2019年10月23日の質問に対する回答

Q:変光星にもいろいろあると思いますが、どうやってセファイドだと見分けるの?
A:光度曲線(明るさの変わり方)が変光星によって異なるからです。なお変光星はこんなに種類があります。で、セファイドと同じ程度の周期と光度変化を示すものはほとんど無く、光度曲線のふるまいが異なります。

Q:銀河系内でも距離の分からない天体はある?
A:むしろほとんどがそうです。なので、年周視差の観測精度を高めた衛星を打ち上げます。

Q:ハッブルの法則はz=0.1とかだと補正して使うの?
A:気になる人は補正すると思いますが、10%程度の誤差を気にするかどうかですね。非線形度合いや詳しい解説はこちら。逆に近いと銀河の固有運動が大きくハッブルの法則を使えません。

Q:1AUは楕円軌道の平均距離?
A:はい。まぁ、遠日点と近日点の差は3%なので、どっちかを選んで使っても天体までの距離の差は3%しか変わりませんが。

Q:z=10だと光が届かない気がするが?
A:届きます。空間が伸びて赤方偏移しているだけなので。

Q:高密度の星ってどうなってんの?原子の密度以上は無理だと思うが。
A:皆さんご存知の通り密度の高い金属の例として金がありますね。白色矮星はそれよりはるかに密度が高く40万g/ccと考えられています。これは重力により電子が限界まで内側の軌道に縮退し、大変小さな原子構造になっているからです。中性子星はもはや原子の体を成しておらず、陽子と電子がくっついて中性子だけの星になっているのでさらに高密度です。

Q:年周視差を計測するには半年後になり、星の座標(方向)によっては観測しずらい星もあるよね?
A:その通りです。観測地点によっては無理なものは無理なのです。

Q:「スペクトルタイプが同じでも絶対等級が分からない星がある」というのが分からなかった
A:HR図において、たとえば横軸B-V(これは赤さ(もしくは青さ)の指標で、星の温度を示します)が観測によって0.7と決まったとしましょう。そのとき、B-V=0.7 の星の絶対光度は主系列星の22等の可能性もあれば、赤色巨星の16等の可能背もあるよ、ということです。

Q:ハッブルの法則以外にビックバン宇宙論を支持するものは?また他の宇宙論はある?
A:宇宙背景放射ですね。他を僕は知らないので、他の講義で尋ねてください。他のモデルは無いと思います。WMAPの観測によって、ビックバン、インフレーション(以上宇宙の成り立ち)、バリオン(物質+引力)、ダークマター(引力)、ダークエナジー(斥力)できれいに説明できています。あとはダークを証明することですね。その正体も原因も分かっていません。

Q:天文学者は宇宙の外をイメージしている?
A:ぜひしてください。

Q:宇宙の膨張の図で膨張速度が変化しているのはなぜ?
A:最初はインフレーションといって急激に宇宙が膨張したと時期と考えられています。その後はほぼ線形です。若干加速膨張。

Q:高温の星ほど吸収線が少ない理由は?
A:電離するからです。かんたんな説明はこちら

Q:銀河の渦の密度波ってなに?
A:水の流れによる渦はまさに水が移動しているのですが、銀河の場合、腕に沿って星が運動しているのではなく、星の密度分布を意味しているだけ、ということです。たとえば前方で渋滞が起きたとき、車の進行方向とは逆向きに渋滞(車の密度が高い部分)が伝搬しますよね。詳しくはこちらをどうぞ。とくに図を参考にしてください。

Q:なんで星が歳を取ると膨らむの?
A:膨らんだ星を赤色巨星と言います。一方、中心で核融合が行われている星を主系列星と言います。赤色巨星では中心部ではなく、少し外側の殻状の領域が核融合します。より表面に近い側に熱源があるため、その外側のガスが外に向かって膨張します。参考にどうぞ

Q:太陽が膨張すると地球が飲み込まれる?飲み込まれない
A:こういう話が昔から議論されています。

Q:セファイドはなぜ膨張と収縮を繰り返す?
A:厳密には分かっていないと思いますが、星大気の自由電子の量が関連しています。縮んで高温になると自由電子が増え、内部で生まれた光を外に出せずに星が膨張します(温室効果みたいな)。膨張すると冷えて自由電子が原子に取り込まれ、放射は宇宙へ抜けやすくなり冷えて縮みます。

Q:光度周期関係が成り立たないセファイドはある?
A:星の金属量(Li以上の元素量。したがってなぜか天文学ではCやOも金属と呼ばれる。。)によって若干ズレるので、厳密な議論の時は金属量による補正が行われます。 。

Q:遠方の銀河までの距離の有効数字は?
A:たとえば明るさを10%程度見誤ったとしましょう。明るさは距離の逆二乗に比例するので、誤差はおよそ5%となります。ま、でも周期光度関係のズレやIa型超新星にもばらつきがあったり、星間減光などもあるので数十%くらい間違う可能性はあるでしょうね。ただ、宇宙加速膨張などは数%の精度で距離が決まらないと導けない結論だと思います。

Q:セファイドの光度周期関係の理論的裏付けは?
A:質量が大きいほど光度が高くなります。質量が大きいほどセファイドは半径が大きくなり密度の低い状態になります(主系列星の場合は質量が大きいほど高密度だが、セファイドは不安定状態にある)。密度が低いと星が柔らかく、振動周期が長くなります。