2019年1月9日の質問に対する回答
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Q:プリズムと回折格子の使い分けは?
A:プリズムは低分散でオクターブを超える広波長域の分光に、回折格子などは低から高分散分光に
Q:「色とスペクトルタイプ」のスライドでIaとあったけど、Ia型超新星のこと?
A:これは光度階級といって、明るさの分類です。超巨星Iの中をさらにIa, Ib, Iと細分したものです。
Q:グリズムの材料は?
A:できるだけグリズム本体を小さくするには高い屈折率の材料を用います。
Q:コリメータに鏡を用いることはある?
A:はい、コリメータだけでなくカメラ系も含めてすべて反射系で作ることもあります。
Q:もっとも高分散な場合は?
A:10万以上です。
Q:球面波のままでは分光できないの?
A:良い質問です。格子間隔を適切に調整すればできます。実際にそのようにして光学系を簡素にしたものもあります。
Q:プリズムは大きいものでどれくらい?
A:手のひらくらいでしょうか。
Q:冬の方が星がきれいに見えるってほんと?
A:水蒸気が少なければ多少その影響はあると思います。ただ、日本の場合、冬の方がジェット気流が北上してきてシーイングが悪いです。
Q:回折格子のどこで回折が起きてるの?
A:物体とくに波長より小さい構造(物体の角とか)に光が当たると素源波が出ます。素源波は光の回折と同義と理解していいでしょう。
Q:原子と分子でのスペクトルの幅の違いは?
A:原子は電子の準位差で輝線(=吸収線)の位置が決まり、その準位の不定性で幅が決まります。この不定性はドップラーシフトや圧力などによって広がりますが、本来は大変小さいです。分子は複数の原子でできており、電子準位のほかに分子の回転や振動(原子間距離の変化や3原子分子であれば屈曲する変形)によってもエネルギーのやり取りができます。一般的に振動準位は赤外域に、回転準位はマイクロ波領域に来ます(2原子分子をイメージしたときに、それが振動(=原子間が細かく振動)の方が回転(=全体がグルグル回転)より周波数が高そうですよね。)。振動と回転は独立ですが、同時に遷移することがあり、振動の輝線にエネルギーの差の小さい回転が重なって観測されます。アセチレンの場合はこのようになります。二つ見える大きなうねりは振動準位で、その中に剣山の様に周期的に表れているのが回転準位によるものです。シャープな振動準位のスペクトルが回転準位によって広げられたと理解してください。
Q:緑や紫の星はある?
A:ピーク波長がそれらの波長に来ることは当然ありますが、その他の波長でも光ります。黒体放射は長波長側(ウィーン側)にだらだら伸びるのでそれらの影響を受けるため、緑や紫にはなかなか見えません。
Q:回折格子は材質で変わる?
A:回折格子はプリズムと異なり「構造=形」で分光します。したがって材質に依りません。
Q:スリットを光軸方向に複数並べるとどうなる?結晶構造をスリット代わりにできる?
A:自分でも考えてみてください。ブラッグ斑のような現象が起きるかもしれませんね。
Q:プリズムと回折格子などを複数使い方法はある?
A:今回話しませんでしたがエシェル分光器などがその例です。ここの中ごろにありますが、プリズムで低分散した後に回折格子で高分散を掛けます。こうすると回折格子ではできなかったオクターブを超えた波長範囲を高分散分光できます。また限られた大きさの2次元検出器全体にスペクトルをこのように投影するので、検出器を有効利用できます。
Q:色等級図で左下に来る天体はある?
A:白色矮星です。高温ですが小さいので暗いからです。
Q:カメラ系の色収差は問題にならない?
A:あります。問題にならないように設計します。
Q:適切なスリット間隔は?
A:間隔が小さいとコンパクトになりますが製作が困難です。
Q:電波の分光も回折格子?
A:電波は周波数が低いためそのまま周波数を電気的に知ることができます。
Q:波長分解能はどうして差ではなく比なの?
A:良い質問です。回折格子の分光の仕組みを復習してください。波の干渉だからです。干渉の度合いは差ではなく比です。
Q:分光器のスリットの形は円形?
A:素朴で良い質問です。縦型です。波長分散方向(スペクトルのリボンが現れる方向)と垂直に長軸を持つスリットです。こちらの方向を狭める意味はないからです。
Q:波長分解能が上がって発見されたことは?
A:例えば系外惑星です。
Q:回折格子はどうやって作る?
A:ルーリングエンジンという高い精度で周期的な溝を切る機械です。この動画の4:30あたり。
Q:赤い星は青い星より古いと言われるのはなぜ?
A:理由は2つあります。星は進化の最終段階は膨張して低温となり赤くなります。重たい星は高温ですが寿命が短くなります。
Q:ヤングの実験でスリットがギザギザしてたら?
A:虹(スペクトル)の境界もそうなります。
Q:プリズムの屈折率の波長依存性は何で決まる?
A:第ゼロ近似としては結晶の中の電子の振舞です。ただ、物質ごとの細かな違いの理由を知りません。
Q:光の誘導放出で増幅できますか?
A:それがレーザーです。
Q:3バンドでの観測は2バンドの観測より有利?
A:3バンドで観測すると、たとえばU-B、B-Vといった2つの色の指標を取得できます。これをグラフにしたのが2色図といい、とても便利です。例えば、色や明るさは星間減光の影響で大きく変わります。2色図にするとどちらの色指標も似たように星間減光の影響を受けるので、星間減光を受けた星の分類をするときに使われます。
Q:波長は連続的に自然光の中に存在している気がする?
A:その通りです。以前フーリエ変換を説明しましたが、自然光のコヒーレント長は数波長分しかないのであらゆる波長の重ね合わせと言えます。
Q:ドップラーシフトで高速な物体の運動を知る方が大変そうだけど?
A:高速ということはシフトする量が大きく検出しやすくなります。ただ、精度は結局分解能で決まります。