検出器の試験:線型性評価

1回目:2008.05.13
2回目:2008.07.24 => やり直し:2008.11.1〜


検出器の線型性の評価をします。
ランプサンプルはノイズ評価2(こちら)で用いたものと同じ「約16秒間隔で25回積重ねを20回繰り返し」を用いています。

フレーム全体としての線型性の評価

線型性は以下のようにして行います。
プロットの縦軸はは1次式からの残差をカウント値で割った値をとっています。1次式は20回分のテストから共通の傾きを求め、切片を各テスト毎にフィットし直しました。

結果の図は以下のようになりました。
プロット点の違いはテスト回数の違いを表します。
各テストに用いた切片と傾きは以下のようになりました。

回数傾き切片回数傾き切片
125.8232.4294410125.823-367.129
-255.32611-184.756
-287.39712-288.38
-349.11413-370.606
-236.16614-164.2
-204.58215-435.861
-379.3716-435.861
-286.72717-275.588
-272.64818-158.894
-366.89519-442.7

グラフから残差は1%の範囲に収まっていることがわかります(最初の読み出しの方で大きくずれているのはカウントが線形になるのには足りていないからです)。よって、線形性はよく、非線型補正をしなくても充分だという結果が出ました。

各ピクセルごとに見た線型性の評価

全体としては線型性が充分あったのですが、今度は各ピクセルごとの線型性の評価をします。
線型性とは、時間xに対して、カウント値yが
y = c*x + d
とあらわされることで、この式からのずれがカウント値に対して何%かを次のようにして評価を行いました。

ヒストグラムは以下の様になりました
縦軸は全体に対する割合で表わしています。
020フレームから025フレームにかけて徐々に残差が大きくなっています。全体的に線型性が5%以内に収まっているもの(非線型補正をしなくてよいと思われるもの)は約半数で、10%以上のずれがあり非線型補正を行うべきピクセルは約3割となりました
全体としては、非線型補正が必要ない、という結果でしたが、個々に見ると非線型補正が必要なピクセルが存在することが分かりました。

但し、個々のピクセルについて線型姓を調べ、非線型補正をするには背景光が安定している必要があります。
ですが、現在はリミットセンサーから出る赤外線を背景光として利用しているため、光源はそれほど安定はしていません(下の図は典型的な1フレーム(左)とランプサンプルで得られたゲインの図(右))。

最後に、非線型性のヒストグラムにポワソンノイズの影響がどのくらい入っているのかを検証しました。
まず、010から019フレームに対しても上と同様に非線型性からのずれをヒストグラムに表します。
  
左から順に011、016、019フレームの1次式からのずれに対するヒストグラムです。これをみると、徐々にwing が広がっている様子が見られます。
また、あるカウント値に対するポワソンノイズ分布がどうなるかも調べました。10000から60000カウント[ADU]に対して、カウント地の何%のノイズが入るのかをヒストグラムに表しました。
  
  
グラフから、1次式からの残差に対してポワソンノイズの影響はほとんどなく、ヒストグラムは非線型性を表していることが分かりました。

更に残差の絶対値を取らずに非線型性を評価しました。
手順の4項目目において、サチったピクセルを除去するマスクを2種類作成し、全て1E+6カウントになるようにします(サチったピクセルに0をかけて、1E+6をたす)。この状態で-100 から100 までにヒストグラムを作成しました。但し、20番目のテストに対してのみ評価を行います。(データ転送の制約による)
017 から015 フレームまでのヒストグラムは以下のようになりました。
  
  
  
 
サチってくると、徐々にゲインが減って頭打ちになるので、カウント値の1次式からの残差は負になります。負の方にwing が広がっているのはその為です。
正の方側にある残差は、fit した1次式の誤差、統計誤差、ポワソンノイズなどが含まれていると考えられ、これは正負対称であると考えられます。よって、大まかに言ってヒストグラムの青い部分が、非線型性を表していると考えることができます。
この結果から、やはり、10%以上の残差があるものは2割以上あり、非線型補正が必要であることが分かりました。



各ピクセルごとに見た線型性の評価 その2

7月に、常温でランプサンプルした60回×3セットのデータを使って、上記と同じ方法で線型性の評価を行いました。1次関数へのfitting 方法に不備があったのでやり直しました。
<p> バッドピクセルは、
にどれか一つでも当てはまるものとし、3セット分の『or』をとっています。

1次式は最小二乗法を用いて、傾きと切片を求めました(ここがやり直した部分)。もともとのカウント値から。求めた1次式を引いた残差は以下のようになりました。
最小二乗法に用いたフレームは004 -- 030 の27フレームです。
カウント値が高くなると残差が1[%]前後にまで大きくなるようです。

また、000、010、020、030、040、050、060フレームの残差のヒストグラムは次のようになりました。
  
  

これに補正をかけると、1次式からの残差は次のようになりました。
1次式からの残差がカウント値の累乗になると仮定し、その最適な指数と係数を求め、係数を最小二乗法で求めています。指数は2、3、4、5乗を考えました
4乗もしくは5乗で補正するのが最も良いと考えられます。

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