Systematic Analysis of Changing-Look Active Galactic Nucleus Variability Using ZTF Light Curves
Huimei Wang, Xue-Bing Wu, Nanyu Yao, Bing Lyu, Yuxuan Pang, Yuming Fu, Rui Zhu, and Qian Yang
Huimei Wang et al 2026 ApJ 997 100 (新しいタブで開きます。)
※ 出典のない図やグラフは紹介する論文から引用しています。ここにある記述には誤りも含まれているかもしれませんので、ご注意ください。
1. Introduction
Active Galactic Nuclei(AGN)とは:
銀河中心のsuper massive black hole(SMBH)への物質の降着によって明るく輝く天体
AGNのイメージ図(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Emmaalexander_unified_agn.png )
スペクトル形状によってAGNは次の大きく分けて次の二つに分類される。
Type 1:広輝線がある。(Broad Line Regionが見える。)
Type 2:広輝線がない。(BLRがtorusに隠されている。)
Type1,Type2 AGN それぞれの composite スペクトル(Shu Wang et al 2024 ApJ 966 128 Figure 1.より抜粋)
AGNの中には~数年で広輝線が出現/消滅するものがある。(Changing-Look AGN )
caption Changing-Look AGNのUV-Opticalスペクトル。turn-on(上)とturn-off(下)(https://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/LECTURE/AGN/aph150903640_f2.gif より引用)
CL現象を駆動するメカニズムとして主に以下の3つが考えられる。
潮汐破壊現象
ガス、ダストによる遮蔽
intrinsicな降着率の変化 ← 大半のCL現象はこれが原因と考えられる。
変光もクエーサーの特徴の一つ;
典型的なクエーサーはUVや可視で降着円盤からの連続光が0.2mag/day~yearで変動する。
CLAGNは広輝線の出現/消滅に伴って等級も大きく変動する。
(左側)CLAGNのSDSSとPan-STARRSのg,r-bandライトカーブとCRTSのライトカーブ。破線は右図のスペクトルを取得した日。(右側)2時点での対応する天体のスペクトル
広輝線形状の変化に伴って等級も変化している。(SDSSとPan-STARRSのデータに注目)
C. L. MacLeod et al. 2019 Figure 2.より抜粋
多くのCLAGNの研究はスペクトル形状の変化にフォーカスしたもの
この研究はカラーや等級の変化などの変光パターンの解析によって、CLAGNの降着現象やタイプトランジションの性質に関する新たな知見を得ようとしている点が特徴。
以下の3つに着目してCLAGNの特徴を調査する。(それぞれの詳しい説明は後で)
カラーの変動
ライトカーブのStructure Function(SF)
ライトカーブのvariability metric
2.Data
ZTF Light Curves
ライトカーブはZwicky Transient Facility(ZTF) のData Release 23(DR23)のg band,r bandデータを利用。(2018年~2024年のデータ)
異常なフラグが立っていないものに対して、3σクリッピング、3day binningを施す。
CLAGN Sample
先行研究で複数回分光観測されているCLAGNを収集。(詳細は論文 を参照)
visual inspectionでHαとHβの両方ともが出現/消滅しているものだけをCLAGNと判断(?)(HβだけしかないものはType1.5-1.9かもしれないが、Type1/Type2のどちらかに分類)
合計228天体のデータを収集。うち160天体がSMBH質量、bolometric luminosity、エディントン比が計測されている。
Control Sample
以下の3タイプのAGNのcontrol sampleを準備して、CLAGNと比較
Type 1
SDSS DR16 から FWHMHβ > 1500 km/sの天体を選出
Type 2
Million Quasar Catalog v7.2(E. W. Flesch 2021 )からnarrow-line Seyfertsとnarrow-line QSOsを選んで、Portsmouth Stellar Kinematics and Emission Line Fluxes Value Added Catalog from SDSS (D. Thomas et al. 2013 )とクロスマッチ
Extremely Variable Quasar(EVQ)
可視光で大きな変光(|Δg,rmax | > 1)を見せるQuasar. CLAGNも含む。
W. Ren et al. (2022 )のEVQサンプルを利用。
特に、FIRSTサーベイ で検出された669天体は除外 → jet由来の変光を見せる天体を除くため。
ただし、z < 0.8に制限← Hα か Hβ が観測できているものに限定
ここまでで、CLAGN 152天体、EVQ 3690天体、1型AGN 73963天体、2型AGN 5981天体選ばれた。
さらに、CLAGNのon-state,off-stateでも分けてコントロールサンプルを作成→ on:80天体、off:48天体
2015-2023でCLAGNと判定された天体を選出
ZTFライトカーブを確認して、on,offを判定
unstableなライトカーブ(図 )のものは除外(?)
BH mass(MBH )、エディントン比(REdd )、bolometric luminosity(Lbol )を算出。
CLAGN,EVQ,1型AGN
MBH :ビリアル推定 で算出(M. Vestergaard & B. M. Peterson 2006 )
Lbol :できるだけ3000Åのcontinuumから算出← 1350,5100Åより赤化や変光、母銀河のコンタミの影響が小さいから (Q. Wu & Y. Shen 2022 )
REdd :CLAGNは\(L_{\text{Edd}} = 1.3 \times 10^{38}(\frac{M_{\text{BH}}}{M_{\odot}}) \)から計算。1型とEVQはLEdd をQ. Wu & Y. Shen 2022 から引用してREdd =Lbol / LEdd を計算
2型AGN
MBH :M-σ関係を利用 (L. Ferrarese (2002 ) )
Lbol :[OIII]λ5007のフラックスを用いて算出(A. Pennell et al. (2017 ))
LEdd :MBH 、Lbol を用いて上述の式で計算(?)
z-log MBH 平面上での分布は例えば以下のようになる。
CLAGNサンプルと2型AGNサンプルのz-log MBH 平面上での分布およびそれらの対数比
EVQのサンプルがz < 0.2 でほぼ無いので、すべてのAGNサンプルを 0.2 < z < 0.8 に制限
CLAGNが90天体残ったので、他3タイプもredshift,BH massが同じようになるように重み付きでランダムに90天体選出→ これらに起因するAGNの性質のバイアスを取り除いて比較するため。
他3タイプを完全にランダムに90天体選んでも結果に差は出ない。
各物理量に対する4タイプのAGNの分布は以下のようになった。
CLAGN,EVQ,1型AGN,2型AGNの各物理量に関する分布
3. Results
Color Variability
先行研究(Q. Yang et al. 2018 )によると、CLAGNは "bluer when brighter" という傾向を持つらしいので、
ZTFのg_bandとr_band のライトカーブを使ってCLAGN,1型AGN,2型AGN,EVQについて検証。
カラーの変化\(\Delta (g-r)\)とg band等級の変化\(\Delta g\)の関係を線型回帰;
\[
\Delta(g-r) = k \times \Delta g
\]
結果は以下のとおり↓ 結果のテーブルはこちら
CLAGN SDSS J0040+1609の例(左図) CLAGN,1型AGN,2型AGN,EVQのkの分布(右図)
2型が最も"bluer when brighter"の傾向が強い。EVQと1型AGNは似たような分布でCLAGNは1型と2型の中間あたりに分布している。(、とあるが、EVQと1型の分布が似ているようには見えないし、1型の0.2 < k < 0.3にだけ集中しているのが変わっていて、他のところはCLAGNとあまり変わらないような気がする。)
※ 相関係数を計算して、統計的に有為なもの以外(p値 > 0.05)は弾いたらしいが、何個くらいのデータを弾いたのかは書いていない。
Structure Function
Structure Function(SF)とは
変光の時間間隔に対する依存性を表す関数。平たく言うと、時間間隔に対する等級差の「強さ」
AGNの変光パターンの特徴を調べるときによく使われる。
ensemble SF※ : \( \text{SF}_{ij,\text{ensemble}} = \sqrt{\frac{1}{n_{\Delta t}} \sum_{i,j} \{(m_i - m_j)^2 - \sigma_i^2 - \sigma_j^2\}}\)
観測データから計算されるSF。 第1項だけなら等級差のRMSで、そこから観測ノイズの項\(\sigma_i,\sigma_j\)を除いて純粋なシグナルの差の強さを表している。
モデルSF: \( \text{SF}_{ij,\text{model}}(\Delta t) = A (\frac{\Delta t}{1 \text{year}})^{\gamma} \)
Aとγはパラメータ。DRWモデルの1次近似はγ=1/2
※ 論文中ではSFij,obs となっているが、誤解を避けるため表記を変更している。
データから計算されたStructure FunctionをMCMC法 によってモデルSFでフィッティングする。(十分な数の青点が打てない天体は除外する。詳細な数式等は論文 を参照してください。)
CLAGN SDSS J0040+1609のensemble SFをモデルSFでフィッティングした結果。青点がensemble SF、黒線がモデルSF。 time lagの大きなところ(グラフの右側の灰色部分)はデータ点の組が少なく、不定性が大きくなるのでフィットからは除外
この解析をCLAGN 71天体、EVQ 66天体、1型AGN 75天体、2型AGN 38天体のg bandライトカーブに対して行った結果↓
各天体に対するベストフィットのAとγの分布。ヒストグラムはパラメータ空間への射影。
CLAGNの分布は2型よりA,γが大きく(等級差のばらつきがより急峻に大きくなる)、1型、EVQの分布に近い。
Variability Metrics
ここで言うAGNのvariability metricは以下の二つを指す。(具体的な式は論文のAppendix を参照してください。)
\( \sigma_{\text{var}} \)
変光がどれくらい激しいかを表す。
\( \sigma_{\text{QSO}} \)
変光がどれくらいAGNのDRWモデルっぽいかを表す。
一般的には1型は値が大きくて、2型は値が小さい傾向がある。(AGN統一モデルと一致)
1型,2型,EVQ,CLAGNそれぞれのvariability metricの分布は以下のようになった。
各種AGNのvariability metricの分布。点線で書かれた\(\sigma_{\text{QSO}} = 3\)のラインはquasar-likeなライトカーブかどうかの境界。
1型、2型ははっきり分布が別れている。CLAGN,EVQは1型,2型の間を中心として広がっている。(と書いてあるが、1型より右の方に分布しているようにも見える。)
CLAGNをon-stateのフェーズとoff-stateのフェーズそれぞれでvariability metricを測ったときの分布は以下のようになる。
1型AGN、2型AGN、CLAGNのon-stateのフェーズ、off-stateのフェーズのvariability metricの分布
\(\sigma_{\text{QSO}}\)について、CLAGNのon-stateの分布は1型AGNの分布とはあまり似ていないし、off-stateの分布は2型とはかけ離れている。
むしろCLAGN全体の分布に類似している。
→ CL現象は単に1型と2型の間を遷移しているわけではないことを示唆。
\(\sigma_{\text{var}}\)については、on-stateの方がoff-stateより小さい方に分布している。ただ、それでもoff-stateは2型よりも大きい方に分布しており、2型だけが極端に小さい方に分布している。
Kolmogorov-Smirnov(KS)検定 でCLAGNのon-stateとoff-stateの従う分布と1型、2型それぞれでKS検定の統計検定量を計算したところ、それぞれの組で分布に大きなカイリがあるという示唆が得られた。(統計検定量を計算するだけでなくて、有意水準をはっきり決めて判定するべきでは?)
一方で、CLAGNのon(off)-stateとCLAGNの全フェーズの分布に対するKS検定の統計検定量は小さかった。
結果の表はこちら
以上の結果は、CLAGNが降着円盤の活動状態が激しく変化している状態にあるということと一致していて、CLAGNのoff-stateは少なくとも部分的には降着円盤が直接観測者から見えている状態にあることを示唆している。
また、CLAGNとEVQの変光が似たような分布なのは、そのメカニズムが同じものであるということを示唆している。
4. Discussion
Vriability Type Transition
CL現象の物理的なメカニズムは未だ不明な部分があるが、降着円盤の不安定性やBLRの構造・リプロセスの効果、ダストによる遮蔽などを調べる上で変光に関する研究は重要。
従来の研究
測光データや変光パターンを利用して候補天体を選ぶという手法が取られていた。ここでは
turn-on(off) CLAGNの変光パターン=1(2)型AGNの変光パターン
という前提を利用。
本研究
変光パターンについてはCLAGNはいずれかのタイプに完全に切り替わっているわけではなく、中間の状態にある ということが分かった。
CLAGNが1型、2型のどちらかに完全に切り替わっている天体なのか、それとも中間の状態にあって降着率の穏やかな変動でBLが出現/消滅しているのか(はたまた、降着率変動以外にも原因があるのか)ということを区別するためには、
変光のタイムスケールやエディントン比の経時変化について更に調査することが必要。
Naked Type 2 AGN
Naked Type 2 AGNとは
X線と可視光でBLと著しいobscurationの両方がない2型AGN
統一モデルの2型とは異なり、そもそもBLRがないと考えられる。(降着率が低いor円盤の構造が異なる)
理論的にもエディントン比が低い(< 0.01)とBLRが作られないことがある。
CLAGNの中には2型になってheavy obscurationのサインを見せないものもあるので、CLAGNは一時的にNaked Type 2 AGNになったりしていて、BLが出現/消滅する境界のあたりで状態遷移している天体かもしれない。
特に、CLAGNにNaked Type 2 AGNが含まれていれば、低Eddington比AGNが見せるaccretioin physicsの良い研究対象になりうる。
なぜなら、降着過程に関してX線の変動は重要な指標になりうるが、normalな低Eddington AGNはトーラスによって遮蔽されてしまっていることが多く、変動のシグナルが抑制されてしまうから。
5. Conclusion
過去の論文からCLAGN152天体のサンプルを作成した。
redshift,BH massが同程度になるように1型AGN、2型AGN、EVQのcontrol sampleも作成して、これらとCLAGNの性質を比較した。(それぞれ90天体ずつ。CLAGNのライトカーブ全体とon-state,off-stateフェーズでの比較も行った。)
色等級関係については、CLAGNは状態のon,offに関わらず1型、2型の中間の性質を持っている。
SFについては、CLAGN,EVQは変光が1型・2型AGNより強く(Aが大)、時間経過に伴う等級差のばらつきの増加率がEVQや1型(1型は違う気が...)よりは穏やか(\(\gamma\)が小)
variability metric(\( \sigma_{\text{QSO}},\sigma_{\text{var}} \))については、CLAGN,EVQは1型AGNと2型AGNの中間あたりに分布。特にCLAGNはon-state,off-stateがそれぞれ1型AGN、2型AGNと同じというわけではないことが判明
以上の結果からCLAGNは単に1型と2型の間を遷移しているのではなく、AGNの1つの特別な活動状態を構成している可能性がある。
補足説明
Structure Function
\(\text{SF}_{ij,\text{ensemble}}\)のmi を\(m_i = s_i + \sigma_i\)(si はintrinsicなシグナル)とおいて中身を展開してやると、SFij,ensemble が純粋なシグナルの差の強さ であることがわかる。
Markov Chain Monte Carlo(MCMC)法
モデルパラメータの従う確率分布を求める手法。観測量へのモデルフィットの精度から確率的にパラメータの値を振って、各ステップごとにパラメータの値を記録してヒストグラムを作ると、パラメータの従う確率分布が得られる。
統計物理のIsing modelの数値計算のために開発された手法が統計学に応用されてMCMC法になったらしい。
以下の書籍の説明がわかりやすかった。