センサー制御実験 4


非接触式センサ(シグマ光(株)製、ここ)で、アクチュエータ駆動中の安定性を測定する為に、センサの安定性を試験します。
トラスの1/6が京都に来たので、それを用いて試験します。

  1. 2009.04.16 -- ひとまずセンサの状態をみる(go)
  2. 2009.05.19 -- 05.29 アクチュエータのパルス数を補正する(go)
  3. 2009.05.30 -- 06.02 レーザー変位計の補正表を作成しなおす(go)
  4. 2009.06.02 -- 100um3つ同時に動かして早く収束するか(go)
  5. 2009.07.27 -- I-Fizeau干渉計(go)
  6. TD 環境補正(go)

ひとまずセンサの状態をみる

センサとアクチュエータの配置図は以下の通りです。

てこ機構部分が取り付けられたのでセンサが安定するまで定点サンプルを行います。
10000回読み出しに約4時間かかります。(画像はクリックで拡大)

最初のカウント:
センサ1:107891.5
センサ2:106348.1
センサ3:100895.0


取り付けてから4時間くらいは接着剤が乾いたりで緩やかにカウント値(測長値)が変化しています。
カウント−即長値のcalibration や環境要素との関係はこれからの課題です。

さらに1週間サンプルを続けました。

最初のカウント:
センサ1:107954.6
センサ2:106497.4
センサ3:100803.9

補正したやつ

最初のカウント:
センサ1:107974.9
センサ2:106748.6
センサ3: 99705.3

圧力、湿度、気温はそれぞれ次の通り。
   

センサ3の調子が悪いので、ヘッドを交換して試験(その間に諸々の作業あり)。

最初のカウント:
センサ1:106224.0
センサ2:103931.4
センサ3:103266.8

補正したやつ

最初のカウント:
センサ1:106068.1
センサ2:103854.3
センサ3:102028.8

圧力、湿度、気温はそれぞれ次の通り。
   

センサ3の調子は改善されない。ヘッドが原因かの判別の為、CH2とCH3の読み出し口を交換して試験。

最初のカウント:
センサ1:106274.3
センサ2:103980.8 但し読出しはCH3
センサ3:103436.8 但し読出しはCH2

センサ3の調子が悪いので、原因はヘッドにある。

ヘッドの問題か取り付け方の問題か(センサのある位置など)を判別する為に、CH2とCH3のセンサを付ける位置を交換して試験。

最初のカウント:
センサ1:105878.9
センサ2:108107.9 元センサ3
センサ3:107079.7 元センサ2

元センサ3の調子は良くなり、元センサ2の調子が悪くなった。それでも元センサ3の調子は少し悪い?原因は取り付ける位置にあるようです。ヘッドについているケーブルに負担がかからないように固定するのですが、その向きや位置に注意しなくてはいけないようです。

圧力、湿度、気温はそれぞれ次の通り。
   

アクチュエータのパルス数を補正する

アクチュエータにかける負荷ねじのバネ係数が変わったので(以前はねじを半分に切っていました)、ここと同様にアクチュエータのパルス数を補正し直します。

アクチュエータには個性があるので全て同じパルス数で補正できるとは限らず、結局は、try and error になってしまいました。
補正は100パルスごとの、ストローク200,000パルスで往復時にずれが生じないように行います。また、補正は5パルス単位で行っています(後にフィードバック制御をするので1パルス単位の補正は重要でない??)
補正前の様子は次の通り。左からアクチュエータ1、2、3。
   
補正後の様子は次の通り。左からアクチュエータ1、2、3。
   
アクチュエータ1の補正は5パルス単位では完全には出来ていません。それぞれの補正数は以下の様になりました。

アクチュエータ1アクチュエータ2アクチュエータ3
上り+35+35+30
下り+25+30+25

レーザー変位計の補正表を作成しなおす

レーザー変位計の補正範囲を拡げておきます。
方法は(ここ)と同じです。
改めて補正した結果の図を載せます。横軸は補正前の位置[um]、縦軸は補正量[um]です。

100um3つ同時に動かして早く収束するか

3つアクチュエータを同時に動かして、100um動かすことができるか確認です。
動かしたい位置にどのくらいで収束するかを見ます。
次のようにして試験を行います。
  1. レーザー変位計のパルス-位置関係から100um動かすのに必要なパルス数を求める。
  2. センサの現在のカウント値を調べる。
  3. センサのパルス-カウント値関係から100um動かしたときのカウント値を調べる。
  4. 必要パルス数の9割くらいで動かし、現在のカウント値を見て目標位置に必要な駆動量を1.--3.と同様に調べる。
  5. 3.を繰り返す。
駆動パルス数を求めるのに用いるのは、レーザー変位計のパルス-位置関係から得た傾き[um/pulse]です。
また、手順2.、3.の模式図は右図のようになっています。センサのパルス-カウント関係を用いて現在の位置から100um動かしたときの位置(カウント値)をそれぞれのセンサに対して求めます。狙った位置に±50nmで収束できるのが目標なので、センサの目標カウント値は右図の茶色部分の間にある範囲となります。

両端100,000パルスずつ程度除いて、アクチュエータ1、2、3のフルストロークを取るとそれぞれ次の通りのようになります。これが試験に用いるパルス-カウント値/位置関係になります。
上昇時:左からアクチュエータ1、2、3、レーザー変位計。
      
下降時:左からアクチュエータ1、2、3、レーザー変位計。
      

(プログラムの大幅書き換えを行ったら思いがけず時間がかかりました。)
試しに必要パルス数の50%でアクチュエータを動かしてみると次のようになりました(左から1回目、2回目……)。動かすのは10回までとしています。また、目的位置からの誤差は1[um]としています。
赤色:センサ1緑色:センサ2青色:センサ1紫色:レーザー変位計(右の軸)とし、水平の線はそれぞれのセンサの目標位置になります。上下の薄い線は誤差範囲。
       

目的位置からの誤差が0.1[um]というのは始めから厳しいので、5[um]にして試験を行います。また、この試行から

傾向があるので、これらに注意して早く(速く?)収束できるようにしていきます。

(ちょっとプログラムのミスを修正した)
必要パルス数の50%で駆動していくと以下のような結果になりました。
       
lkg: 101.130[um]移動    lkg: 97.601[um]移動     lkg: 94.183[um]移動     lkg: 94.910[um]移動     lkg: 95.526[um]移動

収束するのに5〜6回動かす必要がありました。

1回に動かす量を必要パルス数の70%にすると次のような結果になりました。
       
lkg: 99.092[um]移動    lkg: 99.044[um]移動     lkg: 95.483[um]移動     lkg: 95.375[um]移動     lkg: 95.759[um]移動

収束するのに3〜4回動かす必要がありました。

1回に動かす量を必要パルス数の80%にすると次のような結果になりました。
       
lkg: 102.744[um]移動    lkg: 100.843[um]移動     lkg: 97.247[um]移動     lkg: 92.901[um]移動     lkg: 98.156[um]移動

収束するのに2〜3回動かす必要がありました。

1回に動かす量を必要パルス数の95%にすると次のような結果になりました。
       
lkg: 103.421[um]移動    lkg: 100.524[um]移動     lkg: 97.463[um]移動     lkg: 97.281[um]移動     lkg: 98.448[um]移動

収束するのに2回動かす必要がありました。
=>ここまでの結果:100[um]を5%の精度(±5[um])で動かすのは必要駆動量の95%で動かしていけばよい

続いて、制度を1%に、つまり±1%の精度で動かせるように調整します。
1回に動かす量を必要パルス数の97%にすると次のような結果になりました。
       
lkg: 105.042[um]移動    lkg: 101.693[um]移動     lkg: 97.685[um]移動     lkg: 97.620[um]移動     lkg: 99.005[um]移動

4回目、5回目のみ2回で収束し、1回目、3回目は超過、2回目は未到達となりました。

1回に動かす量を必要パルス数の96%にすると次のような結果になりました。
       
lkg: 105.347[um]移動    lkg: 102.634[um]移動     lkg: 99.160[um]移動     lkg: 97.241[um]移動     lkg: 98.315[um]移動

2回目、4回目、5回目は2回で収束し、1回目、3回目は超過となりました。
95%では2回で±1[um]の範囲には到達していない様子から、常に同じ駆動では2回で目的位置に到達することが出来なさそうです。
また、レーザー変位計の読み出し値から、デジタルセンサの駆動量のばらつきが伺えます(デジタルセンサで収束していてもレーザー変位計で収束していなかったり、逆もある。つまり、傾きが異なっているから)。この為、センサごとに駆動量を変える必要があります。
=>ここまでの結果:100[um]を1%の精度(±1[um])で動かすのは単純な駆動では不可能

解決策としては、

大きく動かすときに別に動かすと傾きも大きくなるので、1回目は3つ同時に動かし、2回目は別に動かしてみます。

最初は全て同じパルス数として必要パルス数の96%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の80%で駆動すると次のような結果になりました。
       
lkg: 103.312[um]移動    lkg: 100.506[um]移動     lkg: 97.730[um]移動     lkg: 97.853[um]移動     lkg: 99.096[um]移動

収束するのに3〜4回動かしました。

最初は全て同じパルス数として必要パルス数の98%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の80%で駆動すると次のような結果になりました。
       
lkg: 103.650[um]移動    lkg: 100.629[um]移動     lkg: 97.962[um]移動     lkg: 96.998[um]移動     lkg: 99.068[um]移動

収束するのに2〜3回動かしました。

最初は全て同じパルス数として必要パルス数の98%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の90%で駆動すると次のような結果になりました。
       
lkg: 102.631[um]移動    lkg: 100.552[um]移動     lkg: 97.429[um]移動     lkg: 97.797[um]移動     lkg: 98.664[um]移動

収束するのに2〜3回動かしました。

大体2回程度で誤差範囲内に収束してきたので、誤差を0.1%(±0.1[um])として試験していきます。
※但し、デジタルセンサでで収束しているのにレーザー変位計での誤差は反映されていない件については保留(試験時間は1回2、3分程度なので変位系のドリフトとは考えにくい)。
最初は全て同じパルス数として必要パルス数の98%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の90%で駆動すると次のような結果になりました。
図は、誤差範囲が見にくい為、0回目(スタート地点)のデータを省いています。
       
lkg: 102.850[um]移動    lkg: 99.665[um]移動     lkg: 98.460[um]移動     lkg: 99.534[um]移動     lkg: 98.992[um]移動

収束するのに3〜4回動かしました。

最初は全て同じパルス数として必要パルス数の98%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の92%で駆動すると次のような結果になりました。
       
lkg: 103.662[um]移動    lkg: 100.914[um]移動     lkg: 97.899[um]移動     lkg: 98.034[um]移動     lkg: 100.637[um]移動

収束するのに3〜4回動かしました。

最初は全て同じパルス数として必要パルス数の99%、それ以降はそれぞれのセンサから求めた必要パルス数の92%で駆動すると次のような結果になりました。
       
lkg: 103.059[um]移動    lkg: 99.508[um]移動     lkg: 97.695[um]移動     lkg: 98.531[um]移動     lkg: 99.131[um]移動

収束するのに3〜4回動かしました。
ここまで、全体を同じ割合で動かしてきていますが、収束具合はあまり変わりません
以降、1)もっと割合を変える、2)センサによって動かす割合を変える
の2点に関して試験を行います。

1)、2)どちらに関しても収束が早くなることはないようです(図は煩雑になるので割愛)。
結局、100umと大きく動かすときは、1%の精度が限界のようです。
最初に動かすときの量が大きいので、細かい調整が難しいようです。また、センサのふら付きの影響も小さくはないので、もっと精度を上げる為には、センサの読み出し回数にも工夫が必要です。

2009.06.22
ここまでの結果:

     
…CH1の調整がもう少し必要か。

引越し作業の為2週間くらい中断。
センサ3が駄目になったので、交換して、再度インダクタンスセンサのパルス-カウント値関係を求め、上昇運動の様子を確認。
作り直した図は以下の様になった。
上昇時:左からアクチュエータ1、2、3、レーザー変位計。
   
下降時:左からアクチュエータ1、2、3、レーザー変位計。
   

CH1のアクチュエータについて、カウント値65000付近で段差が生じている。再現性があるので、センサのとびと言うよりは機械的なものか。

大きく駆動する場合は以前と同じで1回目99%、2回目95%で、±1[um]の精度に収まることを確認。
小さく駆動する場合は調整中
※CH1のセンサ(orアクチュエータ)は移動した後に落ち着くまで時間がかかる(惰性で10nm程度(10カウント@64000)動く)次の読み出しまで動いているようなので40秒くらいは動く。

I-Fizeau干渉計

セグメント同士の段差をFizeau干渉計を用いて測定し、アクチュエータの動きの再現性を調べます。
まずは、扇型セグメントの上に被検面を置いてアクチュエータの上昇・下降時に、セグメントの傾きが保たれるようにします(アクチュエータは1往復後に同じ位置に戻るよう設定しましたが(こちら)、更に設定をし直します)。
[1]1000パルス上昇 ==> [2]9000パルス(のべ10000パルス)上昇 ==> [3]10000パルス下降させて、干渉縞の様子をみました。
以下はスクリーンショットで取った画面です。左上から、初期位置、[1]の後、[2]の後、左下から[3]の後、初期位置と同じになるように調整した後の画像です。初期位置の画面で、緑の四角が干渉縞、赤い四角がレーザー変位計とインダクタンスセンサの値です(他のものも同様)。
   
 
上昇時には傾きが変わらない(縞の様子が変化しない)ことが分かります。
下降させると、傾きが変化しました。インダクタンスセンサの値から、CH1と、CH2が元の位置には戻っていないことが分かります。
Ch1は6000パルスくらい、CH2は2000パルスくらい更に下降させると元の位置に戻りました。


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