データの分割取得

これまでたびたび見られた、「センサーの温度・湿度特性の逆転」は、「データ取得を開始する時点、または終える時点」で起きるのではないかという仮説を立てた。これを検証するために、短い間隔(1000サンプリングごと)でデータ取得を行い、それを100回繰り返すという方法で100000サンプリング分のデータセットを取得した。その結果を下に示す。

分割取得したデータ

このデータを見ると、デジタルセンサー2(下段緑)の特性が、他のものと比べて最初から最後まで逆転している。(これは前回までの測定と同じである)
しかし、測定と測定の間での特性の逆転現象は見られなかった。よって、上で考えた仮説は誤っていると考えられ、特性の逆転の原因は不明である。

新しいタイプのノイズ

今回取得したデータの前半部分には、今まで見られなかったタイプ のノイズが発生している。拡大図を以下に示す。

静穏時
静穏時

ノイズ(タイプ1)
ノイズ(タイプ1) ノイズ(タイプ1)

ノイズ(タイプ2)
ノイズ(タイプ2) ノイズ(タイプ2)

ノイズ(タイプ1)の特徴は

  1. 温度、湿度がほぼ一定でも発生する
  2. タイムスケールは 〜100サンプリング(〜10分)
  3. 大きさは 〜50nm
  4. 変動が終わったらほぼ元の値に戻る
  5. センサー2、3、4(緑、青、紫)が同じ特性を示し、1(赤)が逆の特性を示す
である。特に5.の性質が奇妙で、ノイズの特性は温度・湿度特性とは関係が無いようである(温度・湿度との関係では、2(緑)が他のものと逆の特性である)。また、センサー2(緑)、3(青)は別々の治具に取り付けられているにも関わらず、ほとんど同じ変動をしている。

ノイズ(タイプ2)の特徴は

  1. 温度、湿度がほぼ一定でも発生する
  2. タイムスケールは 〜数サンプリング(<1分)
  3. 大きさは 〜50nm
  4. 変動が終わったらほぼ元の値に戻る
  5. センサー2、3(緑、青)が同じ特性を示し、4(紫)は2、3と同じだったり逆だったりする
  6. センサー1(赤)はこのタイプの変動がほとんど見られない
である。タイプ1との違いはタイムスケールと、センサー4(紫)の特性である。

ノイズの原因調査

人為的にノイズを乗せてみる

上で示したノイズの原因は、「電源に乗ったノイズ」または「GNDに乗ったノイズ」ではないかという仮説を立てた。その検証のために電動ドリルの作るノイズを利用して、

  1. センサーの電源ケーブルでループを作り、そこで電動ドリルを回す
  2. GNDケーブルでループを作り、そこで電動ドリルを回す
  3. 1m程離れたところで電動ドリルを回す
という実験を行った。その結果を下に示す。

人工ノイズ

電動ドリルを回した時間は数サンプリング〜500サンプリング程度の時間である。それぞれのノイズを与えたとき、測定値に変動が出ることはあるが、ドリルを回していないときでもノイズは出ている。よって上の仮説はこの実験からでは検証できていない。
また、大学内で工事を行っていて、それが原因で電源にノイズが乗るのではないかとも考えられるが、上の図で50000〜70000サンプリングの期間は土曜日と日曜日にあたり、工事は(おそらく)行われていないはずであるがノイズが発生している。

センサーケーブルの束ねかた

前回ジャンプの対策として、センサーケーブルをしっかりと固定する、という方法を発見したので、上2つの測定ではセンサーケーブル4本を束ねて近くの構造物に固定してある。しかし、センサーヘッドに近い細くなっている部分のケーブルは、ノイズ対策があまり取られていない可能性があるので、この部分のケーブルを束ねることがノイズの原因かもしれない。
そこで、測定の途中までは今まで通りケーブルを束ねておき、途中で細くなっている部分のケーブルを4本バラバラにするという事を行った。これによって前半でノイズが生じ、後半で生じなければ、ケーブルを束ねたことが原因ということができる。その結果を下に示す。

ケーブルの束ね方の変更

図はセンサー2のものである。53000サンプリング付近のジャンプの時点で束ねかたを変えた。しかし、今回の測定中には前半も後半もノイズが発生しなかった。そのため、ノイズの原因はやはりわからないままである。

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21/Jul/2006. sakai@kusastro.kyoto-u.ac.jp