2018年12月05日の質問に対する回答
光学関連
Q:収差の話は顕微鏡でもいえるの?
A:はい、すべてにおいて言えます。
Q:収差があるということはレンズ設計などは回折限界より収差を十分小さくすることを目指すの?
A:良い指摘です。その通りです。(後述)
Q:収差をゼロにすることは出来る?
A:残念ながら不可能です。大気ゆらぎによるボケより十分小さく抑える、さらに回折限界を下回る努力がされます。
Q:口径を大きくすると回折限界は向上するが収差が大きくなるということ?
A:はい。なので、大きな開口でも収差が小さくなるような光学設計が重要となります。代表的なものとして3次までのザイデル収差のうち球面収差とコマ収差を除去したリッチー・クレチアンという形式があり、この形式であれば口径に依らず2つの収差は除去できます。
Q:収差は独立に起こるの?
A:多かれ少なかれすべて同時に生じます。理想レンズではsinx=xとみなせるほど小さな角度でレンズや鏡に入射したとき、つまり視野も口径も小さいときに収差は十分小さくなるのですが、実用的な大きさになるとすべての収差が無視できなくなり、非球面を用いることである程度抑えることができます。また面数を増やすとそれだけ自由度が増えるので収差を抑える設計が可能となります。
Q:収差を消せない場合、データ処理で消す方法はある?
A:横着な発想で良い質問ですね。ノイズがゼロで、PSF(点広がり関数)が完全に分かっていれば、ぼけた画像から元画像を推定できます(画像復元技術)。しかし、実際にはこの2つの条件が満たされず簡単ではありません。ここを参考にどうぞ。
Q:非点収差は(入射高さの1乗、視野の2乗に比例するので)どうしようもなさそうですが。。
A:はい、実際非点収差は除去しにくい収差です。しかしこれも視野を制限すればある程度実用的な大きさに抑えられます。なお、研究に耐えうる望遠鏡の視野は通常10分角程度です。補正レンズを加えて1度程度まで大きくできますが、回折限界よりは大きく大気ゆらぎによるボケより十分小さい程度に抑えているだけです。
Q:ヤングの実験→レンズの延長として微細な構造を作ることでもレンズを作れそう。
A:たいへん素晴らしい発想です。構造を用いた光学系として古くはフレネルレンズ(光の波長のフレネルレンズは集光するだけで干渉条件は満たしません)、電波のフレネルゾーンプレート、ホログラムなどがあり、光源側ですがフェーズド・アレイなどがあります。最近では微細構造による光学素子としてメタマテリアルやモスアイなどが注目されています。
Q:ナスミス焦点には迷光対策(バッフル)は要らないの?
A:はい、カセグレン焦点と同様に要ります。
Q:ヤングの実験でy軸上のどこに焦点はくるのでしょうか?
A:大変いい質問です。板書します。
Q:ヤングの実験の話はx線やガンマ線にも応用できる?
A:いい質問ですね。理論的には出来るはずです。ただ、スリットの幅(2重スリットの間隔Dではなくdの方)が波長より小さくないとヤングの実験はうまく行きません(単一スリットの中ですでに光路長が生じてしまうので)。X線は波長が10nmより短いのでモノづくりとして大変難しいです。しかし、まさにX線回折像(ラウエ斑)がヤングの実験のX線版です!
Q:そもそも回折ってなんで起きるの?
A:良い質問ですね。文字が表すように光が回り込む現象で、光の波動性によって生じます。じゃ、波はなんで回り込むの、ということになりますよね。ホイヘンスの素源波を思い出してください。波は常にその場で素源波が生まれて互いに干渉しあいながら進行する、と説明できます。すると障害物に当たったときに、障害物で邪魔されて進めない方向や周囲の素源波と干渉条件が乱されて状況が変わるのですが、それでも素源波がそこから生じるので回り込むことになります。この回り込む強さは障害物の大きさと波長によります。一例としてピンホールがあれば、ピンホールを抜けた素源波以外は全て遮断されるのでそこからは球面波が生じます。逆はどうでしょう。微粒子を置いて、そこに光を当てるとほとんどの光は素通りしますが、微粒子にあたった光はそこから素源波が生じます。レイリー散乱が近い現象で、青空のどこを見ても太陽との方角に依らず同じ明るさであることからも理解できます。
その他
Q:ケプラー衛星の検出器のつなぎ目は?
A:検出器も全面が検出部というわけにはいきません(最近はそういう検出器もある)。そのため、できるだけ隙間を無くして敷き詰めたわけです。
Q:ハッブル宇宙望遠鏡のトラブルの詳細は?
A:ここを参考に。最初の2段落をどうぞ。
Q:マイケルソン干渉計は望遠鏡に使われている?
A:マイケルソン干渉計というとエーテルの存在を確認しようとしたこれになり、現在は重力波望遠鏡に使われています。天体望遠鏡としてはマイケルソンが考案した恒星干渉計を紹介したわけです。別物です。
Q:重力波の波長はどれくらい?
A:重力波の速度は光速と同じです。重力波源の運動の周期で割れば波長が求まります。中性子性同士の合体の最後は数Hzになります。ビックバンの背景重力波は宇宙がいまよりずっと小さかった時の波が宇宙膨張によって引き延ばされているので、大変長くなくなるでしょう。
Q:ピンホール眼鏡のようなレンズは作れますか?
A:大きめのピンホールは結像光学系になりますが、ピンホールカメラの間違いではないでしょうか。
Q:なぜ高解像度を目指すの
A:情報が増えるからです。
Q:目で追ったら新幹線の中も少し良く見えた。
A:そうですね。僕も時々そうやって遊びます。