より詳細は以下です。 この内容は日本天文学会(2005年10月)で発表されました。

「低電離中心核輝線領域NGC 1052における可視輝線放射ガスの1秒角を切る 構造と速度場」

ライナー(低電離中心核輝線領域)は、多くの銀河に見られる重要 な現象である(Ho et al.1997等)。 しかし、 典型的に数百パーセクの大きさしかない ことから空間的に分解して描像をとらえることは難しかった。 今回、ライナーの代表格とされる NGC 1052について、 すばる望遠鏡の優れた 結像性能 を活かした 面分光観測を 京都三次元分光器第2号機 (2003年春期学会 V04a: 菅井他)を 用いることにより行った(半値全幅0".4)。 2階電離酸素輝線の解析から、 領域が大きく分けて3つの成分からなることがわかった。 高速な双極アウトフロー、低速な円盤回転、空間的に分解不可能 な銀河中心に存在する成分である。 さらにアウトフローの描像が以下のように明らかになった。

速度チャネル図の青方側と赤方側の両方 において、系全体の速度からずれが大きいほど、フローの広がり 角が大きい。このことは、アウトフローの実際の速度が、軸に近 いほど大きいということでしか説明がつかない。 また、双極アウトフローの両側で非常に高速な成分が中心から孤 立して検出された。 このギャップは、何らかの加速機構の存在、または、まだ見つか っていないさらに高速な成分による励起、を示唆する。 アウトフローの端に沿って(東北東-西南西)、強度の大きな領域 が存在する。 この構造は、 このスケールでの電波ジェット・カウンター ジェット構造(Kadler et al.2004)に位置的に一致する。 この部分で、ガスの速度が急激に変化している こと などから、ジェットと星間物質との強い相互作用が示唆 される。

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