2007年 夏の学校 公募企画


「見せてもらおうか、PDの実力とやらを」

招待講師というと、どうしてもしても実績のある方々がメインでしたが、この企画では、研究者として脂がの りかかっているPDの方々を招待講師としてお越しいただき、専門分野のおもしろさや、自分の成果のすごさを熱く語ってもらおうと言う企画であす。観測、理論等、さまざまな分野の方々にお越しいただき講演してもらいたいと考えているので、様々な分野の話を聞くことが必要な夏の学校には最適の企画であると考えています。また、近年の夏の学校では、PD層の方々の参加は皆無でしたので、この企画をすることによって、新しい夏の学校参加層が増え、また講演内容の充実にもつながっていくと考えています。

また企画の最後には、招待講師の PDの方々と、院生時代の反省や院生時代に何をしておくべきか、PD の悩み等のディスカッションの時間にしたいと考えています。これは、修士、博士課程の学生が進路選択をする際に、非常にためになるものだと考えています。


招待講師

講演時間:20分(質疑応答含む)

講演内容予定

  太田一陽氏(理化学研究所)
「赤方偏移z〜6−7超遠方ライマンα銀河の観測で探る銀河の進化と宇宙再電離」
どれだけ遠く昔の宇宙まで銀河等の天体を見つけることができるのか? 暗黒時代に夜明けをもたらした宇宙の再電離はどの様に進みいつ頃終わったのか? 宇宙の骨格である大規模構造はいつ頃からできあがってきたのか? これらの野心的な課題に対する最も直接的でシンプルなアプローチは、 現在利用し得る最先端の観測技術を限界まで活用し切って、これ以上できないくらい より遠くの宇宙を実際に見ることである。本研究では、世界最大級の口径と視野を誇る「すばる望遠鏡+主焦点カメラ」を用いて深く撮像されたSubaru Deep Field(SDF)のデータから、人類観測史上最も遠い天体、約128.8億 光年彼方(赤方偏移でz=7)のライマンα輝線銀河(Lyman Alpha Emitter、LAE)を発見し、宇宙年齢が現在年齢のたった6%の時代にも既に天体が存在したことを突き止めた。 また、宇宙の再電離はクエーサー、ガンマ線バーストの観測などから宇宙年齢9.5億年(z=6)頃に完了したことが分かってきている。高赤方偏移LAEのライマンα輝線光子は、宇宙再電離完了前に銀河間空間にまだ残っ ていた電離される前の中性水素によって吸収・散乱される。この性質を利用することで、z>6の宇宙では高赤方偏移になるにつれ中性水素が急増するという、宇宙の再電離がまさに進行している様子を時代を遡って捉えることができた。一方、SDFの視野の広さを活用してz〜6宇宙の銀河の空間分布を調べたところ、現在の宇宙大規模構造の 前身ともいえる原始的な銀河のかたまり構造を発見、分光観測でそれがz=6時代に存在する本物である可能性が高いことも確認した。これは、宇宙の再電離が完了する直前には既に原始的な大規模構造ができていて、それを構成する銀河が非一様的に宇宙を再電離してきたこと示唆する。本講演では、これら最新の研究成果について熱く紹介する。


  高橋慶太郎氏(京都大学基礎物理学研究所)
「宇宙磁場の起源」
宇宙に遍在する磁場の起源は現代宇宙論最大の謎の1つである。 本講演では宇宙の晴れ上がり以前のプラズマのゆらぎによって 磁場が必然的に生成されることを示し、その後の宇宙の構造進化への 影響について議論する。特にこの宇宙論的な磁場は現在観測されている 銀河磁場の種となる可能性がある点や、ボイドに存在する磁場を 観測することによってインフレーションについての情報が得られる という点で興味深い。

  仙洞田雄一氏(京都大学基礎物理学研究所)
「高次元宇宙」
私が学生のころから研究の対象としてきたのは、主に相対論の文脈での宇宙論です。 その中でとくに、高い次元の時空に埋め込まれた四次元宇宙という描像を礎にする『ブレーン宇宙論』に携わってきました。一般に宇宙に対するこのような見方は、素粒子の統一理論の候補である超弦理論に誘発される形で多くの研究者の関心を集めるようになりました。私のように素粒子物理を専らの研究対象としない者としては、理論の低エネルギー有効近似としてのブレーン宇宙モデルを調べることにより、重力的な側面から基礎理論および宇宙の成り立ちに迫ることを期すところです。(高次元の文脈に限らず)重力が主要な働きをする宇宙初期に関する考察を深めることを立脚点とし、ゆくゆくは宇宙物理学的な観測データに基づいて高次元宇宙を検証することを目指したいと考えています。 本発表においては、このような研究領域における基本的な動機付けや方法論の明示による補強を与えつつ、私自身 の研究を手短かに紹介させていただきたいと思います。


日程


リンク

2007年度 天文・天体物理学夏の学校

座長