チェックボックスアイコン 手順10: 輻射強度較正

輻射強度較正をします。 このマニュアルでは各pixelのカウント値をflux densityに変更する処理をします。 観測天体が恒星などで、連続光強度を1に規格化するような解析をしたい場合は、他のマニュアルなどを参考にしてください。

2020年9月までのKOOLS-IFUの入射側ファイバーアレイ (2次元ファイバーアレイ) は、ファイバーコアfilling factorが58%であり、平均して約40%のflux lossがあります。 flux lossの量はseeingや天体位置によって最大2%程度変動する見込みです。 また、以下の方法では、天体高度を考慮せず一律にカウント値からflux densityへの変換を行っています。 観測の目的によっては、適宜最適な方法に変更してもらって構いません。

天体が写っているファイバーのみを足しあげて、標準星スペクトルを作ります。 それから、ファイバーfilling factorの分だけスペクトル全体のかさ上げを行います。

vi kls00036570-shape.list
#このファイルの中身の例は以下
kls00036570-gain.ms[*,39]
kls00036570-gain.ms[*,35]
kls00036570-gain.ms[*,26]
kls00036570-gain.ms[*,122]
kls00036570-gain.ms[*,37]
kls00036570-gain.ms[*,71]

rm -f kls00036570-shape.fits
imcomb @kls00036570-shape.list kls00036570-shape combine=sum

#2020年9月以前のファイバーのみ、filling factor補正
rm -f kls00036570-total.fits
imarith kls00036570-shape / 0.58 kls00036570-total

以降で使うstandardやfluxcalibがうまく行かない場合、ヘッダーキーワードを追加します。

hedit kls00036570-total.fits DC-FLAG 0 add+ verify-

カウント値からflux densityに変換する係数の関数 (感度曲線) を求めます。 ここからは通常の分光データ解析と同様の手順でしょう。

#standard、sensfunc、fluxcalibの設定する
noao
onedspec
twodspec
longslit
#感度曲線に使う波長帯を指定する
#第1引数が入力ファイル名、第2引数が出力ファイル名、cal_dirが標準星等級データが置いてあるディレクトリ、exptimeが標準星フレームの積分時間、star_namが星の名前、extinctが赤化曲線のファイル名
#私はextinction補正を入れるとおかしくなったので、補正しないようにしたが、正しく補正できるならextinction補正を入れてもいいだろう
rm -f std-vph-blue.dat
standard kls00036570-total std-vph-blue.dat caldir=/iraf/iraf/noao/lib/onedstds/spec16cal/ exptime=5 star_nam=hr718 extinct="" answer=yes
#astrocondaの場合、caldirは /home/kazuya/miniconda3/pkgs/iraf-2.16.UR.1-0/iraf/noao/lib/onedstds/spec16cal/ などとなる。

#下記のような、カウント値 vs 波長の図が現れる
#曲線が標準星フレームのデータ、四角印が感度曲線のフィッティングに使うデータ
#吸収線や欠損領域にかかっている波長帯のデータは、データ点の近くにカーソルを持って行き、dを押して削除する
#使うデータ点の指定が終わったら、qを押して終了する

standardウィンドウ

#感度曲線を求める
#第1引数が入力ファイル名、第2引数が出力ファイル名、orderがフィッティング次数、extinctが赤化曲線のファイル名
rm -f sens-vph-blue.fits
sensfunc std-vph-blue.dat sens-vph-blue order=4 extinct="" answer=yes
#下図のようなウィンドウが現れる
#上パネルが感度曲線、下パネルが残差
#変にずれているデータ点があれば、そのデータ点にカーソルを持って行き、d pを押して削除し、fを押してフィッティングし直す

sensfuncウィンドウ

#輻射強度較正をするフレームのリストを作る
#基本的に背景光引きをした…-sky.fitsが入るが、標準星など短時間積分の…-flip.ms.fitsも入るかもしれない
vi obs-vph-blue-sky.list
sed -e s/-sky/-fc/ obs-vph-blue-sky.list | sed -e s/-cosmic.fits/-fc.fits/ > obs-vph-blue-fc.list

awk '{printf ("rm -f %s\n", $1)}' obs-vph-blue-fc.list | sh
hedit @obs-vph-blue-sky.fits DC-FLAG 0 add+ verify- fluxcalib @obs-vph-blue-sky.list @obs-vph-blue-fc.list sens-vph-blue exposur="EXPTIME"
#これでデータのカウント値の単位が erg cm-2 s-1 Å-1 になる

基本的な解析は以上です。 ここまででファイバーごとのスペクトル (= データキューブ) が得られたことになります。 ここからはより正確な画像化や、複数フレームの足し上げなど、追加の解析です。