最近の研究から

ブラックホール磁気タワージェット

 ジェットモデルの最有力は磁気流体ジェットモデルであり、磁気流体ジェットといえば、初期に円盤を貫く磁場を仮定するものであった。そのような磁場がなくても、果たして磁気流体ジェットは発生するのか。

 この問いに答えるため、われわれは大局的3次元磁気流体力学シミュレーションを実行し、強い差動回転によって円盤内磁場は引き伸ばされてトロイダル(回転角方向)磁場を作り、そのトロイダル磁場はぎりぎり巻きに蓄積して磁気タワーを形成し、磁気圧力駆動型ジェットが自然に噴出することを世界で初めて示した(Kato, Mineshige, & Shibata 2004, ApJ 605, 307; 図1)。

 

  図1:新しいタイプのMHDジェット:磁気タワーの形成

 

磁気高温コロナによる鉄輝線プロファイル

 ブラックホール円盤のX線観測より、広がった、しかも左右非対称の鉄輝線プロファイルが「あすか」衛星により得られた。その観測は果たして、既存の円盤コロナモデルで説明できるだろうか。

 われわれは、以前に発表した磁気リコネクションによって加熱されるコロナのモデルにのっとり、高温コロナからの高エネルギー放射が円盤本体で反射されてうみだされる鉄蛍光輝線のプロファイルを、ドップラー偏移や重力赤方偏移、重力レンズ効果を考慮して計算し、みごと、観測を再現することに成功したKawanaka, Mineshige, & Iwasawa 2005, ApJ 635, 167; 図2)

 

 

 

図2:磁気高温コロナモデルにより計算された鉄輝線プロファイルと観測  

 

超臨界降着流の放射流体力学シミュレーション

 エディントン降着率を超える定常降着は可能か。

 この問いに答えるため、大須賀健氏(現立教大)との共同研究で2次元軸対称放射流体力学シミュレーションを実行し、世界で初めて、超臨界降着流が準定常状態として存在することをつきとめた。さらに、輻射圧により高速(光速の1−2割)の噴出流が円盤面から斜め外向きに出ていくこと、放射は完全に非等方となり、円盤面に垂直方向から見ると、みかけの光度はエディントン光度の10倍近くにもなることがわかったOhsuga et al. 2005, ApJ 628, 368; 図3)。

 

 図3 超臨界降着流のスナップショット:密度コントアと速度ベクトル

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Shin MINESHIGE

Last Refreshed: Sun May 28 20:18:53 JST 2006