チェックボックスアイコン 手順7: cosmic ray除去

cosmic ray (宇宙線イベント) を除去します。 cosmic rayが気にならないようでしたら、次の手順: 8. hydraパッケージのための準備に進んでください。 もちろん汎用のcosmic ray除去ソフトウェア (IRAFのcosmicrays、LACosmicなどが有名) を使っても構いませんが、binningしたフレームだとファイバー間隔が約3 pixelと近く、背景光強度が大きいなどの悪条件が重なって、cosmic ray検出が難しいようです。

KOOLS-IFU用にcosmic ray除去ソフトウェア (正確にはcosmic ray検出スクリプトと補間スクリプト) を2種類作りました。 1つは全体のカウント値がほぼ変わらない2フレーム (seeingや天体位置がほぼ同じもの) の差分を使ってcosmic rayを検出するもの、もう1つは天体フレームをフラットフレームで割った画像上でcosmic rayを検出するものです。 後者の方法では天体フレームが1つしかなくてもそれなりにcosmic rayを検出できます。

cosmic ray検出のしきい値を下げるほどcosmic rayは検出できますが、下げ過ぎると夜光輝線や天体輝線もcosmic rayと判定されてしまいます。 試行錯誤して、確実に天体輝線がcosmic rayと判定されない程度にしきい値を下げるのが良いでしょう。

以下はコマンド例です。

#KOOLS-IFU用オリジナルソフトウェアを使用
#コマンド名の前に、ソフトウェア置き場のパスを適宜追加すること

#cosmic ray検出スクリプト (2フレーム差分版)
#第1、2引数が入力天体フレーム名、第3、4引数がcosmic ray位置リストが書きだされるファイル名
#第5引数はcosmic rayによるカウント値増加の最低値で、cosmic rayによるカウント値増加がこれ以下であれば、cosmic rayと判定しない
#cosmic ray検出は、中心の1 (2)pixelに対して、周りのpixel値を使ってsigma clippingを行うが、第6 (7)引数は、sigma clipping時のしきい値となるsigmaの値
#下の例より第5引数を下げていくと、cosmic ray除去率は上がるが、夜光輝線が落ちたりする
#出力ファイルは上書きされる

FiberDetectCosmicDiff kls036564-background.fits kls036565-background.fits cosmic-036564.dat cosmic-036565.dat 100 6 12

#cosmic ray検出スクリプト (天体フレームとフラットフレームを使用)
#第1引数が入力天体フレーム名、第2引数が欠損領域を補間したフラットフレーム名、第3引数がcosmic ray位置リストが書きだされるファイル名
#第4引数はcosmic rayによるカウント値増加の最低値で、cosmic rayによるカウント値増加がこれ以下であれば、cosmic rayと判定しない
#cosmic ray検出は、中心の1 (2)pixelに対して、周りのpixel値を使ってsigma clippingを行うが、第5 (6)引数は、sigma clipping時のしきい値となるsigmaの値
#下の例より第5引数を下げていくと、cosmic ray除去率は上がるが、夜光輝線が落ちたりする
#出力ファイルは上書きされる

FiberDetectCosmic2 kls036564-background.fits flat-no5-osr.fits cosmic-036564.dat 100 7 15

#ここからはどちらの検出アルゴリズムでも共通項目
#cosmic ray位置ファイルを編集することがあるかもしれないので、オリジナルファイルは残しておく
rm -f cosmic-036564-edit.dat
cp cosmic-036564.dat cosmic-036564-edit.dat
#cosmic rayの影響を受けたpixelをx方向に補間するスクリプト
#第1引数が入力天体フレーム名、第2引数が出力フレーム名、第3引数がcosmic ray位置が書きだされたリストファイル名
#同時に差分画像も出力される
#差分画像のファイル名は、第2引数の頭に"diff-"が付いている (下の例なら"diff-kls036564-cosmic.fits")
#出力ファイルは上書きされる
FiberRejectCosmic kls036564-background.fits kls036564-cosmic.fits cosmic-036564-edit.dat
#下図は上記コマンドでの実行例
#上パネルがcosmic ray除去前、下パネルが除去後
#cosmic rayがほとんど落ちている一方で、画像中央付近の夜光輝線まで落ちてしまっている

cosmic ray除去前
cosmic ray除去後

#cosmic ray位置ファイルを手で修正することが可能
#フォーマットは、1列目がcosmic ray開始x座標、2列目がcosmic ray終了x座標、3列目がcosmic rayがあるy座標
#コメントアウト記号は#で、#より後の文字は無視される
vi cosmic-036564-edit.dat
FiberRejectCosmic kls036564-background.fits kls036564-cosmic.fits cosmic-036564-edit.dat

以上のコマンドを各フレームに対して行います。

cosmic rayを除去したフレームのリストを作っておきます。 作業ディレクトリにある、kls(6桁の数字)-cosmic.fitsで終わるファイルが全てcosmic rayを除去したフレームであれば、以下のコマンドでリストができます。

ls kls[0-9][0-9][0-9][0-9][0-9][0-9]-cosmic.fits > kls-cosmic.list