ファイバー多天体分光器 FMOS の開発 XIV

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~maihara/
--> ~maihara/Japanese/ASJ06327-29/ASJ_27Mar2006.htm

舞原 俊憲 (Kyoto Univ.), 太田 耕司 (Kyoto Univ), 岩室 史英 (Kyoto Univ.)
木村 仁彦 (NAOJ), 秋山 正幸 (NAOJ), 田村 直之 (NAOJ)
衛藤 茂 (Nikon Corp.), 坂井 道成 (Kyoto Univ.), 中島 悠 (中島分光)
国立天文台/すばる望遠鏡 FMOSチーム (NAOJ), UK-FMOS チーム(UK),
AAO FMOS チーム (Australia)


1.はじめに
 すばる望遠鏡用の第2期共同利用観測装置FMOSの開発・製作は、2000年に
当時のすばる専門委員会で製作の方針を決めて、具体的な設計に入りました。
 2001年から約2年間は、15cmの主焦点領域で、400天体を100ミクロ
ンのファイバーの位置制御を可能にする方法や、大型分光器光学系の光学設計の可能
性、その分光器用スペクトログラフカメラの設計、0.9ミクロンから1.8ミクロ
ン帯までの主焦点光学系などなど、考えれば考えるほど、当時としては、実現可能性
が本当にあるのかを疑わざるを得ない難事業のプロジェクトであることが直ぐにわか
りました。

 国立天文台として、イギリス、オーストラリアなどとの連携ですばる望遠鏡の目玉
観測装置とするべく、本格的な予算のもとでFMOSの製作段階に踏み切ってから、
2002、03、04の3年間で、一応不可能かも知れない開発要素の解決になんと
か漕ぎ着けて来れました。

 その結果、2005年には分光器とそのスペクトログラフカメラシステムの1号機
の完成ドーム内設置、主焦点レンズ系のインストール、主焦点機構部(PFU)のイ
ンストールとその試験観測などまでを実施できるところにきました。
 まだ、しかしPFUの巻き取り装置を壊してしまったり、先週も分光器用のコリメ
ータ鏡の保持部分が外れて、鏡の裏面のカラスが壊れたり、問題が発生していますの
で、まったくまだ息がつけない状態です。

 当面は、イギリスの分光器関係、ファイバー関係と、オーストラリアのエキドナと
称するファイバー位置制御装置のインストールなど、2006年度の作業がかなり残
っています。

 全体としては、開発要素という面では出来そうも無いと思われた多くの開発を奇跡
的にやれて来れたことで、後は、まだもう少し時間がかかりますが、FMOSの全体
の性能を確認して試験観測やGT観測に関する実行計画を議論できる段階に来ること
ができました。コミュニティの方々もFMOSワークショップなどには多数参加され
て励まされましたし、特にすばる観測所の皆様の協力と忍耐強い対応には感謝の意を
表したいと思います。

 2.FMOSの目標仕様と現在の達成仕様

  目標仕様 --> 達成仕様

  • Wavelength 0.9〜1.8μm ○
  • Field of view 30'φ    ○
  • Fiber diameter 1.2"φ  ○
  • 400 multiplicity      ○
  • OH-airglow suppression ○
  • Spectral resolution
     High disp. mode:2200  ○
     Low disp. mode : 500  ○
  • Limiting magnitude
        (1h integr., S/N=5)
    J-band 22.3mag  △ -->(約 22.0mag)
    H-band 20.9mag  △ -->(約 20.6mag)
    (現時点でのIRS1+Cam1 の効率測定)

IRS optical layout

Concept of "Echidna"
  上図は分光器光学系概念図(左の図)とエキドナ型ファイバー位置制御装置(右図)
     ---- 実際にもこの通り ----


 3.山頂ドーム内でのFMOS構成要素の搬入・設置


木村開発のPFU Cable wrapper
   (アニメ表示)

FMOS用主焦点部(PIR)搬入

搭載されたPIR

搭載されたPIR

 4.試験観測 第1回2005年7月、第2回10月

 第1回のPIR搭載試験では、すばる望遠鏡の主鏡(M1)の光軸と、補正光学系の光軸が
大きくずれていたため、大きなコマ収差が生じていた。

 また第2回の試験観測でも修正が不十分であっただけでなく、巻き取り装置の回転機構を
壊したため、現在巻き取り装置の改修中となっている。

Out-focus image

On-focus image

 5.FMOS分光器およびスペクトログラフカメラの新ドーム床への設置
        (2005年8月)

   第3鏡階に作られた新しい床の上に、大型冷蔵庫に収納した分光器(IRS1)と
そのスペクトログラフカメラを設置した。

   現在、冷却試験を続行中。

IRS1 Refrigerator : Over View

IRS1 Refrigerator : 分光器とともに冷却試験中


IRS1 Camera Dewarの設置作業


Detector Mount(Hawaii2 取付前)
   合焦+チルト機構付き

IRS1 Camera Dewar

IRS1 Camera Dewar

    FMOS分光器の中の様子:

     そのうちの1つ「モザイクグレーティング」
   インバーフレームによるアラインメントの保持は、常温と−50℃のサイクルで ずれるため、
  「ピコモータ」(小型のピエゾアクチュエータ)でリモート制御する。

Mosaic gratings (front)

Mosaic gratings (back)  
アオリ制御用ピコモータが配置されている。

    IFU型ファイバーバンドルのテストスリット

  京都で製作したIFU型ファイバーバンドルとスリット。  右図は、実際の分光器中のスリット位置を示す。

IFU型ファイバーバンドルとスリット
  (ファイバーの総本数は256本。)

分光器光学系の中のスリット位置(マスクミラーの間)

    アオリ制御用ピコモータによる調整例:

     左の図は、4個のグレーティングのアラインメントが出来ていない状態。
     右はピコモータを使って調整した後の状態。

Before gratings adjustment

After gratings adjustment

    実際のスペクトルの例:

     左の図は、懐中電灯をファイバーバンドルに照射したもの。 右は、1.3μm赤外レーザーを照射。

Flush light spectra

IR laser spectra

    検出器上での多天体スペクトルの微調整

  ファイバースリットの位置と角度調整、およびマスクミラーの前後移動左右アオリなどで微調整を行う。

Fiber slit and Mask mirror

以下に調整の典型的な方法を示す。

Mask Mirror (Not yet blackenned)

Detector tilt adjustment

Detector focus adjustment

Before tilt adjustment

After tilt adjustment

Before focus adjustment

After focus adjustment
最終的にはこの上図ようにシャープなスペクトルが
全面について得られる。

    検出器と大型冷蔵庫の温度、湿度などの履歴グラフ

Dewar temp log

Refrigerator temp log

Hawaii2 検出器(Science Chip)の「Flat Image」

Science chip

    FMOS システムの制御ソフト

     左は、FMOS ハードウエアの設置箇所を示す。 右は、ソフトの体系を示すダイアグラム。
The FMOS control system consists of five PCs.
Socket / RPC communication is adopted.
Connumication between Kyoto and AAO/UK/MELCO/FUJITSU
system makes the source complicated.


FMOS hardware location

FMOS software network


 6.UK−FMOSチームの製作状況
        (2006年2月)

以下の幾つかの写真のように、分光器システム(ITS2)、スペクトログラフ・カメラ
 (IRS−CAM2)およびファイバーシステム等は、ハードウエアの製作はほぼ完成
 で、現地での組立調整のための準備に入っている。


UK-FMOS IRS2 フレームに光学系装着
した状態



スリットアセンブリ(マスクミラー
の裏側)
  IRS−CAM2の概観図

UK-FMOS IRS-CAM2 総合組立試験


エキドナ型ファイバー位置
制御の完成モジュールの1つ



ファイバーコネクタの1つ
 

FMOS GTO の議論の開始


(趣旨)

 FMOSは宇宙の観測に、広視野と近赤外線分光という2つの特徴を同時に提供
するという意味で、新しい「パラメータ・スペース」を開くものとなります。

 FMOSのGTOの目的は、その特徴を生かす観測能力が装置に備わっているこ
とを、実際の科学的な目標を立てて観測を実施して検証することです。言い換える
と、新たに開いた「パラメータ・スペース」のデータセットが本質的な役割をする
天文学的成果を幾つか得ることです。

 FMOSのGTOの実施計画の立案の母体は、装置開発を担当してきた、京都大
学のFMOSチーム、すばる望遠鏡のFMOSチーム、イギリスのFMOSチーム
およびアングロ・オーストラリア天文台のFMOSチームに加えて、国立天文台、
東大、その他の外国の大学の積極的なGTO計画立案に参加してきてくれた方々で
す。

 このFMOSのGTO観測実施計画を立案するに当たって、含めるべき観測の内
容を検討する第1回会議を、2006年1月30、31日の2日間京大で行って、
基本的な考え方、枠組みなどを話し合いました。

(基本的な進め方の議論のまとめ)

1)新パラメータ・スペースを提供する観測装置が果たすべき重要な役割として
ダークエネルギーの性質を知ることが可能かもしれないBAO(バリオン振動検出)
のパイロット観測を入れること。(他の比較的ディープサーヴェイとはやや異なる
手法) 意味のある「パイロット観測」のための夜数約10夜の確保。

2)通常のすばる観測装置の開発の保証時間20夜について、今後何度かの検討会
を行って厳選すること。

3)イギリスの天文学コミュニティの人的支援のもとでFMOSファイバーシステ
ム、分光器システムおよび分光器カメラシステムを開発してきた装置開発チームの
GTO時間を加味することは妥当であること(10夜相当)。(一方、まったく新
しいファイバー配置システム(エキドナと呼ばれる機構)を開発したアングロ・オ
ーストラリア天文台の寄与も特筆すべきではあるが、開発体制の枠組みの性格がや
や異なるので、固有のGTOを考慮することはしないでも良いと考える。)

 以上のことを考慮して、約40夜のGTOの提案を、日本とイギリスのコミュニ
ティ、並びに、すばる小委員会(SAC)とTAC、すばる望遠鏡ハワイ観測所な
どでに対して検討していただくことを考えています。

 以下、準備中