副鏡の軽量化


副鏡の軽量化を3DCADとFEM解析(ANSYS)を使って考えます。
  1. 刳り貫かない状態ではどうなるか。(go)
  2. 円柱を刳り貫く(第1段階)。(go)
  3. 円柱を刳り貫く(第2段階:格子点上に)。(go)
  4. 円柱を刳り貫く:外側の歪みを小さくする。(go)
  5. 円柱を刳り貫く:更に歪みを小さくする。(go)
  6. 円柱を刳り貫く:更に歪みを小さくする。(go)
  7. 副鏡の内部を三角格子にする。(Geminiのような)(go)
  8. 三角格子:歪みを小さくする。(go)
  9. 三角格子をもう少し考える。(go)

副鏡の概要

副鏡は以下の図の様に、鏡面は下面がφ=1100mm、曲率R=3334.779099mmの球面、高さは285.7mm(球面最下端から上端)としています。自重による歪みを調べるために上面の重心3点(に本当は少し外側にずれていますが)に支持点(φ50mm、H=20mmの円柱:ここがアクチュエーターに繋がる筈)を設けています。

このまま自重による歪みを計算すると…
鏡面で歪みが0.2μm位になります。(因みに歪みがC3対称でないのはsimlationにおいてのメッシュの取り方による。何回もループを回すと時間がかかるし重いので今の段階では省いています。)
総量586kg。これを150kg迄軽くしたい(歪みは最低でも今と同じ位でないといけない。但し、鏡の厚みについても考え直す余地がある。)ので、その方法を2つ考えます。

軽量化その1:円柱を刳り貫く

まずはシンプルに副鏡から円柱の形を刳り抜いていきます。 φ=95mmの円柱を57個刳り貫く(刳り貫く長さは鏡面から20mmの厚みが取れるように半径によって239〜260mmに調節した)と、以下のようになりました。

これを自重による歪みをFEM解析すると以下のようになります。
歪みが0.4μmとちょっと大きい…。円柱の半径を小さくして、もっと細かく抜いていく必要があります。総量が335kgと軽くはなりましたが目標にはまだまだ。円柱を刳り貫くのは抜き方にも寄りますが、場所のロスか大きいので現実的ではないのかも。

刳り貫く円柱の直径が大きいと歪みも大きくなりやすいのでないかと考え、φ=45mmの円柱を258個刳り貫く(刳り貫く長さは鏡面から20mmの厚みが取れるように半径によって238〜260mmに調節した)と、以下のようになりました。

これを自重による歪みをFEM解析すると以下のようになります。
歪みが0.37μmと少しは小さくなりましたが充分とはいえません。総量は359kgと、φ95mのm円柱を刳り貫いた場合よりも20kg程重たくなりました。因みに、あまりにも形が複雑すぎたのでFEM解析に時間がかかりました。また、円柱を刳り貫くのに大幅に時間がかかりました。3D CADでは、『script』というコマンドを使えばもっと時間が短縮化出来る様なので、円柱を刳り貫くときにはscriptを用いた作図の方法を考えるようにします。

軽量化その1:円柱を刳り貫く(2)…格子点状に円柱を配置

円柱の繰り抜く位置を工夫します。最も対称的に刳り貫くには(隣の円柱との距離がどれも等くするには)鏡上面の円上の三角格子点とするのが適当です。まず、鏡の支持点間の距離(3点を頂点とする正3角形の辺)500mmを100mm毎に区切り、φ95mmの円柱を刳り貫いていきます。また、この図の設計から円柱を刳り貫くときには、scriptコマンドで予め用意した1連のコマンドを読み込ませるために円柱の高さを別にプログラムして計算します。
刳り貫いた円柱は72個となりました。

これを自重による歪みをFEM解析すると以下のようになります。
刳り貫いた円柱が増えた分総量は265.64kgと半分以下までになりました。但し歪みは0.427μmと大きいままです。

φ45mmの円柱を格子点状に刳り貫くと、329個刳り貫くことが可能です。

質量は260kgにまで落ち、鏡面上の歪みも0.412μmとなりましたが、φ95mmの場合に比べ目立った差はなく実際に加工する手間を考慮に入れたら現実的ではないかも知れません。

外側の歪みを小さくする

副鏡の外側の方は円柱を刳り貫くことが出来ないので自重によって歪みが生じやすくなります。そこで以下の2つの方法で外側の歪みの軽減を試してみました。また、鏡上面の中心を刳り貫く事で対称性を向上させました。
重心を僅かですが外側にずらす事で、外側の方を支えやすくなるのではないかと考えました。図面とFEM解析の結果は以下のようになります

φ95mmの円柱を70個、またφ75mmの円柱(図面で赤色で示している)を12個刳り貫くことが可能です。小さい円柱を刳り貫いたのはなるべく外側も刳り貫いた方がよいと考えたからです。
解析の結果、質量は245kgにまで下がりました(刳り貫いた円柱の数が増えたから)。多く刳り貫いたのに鏡面上の歪みは0.379μmと前より小さくなったと言え、これは重心を外にずらした事と、対称性をよくした事によるのではないかと思います。

副鏡の形状を円柱型にすることで、歪みを小さくすることを考えます。上面の円の半径が大きくなるので、重心の位置は今までよりは必然的に外側になるのですが、刳り貫く円柱の位置に合うように(またこれまでの経過から計算で求まる位置では外側の歪みが大きいので)、支持点の位置をとっています。(今回は、先に試した、重心を外に出した場合と同じ半径上にある)

形状を変えたお陰で、φ95mmの円柱を88個刳り貫くことが出来(重心を外側に出したものより4個(95mmサイズだけでは18個)多く刳り貫ける)、254kgまで軽量化できました(重心を外側に出したものよりも重いのはもともとの形が異なるから)。しかし、多く円柱を刳り貫いた分鏡面上の歪みは0.524μmと大きくなりました。これは鏡の形を変えたことも原因にあると思います。

外側にどうしても刳り貫けない箇所が出来てしまうので、そこを小さい円柱で刳り貫いてみると以下のようになりました。

赤色の円柱が新たに刳り貫いた小さい円柱で、大きさはφ45mmとなっています(18個)。質量は219kg、鏡面上の歪みは0.421μmとなり、形状を外側ギリギリまで抜く方がよいという結果になりました。

これらの結果から、副鏡を円柱にした方が重心を外に出すよりも小さくすることが出来ますが、歪みはその分大きくなるといえます。では支持点を外側に出すことで、副鏡を円柱形にした場合でも鏡面上の歪みが小さくなるかどうか考えてみます。
⇒支持点を外側にギリギリに出しても結果は変りませんでした。(掲載は割愛します。)

鏡背面を削って更に歪みを小さくする

今までの内一番質量が軽くなったものから、FEM解析で歪みが大きく出ている部分の鏡背面側(上面側)を削ることで、鏡面の外側の歪みを小さくすることを考えます。
切り出し方(上面図で水色の線から側面の高さの中点を通る平面で切る)は3通り考えました。

水色の線はφ95mmの刳り貫いた円柱の内一番外側にあるものの円中心を結ぶ線となっています。また、今回からFEM解析で鏡面上の変化量を表示させたので今までとは解析結果の図のカラーインデックスが違います。
FEM解析によると、質量は209.08kg、鏡面上の歪みは0.346μmとなりました。

水色の線はφ95mmの刳り貫いた円柱の内外側から二番目にあるものの円中心を結ぶ線となっています。
FEM解析によると、質量は200.22kg、鏡面上の歪みは0.345μmとなりました。一つ前のものと同じくらいで質量だけ変ったことになります。

水色の線はφ95mmの刳り貫いた円柱の内外側から三番目にあるものの円中心を結ぶ線となっています。
FEM解析によると、質量は193.29kg、鏡面上の歪みは0.349μmとなりました。切り取った分だけ質量は小さくなりますが、これ以上内側から切り取っても鏡面上の歪みが大きくなる可能性が高いようです

鏡背面を更に削る

一番内側から今度はより深くに削る事で軽量化と歪みの軽減を考えます。
右の図のように、側面から見て、削る平面を5つの場合に分けて考えました。 側面の高さギリギリの幅は、円柱を削るときに高さが鏡面より24mm短くなるように設定しているので、同じ24mmに合わせています。
画像については、上面図(平面図)は全て同じなので側面図と斜めから見た図、FEM解析結果の図のみ掲載します。(上から順に、a,b,c,d,eのケース)

歪みはどれも殆ど変りません(最大−最小の値は殆ど変化しないまま、変形量が減っていっている)が、深く削り取ると削り取った形に歪みが生じてしまう傾向にあります。今以上に軽量化や歪みの軽減を考えるにはこの方法では無理だと言うことになりました。。

円柱軽量化+3点支持 では 170kg 程度まで質量を軽減できるが、350nm 以下に鏡面の変形を抑えることが困難。この方式では 9点支持にする必要がある。

結果一覧その1:円柱刳り貫き編(上が最大値、下が最小値)

重量[kg]全変形量(鏡面)[μm]鏡面の歪み[μm]全変形量[μm]変形(x軸)[μm]変形(y軸)[μm]変形(z軸)[μm]
何もしない586.090.6240.2080.6240.04100.040
0.4160-0.045-0.622-0.044
円柱(95mm)336.220.7100.3950.7100.11400.099
0.3150-0.113-0.709-0.131
円柱(45mm)359.210.8330.3700.8330.09800.067
0.4630-0.098-0.832-0.112
円柱:格子点(95mm)265.640.6400.4270.6400.12300.113
0.2130-0.125-0.639-0.140
円柱:格子点(45mm)259.930.7410.4120.7050.12000.102
0.3290-0.118-0.740-0.134
円柱:重心外244.890.5690.3790.5690.12400.097
0.1900-0.114-0.569-0.125
円柱:副鏡を円柱に253.600.6730.5230.6730.16200.114
0.1500-0.156-0.651-0.174
円柱:副鏡を円柱に2219.330.6310.4210.6310.16000.128
0.2100-0.164-0.606-0.180
端切り:上面外側209.080.5470.3460.5520.12900.110
0.2010-0.129-0.548-0.134
端切り:上面中間200.220.5410.3450.5550.10700.096
0.1960-0.105-0.542-0.109
端切り:上面内側a193.290.5360.3490.5420.09700.094
0.1870-0.097-0.537-0.102
端切り:上面内側b186.0990.5410.3610.5450.09400.091
0.1800-0.095-0.541-0.098
端切り:上面内側c179.200.5320.3570.5330.08800.084
0.1750-0.083-0.531-0.090
端切り:上面内側d172.750.5140.3480.5160.07600.079
0.1660-0.074-0.516-0.079
端切り:上面内側e171.450.5140.3500.5110.06800.077
0.1640-0.077-0.514-0.076

Gemini式

このページにあるように副鏡内部を三角格子状にします。一辺が400mm、200mm、150mmの正三角形にそれぞれ20mmの厚みを付けた格子にしています。


FEM解析の結果は上のようになりました。左から順に1辺が400mm、200mm、150mmの正三角形を採用した結果になっています。結果一覧からも分かるように、副鏡の質量は198.03kg〜322.59kgとあまり小さく出来ず、鏡面上の歪みも0.241〜0.421μmと芳しくありません。

因みに、一辺が200mmの正三角形で厚みを10mmに狭めると図面とFEM解析の結果は以下のようになりました。。

質量は191.42kg、鏡面上の歪みは0.360μmとなりました。幅を小さくしても歪みが酷くなるだけでいい効果が得られるというわけではないようです。

質量があまり軽減されず、しかも鏡免状で支持点と外側の歪みが大きくなって伊しまう原因は、鏡の側面を24mmの厚さで残していることにあります。この部分は歪みを小さくするために残しておいたものなのですが、外側の質量が大きくなってしますので逆に歪みを大きくさせるほうに働くようです。
側面を除いてみると次のような結果が得られました。以下、先の結果から質量、歪みを最も改善できそうな1辺200mm、20mmの幅の三角格子を考える事にします。

質量243.70kg、鏡面上の歪みは0.283μmとなりました。これ以上質量を軽くして歪みをとるには円柱を刳り貫いたときと同じ様に鏡背面側を削っていく必要があります。

Gemini式:鏡背面を削る

削りやすい位置で、2パターンの削り方を考えました。平面図の赤い枠は削った平面に相当します。奥行きはどちらも鏡面ギリギリです。

FEM解析結果は以下のようになりました。左の図がより鏡背面外側から削ったものになります。

質量は200kg程度、歪みは0.25μm位と、思った程はうまくいきませんでした。

Gemini式:再考

もう少し軽量化を試みたいと思い、一辺が200mmの正三角形で厚みを15mmに狭めたものも考えました。上から鏡背面を削らないもの、格子の厚み20mmと同様に外側、内側から削ったものです。

FEM解析結果は以下のようになりました。左の図から鏡背面を削らないもの、格子の厚み20mmと同様に外側、内側から削ったものです。

質量は170kg未満にまで軽くなりましたが、歪みは0.27μmと、歪みを小さくするのが難しいようです。鏡面外側の歪みを小さくするには、重心の位置を変えてみる必要があるかもしれません。

Gemini式軽量化+3点支持 でも 170kg 程度まで質量を軽減できるが、270nm 以下に鏡面の変形を抑えることが困難。この方式でもやはり 9点支持にする必要がある。

結果一覧2その:鏡面裏を三角格子にする編(上が最大値、下が最小値)

重量[kg]全変形量(鏡面)[μm]鏡面の歪み[μm]全変形量[μm]変形(x軸)[μm]変形(y軸)[μm]変形(z軸)[μm]
何もしない586.090.6240.2080.6240.04100.040
0.4160-0.045-0.622-0.044
1辺400mm、幅20mm198.030.7510.4210.7630.11000.135
0.3300-0.127-0.752-0.138
1辺200mm、幅20mm269.930.5230.2620.5320.08200.069
0.2610-0.083-0.526-0.089
1辺150mm、幅20mm322.590.7580.2410.7610.09500.105
0.4970-0.091-0.760-0.088
1辺200mm、幅10mm191.420.7180.3600.7500.16900.120
0.3590-0.168-0.724-0.190
側面厚みなし243.700.5170.2830.5200.09000.085
0.2340-0.092-0.517-0.093
鏡背面削る(外)227.070.4490.2300.4490.06600.065
0.2190-0.066-0.449-0.051
鏡背面削る(内)192.660.4360.2550.4360.05400.050
0.1810-0.053-0.434-0.049
側面厚みなし:15mm201.530.5280.2940.5310.09700.090
0.2340-0.092-0.517-0.093
鏡背面削る(外):15mm190.570.4670.2560.4670.07600.073
0.2110-0.076-0.467-0.060
鏡背面削る(内):15mm166.090.4510.2680.4510.05900.056
0.1830-0.057-0.451-0.052

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