2018年12月12日の質問に対する回答
光学関連
Q:分割鏡にするとノイズは増えるの?
A:回折パターンが複雑になり、天体との区別がつかない場合があります。
Q:遮蔽物鏡やレンズの手前にあると、像が映るのでは?
A:無限遠に焦点を合わせた検出器面には映りません。図示します。
Q:分割鏡の隙間によるノイズは?
A:隙間からの構造や床からなどの赤外線放射のノイズを受けますが、隙間を狭く作るので実用上は問題がありません。厳密な観測をするときは光学的なマスクを用意することで低減できます。
Q:赤外線であかるい場合の等級は?
A:等級は波長ごとに定義されます。
Q:大気の影響で明るさが変わるのでは?
A:標準星との相対的な明るさの比較をすることで解決します。
Q:完全に点になるような開口はある?
Q:レンズの端を工夫することで回折を抑えられない?
A:良い発想です。フーリエ変換をイメージできれば、縁での屈折率や透過率の変化を滑らかにすることで<回り込みを減らせそうだということに気づきます。それにより回折パターンを抑え、点源周辺の解像度を向上する方法があります。参考
Q:開口はどうやって決めるの?
A:研磨加工は円運動を伴うので、単一鏡は円形になります。分割鏡は敷き詰めるので正多角形では6角形を用います。
Q:回折パターンをデコンボリューションすることはあるの?
A:回折パターンが出ているということは大気の揺らぎの影響がない回折限界像を得ているので、それ以上のことは通常しません。ノイズが強調される可能性があるからです。ボケた地上望遠鏡のデータをデコンボリューションしてHSTとの比較をした研究はあります。
Q:せいめい望遠鏡は1枚鏡でもよかったのでは?
A:今後の発展のための技術獲得を目指しています。
Q:透明な構造で副鏡を支えればいいのに。
A:残念ながら頑丈で透明な材料はありません。。
Q:電波望遠鏡のパラボラにはなぜ鏡が無いの?
A:あの白い大きな金属のお椀が電波にとってはピカピカの鏡なのです。
等級関連
Q:変光星の等級の定義は?
A:通常は平均等級に+0.5 -0.2などと表現したり様々です。なお、セファイドの光度周期関係は平均光度で定義されています。
Q:なぜベガを選んだの?
A:詳しくはここ
を参考にしてください。
Q:星の色と明るさと距離の関係は?
A:高温の星ほど青白くなります(ウィーンの変位則)。同じ表面積なら高温の星ほど温度の4乗で明るくなります(星は黒体放射に近いので)。距離の2乗に反比例して暗くなりますが、色は変わりません。
Q:見かけの色も変わってしまって絶対等級を出すときに問題になるのでは?
A:天体までの距離は距離の梯子で説明した通りなのですが、分光(色)でも星の絶対等級を推定できます。たしかに星間ダストによって減光すると色も赤くなります(星間赤化)。ただし、星の吸収線を分解できる分光観測ができれば星のタイプ(型)が定まり、絶対等級を求めることができます。
Q:単位周波数あたりの意味が分からない。
A:黒体放射のエネルギーはこの曲線で囲まれた面積です。積分するには横軸(波長もしくは周波数)の積分区間を決めなくてはいけません。例えば大変明るくても極めて限られた波長だけで観測すると当然暗くなります。青色の光を赤色のフィルムで見たら真っ暗です。つまりどの波長で観測するのかが重要になります。
Q:ベガが基準に使われたのは可視付近でAB等級に近いから?
A:むしろ逆で歴史的にはベガ等級ができ、波長によってフラックスが変わるを抑えたくて、ベガ等級の可視付近(Vバンド)に合わせてAB等級ができました。
Q:等級ではなくエルグを使わないの?
A:フラックスなのでエネルギーとは単位が異なります。ともあれ星の光は大変小さいのでマイナス何十乗エルグなどになってしまい不便です。ちなみに電波ではJy(ジャンスキー)という単位が使われ、1Jy = 10^-23 erg/s/cm2/Hz で、Vバンドで3631JyがAB等級で0等級です。X線天文学ではcrab(クラブ)という単位が使われ、これはかに星雲(crab nebula)にあるパルサーからのX線強度を1とする単位です。
その他
Q:水銀望遠鏡はコリオリ力で少しはズレるのでは?
A:地球の大きさに比べて4m程度ははるかに小さく、コリオリ力は無視できるでしょうね。
Q:赤道儀はどうやって極軸を維持するの?
A:頑丈につくってずれないようにします。ズレたときは再調整します。
Q:望遠鏡の結露対策は?
A:残念ながらありません。
Q:重力波望遠鏡の干渉距離が長すぎるとダメだと聞いたことがあるが。
A:2つの鏡の間が長く重力波の波が1波長以上入ってしまうと感度の改善が起きえません。最悪一致してしまうと空間のゆがみを検出できません(光路中に空間が伸びたところと縮んだところが存在し、合計でゆがみがゼロになる)。また重力波のコヒーレント長以上に長いと検出できなくなります。
Q:天体位置計算の精度は?
A:0.1秒角程度だと思います。天体の位置を計算するには、観測地の位置、時刻、標高、大気差(今日の講義)、光行差、歳差運動など様々な補正を行います。
Q:公転半径が変化すればパーセクの絶対距離も変わるのでは?
A:原理的にはそうですが、公転半径の変化自体が極めて小さく、天文学はそのレベルの厳密さを要求しません。
Q:マイケルソンの実験の半透鏡(ハーフミラー)ってどういう仕組み?
A:身の回りのガラスもフレネル反射で半透鏡ですよ。水面もきらきら光ってますよね。光にとって完全に透明なものを作ること自体が困難です。少しでもそこに屈折率の変化があればむしろ反射します。飛び出た防波堤ではなく、少し沈めた防波堤はも同じようなことが起きますが、これは防波堤の部分で浅くなり波の速度が遅くなる(屈折率が大きくなる)からです。
Q:光の回折は物体の色や材質で変わる?
A:大きさが波長程度だと波長依存(レイリー散乱やミー散乱)が出ます。透明かどうかというより屈折率が重要で、物体の中と外で屈折率が異なれば、物体を通った光と外を通った光で光路長が異なり、出口で波長が合わなくなり素源波の特性が出現し回折します。
Q:夜景を見ると遠くの景色が揺らいでいたよ。
A:次回(今日)説明します。
Q:大気で光は屈折するけど。
A:今日の話題です。
その他のその他
Q:なぜ10pcを絶対等級の基準にしたの?
A:わかりません。講義でも話しましたが、1pcには最寄りの星がありません。10pc以内なら数百はあると思います。「宇宙の常識的なサイズ」を用いたのだと思います。
Q:シリウスより明るい星が見つかる可能性は?
A:星の誕生には100万年とうスケールが必要なので人の寿命の間では不可能です。超新星爆発の様に一瞬だけ明るい星で良ければ可能です。
Q:遠心力を使って水銀望遠鏡を別の方向に向けれないか
A:理論上は出来るでしょうが大変です。
Q:なぜ明かるものを1等、暗いものを6等としたの?
A:分かりません。
Q:距離に応じてなぜ暗くなるの?
A:点源から等方にエネルギーが放出されていると、距離Rの場所では4πR^2の表面をエネルギーが通過することになります。したがってR^2に逆比例して暗くなります。
Q:目が悪い人に見えるスパイクは?
A:状況が分からないのでわかりません。
Q:オルバースのパラドックはどうやって説明する?
A:星には寿命があり、光速は有限なのですべての星が見えるわけではありません。また我々に届いたとしても赤方偏移で波長が伸びて可視光では見えなくなります。