より詳細は以下です。 この内容は日本天文学会(2007年9月)で発表されました。

「重力レンズ:面分光で探るレンズ銀河の質量分布とクェーサの空間構造」

クェーサが、私たちとの間にたまたま存在する銀河(レンズ銀河) による重力レンズ効果を受け4重像を持つような、 1RXS J1131-1231と呼ばれる系を、すばる望遠鏡に搭載した 京都三次元分光器第2号機面分光モードで 観測した。 この系は、レンズ銀河全体 としてのマクロレンズ効果のみでは説明できないような、異常な 4重像強度比を連続光で持つ。 この異常な比の値は、恒星質量規模のマイクロレンズ効果、または 1千万-10億太陽質量程度の暗黒物質によるミリレンズ効果など、 レンズ銀河内部構 造による重力レンズが一部のクェーサ像にのみ働いていることによる可 能性がある。 したがって、場合によっては、レンズ銀河内の暗黒物質の存在形態を明 らかにすることにより、銀河形成モデルへの示唆を与える可能性がある。 しかし、 単にクェーサ像ごとにレンズ銀河による減光量 が異なる だけ という 可能性 もある。 私たちは高空間分解能の面分光を利用することにより、クェーサの 小さい領域(広線領域)から放射される光と比較的大きな領域(狭線領域) から放射される光に対する重力レンズ効果の違いを検出・測定し、 これから2つのクェーサ像にそれぞれ独立のマイクロレンズ効果が効い ていることを明らかにした。 クェーサで考えている領域の面積と、その領域に対して大きな影響を 与える重力レンズ天体の質量には比例関係があることから、 マイクロ/ミリレンズの質量を見積もることに成功したのだ。 非常に近い波長の光を議論することにより減光量の違いによる影響は 無視できるようにするという工夫も施されている。 高性能の面分光データは、マクロレンズを受けた各クェーサ像 の狭線領域からの放射を空間的に分解し、クェーサ中心の〜100 パーセクスケールの非対称性を明らかに することも可能に した。

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