観測結果

2000年6月に3DIIを赤外シミュレータにとりつけてマイクロレンズ アレイモードにおけるテスト観測を行った。 結像性能に関して、収差による、 多瞳像の 劣化がほとんど見えないので、 問題無いことが確かめられた。 また、 多瞳の位置と形が、フラットフィールド用光源や波長較正用光源を用いた場合と、 望遠鏡で実際の天体を用いた場合とで 一致することが確認された。 約1000本のスペクトルが検出器上にどの様に展開されるかが設計通りにな っていることも確かめた。 つまり、 隣のスペクトルとの間隔5.5ピクセル、 波長分解能2ピクセル = 5Åが実現されていた(Fig 11を参照)。 観測から得られた輝線比マップや速度場マップの例として、 Fig 12に、 惑星状星雲NGC 7027のマイクロレンズアレイ分光データから得 られた結果を示す。 精度の良いフラットフィールディングと約0.1の精度での波長較正 を行うことができているため、微妙な空間変化が測定できている。 [N II]/Hαの輝線強度比に関しては北西方向での増加がみられた。 また、Hα輝線の中心波長が星雲の北側と南側では異なっており、 40km/s程度の内部速度場の変化が見えている。 これらの結果は、この天体についての過去の研究と一致している。 速度場については明るい天体であるからここまでの精度が出たのではあ るが、瞳分光においてスリット効果が無いという利点が本質的に効いて いる。 なお、分光測光標準星HD109995の観測結果から、このモードにおける Hα波長付近での分光器システム全体の効率は、 設計通り〜10%と見積もられた(第5章を参照)。

図11 3DIIを赤外シミュレータにとりつけて取得した惑星状星雲NGC 7027のマイクロレンズアレイ分光データ。拡大して示したが、実際にはこのようなスペクトルが約1000本同時に得られている。
 
 


図12 図11の観測結果から得られたNGC 7027における輝線/輝線比/速度場マップ。輝線比と速度場については、スケールバーをフレームの下につけた。