「銀河と銀河の衝突を捕える」

菅井 肇(京都大)、服部 尭(国立天文台)、河合 篤史(京都大)、 尾崎 忍夫(西はりま天文台)、 小杉 城治(国立天文台)、 他京都三次元分光器チーム、武山 芸英((株)ジェネシア)

私たちは、次世代を担う観測装置として京都三次元分光器第2号機を開発し、銀河と銀河の衝突の瞬間を捕えることに成功しました。この装置の特徴は、 銀河全体の光を一度に分析できることです。光を七色の虹に分けて銀河を分析することができますが、従来の手法だと一度に分析できるのは銀河のごく一部のみ でした。私たちの装置は、虫の複眼のように多数の小さなレンズが密集した光学素子を用いて銀河を細かく分割することにより、それぞれの場所での七色の虹を 同時に得ることができます。銀河全体の分析データを一度に得ることができるのです。この装置を用いることにより、銀河どうしが衝突して合体する瞬間を捕え ました。星間にただよっているガスが、銀河どうしの衝突によってダイナミックな運動を起こす様子や、新しく生まれてくる大量の星々の姿が明らかになりまし た。銀河の進化のしかたがみえてきたのです。このような、銀河を一度に分析できる観測手法をとりいれていくことは、現在の大望遠鏡時代の次にくるブレイク スルーとして世界的に期待されています。

左図: ハワイ大学2.2メートル望遠鏡に取り付けられた京都三次元分光器第2号機(黒くて見づらいですが。。すばるに取り付けて得られた成果もお楽しみに)。
中図: 白い等高線が、衝突している2つの銀河 (左上と右下:NGC 6090)を表している。カラーイメージの白っぽいところが電子を剥ぎ取られた(電離)ガスからの放射が目立つところ。そこでは大量の星々が生まれ、若い 星々が放射する紫外線によって、まわりにあるガスは電離されている。左下にある白い棒の長さは1キロパーセクつまり約3300光年の大きさ。
右図:ドップラー効果を利用して調べたガスのダイナミックな運動(青が私達に近付く向きへの運動、赤が遠ざかる向きへの運動を表す)。
Sugai et al., 2004, ApJ, 615, L89

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