2018年12月19日の質問に対する回答

大気に関連した質問

Q:シンチレーションによる明るさの変化は変光と区別できるの?
A:シンチレーションは数ヘルツという高速の変化であり、星はそのような速さで明るさを変えることができません。それは星の大きさが光の速さでも数秒かかるからです。つまり一瞬で星が消えても数秒かけてく消えるように見えます。一方パルサー(中性子星)は地球サイズで拘束自転していて時計の様に正確に光速に明るさを変えます。シンチレーションのようにランダムではありません。

Q:大気の厚さは地球上どこでも同じ?
A:赤道で17km、極で6kmです。これは気温の差が主な原因で、気圧の差はそれほどなく、したがって極の空気の量が少ないというわけではありません。

Q:水蒸気の変動による影響は?
A:主に近赤外線の透過率に効いてきます(資料を参考)。シーイングへの影響については(僕は)分かりませんが、シーイングは温度(屈折率)の変動なので、水蒸気量が直接関係はしないと思います。

Q:二酸化炭素の季節変動の影響は?
A:400ppmに対して5ppm (変動率は1%程度)なのでほとんどないでしょうね。

Q:月面に望遠鏡を置かない理由は?
A:お金です。

Q:なぜ望遠鏡にそよ風があったほうが良いの?
A:陽炎の原因となる暖かい空気のかたまりを吹き流すため。

Q:大気で屈折する理由がわからなかった。
A:大気中の分子間の距離は可視光の波長の1/10程度です(アボガドロ数と22.4Lから出してみて下さい)。つまり光から見ると空気は水と同じように一様な媒質に見えます。大気はそれでもスカスカでその屈折率が真空よりわずかに大きく1.0003程度となります。

Q:日の出は日の入りは大気差でずれてるんですよね?
A:はい。真の日の出の2分ほど前に日の出になります。詳しくはここ

Q:OH夜光は何色?
A:近赤外線です。詳しくはここ

Q:大気が無いときの解像度が回折限界問うことでしょうか。
A:理想ていな鏡面ができていればそうなります。

Q:北海道や富士山は観測適地?
A:日本の上空、特に北に行くほどジェット気流の影響を受けやすく、空は暗いのですが晴天率とシーイングがあまりよくありません。北海道について詳しくはここ

Q:電波望遠鏡で空の背景光は問題になる?
A:テラヘルツ帯になると問題になります(昼間には観測しない)。

Q:月明りは?
A:可視光観測では問題になります。暗夜と明夜(月が出ている夜)では前者を可視光観測、後者を近赤外線観測に分けたりします。

Q:昔のデータは質が悪くて標準星にならないのでは?
A:観測が精密になるとそれまで標準星だと思われていた星が変光星と判明する例もあります。

Q:雲によってもシーイングの変動はある?
A:雲の水滴は波長より大きく、ミー散乱を起こし減光を起こしますが、シーイングには影響しません(光にとって一様な屈折率の媒質にならない)。

Q:どんな星が標準星
A:明るく、変光星ではないものです。できるだけ空にまんべんなく選ばれます。最近の望遠鏡は大型なので暗い標準星もカタログされています。

Q:黄道光をさけるとはどういうこと?
A:黄道光はこのように公転面付近で光るのでそれ以外の方向は影響をうけません。

Q:光害(街明かり)の影響は太陽による青空と同じ?
A:はい、本質的には同じです。程度の問題なので天文台はできるだけ街から離れます。

Q:酸素や窒素の吸収はないの?
A:あります。ただ、2酸化炭素などと違い無極性なので回転とストレッチングの遷移しか起きず、エネルギー順位が高く紫外付近に来ます。詳しくはこちら

Q:シーイングが波長の-0.2乗に比例する理由は?
A:大気の屈折率の波長依存性(波長が長いほど屈折率は小さくなりシーイングは改善する)とコルモゴロフの乱流モデルから導かれます。

その他

Q:天体写真の色付けは?
A:可視の観測データの場合はほぼ見た目のままです。色を定義するには3バンドの観測が必要です。テレビなどのRGBと同じです。近赤外線など目に見えない波長のデータは短波長から長波長の順に青、緑、赤として疑似カラー表示します。例えばこれ

Q:観測所の衣食住は?
A:ホテル並みの環境もあれば、リモート観測所までさまざまです。南極料理人という映画は少し雰囲気が似てますね。

Q:星間空間で屈折することはある?
A:星間ガスは大気に比べてはるかに希薄(1ccあたり数個)なので屈折しません。

Q:宇宙望遠鏡が太陽の方をみるとどうなりますか?
A:壊れるので見ません。

Q:水面に映る景色がボケますがこれはシーイングと同じ現象?
A:それは反射なので屈折で起きるシーイングと異なります。反射は波長や屈折率に依らず一様であり、水面の形状を直接反映するので屈折によるボケより大きいです。

Q:山頂で望遠鏡を組み立てるのか、それともできたものを運ぶのか?
A:できれば後者ですが、大型になるほど困難です。

Q:月は気温差が大きく望遠鏡には大変そう。
A:そうですね。クレータの永久日陰であればその問題を軽減できるでしょう。かつて宇宙ユニットで以下のような簡単な議論をしたことがあります。

Q:なぜバンドはその波長に統一されているの?
A:統一されていないと他の観測データと比較研究ができません。