目的

分割鏡制御のためには各分割鏡の位置を50nmの精度で制御する必要がある。しかし、その鏡のずれを検出する非接触センサーの測定値は、温度、湿度などの条件によって実際の値からずれてしまう。目標とする精度を達成するために、測定値の補正を試みる。

実験に使用したセンサーは、シグマ光機のデジタルセンサーDS-H10(以下、デジタルセンサー)と、テクノシステムの静電容量センサーATS-1007A(以下、静電容量センサー)である。また、温度の計測には九州計測器のてんぷらんを、気圧、湿度の計測にはDelta OHMのmultifunction meterDO9847を用いた。

測定結果

デジタルセンサー1個、静電容量センサー4個を治具に固定して安定性を調べた。また、同時に温度、湿度、気圧を測定した。

測定データ

  1. 上段
  2. 中段
  3. 下段

デジタルセンサーは湿度、温度に相関が見られる。静電容量センサーは湿度と逆センスの強い相関が見られる。また、温度との逆センスの相関も見られる。

絶対水蒸気量による補正

デジタルセンサーも静電容量センサーも、測定ヘッドと測定物の間の静電容量を測定することで距離を求めている。そのため、ヘッドと測定物の間に極性分子である水分子が存在すると、静電容量が変化して距離の誤差となって表れる。

温度t[℃]での飽和水蒸気圧PS[Pa]は

湿度をh[%]とすると、水の分圧p[Pa]は

全圧をP[Pa]とすると、絶対湿度H[kg(H2O)/kg(dry air)]は

乾燥空気の質量m[kg]は、

よって、水の質量(∝数)は、距離をd[m]とすると

Nは水分子の数に比例する量である。

ここで各時間毎のデータについて温度t、湿度h、距離dからNを計算し(ただしdは各センサーの最初の値を用いた)、Nを横軸に、センサーの読みを縦軸にグラフを書く。

Nとデジタルセンサー
Nと静電容量センサー1 Nと静電容量センサー2

Nとセンサーの読みには1次関数の関係が見られるので、最小二乗法によって1次関数の傾きを求め、その分データを補正してやる。補正前と補正後のセンサーの値をプロットする。(左が補正前、右が補正後)

補正前 補正後

温度による補正

絶対水蒸気量による補正の後のセンサーの値と温度の関係をプロットする(見易くするために温度には適当な定数を掛けてある)

温度とセンサーの関係

デジタルセンサーには温度と同センスの相関が、静電容量センサーは温度と逆センスの相関が見られる。特に、静電容量センサーの値の動きは治具の熱膨張とは反対向きであり、動いた値も熱膨張より数桁大きいので、これらの相関は治具の熱膨張によるものではなく、読みだし回路中の抵抗の温度変化由来のものと考えられる。

温度を横軸、センサーの値を縦軸に取ってプロットする

温度とデジタルセンサー
温度と静電容量センサー1 温度と静電容量センサー2

絶対水蒸気量のときと同様に、1次関数を最小二乗法でfittingし、傾きを求めてその分データを補正した。

デジタルセンサーの補正
静電容量センサー1の補正 静電容量センサー2の補正

まとめ

補正前補正前
補正後絶対水蒸気量での補正
さらに補正後絶対水蒸気量+温度での補正

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20/Dec/2005. sakai@kusastro.kyoto-u.ac.jp
17/Jan/2006 一部改定