論文紹介

The nature of massive black hole binary candidates: II. Spectral energy distribution atlas

E.Lusso, R.Decarli, M.Dotti, C.Montuori, David W.Hogg, P.Tsalmantza, M.Fumagalli, and J.X.Prochaska

arXiv:1403.4931

Introduction

• BHB (BH binary) candidate: BL の特異形状や NL に対する速度のずれがあるもの
  (Decarli et al. 2013, MNRAS, 433, 1492)

  

  輝線形状に応じて４つのタイプに分類
  BHB: NL と BL 間に大きな速度差
  DPE: BL が double peak
  Asym.: 速度差はないが、BL 形状が非対称
  Others: 速度差、形状とも両方ほどほど
  大部分は数年程度では輝線形状に大きな変化は無いが、一部の天体では BL のピークが移動

  BH が合体している途中だとすると、SED にも影響があるはず(IR bump がないなど)

Recoiling scenario

• 物体に加わる重力の大半が BH となる領域

  

  合体中の BH を考える際には反跳速度を考える必要がある

  

  反跳速度を 2000km/s とすると、Quasar の場合には 0.1pc となる

• Hot dust の存在範囲

  

  L_12μm〜10⁴²erg/s の場合 〜0.6pc
  L_12μm〜10⁴⁵erg/s の場合 〜20pc

  dust torus は合体過程で分離するはず

• Dust emission の変化
  dust torus から光源が引き抜かれると、明るさは以下のタイムスケールで変化

  

  これは反跳した BH が torus を横切る時間

  

  に比べて十分に短く、このような天体は Hot dust poor (HDP) AGN となるはず

Photometry

• データは 32 天体、14 bands
  SDSS: u, g, r, i, z
  WISE: W1〜W4(3.4, 4.6, 12, 22 μm)
  2MASS: J, H, K
  GALEX: NUV, FUV (0.231, 0.155 μm)
  

Model fitting

• L13 (Lusso et al. 2013) model で fitting
  hot-dust, host galaxy, accretion disk の3成分,8 parameters
  3成分の強度, 銀河の SFR の τ と年齢、torus SED の形状、銀河と disk の reddening
  PAH 輝線は AGN では弱いので問題ない
  

Properties of the SEDs

• Figure 1: fitting 結果

  

• Figure 2: Mixing diagram (Hao et al. 2013)
  ●BHB: NL と BL 間に大きな速度差
  ■DPE: BL が double peak
  ▲Asym.: 速度差はないが、BL 形状が非対称
  ★Others: 速度差、形状とも両方ほどほど

  

Hot-dust-poor candidates

• 予想通りではなかった...
  J1154+0134 のみが HDP で大半は dust torus が残っている
  

X-ray detection

• 0.01pc 以下に接近した BHB では dust torus の内径が広がって gas の量が増え、X や UV で吸収が出る
  (Lodato et al. 2009, Sesana et al.2012, Tanaka et al. 2012, Gultekin & Miller 2012)
  14/32 は X が検出されていて、明るさは普通
  他は通常より暗いと思われるが、詳細な観測が必要
  

Additional Properties

Comparison with a test sample

• SDSS QSO との比較
  0.136<z<0.713 17,666天体 => 〜10μm で受かっているもの 13,634 天体
  z 分布が今回の sample と一緒になるようにランダムに 1,000天体を抽出
  

Intrinsic reddening distribution

• 普通の QSO より有意に赤い(B,D,A,O の順で赤くなる)

  

Luminosity distributions

• reddening 補正しなければ disk の明るさ分布は普通と同じだが、
  補正すると有意に明るくなる
  L_host/L_opt-UV >0.7 天体が 30% (通常は10%)

  

• dust torus と disk の明るさで区切ったら reddening に有意な差はなし

  

• BAL を持つものはなし

Torus sizes and geometry

• dust torus のサイズ

  

  明るさ分布からだと通常より若干大きい
  disk が減光を受けている => dust torus を横に近い方向から見ている => L_ir は小さくなる
  はずなので、この結果とは矛盾
  disk の減光はdust torus ではなく、もっと小さい構造によるもの？

• 他の可能性
  warped disk などでも、輝線形状や disk の赤化は説明可能