22 Newly Identified Repeating Changing-look AGNs and Evidence for Extreme Broad-line Region Breathing
Litao Zhu, Zhongxiang Wang, Alok C. Gupta, Yiyang Zeng, P. U. Devanand, Karan Dogra, Riya Bhowmick, Ju-Jia Zhang
arXiv:2607.15564 (新しいタブで開きます。)
※ 月曜雑誌会での論文紹介のために作成したページです。
※ 出典のない図やグラフは紹介する論文から引用しています。ここにある記述には誤りも含まれているかもしれませんので、ご注意ください。
1. INTRODUCTION
AGN のスペクトルは大きく2種類に分けられる。
AGN unification modelによるタイプ分類
Type1 AGN
face onで見たAGN。BLR が見えるので、スペクトルにもBroad Emission Lineが見える。
Type2 AGN
edge onで見たAGN。BLRがdusty torusで遮蔽されて見えないので、Broad Emission Lineが見えず、Narrow Lineしか見えない。
AGNのイメージ図(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Emmaalexander_unified_agn.png より引用。リサイズしています。)
Type1,Type2 AGN それぞれの composite スペクトル(Shu Wang et al 2024 ApJ 966 128 Figure 1.より抜粋)
Hα、HβのBroad Line(Type1のみ),Narrow Line(Type1,2両方)が見えている。(Hγ、HδのBLも見える。)
スペクトルタイプは変化し得る; Changing-Look(CL) 現象
サンプル数
少数天体でのCL現象の確認以来、大規模なtime domain測光・分光サーベイによって統計的に扱える程度のサンプル数にまで拡大。
CL現象の原因
CL現象の短いタイムスケール(数か月~数年)はAGN統一モデルでは説明できず、降着率の急激な変化や遮蔽物が視線上を横切ることなどが原因として考えられる。
CL AGNのうち、turn-off(BLRが消えている状態)のものは、Naked Type2 AGN(BLRからの放射が弱いor無いAGN)かもしれない。
大半のCL AGNの研究 : 数epochのスペクトルの比較からCL現象を特定することに焦点を当てている。
→CL現象のdiversity(?)を確立
But 一回きりのturn on/off eventを観測しただけでは、CL現象の原因としてBLRが物理的に消えたり、再出現したりしたのか、はたまたBLR自体はあるけれど降着率の変化でBEL が見えるようになる閾値をまたぐような状態遷移を起こしたのかの区別をつけることはできない。
この点で、Repeating Changing-Look(RCL)現象 (on → off → on または off → on → off) はCL現象の原因によりくわしく制限をかけることができる。
昨今の研究で、RCLは特殊なものではなく、年単位で起こる現象だということが分かっているが、ほとんどの研究がRCLの同定や分類、タイムスケールの研究に焦点を当てたもので、スペクトルタイプとcontinuumの時間変化のつながりを調べたものはあまりない。
CL AGNは可視連続光が大きく変動しているものから選ばれたり、逆にCL現象に伴ってoptical・MIRの連続光が大きく変化することもあり、特にMIRの変化がopticalの変化に追従するようであれば、obscurationではなく、実際に中心の放射場の変化によるものである可能性が高いので、スペクトルとcontinuum変化のつながりを調べることは重要。
また、中心の放射場の変化によってCL現象が起きている場合、そのCL現象が輝線ごとに異なるBLRのvisibility thresholdの影響を反映しているかHβとHαの応答の差を見ることで確かめることができる
この研究では、既に知られているCL-AGNのサンプルの中から新たなRCLを探し出し、multi-epoch spectra と長期のmulti-band light curveを用いて、繰り返されるCL現象がon → off と off → on で同じcontinuum変動とBLR breathingによるものかどうかを検証した。
2. SAMPLE AND IDENTIFICATION
2.1. Parent CL-AGN sample and light-curve construction
RCL-AGNのペアレントサンプルとして以下の論文で見つかったCL AGNを利用。
それぞれのサンプルに対して、opticalとMIRのライトカーブを作成
Optical: ZTF (zg-,zr-band)、ATLAS 、CRTS から作成
ZTFはzg-,zr-bandを使用。catflags=0、χ<4、3-days intervalでビニング
ATLASはc,o bandの 1-day binned stacked forced-pjotometry light curveを使用。基本的なquality cutとAB等級への変換を実施。
MIR: WISE 、NEOWISE から作成
W1 (3.4μm)、W2 (4.6μm) bandを利用
WISEのデータはobserving epochごとにbinning(NEOWISEは?)
これらのライトカーブを用いて、continuum emissionがCL現象で大きく変化したか確認できる。
2.2. Selection of RCL-AGN candidates
parent sampleのCL AGNから、既知のCLの後に再びCLが起きていそうな天体を、ライトカーブ (以下のFigure 2. は一例) を目で見て選び出す。
以下の2条件で優先順位をつけて選出 (下のFigure 1. も参照)
変光の振幅:|Δzg|が大 = 等級が大きく変化 (Δzgの計算方法は下記)
色-等級関係:"bluer-when-brighter" (明るいときほどcontinuumが青くなる) の傾向が強い
ZTFのpublic dataは即時性がないので、real-time ATLAS forced photometry のデータを用いて直近の天体の明るさをチェック
ac band とzg-band の波長域が大きくかぶっているので、ac band light curveからzg-like light curveを作成
turn-on(off) が分光観測で確認されたepoch ("MJD2") でのzg-band等級とZTF light curveの直近のepochでのzg-band等級の差をΔzgとして計算 (ただし、MJD2付近の等級と直近のATLASの等級を比較して選出した天体もあるので注意)
LJT を用いてタイプトランジションを確認することを鑑みて、LJTでの観測時にzg-band等級が20.5等より明るいと予想される天体だけ選んだ。
最終的に34の候補天体を観測した。
Figure 1.
Distribution of the color–magnitude slope k versus the zg-band magnitude change ∆zg
灰色の点がparent sample、三角印がRCL候補天体、背景のType1,2 AGNはSDSS DR16の S/N > 10 の天体
Figure 2.
J1654のOptical/MIR light curve
縦に伸びる破線は分光観測されたepochを表している。左から2本目の縦線のところがMJD2
2.3. Spectroscopic identification
34天体のスペクトルをSDSS,LAMOST,DESIから取得
そして、以下の望遠鏡で34天体を分光観測 (grismとslitの設定は、特にHβ輝線が見えるようにzから決定)
取得したデータはbias減算、flat補正、スペクトルの1次元化、波長校正、flux校正を経てスペクトルに変換し、SDSS,LAMOST,DESIのアーカイブデータと比較することで、2回目のCL現象があったか確認する。
スペクトルの解析方法は以下のとおり
QSOFITMORE でスペクトルフィット
Hβ広輝線の出現/消滅に基づいてCL現象を確認
Hα広輝線もあれば確認するが、定量的に調べることはない
Hβ広輝線の出現/消滅は以下の式で定量的に判断
\(R_s = \frac{S_b - S_d}{S_b}\) Sb ,Sd はそれぞれbright,dim stateの時のHβ広輝線フラックスを積分した値
Rs > 0.3 (30%以上の変化)ならCL現象が発生したと考える。
最後に、目視で確認してデータの質が悪くてfittingが不確かなものやHβの変化が曖昧なものははじいて、on-off-on,off-on-offの変化(RCL現象)を見せたと判定されたものは25天体となった。
3. PROPERTIES AND MULTI-BAND VARIABILITY
3.1. Basic properties of the confirmed RCL AGNs
RCL-AGNの25天体とRCL-AGNではなかった9天体の基本的な性質 (BH mass, Eddington比) は直近の観測でのスペクトルから算出。 (テーブル1 )
BH massは次の式で計算: \(\log (M_{BH}/M_{\odot}) = a + b \log(\lambda L_{\lambda}/10^{44} \text{erg s}^{-1}) + c\log(\text{FWHM}/10^3 \text{km s}^{-1})\)
直近のスペクトルで on state と判断された天体はHβ広輝線から計算
off-state と判断された天体はHα広輝線から計算
off-stateかつhigh-zでHα広輝線が見えない天体はMgII広輝線で計算
Eddington比は以下のとおり計算
monochromatic luminosityからbolometric luminosityを計算;
Hα,Hβを使った天体は \(L_{\text{bol}} = 9.26 L_{5100}\)、 MgIIを使った天体は \(L_{\text{bol}} = 5.15 L_{3000}\)
\(L_{\text{Edd}} = 1.26 \times 10^{38} (M_{\text{BH}}/M_{\odot}) \text{erg s}^{-1}\)
\(\lambda_{\text{Edd}} = L_{\text{bol}}/L_{\text{Edd}} \)
Guo et al. と Dong et al. のCL-AGNと比較した図が下のFigure 3.
Figure 3. Eddington ratio versus black hole mass
左側が on - off - on のRCL(2nd on-state)とnon-RCL、parent sampleのoff-state CL-AGN、右側が off - on - off のRCL(2nd off-state)とnon-RCL、parent sampleのon-state CL-AGN
灰色の破線はparent sample (灰色点) に対する unweighted linear fits
図から読み取れること
on-off-on 天体の 2nd on-state は回帰直線より上の方に分布 (当たり前では?)
off-on-off 天体の 2nd off-state も回帰直線より下の方に分布 (BH massが大きいところだけに見えるが?)
2nd CLでも、Eddington比はAGNのon,off状態から予想される値へと変化する。
3.2. Long-term optical and MIR variability
continuum variationはスペクトルの状態を反映することが分かっている。 (e.g., Zhu et al. 2026 ← color-magnitude variability でCL AGNを見つけようとする論文)
各RCL-AGNの2&3回目の分光観測が行われたepoch付近でのzg-band等級を推定 (zg-band等級がなければ、ATLASのac等級を利用) → 2 epochの等級差Mag_Diffを算出 (Table 1 に記載)
CL transitionのタイムスケールとして以下の2種類の時間を算出 (Table 1 & Appendix Table A1 に記載。 Figure 2. を参照)
dt: 2回目の分光観測と3回目の分光観測の間の時間
dt1: 2回目の分光観測時から初めてMag_Diffだけ等級が変化するまでの時間 (dt1後に既にtype transitionが起きていたかもしれない)
RCL AGNの絶対等級の変化は0.?等~1等以上 (直近がon-stateの天体のほうが比較的大きめの変化)
ほぼすべての天体でtransition timescale (dt) は ~1000-1500 days (この値に物理的な意味はあるのか??)
dt1だと a few hundreds - 1000 days (最短はJ1104の 40 days)
Mag_Diff と dt,dt1の間にtrendは無い (下のFigure 4. を参照) ので、Mag_Diffからタイムスケールを決定することはできない。
MIRのライトカーブ(W1,W2)は可視光のライトカーブに追随するようになっていて(例えば、J1654のライトカーブ )、AGNの中心付近から放射されたcontinuumがdustで吸収・再放射されていることを表している。
Figure 4.
Optical magnitude change versus the observed and photometric timescales (dt and dt1, respectively) for the second CL transition.
3.3. Seven well-sampled RCL-AGNs
RCL AGNのうち、7天体は分光観測された3epochすべてが同一bandのライトカーブでカバーされているので、continuumの時間変化とRCL現象を直接比較することができる。
7天体: J0936 、J1113 、J1220 、J1309 、J1326 、J1525 、J2224
最近の先行研究 (Kovacevic et al. 2026 ) で、Seyfert 2 AGNのライトカーブの変光のうち、長期的な変動はAGN中心の放射場の変化を反映しているということが分かっているので、ライトカーブのfittingは低次の多項式を使って、CL現象に関係しているであろう長期的な変動を拾うようにする。
7天体のfit結果が以下のFigure 5.
スペクトルから算出したEddington比も一緒にプロットしてある。
Figure 5. Changes in zg mag. & Eddington ratio
なめらかな曲線がzg-band light curve trend、折れ線がEddington比の変化
Eddington比とライトカーブのfit結果の傾向が一致しており、RCL transitionが繰り返し起きる降着状態の変化と深く関係していることが示唆されている。
この図、あまり意味ないのでは?、という評です。(聞いてくれた方より。私もそう思います。)
4. DISCUSSION
4.1. Non-confirmed candidates
RCL天体の候補として挙げられながら、実際にはRCL AGNと判定されなかったのが9天体。
J0023 : 月明かりのコンタミで判定しなかった。
J0158 : TDEとしての報告があるので、BLの変化はTDEのリプロセスが原因であって、BLRの変化を必ずしも反映していないと考えて除外
J0213 : 2回目の分光観測が zg-bandライトカーブで暗い時より少し前のものだったので、nRCL(off)となったが、2回目の分光観測がもう少し後に行われていたらRCLだったかも。
J0726 : 先行研究ではon(LAMOST)-off(SDSS)-on(DESI)のRCL天体と判定されたが、この研究ではoff(SDSS)-on(DESI)-on(LJT)だったので、RCLとは判定されず。
J1518 : off stateのままで変化なしと判断したが、HβがDOTの波長範囲の赤側の端の方であったことに注意
他4天体 (J0853 , J1335 , J1400 , J1422 )
その他4天体がRCL AGNと比較する価値のある天体
これらの4天体はRCL AGNと判定された天体と比較すると
色-等級関係が違う; Figure 1. のkの値がoverlapしていない (← そうとはあまり思えないし、そもそも4天体しかないからそうなることもあるだろう。)
等級の変化が小さい (smaller |Δzg|) → Hβの状態が維持されている。 (← 分光観測のタイミングが悪かったというのもあるだろう。J1400とか)
→ nRCL天体はHβのvisibility thresholdを超えるほどのcontinuumの変化が無かったのだろう。 (2回閾値をまたいで戻ってしまったものもありそう)
Figure 3. を見ても、RCL AGNは3rd epochでの活動状態が2nd epochのそれとは違う位置に分布しているが、nRCLは同じような位置に分布している。(Figure 3.の背景のparent sampleの点はいらない気がするけれど...)
→ 2回目のCL現象が降着円盤の活動状態の変化に符合する。 (サンプル数が少なくて統計的な結論は出せないけれど。)
4.2. Evidence for BLR breathing
CLAGNの可視光の変光具合や色-等級関係(color-magnitude slope k)は、2型AGNよりも1型AGNに似ているという結果が Wang et al. 2025a で出ている。 (が、これは以前の月曜雑誌会 で紹介して、ZTFのライトカーブがまだ短いだけでは?という話になったもの。)
同じように今回のparent sampleとRCL天体も検証してみた結果、同じ結果になったので、やっぱりCL/RCL天体のoff-stateは'naked' or true Type2 AGN (BLRが弱いor無いだけで、dust torusでBLRが遮蔽されているわけではない) だということが示唆されている。
← BLRがある一定の降着状態の閾値を下回ると弱くなるor消滅するというモデル(例えば、Elitzur et al. 2014 )と整合的。
たいていnaked or true Type2 AGNは可視光BLの欠如とともにX線の吸収もintrinsicにほとんどor全くない天体として見つかるが、今回のサンプルでX線観測されているものは無い。 😞
中心からのUV/Optical continuumがdusty torusでリプロセスされてMIRとして再放射されると考えられている(e.g. Koshida et al. 2014 ) ので、W1,W2でのMIRの変光が可視の変光に追随するようなら、視線上を横切る遮蔽物の有無ではなく、中心からの放射がintrinsicに変化していることがわかる。 😃
→ 今回のRCL天体はMIRの変光が可視光の変光に追随するようになっているので、ionizing continuumが弱くなっていると考えられる。
continuumのintrinsicな変化がCL現象を引き起こしているという描像のもとで、line-transitionごと (Hα-only,Hβ-only, Hα+Hβ) のoff-stateの降着活動の状態を比較するために Figure 6. をプロットした。 ↓
Figure 6. CL と RCL AGN の Off-state Eddington ratios と BH mass (Hα-only,Hβ-only,Hα+Hβでグループ化)
filled symbolはDong et al (2025b )のCL天体、open symbolはoff-stateスペクトルがHα+Hβを含むRCL
RCL AGNのBH massはon-state時のデータから算出。破線はグループごと(Hβ-onlyとHα+Hβ)のunweighted linear fitの結果
→ Hβ-onlyのCLはHα+HβのCLよりも高いEddington比で発生していることがわかる。 (K-S検定 、A-D検定 でも確認済み)
← Guo et al. (2025b) の結果 (統計なAGNサンプルでBLの時間進化を調べた研究) と一致 (Eddington比やluminosityの低下に従い、Hβ → MgII → Hα の順にBLが弱まっていく。)
今回のRCL天体もCL現象の度に line-dependent な visibility threshold を横切っているということ。
4.3. Possible driver of the long-term excursions
well-sampled RCLとして選ばれた7天体は、いずれも活動状態ごとに算出されたEddington比が可視光fluxの変動と一致しており、MIRの変光がそれに追随するようになっている。
→ accretion-poweredな放射場の反復的な変化が原因 (❌ 一過的な現象、幾何学的に遮蔽するような現象)
2回目のCL現象はただのCL現象と同じように、数カ月から数年のタイムスケールで発生する。
← 標準降着円盤の可視光放射域でのviscous timescaleよりも短く、diskの外側の広い領域でのaccretion rateの変化では説明できない。
← 7天体のlong-term variationのタイムスケールが揃いすぎて、time scaleの短い確率過程的な原因とも考えにくい。
→ accretion powerが一定期間大きく変化して、BLRのvisibility thresholdを跨いだと考えるのが自然
降着流の以下のようなメカニズムで数年単位のaccretion powerの大変動が発生し得る。 (それぞれの詳細は補足 を参照)
accretion modeの遷移(Noda & Done 2018 ; Ruan et al. 2019 ; Han et al. 2026 )
X線連星からのアナロジー。 エディントン比が一定程度減少するとUV電離光子の放射が減少してCL現象が発生する。
inner-diskトルクの変化に関連するheating or cooling frontやthermal instability (Ross et al. 2018 )
heating/cooling frontが降着円盤上を移動して電離光子の放射量が変化することでCL現象を説明する。
magnetically supported disk (Dexter & Begelman 2019 )
Magnetic Rotational Instability (MRI) によって降着円盤に垂直に刺さった磁場から方位角方向の磁場が生成されて、その磁気圧でガスが円盤に垂直な方向に持ち上げられる。それに伴い質量降着のtime scaleが小さくなり、CL現象を説明できる。
radiation-pressure instability (Sneigowska et al. 2020 ; He et al. 2026 ):
Shakura & Sunyaev の α disk model と ADAF を組み合わせたときに、質量降着率の上昇によって生み出される不安定性。diskの狭い領域におけるこの不安定性が短いtime scaleでoutburstを引き起こすことでCL現象を説明する。
今回のRCL天体の中でも、特にJ0759 はaccretion-powerの長期間の大変動とともにHα,Hβ両方のBLに(transient or peristent wind-like) blue shift成分が乗っている という特徴がある。
J0759はGuo et al. (2025c) で詳細に調査されていて、可視光およびMIRで反復的なフレアを起こしているRCL AGNと判定されている。
blueshift成分は、CL現象でionizing continuumが増加してBLRのemissivityやline-emitting radiusが変化する(BLR breathing)とともに、disk windを増幅されたり、line-emitting gasを加速されている証拠かも。
J0759はradioで受かっているらしいので、jetで加速されたgasからblue shift成分が出ているかもしれないとのことです。(指導教官の情報。ただ、blue shift成分も変化していそうなので、ちょっと確定的なことは言えないかも、ともおっしゃってました。)
5. CONCLUSION
long-term optical/MIR light cucrveを解析して、34のRCL候補天体を選出。25天体がRCL天体と確認
22のRCL天体を新たに発見
RCL天体は以下のような性質を示す。
2回目のCLでもEddington比は想定通りの変化 (turn-on → Eddington比↑ 逆も然り)
2nd CLのobserved time scaleは3-4yr、ライトカーブから推測されるCL time scaleは数ヶ月
7 well-sampled RCL AGNは、スペクトルの状態とライトカーブの変動、Eddington比の変動がconsistent
RCL AGNでもhiger Eddington ratioでは Hβ-only、lower Eddington ratioでは Hβ+Hα のCL現象が発生
感想
Repeating Changing-Look現象を十分に活かせていない気がする。 (単発のCL現象にするような分析&解釈ばかり)
4.2. 同一天体でHβ-onlyのCL現象とHα+HβのCL現象の両方を見せる天体を探して分析するほうがRCLの研究としては意味がありそう。
4.3. 2nd CL現象が本当に2回目のものなら、1回目のCLのタイムスケールと比較してCL現象の候補を絞れるかも?
補足
Advection Dominated Accretion Flow (ADAF)
ADAFは以下のような特徴を持つ。
放射効率が悪い
温度が高い
角運動量が効率良く抜き取られる
天文学辞典の説明: https://astro-dic.jp/advection-dominated-accretion-flow/
X線連星のX-ray softening/hardening
Eddington比が高い状態では、Eddington比の減少に伴ってdiskからのUV放射がcoronaからのX線に比べて急激に弱まり、αox (=X線/UVの輝度比)が大きくなる(ハードになる)。
一方で、Eddington比が一定程度低い状態(Lbol /LEdd < 10-2 )ではdiskの内側が状態を変えてADAF になり、Eddington比の減少に対してX線がUVより大きい減少率で暗くなるので、αox は小さくなる(ソフトになる)。
← Chat GPTの回答を要約
Ruan et al. 2019 より、2つのモデルの図を以下に掲載する。
Ruan et al. 2019 の Figure 4.
Eddington比の減少とともにdiskの内側が切り詰められてdiskからのUV電離光子の放射が減少していくが、閾値を超えるとADAFかjetから再びUVが放射されるようになる。
Ruan et al. 2019 の Figure 5.
Eddington比の減少とともに(diskの内側はthinなまま残るけれど) apperent temperature が低下してUVの放射も減少し、一方でcoronaからの放射は卓越してきてハードになっていく。しかし、閾値を超えるとADAFかjetから再びUVが放射されるようになる。
heating/cooling front
Rosss et al. 2018 から、Changing-Look AGNのJ1100-0053に関する図を以下に2つ掲載。
Ross et al. 2018 の Figure 2.
J1100-0053の2000年から2018年までのスペクトル。BOSS 2010 (赤色) のスペクトルは短波長に急峻な落ち込みがある。
Ross et al. 2018 の Figure 4.
J1100-0053のdisk evolutionのモデルを図式化したもの。
J1100-0053のdiskの状態は以下のように変遷している。 (詳細はRoss et al. 2018 の 3.2.2 を参照)
2000年: a thin disc with non-zero torque at ISCO
2010年: a thin disc with zero-torque at the ISCO + a cold absorbing/scattering screen
2010~2011年: a thin disc with zero-torque at the ISCO + a cold absorbing/scattering screen + grey body suppression out to ∼100rg (← cooling frontが外側へ伝播してきた?)
2014年~: heating front が heating instability によってゆっくりと内側へ後退
2017年: cold phaseは消失、heating frontは ~40rg まで後退
※ zero torque at ISCO vs non-zero torque at ISCO: ISCOが降着円盤の端になるので、ISCOより内側では粘性トルクが0になる。(zero torque) 一方で、磁場の作用でISCOの内側でも粘性トルクが残り続けることもある。(non-zero torque)
(← Copilotに聞いた)
cold absorbing/scattering phaseの起源は、崩壊したcoronaやhelical outflowing wind、diskのopacityの急激な変化などが考えられる。
Magnetically Elevated Disk
MRI によって生成されたトロイダル磁場の磁気圧でガスが上空に持ち上げられる現象が見られる。(以下の図のような構造。 MRIについてはHawley & Balbus 1991 の Fig 3. を参照)
standard thin accretion diskでは、円盤のかなり内側でもinflow timescaleがCL現象を説明できるほど短くはならないが、magnetically elevated diskなら inflow time-scale がかなり短くなって、CL現象を説明することが可能。
Dexter & Begelman 2019のFigure 1. より引用
中心からの距離やaccretion rateに対して、magnetically elevated diskはinflow timeがかなり短いことが見て取れる。特に、ISCOでDissipationがあるモデル(黒線)やline-driven outflowによって内側でthick inner diskが形成されるモデル(紫線)は可視光が放射される半径でのinflow timeは千年以上になっている。
Radiation Pressure Instability
標準降着円盤 (Shakura & Sunyaevのα disk model) は内側の放射圧が強い領域では不安定になる;その半径Rtr は \(R_{tr} \propto \dot{m}^{\frac{16}{21}}\)
一方、標準降着円盤からADAFに変化する半径RADAF は \(R_{\text{ADAF}} \propto \dot{m}^{-2}\)
これらから、質量降着率\(\dot{m}\)が低いときは 内 [ADAF 標準円盤] 外 で安定しているが、一定程度大きくなると 内 [ADAF 標準円盤(不安定) 標準円盤(安定)] 外 となることがわかる。
それをモデル化したものが以下の図のとおり。(Sneigowska et al. 2020 より引用)
この図のunstable disk領域では、降着率\(\dot{m}\)↑ → 温度↑ → 粘性ストレス(\(= \alpha P_{\text{total}} \propto T^4\))↑ → 降着率↑ という正のフィードバックがかかって明るく輝くようになる(outburst)。
この正のフィードバックで物質を消費すると、unstable disk領域を維持できなくなって、diskが冷却されて暗くなる。 (← Chat GPTに聞いた。)
特に、unstable disk領域が狭いので物質を消費するまでのtime scaleが短くなり、CL現象の短いタイムスケールを説明できる。
手元のデータでも探してみた
5年にも渡る分光モニター観測のおかげでスペクトルも結構溜まって、ZTFのライトカーブもいい感じに長くなってきたので、手元のデータでRCLを探してみると、それらしきものが数天体見つかった。
この論文に出てきたJ0023も何回か分光観測していました。我々のデータには月明かりによるコンタミもありません。ただ、肝心のところで分光観測できていませんでした。
グラフなどは時間がなくて用意できませんでした。
何回かCL現象を繰り返すクエーサーを調べるか、複数回CL現象を見せた天体をたくさん集めて統計的に議論するかしたら、切れかけの電球なのか分かるかも?
せいめい望遠鏡で頻繁に観測できるので、CL transitionが直前の活動状態に依存するかどうかなども調べられそう。