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FastSound (ファストサウンド)プロジェクトについて
〜史上最遠方の宇宙の立体地図から、宇宙の加速膨張の謎に迫る〜

この三次元地図の動画はこちら

FastSound プロジェクトは、京都大学、東京大学、オックスフォード大学などの研究者からなる国際研究チームがすばる望遠鏡の「戦略枠プログラム」として進めている、宇宙論研究を目的とした遠方宇宙での銀河分光サーベイです。分光サーベイとは、銀河一つ一つのスペクトル(光を波長ごとに分けたもの)を測定していくもので、スペクトルから銀河までの距離が割り出せます。つまり、天球のある領域を画像として撮影する撮像サーベイが二次元の分布しか教えてくれないのに対し、分光サーベイでは奥行き方向の距離情報を加えた、三次元地図が作成できるのです。

FastSound は、広視野を確保できる主焦点に観測装置を設置できるという、すばる望遠鏡の強みを生かしたファイバー多天体分光器FMOS を用いて観測を行っています。 約30平方度 (満月およそ 150 個分ほど)の領域で約100億光年以上彼方にある5000個の銀河までの距離を測定します。 光の速さが有限であるため、宇宙では遠方を見ると言うことはすなわち過去を見ることです。 FastSoundは距離にして史上最遠方、すなわち最も昔の宇宙、宇宙の年齢がまだ50億年以下(現在は137億年)の時代の大規模構造の立体地図を描き出す計画です。 このような宇宙の三次元地図は、50億光年ぐらいまでの距離ではスローン・デジタルスカイサーベイ(SDSS) などのプロジェクトで精密に観測が行われていますが、100億光年より向こうではまだ例がなく、FastSoundが世界で初めて切り込むものです。 FastSound は 2012年春に開始され、2014年春まで観測が続けられる予定です。

実は、FastSound の最終目標は単に宇宙の地図をつくることではありません。 現在、宇宙の膨張が加速していることが知られており、現代宇宙論の最大の謎とされています。 この加速の原因として、未知のエネルギーである「ダークエネルギー」が関与していることや、重力の基本理論である一般相対性理論が宇宙の大きなスケールで破綻している可能性などが考えられています。 FastSoundの主要科学目標は、得られた大規模構造の中での銀河の運動を精密に測り、大規模構造の成長速度が一般相対性理論で予言されるものと一致しているかどうかを検証することです。 このような宇宙論の精密観測により、宇宙の加速膨張の謎がだんだん明らかになってくると期待されています。

このページの最初に示した図は、FastSound の観測予定の1/4程度の領域で観測された 1,100 個あまりの銀河による三次元地図です。 天球面方向に6億光年四方、奥行き方向に20億光年に渡る領域で描き出された90億年前の宇宙の大規模構造は、現在と比べるとまだそれほど発達していませんが、現在の宇宙につながる原始の構造と言えます。 銀河の色は星形成率(年間あたり、何太陽質量分の星が新たに生成されているか)を示しています。 また、銀河の数密度に対応して、背景を青く色づけしています。 宇宙にはダークマター(暗黒物質)が存在し、銀河の密度より10倍ぐらい高い密度を持っていて、宇宙の大規模構造もこのダークマターの重力により形成されると考えられています。 もしダークマターが見えれば、このように見えることでしょう。 上部に例示されているのは五つの銀河の画像と赤方偏移 (z)です。 下部に示した地球やSDSS銀河マップとの位置関係をみると、FastSound が非常に遠方、すなわち昔の時代の宇宙三次元地図を描き出したことが分かります。

画像と動画データ

youtube での動画再生

この画像、動画の著作権は国立天文台にあります。

その他のクレジット
SDSS 銀河マップ: Mitaka (2005), 加藤恒彦, ARC and SDSS, 国立天文台4次元宇宙デジタルプロジェクト
銀河サムネイル画像: CFHT/CFHTLenS Team, TERAPIX, AstrOmatic, IAP
動画作成:中山弘敬

距離に関する注

宇宙が膨張しているために、宇宙論ではいくつかの距離の定義があります。 光速は常に一定であり、その場その場で光が伝搬してきた距離を合計したものは、光路距離と呼ばれます。 (観測している天体の時代から現在までの時間に光速をかけたものです。) 一方、光が昔に伝搬した距離は、宇宙膨張のために現在はより大きくなっています。 この効果を考えて、現在の宇宙空間の中での幾何学的な距離を計算したのが共動距離で、光路距離より大きくなります。 今回の三次元地図はこの共動距離で描かれています。

プロジェクト名称について

FastSound の Fast は、日本語で FMOS Ankoku Sekai Tansa (暗黒世界探査) あるいは英語で FMOS Acceleration Samping Test の略で、 Sound は Subaru Observation Understanding Nature of Dark energy の略になっています。

ロゴについて

FastSound のロゴは、渦巻き銀河の渦状腕と、オーストラリアに生息する echidna というハリモグラを組み合わせた意匠になっています。

+ =

FastSound で使用している観測装置 FMOS は、400もの天体を光ファイバーで同時に分光することが出来ます。 すばる望遠鏡の主焦点に位置する400のファイバーの先端部がハリモグラに似ているので echidna と呼ばれているのです。 (FMOS の echidna はオーストラリア天文台の技術スタッフにより制作されました。) 以下は FMOS の echidna の写真です。