社会の興味と天文学者の興味がずれている

アメリカ研究留学時代にNASAの研究者達によるいくつかのパブリックアウトリーチボランティアに参加しました。日本は欧米と比べてパブリックアウトリーチと研究を、暗黙にアマチュアと研究者で住み分けている傾向が強いと感じます。これはお互いに利害が一致した結果なのですが、このことが社会に対しても良いとは限らないと感じます。結果、日本では研究者とアマチュアとの間の中間層とも言うべきプロの教育者の層が薄く、趣味人と一般人との知識差が広がっているように感じます。また、普段目にする天文学の知識の偏りがあります。本来趣味とは自分のためのものであって、パブリックアウトリーチがアマチュアの使命であってはいけないのだと思います。これは、他の物理分野を見れば明らかです。

設問とは関係ありませんが、「かぐやの地球の出」の映像、ビジュアル的には、また、社会的にはたいへん良い出来ですが、天文学的には非常にミスリーディングだったとおもいます。僕に言わせれば、まったく「NHK」的なセンス。そういったものには批判的な目も持っていたいと考えます。

研究者の普段の行動は研究内容とは別。いくら研究成果をマスコミが伝えたとしても、天文学者のイメージは変わらないと思う。天文学者の実態を正しく伝えるには、漫画やドラマで扱ってもらうほうが良い(「動物のお医者さん」のように)。

当然のことながら、「一般の人」といっても天文学への関心には大きな幅がある。非常に分散が大きい集団に対して平均でどうこう言っても仕方がない。我々がやるべきは「税金の無駄遣い」と言われないように、成果とその意義を発信して全体的な関心の底上げを図ることと、教育課程での天文学の近代化。

天文学者自身の研究スタイルが急激に変化しているのにメディアが対応していないのと同時に、研究者側も、そのイメージを変えようとしていないのが大きな原因

一般の人にとって、天文学研究という地味な活動の大部分は、つまらないか興味が無いもので、しかも、理解しようとしたとしても簡単に理解できるものではないことのため、非日常的な度合いが強くセンセーショナルな事柄に高い関心が集中してしまうせいではないかと考えている。

実生活にあまり意味が無いから

イメージしやすい内容のみが社会に伝わっているから

天文学者の活動が多様であり、なおかつそれをある程度正確、かつ分かり易く伝える情報(マンガ、ドラマ、小説なども含む)が少ない。

研究者集団として、マスコミ受けの良い研究分野の広報に努力が偏っているため。

天文学を伝えることと、天文学者のイメージを伝えることとは必ずしも同じではありません。一般には前者が強調されることが多いですね。あるいは、前者あっての後者でしょう。

天文学者に多様性があるため

天文学と惑星科学を同一視しているのが社会であり、一方研究者は同一視していないため。

天文学は教育や社会へのフィードバックは他の分野よりがんばっていると思うが、それでも社会に完全に正しいイメージを伝えるのは難しい。まあ、こんなものでは?

そういう天文学研究者もいるが、自分にはあてはまっていない。

知的好奇心の高い市民が多いとはいえない状況であるため

一般の人の定義はあまりに広義でありすぎる。

非常に難しい設問です。反映するのが正しい、という前提で設定されている、とよみましたが、マスコミに天文学研究成果が反映されなければならない、という発想自体が,ある思想を持ち込んでいます。大型プロジェクトに関わる人間として、その意味は十分に理解しますが、専門的な研究がマスコミに伝えられるまでの道のりは非常に長く、逆に最先端がそのような報道に載る、ということは研究とは別の意図、とか戦略がある、という風に考えます。若手研究者がこのような話題を議論するにいたった、この20年くらいの日本の天文学状況を良く反省する必要があるのではないか、と強く感じます。

専門的すぎ、一般的につたわらない。

職業とはみんなそう言うものであろう。表の顔(一般的に見えているもの)と、実際の作業がある。これはこれで、あるべき姿ではないか?天文学者という言葉は、一般人にとっては、アマチュア天文ファンを含む趣味人てきな側面がつよいのではないか?悲観はしていない。我々も銀行のディーラーが実際に何をしているのか、知らないではないか?要は、どの側面を「見せたいか?」では?私は装置開発の現場などを見せたいです。 yes/no的な設問にはあまりなじまない感じもします.現実がそれなりに 反映されているようにも思いますが,よく取り上げられる分野が偏って いるのも確かです.よく取り上げられる分野=天文学と認識されていれば 実態をあまり正しく反映していないかも知れません. 天文に関する教育がしっかりしていないため,もあるのでしょうが, 天文に限らず科学への関心そのものが薄いのでしょうね.

天文学者の社会的な営み(研究以外のことをたくさんやっている)はなかなか外に伝わらない。

天文学者に対する固定観念ができている。

ごく一部をのぞき研究者という仕事が理解されていない気がする。

社会は天文学に興味は持つてゐるものの、専門家とは興味の対象や背景となる知識が異なるため、伝はり易いものしか伝はらず、イメージと現実にずれが生ずる。

一般の人の興味とはその程度。

マスコミは熱心ではないとは言いませんが、不正確な伝え方をしているなと感じることはあります。この数年はずいぶん改善されてきている感がありますが。

天文学と実際の生活にあまり関係がないため

そんなに正確な知識を要求することは無理なような気がします。われわれでも他分野に対しては似たような理解にとどまっていることが多くあるように思います。話を聞いてもすぐに忘れるものですし、要は、話を聞いたその瞬間に面白いと思うかどうかが問題なんじゃないでしょうかねぇ。

専門家が実際に何をしているのかは、専門外の人にはよく分からないのは、世の常だから。

天文学と地球惑星科学の境界が曖昧になっている

自然科学全般において研究者がどういう存在であるのか認知されていないため。

マスコミは大衆受けしそうな内容のみをかいつまんで発表しているし、天文学者もマスコミや大衆が理解できる内容を選んで公表している。


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