近赤外相対測光分光器

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/NIS/index3.html

岩室 史英 (京大宇物)


●概要

  • 波長範囲 : 0.86-2.1μm (長波長側はファイバーで決まる)
  • 波長分解能: 4000

    バンド次数左端右端
    K31.9202.400
    H41.4401.800
    J51.1781.440
    Y60.9971.178
    z70.8640.997

  • 観測視野 : 5"x8" ひし形 (ファイバー25本) x2

    Object
    Reference

  • 離散スリット: クロスディスパーザの分散小

  • 反射光学系: バイコニックミラーのみの6面反射

●Mirror 形状

上段左のものはほぼ完成、上段右は今年度中に製作

●真空容器

アルミ製で電子ビーム溶接で製作。1トン!。

分光器室内ではこれで蓋を開ける。

●Prism+Grating

φ110 x t30 の使われていない ZnSe を再利用。S-FTM16 は2つ準備し、完成次第レジン貼り付けにまわす。張り合わせ作業が大変かも...

●冷凍機と接続方法

冷凍機は住重の RDK-400B (100W@40K, 180W@77K)

ベローズとゴム柱を用いて以下のように接続し、振動を切る。製作中。

●真空冷却中でのアクチュエータ

シグマ光機製SGSP-13ACT-B0を分解・洗浄し不要な部分は全て取り外して再組立、500gf の負荷をかけて液体窒素内で動かした所、ちゃんと動作した。

●真空冷却中での傾斜センサ

これを各鏡の側面に固定し、常温で調整完了した際に鉛直方向がホール素子の出力最大となる角度で固定、冷却中もこの位置が保存されるようにモーターで調整しながら冷やしていく。これができれば、モーターの移動量の確認と鏡の傾きに関する情報が得られ、かなり調整が楽になるはず。

現在、部品手配中。

●温度計に関して

とりあえずの候補

温度モニタ温度コントローラ温度センサ
理化工業 MA901

Lake Shore 325型

Heraeus C220

●コネクタ付きフランジ

真空対応 50pin D-sub 3個が溶接されている VG150 フランジを製作中。

●光学ベンチ

できるだけ安く軽くしたい。1cm 厚の板+4cm厚リブをネジ固定で製作、3箇所の脚は 90x40xt1 のガラエポ板を3mm間隔で2枚ずつ配置、計6枚の板で支える。

主要部分の変形は 40μm 以下なので、これなら問題なさそう(上図左)。光学ベンチが縮んだ際にガラエポ脚で発生する曲げモーメントの影響は 1μm 以下(上図右)。

板は A5052 だが 60x40 角棒は A6063 になるので、熱膨張率が 1% だけ異なる。この違いが冷却時に 250μm の反りを発生させるので、角棒も A5052 で作らないといけない。

●冷却時間の見積り

冷却には1週間以上かかることは予想はしていたが、真面目に計算すると上手くやらないとすぐに冷却時間1ヶ月になってしまう事がわかった。以下、その見積り。

  • 冷凍機
     温度 :TCH
     パワー:PCH(TCH) = 295*log10(TCH/19) W(下図)

  • 熱伝導銅板
     温度 :TCH ~ TRS, TOB
     断面積:s = 20mm x 0.1mm x 20枚 x 8 = 320mm2
     長さ :l = 60mm
     熱伝導率:λ = 398W/m/K
     ラジエーションシールド光学ベンチに半々接続

  • 真空容器
     温度 :TDW = 288K (一定)
     表面積:S = 5.67m2

  • ラジエーションシールド
     温度 :TRS
     表面積:真空容器と同じ
     熱容量:HRS = 38700J/K (アルミ42kg)
     放射率:ε = 0.08 (アルミ反射率 0.92)

  • 光学ベンチ
     温度 :TOB
     表面積:真空容器と同じ
     熱容量:HOB = 387000J/K (アルミ420kg)
     放射率:ε = 0.08 (アルミ反射率 0.92)

計算手順:

  1. TRS = TOB = TDW でスタート
  2. PCH(TCH) = sλ/l・((TRS+TOB)/2-TCH) となる TCH を求める
  3. PRS = sλ/l・(TRS-TCH)/2 (RS => CH への熱流入)
    POB = sλ/l・(TOB-TCH)/2 (OB => CH への熱流入)
  4. LRS = σSε・(TDW4+TOB4-2TRS4) (RS の輻射収支)
    LOB = σSε・(TRS4-TOB4) (OB の輻射収支)
    σ:シュテファンボルツマン定数 5.670e-8W/m2/K4
  5. ΔTRS = (LRS-PRS)/HRS・Δt
    ΔTOB = (LOB-POB)/HOB・Δt
  6. 2. から繰り返す
結果:

まずまず冷えるまでに2週間
安定するには1か月

放射率0の理想状態(破線)だと1週間
シールド追加などで少しでもこれに近づけないと...

●今年度中の予定

  • 現在、ラジエーションシールドとダミー光学ベンチ製作中
  • 今年度中に上記2つと温度計・冷凍機を取り付け冷却試験
  • 同時に傾斜センサ2つと真空冷却中でのアクチュエータ試験
  • 1枚目のバイコニックミラーの光学確認試験(拡張フーコーテスト)


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp