今世紀の天文学の発展は,天体現象を物理的に理解し,それがいかに,想像を越えて,活動的で変化に富んだものであるかを明らかにして来た過程であったと言える.自然の真の姿は,留まることを知らない活動,変化の中にある.本書の目的は,このような活動する宇宙の姿を流体力学や電磁流体力学的側面より理解しようとする試みの現状を紹介することである.
まず第1章は本書を読む上で基本となる物理過程について概説する.ついで第2,3章では星の活動性として,日震学および星の表面(磁気)現象に重点を置いて述べる.第4−6章では銀河の活動性として,星生成活動,銀河の渦構造,活動銀河核について議論する.第7、8章はさまざまな状況で活動性を担っている降着円盤について概説する.最後の第9、10章はジェットの観測および、輻射と磁場によるモデルを中心にホットな議論を展開する。執筆にあたってはいずれの章でも,初心者でも筋を追えるように配慮し,しかも最新の話題にも触れるように試みた.
本書の大きな特徴は,類書が見られないという点である.これだけ天文学の広い分野について,ある程度専門的な記述をした本は日本語の本としては初めてである.
第1章 天体活動現象 加藤正二
第2章 日震学 尾崎洋二
第3章 太陽表面現象 柴田一成
第4章 星形成 花輪知幸
第5章 銀河中心活動 岡崎敦男
第6章 銀河の渦状腕構造 沢 武文
第7章 降着円盤の世界 嶺重 慎
第8章 降着円盤における磁場 松元亮治
第9章 ジェットの観測と理論 福江 純
第10章 MHDジェットの理論 工藤哲洋・柴田一成
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