より詳細は以下です。 この内容は日本天文学会(2004年9月)で発表されました。

「相互作用銀河NGC 6090の爆発的星形成領域における大規模スケールでの 急速な金属量増大」

銀河は誕生して以来、形態の変化を含む力学的進化をしているが、それと並んで銀河の進化を考える上でかかせないのが化学進化である。 星間ガスから恒星が誕生し、それら恒星からの 風や超新星爆発を通してのガスのフィードバックによって、 星間ガス中の金属(ヘリウムより重い元素)の割合が増加していく。 銀河全体の中では、中心付近ほどこれら重元素の割合が大きいことが知られている(Kennicutt et al. 2003; Considere et al. 2000)。 しかし、恒星内部における重元素合成の理論や重元素放出機 構が充分に解明されていないために、どれだけのタイムスケ ールでどのような重元素が放射され、撒き散らされていくの かはよくわかっていない。 一方、観測的にも、 キロパーセクという大規模なスケールで 重元素の割合が増加しているような 現場を空間2次元的にとらえることは難しかった。 今回、 NGC 6090という、爆発的な星形成が銀河中心 からずれたところで起こっている相互作用 銀河全体からの 可視光域スペクトルを調べることにより、この活発な星形 成がまさに重元素を増加させているところをつきとめた。 銀河の速度場を考慮して見積もった 爆発的星形成のタイムスケールは1千万年程度と短く、このような短い時間で重元素の合成とばらまきが効率的に行われていることを意味する。 重元素のうち、酸素については超新星爆発によるばらまきが 考えられるが、窒素については通常考えられてきた中質量星 からの質量損失ではばらまきが短期間では間に合わない。 大質量星からの恒星風や質量損失が大規模なスケールで効い ているのではないかと考えられる。 観測には、京都三次元分光器第2号機を用いた。

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