次元パラメータの推定を行ってきた(Ikuta, master thesis)。しかしながら、光度曲線が長周期分ある場合はMCMCの計算過程において尤度の極大に捕捉される「多次元性の問題」が起こり、パラメータ推移が上手くいかなかった。そこで、パラメータ推移を効率化するためにMCMCを拡張した手法である交換モンテカルロ法(REMC; Parallel Temperingとも)や適応的モンテカルロ法(aMC)を組み合わせ、適応的交換モンテカルロ法(aREMC; Araki & Ikeda 2013)を導入し、計算コードの改良に取り組んでいる。 本発表では、前半で「差動回転と黒点の物理」に言及しながら(Shibata et al. 2013; Maehara et al. 2017; Hotta et al. 2011, 他)、後半でそのaREMCの導入と現状を報告する。

6 月 21 日磯貝
opulation II 候補天体OV Booの観測報告および eclipse mappingによるsuperhumpの解析

今年3月、population IIの有力候補と目されている天体 OV Booが スーパーアウトバーストを示した。これまで、pop. IIだと思われている激変星は ごく数天体のみであり、スーパーアウトバーストが観測されたのは今回が初めてである。 今回我々が行った観測キャンペーンの結果を紹介する。 また、この天体は食を示しており、eclipse mappingによる 円盤の輝度分布の再構成にちょうどよい対象である。 現在、開発中のeclipse mappingのコードを拡張し、 superhump中の光度変動を動画で再現するプログラムの作成中である。 その途中経過について報告する。 時間が余ったら、ヘリウム激変星V803 Cenの半年以上に渡る 連続測光観測の結果について紹介します。

6 月 28 日休会
集中講義

7 月 5 日木邑
スパースな時系列データ間のタイムラグ解析

天文学における観測データは大抵スパースである。 限られたデータから多くの情報を引き出すためには、 解析方法にそれなりの工夫が必要である。本発表では、 可視恒星グループの取り組みを軽く紹介したあと、自身の 研究(X線新星の多波長光度曲線のタイムラグ解析)に ついて詳しく述べる。 ※5月末に行われた研究会「天文学におけるデータ科学的方法」 で発表した内容を元にしています。

過去の雑誌会の内容はこちらに。
2017 年度後期
2016 年度前期
2016 年度後期
2015 年度前期
2015 年度後期
2014 年度前期
2014 年度後期
2013 年度前期
2013 年度後期
2012 年度前期
2012 年度後期
2011 年度前期
2011 年度後期
2010 年度前期
2010 年度後期

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2017 年度世話人: 谷本
tanimoto_[あっと]_kusastro.kyoto-u.ac.jp