新しい表示器が届いた後、新表示器、旧表示器ともに安定性が悪化している。例えば11/10、11/12のデータでは、
このような数μmにわたっての、ジャンプ以外の変化はこれまで見られたことの無いものである。この原因として次のようなものが考えられる。
1.による変化を見るために、次のような実験を行った。
まずサンプリング時間を400μsに設定して出力データのオーバーフローが起こらないようにし、〜12時間測定を行う。その後サンプリング時間を800μsに戻し、オーバーフローが起きている状態で〜12時間測定を行う。このとき、サンプリング時間以外の設定の変更は行わない。
また、表示器と治具、GNDの関係は下に示したとおりである。
その結果を下に示す。
サンプリング時間:400μs (オーバーフロー無し)
サンプリング時間:800μs (オーバーフロー有り)
どちらも安定性は良くない。この実験からは、「不安定性の原因は出力データのオーバーフローではない」という結論を導くことはできない。しかし、この実験からオーバーフローを解決しても不安定性の解決にならないことはわかる。
もっとも、オーバーフローしている状態は正常な状態ではないと考えられるので、これ以降の実験ではサンプリング時間を400μsとすることにする。
これらの実験の後に、コンセントを接続した状態の表示器のシャシー電位(表示器のGND電位)と、アース電位(配電盤のアース線の電位)の間に 30 -50 V (60 Hz)の電位差が生じているこがわかった。このことと前回のことをあわせて考えると、新旧2つの表示器が互いに干渉しあって安定性が悪化しているとも考えられる。また、アース電位(配電盤のアース線の電位)が本当に安定しているかどうかがわからなかったので、アース線を伝わってノイズが入って来ている可能性もある。そこで、次のような実験を行った。
1-1. これまでと同じ接続方法で測定する
1-2. New Box を完全に切り離し(コンセントも抜き、GND線も外す)、GNDは接地して(配電盤のアース線につないで)測定する
1-3. New Box を完全に切り離し、GNDは接地せずに測定する
1-4. Old Box を完全に切り離し、GNDは接地して測定する
1-5. Old Box を完全に切り離し、GNDは接地せずに測定する
1-1.の接続の仕方は
1-2.と1-4.の接続の仕方は
1-3.と1-5.の接続の仕方は
である。
結果を下に示すが、結論としてはいずれの場合も安定性は良くなら
なかった。
1-1.の結果 (従来の接続方法)
これまで用いてきたGND線は、なるべく太いものを、という理由から銅網線であり、電気的に剥き出しになっていた。そのためGND線を手で触ると測定値が大きく乱れる現象が見られた。また、GND線を銅網線にしたのは新しい表示器が届いた後であり、不安定性が見られ始めた時期と一致している。そこでこの変更こそが原因でないかと考えられるので次の様な実験を行った。
2-1. New Box を完全に切り離し、GND線をビニール被覆導線に変更し、GNDは電源コンセントに付属のGNDで接地して測定する
2-2. Old Box を完全に切り離し、GND線をビニール被覆導線に変更し、GNDは電源コンセントに付属のGNDで接地して測定する
器具の接続の仕方は下の図の通りとする。
測定結果を下に示す
2-1.の結果 (New Box 切り離し、GNDは被覆導線、コンセント付属のGNDで接地)
結果を見るとわかるように、これまで発生していた数μmで不規則な不安定性は発生していない。よって、GND線は被覆線を使うと良いことがわかる。
GND線は被覆されたものを使うと良いことがわかったが、GNDを接地した
方がよいか、2つの表示器が互いに悪影響を与えないか、といったことは未解明
である。そこで次のような実験を行った。
(注1)以降ではGND線は被覆導線を使う。
(注2)接地させるときはコンセントに付属のGNDを接地させることにした。
(注3)新しい表示器と古い表示器を同時に測定した。
(注4)気圧と湿度も同時に測定した。
(注5)温度センサーはコンピューターのポートの数が足りなかったので使用しなかった。
3-1. New Box と Old Box の治具を電気的に接続し、GNDを接地して測定する
3-2. New Box と Old Box の治具を電気的に接続し、GNDを接地せず測定する
3-3. New Box と Old Box の治具を電気的に切断し、GNDを接地して測定する
3-4. New Box と Old Box の治具を電気的に切断し、GNDを接地せず測定する
3-1.の接続の仕方は
3-2.の接続の仕方は
3-3.の接続の仕方は
3-4.の接続の仕方は
結果を下に示す。なお、グラフの上段は環境を、下段は測定値を表していて、
3-3.と3-4.が良い結果を出しているので、さらに1回ずつ測定を行った。
ただし、安定性の違いがセンサーヘッドによるものか表示器によるものかを調べ
るために New Sensor 2 と New Sensor 3 を入れ換えた。
3-3.の結果 その2 (治具は切断、GNDは接地)
3-4.の結果 その2 (治具は切断、GNDは接地せず)
3-3.の接続方法のときにノイズが発生している。これはGNDを接地しているのでGND線を伝わってノイズが入ったのではないかと考えられる。
一方、3-4.は2つの結果がともに安定している。ただし、1回目の測定ではジャンプが発生している。これはGNDが接地されていないため、溜った電荷が何かのはずみで放電したのではないかと考えられる。ただ、ジャンプという問題点はあるものの、3-4.のノイズに比べればまだ許容できる。
以上のことをまとめると、
比較的安定している3つのデータを再び下に示す
上段の緑が湿度、下段の赤・緑・青が新しい表示器、紫・水・茶が古い表示器である。上の3つのグラフから、新しい表示器の方が湿度に過敏に反応していることがわかる。このことから、1週間程度の長期の安定性を調べたら、新しい表示器の方が古い表示器に比べて安定性が悪いという結果が出ると思われる。