近赤外相対測光分光器
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/NIS/

岩室 史英 (京大宇物)


●装置の特徴

 AGN 分光モニターなど、長期のモニター観測で微小なスペクトル変動を
 検出するためには、以下のような装置が必要となる。
  • 広い波長範囲
  • 測光分光器(面分光器)
  • reference との2天体同時分光

 広い波長範囲を観測できる近赤外装置の例 (Magellan 望遠鏡 FIRE)



http://web.mit.edu/~rsimcoe/www/FIRE

プリズムでの次数分離は必須だが、ZnSe プリズムの多用は避けたい

(近赤外で用いられる材質の 1/λ - n のグラフで直線になる必要あり
ZnSe, ZnS, Silica, BK7, CaF2, BaF2, MgO, Al2O3)

  • 離散 slit で cross disperser に必要な分散を極力減らす
  • その場合、光学系は色収差のない反射光学系であることが必須
  • ファイバーバンドルで2天体同時面分光することで、信頼性を確保

とりあえず F/5 => F/2 で色消し光学系ができたとして...

  • ファイバーコア 100μm => 無収差像サイズ 40μm(2pix) => 収差込みで 3pix
  • スペクトル間隔は 8pix × 5列 => 40pix => ファイバー50本
スペクトルフォーマットのイメージ (波長分解能 2700)

バンド次数左端右端
K31.9202.400
H41.4401.800
J51.1781.440
Y60.9971.178
z70.8640.997

ファイバーバンドル形状は、5" x 8" のひし形で、
object, reference を交互にファイバースリットに配置。
点光源の場合はひし形内部の2点を往復させて観測する。
バンドルは融着させてコアが六角形に近い形になるようにする。

Object
Reference

7本のファイバーの情報を使えば、以下のような状況の違いを識別して
flux 補正をすることが可能(seeing < 1" だと測光エラーが大きくなる)。

Seeing 中央の中心 3本の中間
0".7
1".0
1".3

具体的に設計してみた。Zemax のマクロが使えないので、回折格子はとりあえず5次の J-band で計算したが、他の次数でもそれほど悪化しないことは確認した。装置は 2m サイズで、biconic 6面の反射で検出器全面で1pixel 以下での結像が可能。
配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5

以下、どこまで装置を小さくできるか調べる。
全体のサイズを 2/3 倍、分散強度を 3/2 倍にして最適化
配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5

更に全体を 3/4 倍して最適化
配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5

2番目のものについて微修正
配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5


上記解では、短波長ほどスペクトルの間隔が広がる状態になっていたので、クロスディスパーザのプリズムを ZnSe+溶融水晶とし、スペクトルがほぼ等間隔になるようにした(135〜170μm, 7.3〜9.2pix)。
それに合わせてパラメータを最適化し直した。

配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5

このままでは、プリズム表面での反射光が波長帯中心付近にかなりのゴースト像を作りそうなことに気がついた。

ぎりぎりセーフと言ったところだが、もう少し離れている方がいい。クロスディスパーザのパワーをもう少し上げると離すことが可能。

次に、回折格子をマスターが既に存在するRichardson Gratings 53-*-860R で代用する場合について調査してみる。


 上記回折格子を使うと溝本数が1割増しになるので、その分更に縮小光学系にして波長域を検出器上に入れる必要がある。以下が最適化結果。上記解に比べて、検出器周りがかなり窮屈になったのと、スポットサイズが 1.4 倍に悪くなったが、まだどちらも許容ぎりぎり。スリット長は12cm としたが、もう少し長くできる。

 この場合問題となるのは回折格子を作る際のレジンの屈折率で、17.5°のブレーズ角に合わせるにはレジンの屈折率が Nd=1.66 のものでないといけない(通常は 1.59)。そのような高屈折率かつ吸収の少ないエポキシがあるかどうかが問題となるだろう。

配置/焦点面/スポット1 2 3 4 5

少しプリズムの分散を強めにして、プリズム表面の反射光が十分に離れるようにした。この程度離れていれば問題ないだろう。


 2pixel 程度まで、像の悪化を許容し、更に回折格子をマスターの存在するものに限定した場合、どこまで小型化できるか試してみたところ、60% までサイズを縮小することに成功した(テレセンに近い状態で集光するようにも調整した)。使用した回折格子は、上で使用したものよりも格子密度の高い Richardson Gratings 53-*-866R を使用した。回折格子の分散がこれより高いものは、300本/mm のものとなるため、分散が更に1.4倍になる。その場合、更に70%程度の縮小が必要となるので、直感的には 2pix に収めるのは biconic のままでは難しそうなのと、回折格子のブレーズ角が36.8°とかなり大きくなること、1m サイズが 70cm サイズになっても対費用的な効果が少ないと予想されること、などの理由からこれ以上の縮小は追求しない事にした。また、この設計でプリズム面での反射光が検出器に入らないことも確認した。

 鏡は、2枚ずつペアにしてくっついた状態で製作すれば、アライメントの手間を少し減らすことができると思う。また、凹面はすべて楕円面の biconic であるため、鏡1の2面は水平方向1軸、鏡2の2面は水平・鉛直方向の2軸について光学的に形状を確認することができる。

配置/焦点面

3〜7 次のスペクトルは 7〜8 pixel 間隔で並び、
幅40pixel が1本のファイバーのスペクトルとなる。
光学系をやや縮小しすぎたため分散パワーが少し不足。

スポット1 2 3 4 5

100μm ファイバーの実像サイズは直径1.8pixel で、
上記の収差と合わせて像サイズは2pixel 強というところ。


 ファイバーコアのサイズは 100μm(0.9") で、レーザー波長での望遠鏡回折限界像のサイズ 0.042" の 21.5倍に相当する。これを回折格子を含む7つの光学面に均等に振り分けると、√7で割って 8.1倍、すなわち反射面の面精度は4λで良いこととなる。上述の通り、この光学系の凹面は全て楕円面の biconic であるため、軸に沿った光学的な形状確認が可能である。

最終面の確認例

この他、フーコーテストやハルトマンテストも可能だと思う。

●その後の修正

熱膨張係数の小さい溶融水晶とそれよりも数倍大きい係数を持つ ZnSe をどのように接合するか気にしていたが、海老塚さんより S-FTM16 を使うと回折格子のレジン(エポキシ)との屈折率も近く、ZnSe の熱膨張係数とも近いので張り合わせが可能との情報を頂いた。これを踏まえて以下の点を修正した。
  • プリズムを S-FTM16 + ZnSe の組み合わせにした
  • それに伴い回折格子上で正しく瞳を結像するよう、
    個々のファイバーの向きを微調整
  • スリットの傾き(正面から見た時の回転方向)を許容して最適化

結果は以下の通り。

プリズム部分側面図 / 3D 図

Zemax ファイル

焦点面 (2.4μm までしか S-FTM16 の屈折率が定義されておらず、
K-band 長波長端は上から3番目のスポット。
個々の集団は、右から 3次、4次、5次、6次、7次)

上端スポット図  中央スポット図  下端スポット図

GSolver での回折格子効率計算結果(但し Littrow 配置)

GSolver ファイル

以下はフルバージョンの GSolver で準リトロー配置で計算した結果。
20°まで外すと約1割効率が低下する。

入射角10°  入射角15°  入射角20°

その後、以下の点を変更して計算し直した。
  • 反射面を Al から Ag に
  • 計算次数は±10次から±30次に(下図は一部のみ表示)
  • 最短の計算波長を 0.8μm から 0.4μm に
  • ブレーズ角を実測値である 27.93°に
  • 入射角を 30°から厳密な Littrow である 27.93°に

短波長側でもそれほど効率が落ちない事になったが、実際はどうか...

●機械構造の概念設計

CAD ファイル

ファイル表示のためのDWG TrueViewはこちらで "Japanese" を選択してダウンロード。上記ファイル表示後、"_b" の付く画層を非表示にすることで上記 gif の状態になります。

ポイントは以下の通り。

  • フランジを全て底面に集め、裏返し弁当箱方式で積み重ねる
  • 2組の凹面鏡2枚は一体加工し、くさび状スペーサに押し当て
    (ここが冷却時の縮小中心)
  • 全ての鏡は背面に3本の長いロッドと底面2本のジャッキアップねじ (+側面押しねじ) で支持
  • 位置調整は小型の冷却真空モータ+超細目ネジで行い、ロータリーポテンショで軸角度をモニタ (抵抗は温度によりどんどん変化するので、計測電流をどこまで絞って何秒間通電すればいいのかなかなか難しそうだが)
  • 光学ベンチの荷重は9つのバネで受ける (熱が伝わらないように注意、光学ベンチの収縮によるバネの歪みをどこで吸収するかは要検討) ⇒ 不要かも...
  • 光学ベンチの位置の固定は、3枚の樹脂プレートで外壁に接続
     (光学ベンチの収縮を考えて板の向きを配置)
  • 入射ファイバーバンドルと切り欠き部から入れる
  • 検出器と温度計/ポテンショ(?)の配線は上記と反対側の切り欠き部から
  • 検出器へのクロック成型と信号増幅を外壁壁面に直付けした回路 box (手前角の赤い箱)で行う
  • 位置調整用モーターの配線上記 box と対角にある大きい穴から入れる
  • 真空容器の合わせ面は全て幅80mmで(30mm でも多分大丈夫だが)、内側から10mmにOリング、内側から30mmに M6 ネジと仮定。
  • 外壁の穴直径が大きい3ヶ所は補強フランジを接続、直径の小さい2ヶ所は 直接コネクタ付きプレートを当てる。コネクタ例1コネクタ例2

迷光はバッフルでぎりぎり切れる感じ。バッフル表面の処理は...
などがありそう。

しかし、その後の調査で Vantablack はまだ市販されておらず入手困難、Velvet sheet は Edmund Optics では 32万円/m2なので、最内壁やバッフルを全部張ると100万円を軽く超えてしまう。仕方がないので、市販の塗料で最も黒そうなのを探したところ

が良いとのこと。過去に、市販の黒色塗料の近赤外反射率を調査した時の経験では、目視での反射率で受ける印象が近赤外でも同じはずなので、多分、この塗料でも近赤外の反射率は 1% 強程度なのだと思う。これを買ってみることにする。

●調整に必要な精度など

個々の光学素子の位置を±0.1mm、角度を±0.02°ずつずらして検出器焦点合わせ後の像サイズへの影響を調べた。
+,- での影響の違いはほとんどないが、悪い方の数値を以下にまとめる。

Opticszxyθxθyθz備考
初期値0.0049
Slit 0.00490.00500.00490.00490.00490.0049
Mir #1A0.00490.00500.00490.00500.00500.0049
Grating 0.00490.00490.00490.00500.00490.0049
Mir #1B0.00490.00500.00490.00500.00510.0049
Mir #30.00490.00490.00490.00500.00490.0049
Mir #2A0.00490.00500.00490.00520.00510.0050
Mir #40.00540.00910.00880.00520.00530.0050
Mir #40.00500.00630.00580.00490.00500.0050横ずれ ⇔ 角度
Mir #2B0.00550.00940.00900.01320.01290.0063
Mir #2B0.00500.00500.00500.00510.00500.0050横ずれ ⇔ 角度

最後の2枚以外は、100μm, 0.02°の精度で十分だが、Mirror #4 は位置精度はそれよりも 高い必要があり、Mirror #2B は位置角度ともに最も精度が必要であることがわかる。 Mirror #2B は、位置のずれを角度で、角度のずれを位置で補正しても構わないので、 調整の自由度は少なくても大丈夫そうだが、Mirror #4 の横ずれ補正は必須。

●フィルター(サーマルブロッカー)の置き場所

ファイバーは OPTRAN WF を使うとすると、K-band は2.1μm 程度までしか観測できない(将来的にお金に余裕があれば、フッ化物ファイバーで NA の小さいものを特注で製作すれば、それで置き換えて全波長観測できる)。フィルターは、ファイバースリットの直後に入れるのであれば上記設計のままで大丈夫だが、検出器直前に入れる場合は、F 比が小さいので影響が大きく、全体の修正が必要になる。また、フィルターの基板よる色収差は補正できるものがないので(プリズム表面を球面にすれば可能だが...)その分が残り、スポットサイズが若干(~20%)広がる。inner shield の内側への光漏れがないよう完全に遮断できればいいが、それが心配なら検出器直前にフィルターを置く方が堅実。どっちにするか...

Zemax ファイル

焦点面 (2.4μm までしか S-FTM16 の屈折率が定義されておらず、
K-band 長波長端は上から3番目のスポット。
個々の集団は、右から 3次、4次、5次、6次、7次)

上端スポット図  中央スポット図  下端スポット図

柳澤さんより、仮組み段階で可視光のカメラで内部をモニタしながら、外部から光を当てれば光漏れの有無が確認できるとの提案があり、確かにそのように確認すればシールドの隙間からの光漏れは防げそうだ。ということで、

  • とりあえず、フィルター無しで作ってみる
  • 問題があれば、スリット直後にサーマルブロッカーを入れる
という方針で進めるのが良さそう。

●Mirror #1A+B の形状

材質はグレードの低い合成石英。
赤線の範囲内が光の当たるところ。
境界部分の加工は適当で OK。
面の形状精度は2λ。
面の相対位置精度は、100μm, 0.02°

厚さ 50mm、変形 25nm         厚さ 40mm、変形 60nm

厚さを 40mm にしても縦置き時の変形量は問題無さそうだが、一番薄い部分の厚さが 10mm になるので強度的にやや心配なのと、研削加工時の支持方法によっては変形が問題なる可能性もある。加工時の支持方法を確認する。

各面の四隅と中央の10点支持とのことだったので、大体の支持点位置を決めて自重変形を確認した。自重変形のみの値では厚さが 50mm, 40mm の違いは小さいが、研削圧として 6kgw の集中荷重をかけた際の変形量は厚さ 40mm の場合は 700nm 近く追加で変形するため、やはり硝材の厚さは 50mm の方が良さそうだ(50mm でも 200nm 変形するが...)。

厚さ 50mm、変形 20nm         厚さ 40mm、変形 30nm

研削圧として 6kgw の集中荷重を追加
厚さ 50mm、変形 200nm         厚さ 40mm、変形 700nm

2面の境目を無視して研削すると、以下の状態になる。

数値データ (A: ピンク, B: 水色, C: 周辺部)

右側のビームのエッジと境界が最も狭い場所となるが、それでも境界までの間隔は10mm以上あるので問題ないと思う。

●Mirror の材質

-200℃まで考えると、合成石英が最も変形しにくいのかと思っていたが、CVI Laser Optics のページを見ると、-200℃まで考えても溶融水晶よりも Zerodur の方が膨張係数が小さいというグラフが出ている(このページの下から 1/4 程度の所にグラフがあり、-100℃以下の低温では水晶の膨張係数が負になるということも初めて知った)。

クリアセラムの場合は、カタログ に 10K 程度までの積分値が書いてあって、-200℃ではサイズが 4x10-5 だけ縮むようだ(HS よりも通常品の方が優秀)。これなら平均的には 2x10-7/K の変化なので、溶融水晶より良くて Zerodur と同程度(但し Zerodur は膨張)だという事になる。

あとは価格の問題だが、クリアセラムの方が合成石英よりも安かったので、クリアセラムで発注することにした。

納品されたクリアセラムの写真。サイズは 575 x 302 x 54。

●真空容器の製作に向けて

容器図面はここ(側面厚 1cm + リブ付きバージョン)

先端技術センターの岡田さんにも助言を頂き、以下の部分を変更。

  • 材質はアルミではなくステンレスとし、溶接で箱型にする(アルミ溶接は難しいので)
  • 外壁は削り出しで軽量化してもいいが、骨組みを溶接して接合することもできる
  • 上蓋を被せる際に外周にガイド板を取り付けてずれなく被せられるようにする
  • O リング底板に取り付け(取り付け時のOリングの落下と挟み込みリスクを考えて)
  • 光学基盤重量を支えるバネは不要で、3枚の樹脂板のみで支持できるのでは
  • 真空を引く穴の事を忘れていたが、小さい穴2つのうちの片方をこれに利用する
底面3cm(400kg), その他2cm(800kg) のステンレスの箱の内部を真空にした場合の変形(下左)。

天板中央が 3mm弱、底面中央(見えていないが)が 1mm 凹む。
側面は余裕なので軽量化するなら側面。側面を全て半分の1cmにしたもの(500kg)が右側だが、意外にも全体の変形量が1.5倍になった。この程度なら壁面1cm でも大丈夫そう。
最も大型(1t)のリフトラーであればフォークの先の方で支持しても大丈夫という感じだが、大型のものだと 1350mm までしかフォークが上がらないのでやはり蓋の開閉は専用のやぐらをアルミフレームで組んで、チェーンブロックで上下させるしかなさそう。

4.5mm の天板の変形が問題ないかどうかを判断する1つの指標として、ミーゼス応力というのがあるが、ステンレスの降伏点が約200MPaで、これ以上の応力がかかると元の状態には戻らなくなる。以下が、上記2つの場合のミーゼス応力の分布。どちらも降伏点まで達する事はないので、大丈夫そうだ。

側面 1cm のものの天板にリブ構造を付けた時の効果。左は断面 2cm x 4cm, 右が断面 2cm x 8cm (3枚で42kg) の場合。リブ無しでは 4.5mm 凹んでいた天板の変形が、それぞれ 1.9mm, 0.6mm となった。後者の場合の最大変形は厚さ 3cm の底板の中央部で、1.2mm の変形。

上蓋と底板が完全に一体化されていれば上記の通りだが、実際はねじによる接続+大気圧による圧縮なので、横ずれ方向の変形にはかなり弱いことが想定される。接続部のリブ構造のサイズを考えるため、上蓋の5面にのみ大気圧をかけた場合の変形量を調べた。左がこれまでの設計値(幅4cm, 厚さ1cm)、右が幅・厚さともに2倍(8cm,2cm) にした結果。最大変形量はそれぞれ 12.5mm, 2.6mm 程度で、底板と一体化していることが大変重要であることがわかる。どの程度までの一体化が期待できるのか...

上蓋と底板の一体化の方法として以下のようなものが考えられる。以下の図で、左が現状の状態、右が改良版で、黒がOリング断面、緑はアルミかステンレスの丸棒。これなら、かみ合わせがきつくなっても抜けなくなる心配はないと思う。

底板との一体化に期待せず、どこまで補強できるか側面にもリブを足してみた。1mm 変形程度にまでなら抑えられそう。

底板に関しても、単独で変形が 1mm 以下になるようにしようとすると、幅12cmのリブをかなりくっつける必要がある。板ではなく、箱の形にする方が強度が増して軽量化に繋がるようだが、メンテナンスのし易さは現在案のままがいい。どうするか...

リブ無し(左)と幅8cm のリブ(右)の計算結果。

幅8cm のリブ(左)と幅12cm のリブ(右)の計算結果。

上の計算は、四隅のみを棒(半透明で表示してあるもの)で接続固定してあとは自由という、実際よりもかなり厳しい条件での計算なので、各辺の中央にも固定用の棒を追加して計算してみた。この場合は周辺のリブは不要という事になったので、これで十分かも。

リブ無し(左)と幅8cm のリブ(右)の計算結果。

●冷凍機に関して

冷凍機はこれまで住重の CH-110 を念頭に進めてきたが、コンプレッサーが水冷式しか対応していないとのことなので、空冷のコンプレッサー(CSA-71A)でも使える RDK-400B を使うことにする(冷却水チラーを確保できない可能性を考えて)。冷凍能力は1割減、重量も少し重くメンテナンスサイクルも短くなるが、空冷で使いたいので仕方がない。CAD 図面に反映させる。

●アルミで作った場合

アルミ溶接も問題なくできそうとの情報を得たので、アルミで製作した場合を検討。
左は変形量、右は応力。

やはり、底板の周囲のリブはあまり役に立っていない事が確認できる。
また、上蓋の面積の小さい側面のリブは無くても良さそう。
上蓋と底板が完全に接合されている場合が以下の結果。

上面は見えていないが、上記の単独での場合の変形量とほぼ同じで 0.8mm 程度。
この場合は多分側面のリブが不要になる。

実際は完全に接合されるわけではないので、底面の強度を増す必要がありそう。
以下は、底面のリブの幅を増やし、上蓋の面積の小さい側面のリブを無くした結果。

上蓋の面積の小さい側面のリブはほとんど関係ないようだ(最大変形量がリブありの場合より小さくなったが、実際はほぼ同じで減ったのは計算上の誤差が原因だと思う)。底面の変形はまだ 1mm 以上あるが、周囲はねじで固定される訳だし、この程度なら大丈夫だと思う。

上蓋を信頼度の高い電子ビーム溶接で作った場合は、板厚が50mm必要になるので、溶接後に軽量化すると以下のようになる。上段が 270kg 削って 470kg にした場合、下段が 220kg 削って 520kg にした場合の結果。下段ならまあ許容範囲か。応力が内側の下隅部分に集中するのがちょっと気になるが...

経費節減と溶接部をできるだけ残す、という観点から軽量化した案。工具の振動の可能性も考えて天板と側面の一部を 40mm 厚まで削り、残りを 50mm 厚にしたもの。上段は側面の削り幅 500mm (636kg)、下段は幅 250mm (660kg)にした場合。側面の変形が 1.7mm はやや大きいが削り幅を減らしても大して改善されないので、底面の固定ねじの遊びをできるだけ狭くして変形を抑えられないか...(M12 SUS304 ねじの長期せん断荷重は 8kN なので、10cm 間隔なら一応大丈夫そうだが)

ねじには遊びがあり、スラスト方向の荷重を受けることはやはり期待できなさそうなので、リブを追加する事を考えた場合、50x50 のリブ2本(23kg)を加えれば大丈夫そう。

仮想固定点を天板側にすると、開口部内側四隅の応力が30MPa 程度になった。開口部内側四隅に集中していた応力は、仮想固定するための棒との境界面に発生する応力だったようだ。応力の最大部はリブを固定するネジにかかるものなので、問題なさそう。最終的に、リブの両端を 65mm 切り落としたが、それによる変形量の増加は 50μm。

底面の方も、経費節減のため全面 50mm の板に後付けで1本リブを固定する。上段は 80x80 のリブを加えた場合 (298kg)、下段は 80x100 のリブを加えた場合 (303kg)。まあ、どちらも似たような感じだが、リブが無い場合の変形は 2.6mm なので半分ということで 80x100 の方を採用しようかと思う。

仕様書はここ

●台車

台車はアルミフレームで作るが、1.5t のものをちゃんと支えられるか...

アルミフレーム4HFSH8-8080-1380
4HFSH8-8080-980
購入不要(4)HFSH8-8080-500
4HFS8-8080-220
補強用ブラケット4GFBL8-4080-311 (実際の長さは 311*√2)
キャスタ(購入済)(4)CKZJ80-N
接続板(購入済)(4)HRMDB-SU-A80-B100-T16-F40-V60-W80-
X10-Y10-M8-L20-S30-G40-ZF6-CC5
フットベース(購入済)(4)HLFS8-8080-20
シリコンゴムシート(購入済)(4)RBSMFA10-80-80
押出厚型ブラケット40HBLTDW8
押出不等辺ブラケット12HBLTF8
先入れナット4PACK-HNTT8-8
六角穴付ボルト1BOX-SCB8-20
シャフト4PSSAGN10-500-F20-M8

大体20万円。

一応完成。45°のフレームは型番の数字の√2倍が実際の長さになることを忘れていたため、 長すぎて縦方向の脚の補強ができなかったが、多分大丈夫だと思う。余った45°材は、下の吊り上げ用フレームの補強材として転用する。

吊り上げ用フレームは以下のような感じ。
チェーンブロックはこれを想定。
吊り上げ時に最も頑丈な dewar 側面の両面に吊り上げ用ブロックを取り付ける(写真のアイボルトでは強度が足りなかったのでブロックを修正し、アイボルトも2倍の大きさのものに交換予定)。

アルミフレーム4HFSH8-8080-1800
2HFS8-8080-1960
2HFS8-8080-1800
2HFS8-8080-1500
2EFS8-80160-1660
補強用ブラケット(購入不要)(4)GFBL8-4080-500
          (購入不要)(4)GFBL8-4080-311
キャスタ4CKZJ80-N
接続板4HRMDB-SU-A80-B100-T16-F40-V60-W80-
X10-Y10-M8-L20-S30-G40-ZF6-CC5
スタンド用支柱 パイプ(φ35mm)2SMSTAM35-300
デバイス取付用スタンド4SSTF35
押出厚型ブラケット16HBLTDW8
先入れナット2PACK-HNTT8-8
六角穴付ボルト1BOX-SCB8-20

大体23万円+6万円(チェーンブロック)。

CAD ファイル

組み立てた所(補強用ブラケット取り付け前)

●真空容器の状況

真空容器の最終チェック風景。作業性を考えて逆さまに置かれている。かなり大きめのユニットバスという感じ。He リーク試験は問題なしで、岡山より真空ポンプを持ち込んで真空到達度を調べるための試験を始めるところ。既にある程度の真空になっていたこともあり、15分程度で 10-3Torr に到達した。真空バルブを閉じても 10-5Torr 程度で止まってしまったのが気がかりだが、このまま数日間引いてどこまで下がるか確認する。

上の4つの写真の内、右下の写真の下側のパーツは写真中央付近で溶接してあるのだが、完全に一体化していて溶接痕が全く確認できない。電子ビーム溶接は厚さ 5cm の板を完全に貫通しているらしく、内側も完全とのこと。電子ビーム溶接の威力を改めて実感した。

以下は、搬送用台車の上に乗せて上下逆向きに置き直した時の様子。真空容器内部も反射率が高く(放射率が低く)てなかなかいい感じ。台車との結合はアルミフレームの歪みもあってかなかなか大変で、分光器完成後は、台車から真空容器を切り離したら元に戻すのは困難となることが予想されるので、コールドヘッドのメンテ時も切り離さないほうがいいだろう。

ドーム棟1階の分光器室に入れた所。

●バイコニック面の検査方法

拡張フーコーテストを準備中。

Mirror #1A の予想されるステージ x,y マップ
使用する部分は中央部付近の幅 1/3 の範囲内のみ

Mirror #1B の予想されるステージ x,y マップ
周辺部 3cm は面の傾きが大きすぎてカメラに入ってこないが大半は計測可

●Mirror #2A+B の形状

材質はクリアセラム-Z。
赤線の範囲内が光の当たるところ。
境界部分の加工は適当で OK。
面の形状精度は2λ。
面の相対位置精度は、50μm, 0.01° 程度

左)縦置き時の自重変形による歪みは 25nm / 右)研削時の支持点配置

左)研削時の自重変形(20nm) / 右)研削圧として 6kgw の集中荷重を追加(150nm)

2面の境目を無視して研削すると、以下の状態になる。

数値データ (A: ピンク, B: 水色, C: 周辺部)

●Mirror #3 の形状

この鏡のみ、外形に対し上下だけでなく左右も対称(但し光の当たる位置は非対称)。
バイコニック面の軸は背面に対し垂直なので、断面図は省略。Mirror 3,4 とも形状精度はレーザー波長で2λ。


数値データ

研削時の支持点配置は要検討。自重変形の心配は無いが、研削圧に対する変形はかなり問題になるので、剣山冶具が必要になるかも。

●Mirror #4 の形状


数値データ

研削時の支持点配置は要検討。

●Prism+Grating の形状

各プリズムの形状図面 Prism#2 の下面に Richardson Gratings 53-*-860R を貼り付ける訳だが、こんなに薄くても大丈夫かの確認中。因みに、Richardson Gratings は Spectra-Physics 社に吸収合併されたとのこと。Newport との関係も良くわからんし、どこに発注すればいいのかなかなかややこしそう...

Prism#1 はかなり高額の見積りが出た。S-FTM16 の方を厚くして ZnSe をどこまで薄くできるか設計を修正する必要が出てきた...う~む。とりあえず、可能な限り周辺部を削って設計を変更せずに最小サイズにして再度見積り依頼。

更にギリギリまで切り落としたものが以下。

ここで、何と φ110 x t30 の使われていない ZnSe が出てきた。元々中間赤外のファブリ・ペローのエタロンとして使う予定で、コーティングもされているがもう使わないらしい。これが使えた場合、話は一気に解決して以下のような感じになる。また、レジン貼り付けによる変形を顧慮し、S-FTM16 を通常の反射型回折格子の基盤程度の厚さまで増やした。

実際に完成したプリズムの写真。裏面には新しい AR コートが施されている。

S-FTM16 の方も完成。レジンの貼り付けにまわす。

●冷凍機の接続方法

冷凍機は住重の RDK-400B (100W@40K, 180W@77K)

冷凍機の中にはヘリウムを膨張させるためのピストンがあり、上下方向に振動が発生するため、その振動が分光器側にできる限り伝わらないように配慮する必要がある。ベローズとゴム柱を用いて以下のように接続する。

灰色部分がベローズ(内径130, 外径190)、白色部分がゴム柱、フランジ部分の図面はこちら

完成品の写真

コールドヘッドの先端部は、交換の際に作業がしやすいよう板同士の面接触とする。コールドヘッド側はコールドヘッドの振動や収縮が伝わらないようにヘッド先端と同じサイズのアルミ円盤に薄い銅板を重ねたばね材で接続し、光学ベース側も同様な銅板ばねで接続する。

●真空冷却中でのアクチュエータ

真空冷却中でのアクチュエータをできる限り安くするために、市販の小型アクチュエータがそのまま使えないか試してみた。手始めに手元に余っていたシグマ光機製SGSP-13ACT-B0を分解・洗浄し不要な部分は全て取り外して再組立、500gf の負荷をかけて液体窒素内で動かした所、ちゃんと引き上げてくれたので、使えるという事がわかった。

組み立て時に注意する点は以下の2つ。

  • アキシャルベアリングは、以下の向きで取り付ける。
    また、固定ネジ(下図橙色)は少し緩め、セットビスで固定する。

    (左の向きに入れると、ベアリングホルダがアルミなのでベアリング
    よりも収縮し、ボールに圧力がかかって回らなくなる。)

  • モーター本体と上記ベアリングユニットは強く接続しない。

    こんな感じでモーター組み立て用ネジを長いものにして、バネで固定する。
    モーターとベアリングのユニットの軸同士が、カップリングを介さずに直結
    なので、きつく結合させた場合は温度変化で少しでも歪むと回らなくなる。

しかしその後、低温環境下での長時間駆動試験を行ってみると、だんだんとベアリング部分がカチカチ言い出して抵抗が大きくなり、最終的に動かなくなることが判明。何か対策を考えないと...

カチカチ言う原因はモーター内のベアリングが完全に低温になるまでに結構時間がかかり、そこに残留している水分がなどが時間差で凍る事が原因だと推定された。そこで、ヒートガンでモーター内部の2個のベアリングを加熱し、熱いうちに真空ポンプのフレキチューブ内に入れ、真空にする方法でベーキングをしてみたところ、カチカチ言わなくなった。しかし、ベアリング部の締め付けがやや強くなることが手応えで確認できたため、液体窒素に付けた状態で、直接回転軸を電動ドリルで1分間程度強制回転させたところ、ベアリングは緩くなり、いくらでも問題なく回転するようになった(下写真)。

しかし、その後、この方法でもうまく回らないものが出てくることが判明。結局、ベアリングを使用されている密閉型のものから開放型のものに交換することでどれも問題なく動くようになった。これで、通常のモーターを冷却真空下で回るようにするための手順が確立できた。

常温用モーターを真空冷却中で回せるようにする方法

  • ベアリングがむき出しになるまで完全分解
  • ベアリングをこれと交換
  • 超音波洗浄60分
  • アルコールに2日間漬け置き
  • ベアリング部にアルコールを強制的に流して軸を回しながら内部洗浄
  • 軸を外部から回せる状態にして液体窒素に入れる
  • 軸がカチカチ言うようなら再洗浄
  • 摩擦が大きいようなら電動ドリルでしばらく強制回転(多分不要)
  • そのままモーター回転試験と手応え確認を繰り返し、問題なければ完了

●真空冷却中での傾斜センサ

ロータリーポテンショは樹脂と金属で作られており、樹脂円筒内部に螺旋状に貼り付けられた抵抗線の上を金属接点が螺旋に沿って進む構造になっている。低温に冷却した際、この樹脂円筒の歪みが大きくなって、回転に伴い接点がくっついたり離れたりするため、窒素温度で使えるロータリーポテンショを探すのは難しそうだという事がわかった。その代わりに、ホール素子を使った傾斜センサが使えないか考えてみる。ホール素子は窒素温度でも使える製品はあるし、常温用のものでも窒素温度で使えているものもあるので、大きな問題は無さそう。

SUS304 には磁性はないので、構造体として用いる。銅は SUS304 とほぼ熱膨張率が同じなので、電線を分解して取り出した銅線は吊り下げ用の糸として使える。あとは適当に上下の蓋と吊り具・錘を決め、できるだけ小さいネオジム磁石とセンサを選べば終了だが、選定した磁石に対し最適な感度のホール素子がわからないので、もうちょっと調査が必要。

これを各鏡の側面に固定し、常温で調整完了した際に鉛直方向がホール素子の出力最大となる角度で固定、冷却中もこの位置が保存されるようにモーターで調整しながら冷やしていく。これができれば、モーターの移動量の確認と鏡の傾きに関する情報が得られ、かなり調整が楽になるはず。

「SUS304 には磁性はない」という事だったのだが、実際買ってみたらネオジム磁石はくっつくし、ヤスリで一部を削ったら磁性を帯びて磁石になってしまった... 同じ内径の銅パイプを購入してみる。

ホール素子の読み出し回路の例はここにあって

こんな感じ。真空容器のすぐ外にアンプを置き汎用の AD ボードで取り込むのが楽かな。
また、低温で上記のような定電流回路を使うとホール素子の抵抗が低温で小さくなってややこしいので、とりあえずは汎用電源から定電圧で駆動かな。旭化成のホール素子はなかなかバラ売りしていないのが問題で、他社のものも調査中...

結局、代理店を通して HW-300B, HG-362A を10個ずつ入手する事ができた。以下、ベースにスタイキャストで貼り付けた写真。

AD コンバータはインターフェース社のアナログボード PEX-321316 を購入したが、現在ではインターフェース社独自の linux (プリインストール製品のみ)にしか対応していないという事が判明、動作保証のある debian squeeze を debian のアーカイブサーバから持ってきて何とかしている。しかし、最近の linux で動作保証のあるアナログボードは少なくとも現在国内には無く、海外製品で SENSORAY Model 826(木野くん情報)位しか無いようだ。皆どうしているのか知りたい...

とりあえず、AD ボードのテスト。全16ch に電源を接続して 20回サンプル平均を1回として100回サンプル(約1.2秒)。20回は連続サンプルではない非同期サンプリングの20回ループだが、20回連続同期サンプリングで取得するとなぜか遅くなる(20x100回サンプルに2秒)ので、非同期で走らせている。以下は、電源電圧を -10V〜10V に変えて、電源での値と計測値の差を 16ch まとめて plot したもの。電源電圧の設定単位が 0.01V なので、全チャンネルの同時変化は電源側の問題。そもそも1つの ADC への入力をマルチプレクサで切り替えて動作しているボードなので、ch 間の違いは原理的にほぼ無いはず。

その後、サンプリング周波数が 1kHz になっている事が判明。最高速にしたら 20x100回サンプルにかかる時間は1秒弱になった。

差動アンプはそこらにあるもので適当に製作。ゲインはとりあえず適当に 14倍。

重りの先端に φ1mm x 2mm のネオジム磁石を付けて銅管中に吊り下げ、ホール素子と対向させて下端を固定、上端部を可動とする。とりあえず 150μm/sec (~0.03°/sec) と 50μm/sec (~0.01°/sec) で 3mm (プランジャのストロークで大体これが限界)スキャンしてみる。この作業中に気が付いたが、何かの原因で重りが軸周りに回転すると、最下点での磁石の位置が移動する可能性がある。完全な回転中心に磁石をセットするか、重りが回転しないようにするしかないが、どうしたいいものか...

う~ん、何だか突然動き始めたかと思うと、大きく振動している。磁石が引っ張られているのが外れて振動が始まる感じだ。ちなみにスキャンの向きを逆にすると、

この向きだと、動き出しはスムーズ。上記の試験から分かったことは以下の通り。

  • 振り子は周期1秒程度で振動
  • ネオジム磁石が引っ張られる部分がある(センサ土台のステンレスが磁化?)
  • スキャン速度が速いと揺れが大きい
  • ピーク付近は揺れに鈍感(センサの感度範囲と磁石の直径の影響)
  • 100μm (~0.02°)の違いは検知できる
ピーク付近のところまで高速移動させて急停止し、その後の振動の様子を見た。また、駆動再現性を見るため上図右図と同じ動作を16回行って重ねて plot してみた。

振動がピークを過ぎて行き過ぎると、反転した成分となって現れる。初めの30秒間程度の波形が2重になっているのはこのせい。また、逆方向のスキャンでも動き出しに再現性の悪い引っかかりがあるようだ。こちらも土台と磁石が若干引き合っているように見える。それ以外の再現性は問題なさそう。ピーク付近を、1周期程度のスムージングをかけて拡大したものを見ると、揺れが無ければ(もしくは適切な周期で積算すれば) 100pulse(50μm) レベルでのピーク一の判別はできそうだ。とにかく、土台のパーツをアルミに変更、プランジャのストロークをできるだけ大きく、銅パイプに取り付けるブロックはもう少し小さく、の3点を変更して再度試験。また、現在は磁石とセンサの距離が非常に近いので、アンプのゲインを上げて磁石をもう少し遠ざけることにする。

パーツが届くまでの間、安定性試験。最下点がセンサ前にくるようにしておき、そのまま3日間放置(1分おきにカウントを記録)、3日後に最下点が動いていないかの確認(振動を与えて、左右の振れ量が均等かの確認)をした。カウントの変化は多分温度変化によるものだが、最下点の位置に変化は無かった。少なくとも温度変化以外の要因でがくんと変化するようなことは無さそう。

AD ボードピン番号とケーブル色 (ミスミケーブルは黒赤の順)

ピン番号ピン名ケーブル色ピン番号ピン名ケーブル色
1 ---- 橙短1赤35 ---- 白短4赤
2 ---- 橙短1黒36 ---- 白短4黒
3ACOM1 灰短1赤37ACOM9 黄短4赤
4 AIN1 灰短1黒38 AIN9 黄短4黒
5ACOM2 白短1赤39ACOM10桃短4赤
6 AIN2 白短1黒40 AIN10桃短4黒
7ACOM3 黄短1赤41ACOM11橙短連赤
8 AIN3 黄短1黒42 AIN11橙短連黒
9ACOM4 桃短1赤43ACOM12灰短連赤
10 AIN4 桃短1黒44 AIN12灰短連黒
11ACOM5 橙短2赤45ACOM13白短連赤
12 AIN5 橙短2黒46 AIN13白短連黒
13ACOM6 灰短2赤47ACOM14黄短連赤
14 AIN6 灰短2黒48 AIN14黄短連黒
15ACOM7 白短2赤49ACOM15桃短連赤
16 AIN7 白短2黒50 AIN15桃短連黒
17ACOM8 黄短2赤51ACOM16橙長1赤
18 AIN8 黄短2黒52 AIN16橙長1黒
19 ---- 桃短2赤53 ---- 灰長1赤
20 ---- 桃短2黒54 ---- 灰長1黒
21 ---- 橙短3赤55 ---- 白長1赤
22 ---- 橙短3黒56 ---- 白長1黒
23 ---- 灰短3赤57 ---- 黄長1赤
24 ---- 灰短3黒58 ---- 黄長1黒
25 ---- 白短3赤59TRG IN桃長1赤
26 ---- 白短3黒60CLK IN桃長1黒
27 OUT1 黄短3赤61 ---- 橙長2赤
28 OUT2 黄短3黒62INT IN橙長2黒
29 OUT3 桃短3赤63TRGOUT灰長2赤
30 OUT4 桃短3黒64CLKOUT灰長2黒
31 OUT5 橙短4赤65 ATRG 白長2赤
32 OUT6 橙短4黒66 ---- 白長2黒
33 OUT7 灰短4赤67 DCOM 黄長2赤
34 OUT8 灰短4黒68 DCOM 黄長2黒

●温度計に関して

とりあえずの候補

温度モニタ温度コントローラ温度センサ
理化工業 MA901

Lake Shore 325型

Heraeus C220

Lake Shore 218型 Lake Shore 335型

温度センサを入手したのでスタイキャストで銅板に貼り付け。温度モニタも納品され通信ソフトも完成。

配線して、氷水と液体窒素に突っ込んでみた。氷水の方はなかなか0℃にならなかったが、液体窒素から取り出してすぐに氷水に入れたら、表面が凍ってピッタリ0℃になった(下グラフの 4900秒以降の部分)。液体窒素の温度も -196℃ でほぼピッタリで問題なし。

ADC ボードの DIO 出力を利用して、USB 連動タップの電源を制御し、温度計とヒーターを連動させる試験。これで真空容器内でラジエーションシールドを昇温できる。

●コネクタ付きフランジ

真空対応 50pin D-sub が溶接されている VG150 フランジを購入する事にした。多分、真空側のコネクタは211AC-FS50-HVかな。

出来上がり写真。次は真空容器に取り付けての真空試験。

●光学ベンチ

光学ベンチ部分の厚さは 5cm 分確保しているが、5cm 厚のアルミの板にすると 175kg にもなるので、できるだけ軽くしたい。5cm の板をくり抜いて軽量化するのが理想的だが、それだとかなりの費用がかかる。1cm 厚の板の下に4cm厚のリブをネジで固定して光学系の重量が支えられそうか大体の感触を調べてみた。各光学系の場所に予想される大体の重量のアルミブロックを配置し、半径5cm の薄い円柱で接続して(べた付けだと強度が増してしまうので)光学ベースの変形を調べた。3箇所の脚は 90x40xt1 のガラエポ板を3mm間隔で2枚ずつ配置、計6枚の板で支える。

主要部分の変形は 40μm 以下なので、これなら問題なさそう(上図左)。光学ベンチが縮んだ際にガラエポ脚で発生する曲げモーメントの影響を調べるため、無重力下で3本の脚の底面を外向きに 1mm ずつ変位させたところ、ベース板の変形は 1μm 以下だったのでこちらも問題なし(上図右)。

板は A5052 だが 60x40 角棒は A6063 になるので、熱膨張率が 1% だけ異なる。端と端で 50μm の歪ができるが、その場合の全体の反りを評価すると...

反りの曲率半径:R
反りの中心角 :θ
板とリブの中心間距離:25mm
板とリブの長さの差 :0.05mm

として、

Rθ=1000, (R+25)θ=1000.05 より θ=0.05/25
R(1-cos(θ/2))=Rθ2/8=1000*0.05/25/8=0.25mm

う〜ん、意外と大きい。4cm の板を A5052 で購入して切断してもらうか...

全て A5052 で製作してみた。実際は低頭ネジで組み立てるが、とりあえず普通のネジで組むとこんな感じ。

光学ベンチシールドもかぶせるとこんな感じ。

●冷却時間の見積り

冷却には1週間以上かかることは予想はしていたが、真面目に計算すると上手くやらないとすぐに冷却時間1ヶ月になってしまう事がわかった。以下、その見積り。

  • 冷凍機
     温度 :TCH
     パワー:PCH(TCH) = 295*log10(TCH/19) W(下図)

  • 熱伝導銅板
     温度 :TCH 〜 TRS, TOB
     断面積:s = 20mm x 0.1mm x 20枚 x 8 = 320mm2
     長さ :l = 60mm
     熱伝導率:λ = 398W/m/K
     ラジエーションシールド光学ベンチに半々接続

  • 真空容器
     温度 :TDW = 288K (一定)
     表面積:S = 5.67m2

  • ラジエーションシールド
     温度 :TRS
     表面積:真空容器と同じ
     熱容量:HRS = 38700J/K (アルミ42kg)
     放射率:ε = 0.08 (アルミ反射率 0.92)

  • 光学ベンチ
     温度 :TOB
     表面積:真空容器と同じ
     熱容量:HOB = 387000J/K (アルミ420kg)
     放射率:ε = 0.08 (アルミ反射率 0.92)

計算手順:

  1. TRS = TOB = TDW でスタート
  2. PCH(TCH) = sλ/l・((TRS+TOB)/2-TCH) となる TCH を求める
  3. PRS = sλ/l・(TRS-TCH)/2 (RS => CH への熱流入)
    POB = sλ/l・(TOB-TCH)/2 (OB => CH への熱流入)
  4. LRS = σSε・(TDW4+TOB4-2TRS4) (RS の輻射収支)
    LOB = σSε・(TRS4-TOB4) (OB の輻射収支)
    σ:シュテファンボルツマン定数 5.670e-8W/m2/K4
  5. ΔTRS = (LRS-PRS)/HRS・Δt
    ΔTOB = (LOB-POB)/HOB・Δt
  6. 2. から繰り返す
結果:

現段階では、まずまず冷えるまでに2週間近くかかり、安定するには1か月近くかかってしまう。破線で示したのは放射率0の理想状態の場合だが、これでも100K以下になるのには1週間かかる。銅の熱伝導板はこれ以上数を増やしたり短くしたりするのは難しいので、追加のシールドをある程度入れて少しでも放射率0の状態に近づける必要がありそう。

ラジエーションシールドを組み立てた所。この周りにカネカ極低温用SIを巻いて放射率を下げる事になるが、持ち手の取っ手と外壁の隙間が5mm しかないので、取っ手を折りたたみ式のものに交換する。

●真空試験とベーキング

コネクタ付きフランジとベローズフランジの真空試験と、ラジエーションシールドのベーキングを兼ねて試験を行った。吊り上げ治具を初めて用いて容器を開けたが、開閉作業は思ったより楽だった。蓋を釣り上げた際の固定方法を考えてはあったものの、補強の斜めフレームと干渉するため再検討が必要。とりあえず今回の作業中は横にずらして吊り下げ放置だった。

ヒーターと温度計を連動させてのベーキング。作業終了時に上手く行っていた(下図左)ので、京都に戻って調子に乗って加熱したらヒーターが焼き切れてしまったようだ(下図中)。一度復活するも結局死んでしまった(下図右)... 連続通電時間に上限を設ける必要があるのと、温度計をヒーターに直接接触させる方が安全という事がわかった。この試験の際に気づいたが、ドーム制御棟のサーバー室にあるサーバーの disk が死にかけていて(猛スピードで死に領域が拡大中)、現在の接続を切るともう外部からの接続ができなくなる。今週日曜はこちらが停電となるので、新サーバを準備していって交換しないと...

サーバを新しいものに交換し、通信の障害はなくなった。冷凍機の納品時に、冷凍機を直接真空容器に取り付け、コンプレッサー配置、He 配管作業、試運転まで行った(カメラを忘れたので写真は無し)。最後にヒーターを新しくして温度計の1つをヒーターと直接接触するようにして配置、再度容器を閉じて真空を引き、今度は5℃ずつ変えて慎重に昇温していったが、またしてもヒーターが死んでしまった。納得行かないので、ヒーターを分解して中身を見てみた。平たいものにただグルグル巻いてあるだけで、熱伝導の工夫など一切なし。この構造だときつく折れ曲がる部分が特に真空中ではかなり加熱するだろう。

木野くんよりメタルクラッド抵抗なるものの存在を聞いたので、それを昇温時に使用するヒーターとして内部に常設することとした。候補となる抵抗は以下のもので、15Ωを12個直列に接続しAC100Vに直結で56W(1個あたり 5W)、これが2系統で 112W となる。ラジエーションシールドと光学ベンチBOX に1系統ずつ配線し、蓋とベースの間にはコネクタを設けて切り離せるようにする。配線は AWG24 相当の真空用ケーブルがあったのでそれを使うことにした。昇温時のヒーターとしてだけでなく、これである程度のベーキングができそう。

メタルクラッド抵抗の取り付け作業を行い、温度計の数を8個に増やしてベーキングを開始。温度の高い2つはダミー光学ベンチに付けられたもの(まだ熱容量が小さいので、温度が良く上がる)。温度制御の基準とする温度計を 7,2 と変えながら挙動を確認してみた。今のところ順調。Web Camera も付けておいたので、電磁バルブの状態と、ターボポンプがちゃんと回っているかどうかの確認がリモートでできるようになった。

あまり頻繁に ON/OFF を繰り返すと壊れてしまう可能性が増すため、ヒステレシスを設けて徐々に昇温。50~60℃で1日維持できたので、ベーキングは終了してそのまま放置。

●冷却試験

冷凍機とラジエーションシールド、ダミー光学ベンチを接続し、冷却試験に向けての真空引きを開始。リモートでモーターと傾斜センサの常温での動作(50μm/s)は確認できた。ターボポンプはこれまで加速時間オーバーで引き始めは10分おきに停止してしまっていたが、PC からの制御で4分おきにターボポンプを短時間 OFF にすることで手動での再起動の必要がなくなった。ダミー光学ベンチとの熱的な接続は今の所適当。

真空引きを始めてから4日目で冷却を開始。初回はとりあえず真空ポンプを回したまま冷却してみる。ダミー光学ベンチの温度が-100℃程度のところでモーターを駆動したら、やたら動きが悪く、最後にはロストしてしまった。よく考えたら、プランジャ側の油を抜きをしていない事に気がついた。同じプランジャを購入して、冷却しても固さが変わらないか確認する必要がある。冷却は全く問題ないが、このままでは光学ベンチ部分の熱容量が10倍増えたら温度安定までに20日近くかかってしまうため、銅の薄板部分をできるだけ短くして、熱的な接続を数倍増やす必要がある。大体平衡に達したので、冷凍機を止めて自然昇温してみる。

●塗料試験

以前、Velvet sheet か Vantablack を光学ベンチ内壁塗料として検討していたが、入手性や価格などの関係で断念したので、遊馬製作所 光学用黒つや消し塗料がどの程度の反射率と耐久強度を持つのか調べてみた。

以下の L アングル2本の外側4面のうちの1面を #60 のヤスリでこすり、塗料を薄めずに通常面とやすり面1面ずつに1度塗り、乾いたところでそれぞれの 2/3 部分に2度目を塗り、再度乾いたところで 1/3 部分に3度目を塗った。次に塗料を薄め液で 1.5 倍に希釈して同様に1〜3度塗りをし、最後に塗料を2倍に希釈して1〜3度塗りをした。説明書きには、濃度が濃すぎるとテカリが出ると注意書きがあったが、塗料のビンの上の方から使うかよく撹拌して使うかで濃度も違うようで、薄めずに塗った場合でもテカリが出ない場合もあった。

反射率の測定は日立の分光光度計 U-4100 を用い、初めに反射率の基準となる鏡面の測定を行った後、L アングルの1面の1度塗りと3度塗りの部分(分光光度計の反射率測定ユニットの形状の都合で、中央部の2度塗り面は測定できなかった)、サンプルを外したバックグラウンド計測、の順での計測を1セットとして、4面分計13回の測定を行った。グラフの上段は4回のバックグラウンドレベルが測定時間を通じてほぼ安定している事を示しており、この4回の平均値を0レベルとして反射率の計測値から差し引くことにした。その結果がグラフの下段。線の色はが原液のまま、が 1.5倍希釈、が2倍希釈、実線が1度塗りで点線が3度塗り。850nm 部分は、2種類の検出器のどちらも感度が悪い部分で、信頼度が低い。

この結果を見ると原液の薄めの部分〜1.5倍希釈が良く、重ね塗りはテカリが出る率が上がって反射率が増す傾向にあるようなので、ムラ無く塗れれば1度塗りで大丈夫そうだ。反射率は 0.1〜0.2% と、相当昔に販売終了となったアサヒペンのスエード調黒と同等なレベルで(見た目の印象よりもいい数値が出ているのが気になるが...)、見た目の印象はそれよりも塗料の強度はありそう。次に窒素温度と常温のヒートサイクルで塗料が剥がれないかを調査する。

液体窒素に入れて出したらこんな感じ。一番左は剥がれていないが、これはやすりがけをした面。やはり、ある程度表面をザラザラにしないと塗料は剥がれてしまうようだ。

Velvet が塗料としても入手できることがわかったので、買ってみた。一緒に販売されているシンナーは非常に高い上、発癌性物質を含んでいるため、とりあえず1缶のみ購入しておいてより安全で安い市販のラッカーシンナーに溶けるかどうか試してみた。先に塗るプライマーも Velvet 本体もどちらもちゃんと溶けたので、大丈夫だった。スプレーガンで塗るのは面倒なので、とりあえずハケで試験用の L アングルにプライマー(硬化剤を 1/7 の割合で混ぜて混合)を塗り、3日してから Velvet を薄い状態からだんだん濃くして8通りに塗ってみた。見た目はやはり Velvet の方が明らかに反射率が低い。反射率も測定してみる。

青から赤にかけてだんだんと濃く塗ったものだが、濃く塗るほど反射率は下がり 0.02% 程度になった。この値は5°入射に対する鏡面反射方向のみの反射率だが、アマチュア用の塗料と比べて 1/5 〜 1/10 に反射率が落ちた。やはり Velvet がいいようだ。市販のラッカーシンナーでも薄められるので、内部の塗料はこれで決まり。

今回はプライマーの効果に期待してやすりがけをした面を作っていないが、液体窒素に入れてヒートサイクルの試験もしてみた。結果は全く問題なく、何の変化も見られなかったので写真もなし。プライマーを塗る場合はやすりがけの必要はないようだ。

屋上でプライマーとベルベットの塗装を行った。マニュアルには、シンナーを 5% 加えろとあるが、元の塗料がゴテゴテ状態なので、5% 足したところでなめらかな状態にはなりそうもない。50% 近く足して限界まで溶かし、上澄み部分を取り出してスプレーした。今考えると、代替品のラッカーうすめ液だと溶ける量が少ないのかもしれないが、まあ、一応それっぽく塗れた。

●Prism+Grating の貼り合わせ

海老塚さんに、ZnSe と S-FTM16 の貼り合わせ方法を聞いた所、スタイキャストの 1264 というもので貼り合わせるとのこと。早速買ってみて試験してみた(ホール素子貼り付けに使ったスタイキャストは 1266 で、1264 はそれよりもストレスが溜まりにくいもの)。

貼り合わせ時は、反対側が回折格子面となっている事から追加の荷重をかけられないので、S-FTM16 のガラスの厚さ相当の圧力がかかるようにして2日間放置した。貼り付け前に2枚重ねた状態での透過率を測定してあるので、張り合わせ後に再度透過率を測定して違いを確認する。

上図で貼り合わせ後が、貼り合わせ前がで、はそれぞれの2回の平均の比を取ったもの(上段は何も無い状態での測定値)。貼り合わせにより表面の反射ロスが減り、透過率が 6〜8% 改善した事がわかる。少なくとも接着で生じる厚さではスタイキャストの透過特性は波長2μm 以上でほんの少し見られる程度だ。

回折格子が納品されたが、裏面から見るとなぜか灰色に見える。グリズムではこんな事はないのに、なぜ灰色なのかをグリズム製作との工程の違いと併せて問い合わせてみたが、製法は同一とのこと(レジンとコーティングは同時圧着で、グリズムは圧着後に表面のコーティングを剥がすのだそうだ)。

直感的には、裏面からの反射率は表面からの半分以下の感じ(分散方向に蛍光灯の向きを合わせて波長方向に積分して評価)。裏面からだと分散強度が 1.6倍になる事が原因の可能性もあるが、ちょっと納得行かない。赤外線カメラが欲しいところだ。とにかく何らかの方法で赤外反射率が確認できるまでは ZnSe に貼り付けるわけにはいかない。背面角のヒビは、事前に連絡があったが ZnSe プリズムの外側になるので問題ない。

CMOS カメラと赤色ダイオードレーザを用いて、簡単な効率チェックをしてみた。傾斜ステージと回転ステージを重ね、その上に素子ホルダを置く。それに正対させて ND フィルタ付き CMOS カメラとレーザヘッドをできるだけ近づけて置く。最短の 16msec 露出で、まずは、平面鏡のカウントを調べ、直後に参照鏡を挟み込んでカウントの比を取ることで、レーザー波長(635nm)での相対効率を調べる。

カウント比はほぼ1だったので、問題なく計測できることを確認。次に回折格子の表面側から入射させてみる(右列は参照鏡の写真とデータ)。

カウント比は 2.77/5.20=0.53、隣の次数の次に明るいスポットに合わせると 0.29/5.32=0.055 と1桁暗くなる(反対側はもっと暗い)ので、1つの次数にエネルギーが集中している事がわかる。因みに、この回折格子のブレーズ波長は 4.46μm (これは実測値で、groove 210本/mm からブレーズ角を算出すると 27.93°となる)で、4.46/0.635=7.02 とほぼ7次の次数にピッタリ合っている事もエネルギーが集中する理由となっている。次に、問題の裏面から入れてみる。

背面からの入射の場合 16msec では暗くて良く見えなかったので、露出時間をほぼ10倍の 157msec にした。これを顧慮するとカウント比は 4.48/5.41*16/157=0.084、隣の次数の次に明るいスポットに合わせると 1.07/5.47*16/157=0.020 となり、2つを合わせても表面側の 1/5 になっている。使用したレジン(#3)の屈折率は 1.56 なので、背面から見た時のブレーズ波長は 4.46x1.56=6.96μm で、レーザーの次数は 6.96/0.635=11.0 でピッタリ11次。両側の複数の次数に同程度のエネルギーが分かれる(目視では5個くらいのスポットができている)、背面表面での反射ロス (往復で 〜20%) としても、レジン部分で更に半分ロスしていないとこの状態にはならない。以前計算した gsolver での効率を見ると、0.6μm での理論的な効率自体がかなり低そうだったが、計算波長範囲と次数の範囲を増やして計算しなおしたら、理想的な形状が出ていれば短波長側では逆に効率が上がる感じだ。また、レジンの透過率は Richardson Grating の HP 上にあって、ほぼ 100% で問題ない感じ。長波長での試験のために、ソーラボで 980nm のレーザー950nm カットオンフィルターを買ってみる。

意外と明るかったので結局 950nm カットオンフィルターは使わず、普通に ND フィルターで同様に測定。

表面側で一番明るいスポットの効率は 2.10/7.23=0.29、隣の2番目に明るいスポットは 0.73/7.35=0.10 なので、波長が長くなったからといって良くなるというわけでもなく、むしろ若干悪くなった感じだ。次数は 4.46/0.98=4.55 ちょうど次数の真中という事も関係している可能性がある。裏面からだと...

0.87/7.19=0.12、両隣は非常に暗かったのでまあ効率としては赤色レーザーの時と同程度か若干良くなった感じ。次数は、4.46x1.56/0.98=7.10 でほぼ7次。この状態で表面での反射成分を頑張って測ってみる。

レーザーが見えないので一苦労だが、何とか入った。レファレンスを撮ることができないので、レーザー強度が上の試験と余り変わっていないと考えると、0.06/0.72=0.083 で、まあ大体予想通り。大半のエネルギーはやはりレジン付近で吸収されてしまうのか?

●Hall 素子低温試験

1回目の冷却試験の際、ホール素子の出力電圧が随分低くなっている事に気がついたが、よく考えたら2種類入手したホール素子のどちらを使うかを常温の特性で決めていたので、窒素温度での特性を確認してみる事にした。入力電圧の最大値は InSb のHW-300Bは2V、GaAs のHG-362Aは8Vだが、比較のためどちらも常温での入力電圧は 2V とし、窒素温度では電流値が 10mA を余り超えない範囲で上げていく事にした。結果は以下の通り。

常温 2V (一番左)では InSb の方が GaAs よりも4倍以上感度がいいが、低温(右側折れ線)では InSb よりも GaAs の方が圧倒的に優秀であることが判明した。この試験では磁石を密着させたが、傾斜センサでは少し離れていること、増幅回路のゲインが 14倍であることを考えると、HG-362A を常温でも低温でも入力電圧 5V で使うのが良さそうだ(常温でも 8V までは出力が入力に比例)。InSb の mobilityGaAs の mobility の温度特性の定性的な違いはあまりなさそうだが、このページの Fig.9,10 辺りを見ると、InSb は冷却すると抵抗値が急激に上がっていくようだ。mobility は上がるのに抵抗値も上がるとは理解困難だが、GaAs の方が素性がいい事は確かなようだ。

というわけで、傾斜センサのホール素子を全て HG-362A に取り替え。

●冷却試験その2

アクチュエータをベアリング交換したより信頼性の高いものに取り換え、プランジャも分解洗浄し、傾斜センサを GaAs タイプのものにして再度冷却試験。ベーキングは無事終了し、冷却開始。今回は内部に活性炭を多く入れ、冷却開始と同時に真空バルブを閉じて冷却速度の違いを見る。傾斜センサはギリギリの振り子の長さを狙いすぎたせいか、重り先端の磁石がホール素子に少し接触しており、うまく機能していない...(モーターが動いている事は確認できた)

冷却性能は、前回のバルブ全開+ポンプ引きっぱなしの時とほぼ同じだったので、最終的にはこの形態で冷却するのが安全そうだ。今回はこれが確認できたので冷却試験は終了し、常温に戻す。

前回の試験では0℃以上になるのに6日かかったのが、今回は 1.5日で0℃以上になった。温度上昇により真空度が急激に悪くなり、温度が上がったものと思われる。真空容器が結露している可能性が高いかも。頻繁に結露すると、ベローズ部分が錆びて真空漏れを起こす可能性があるので、ベローズには錆止めをスプレーしておいた方がいい。

●Prism+Grating の貼り合わせ その2

回折格子を裏面から使う事が困難となったため、表面側をスタイキャストで埋めて使うことを考えてみる。まずは、スタイキャストの透過率をちゃんと調べるため、厚さ 1.7mm の空間を全てスタイキャストで埋めて透過率を調べてみた。また、測定後のサンプルをそのまま液体窒素に入れてみた。

左図上段のは前回測定した際のスタイキャストで密着させた時のデータ。は、今回準備した厚さ 1.7mm のスタイキャストで接着した場合のデータ。下段は上記2つの比から算出したスタイキャストの内部透過率を 0.1〜1.6mm に換算したもの。これを見ると、スタイキャストの厚さは 0.1mm 程度に抑えないとかなりの吸収が出ることがわかる。また、そのまま窒素温度に冷却すると、直径15mm の小さなサンプルであるにも関わらず、スタイキャストが粉々にヒビが入ってしまった。とにかく、スタイキャストの層はできるだけ薄くする必要があることがわかった。適切なスペーサと、ヒビ割れしない厚さを調査する。

その後、上記写真のφ15mm基板の他、接着剤試験で用いたφ15mm ミラーのコーティングをキッチンハイターで剥がして3組のサンプルを作り、スタイキャストの厚さを 50μm x2, 100μm, 200μm の3種4組のサンプルを製作した。200μm の急冷はミラーごと割れてしまったが、100μm, 50μm のものをゆっくり冷却するとスタイキャストも割れなかった。50μm 急冷はやはり基板から割れてしまった。厚さ数十μm 以内であれば、何とか割れないようだ。

テスト用回折格子を購入した。

とりあえず、同様に表面と裏面の効率を2種類のレーザーで計測してみる。

635nm 表面:

25% => 60.7%

21% => 22.8%

980nm 表面:
25% => 67.1%

635nm 裏面:(露出時間10倍)
1.7%

980nm 裏面:(露出時間5倍と10倍)
11%

3.3%

目で見た感じではこの回折格子も裏から見るとやや灰色に見える。何だか、2種類のレーザーで裏面からの効率がかなり異なる結果が出たが、どうやら、画像の平均値が露出時間に比例していない感じなので、ハロゲン光源で CMOS 全面を照らし露出時間を色々変えて平均カウントを調べてみた。

グラフから、4.7 カウント程度負のバイアスが乗っており、それが低いカウントでの線形性を損ねているようだ。カウントが低い場合や、スポットの面積が大きい場合はかなり影響が出る感じだ。どちらにしても、表側だけが今回の実験対象なので裏面の結果はこれ以上深く調べないことにする。

表側の効率に関しては、CMOS の背景光が0にならないように ND フィルターのカメラ側に光を当て、アルミミラー、回折格子、レーザー OFF の順で素早く露出して fits で保存、背景光を差し引いて半径 300pix 内部のカウントにより明るさを評価した。その結果、635nm で 60.7% と 22.8%、980nm で 67.1% となり、これが正しい値のようだ。

i-Fizeau で回折格子の面形状を調べてみた。

テストとしてφ50mm 平面鏡(安物)、テスト用回折格子

納品された回折格子2つ、裏面からの出来の良い方と悪い方の順
(計算領域を○&□で選択できないので、仕方なく○で計算)

最後のは縞数が少なすぎたが、どれも形状としては問題なさそう。

スタイキャスト1264 を混合後、注射器に入れて真空引きしてから回折格子の上に盛り、上に窓材を置いた。作業直後はブレーズは正常に保たれている感じ(ゴミの混入には注意していたが、何やら影のようなものが...)。

とりあえず、スタイキャストの影響を調べるため、分光計で0次光の効率を測定。ブレーズに対し4方向からの入射となるように90°ずつ回転させて4回測定した。

右図上段、がブレーズに対し直角方向から入射、が平行方向からの入射。どちらもスタイキャストの吸収が見られないことから、厚さは100μm よりは十分に薄くなっているものと考えられる。

前回と同様に2種類のレーザーと背景光としてハロゲン光源を用いて効率を計測したところ、635nm で 40.5%(60.7%) と 9.3%(22.8%)、980nm で 39.1%(67.1%) となり(()は貼り合わせ前の値)、635nm の片方ではやや暗くなったが、それ以外では2/3弱程度。45°近い入射角での表面反射と張り合わせ面でのそれぞれ2回のロスを考えると大体想定通り。貼り付け前の次数は 1.6/0.635=2.52 と 1.6/0.98=1.63、貼り付け後の次数はそれぞれ 1.54倍して 3.88 と 2.51 なので、0.635nm の張り合わせ後の4次光はブレーズ角に近くやや良い値になっているかも。

上図左は貼り付け前、右は貼り付け後のスポット形状(次数は同じではない)。左中段で像が歪んでいるのは、レーザーのモードホップの最中(効率に影響が出ていたかも)。980nm の像(1/2 に縮小してある)の印象が異なるのは、見えない波長のレーザーであるため回折格子への当たり方が一定せず、ビームの一部がケラレている可能性がある。

面形状も問題ないので、ゆっくり冷却してみる。液体窒素すぐ上に吊るして十分に時間をおいてから、液体窒素に数分浸し、取り出してすぐに袋に入れて常温に戻る様子を観察した所、温度ムラがあるときは油膜のような渦が格子面上に現れたものの、全体が常温に戻った際は元の状態に戻った感じだ。効率を測定してみると 635nm で 39.9%(40.5%)、980nm で 36.9%(39.1%) となった(()は冷却前の値)。980nm の方がやや低いがレーザーが偏光している可能性もあり、その場合は変光の向きによって結果がかなり影響を受ける。目で見た印象は問題なさそう。

実際のプリズムは結構重量があるので、ブレーズ面保護のためにも以下のような方法で張り合わせるのが良さそう。

プリズムなど貼り合わせの際に、位置決め治具を兼ねて素子ホルダを先に作っておくのが良いと考え、ホルダを設計した。ジンバル式の角度調整可で、素子は位置決めパーツに当て、反対側をプランジャで押して固定。

●冷却試験その3

傾斜センサの試験ユニットを2個にして再挑戦。調整中は問題なかったが、色々繋ぎ変えて確認していたせいか、京都に戻ってから片方の信号が正常に出ていないことが判明...(次回行った時に要再確認)。ベーキングの自動 sh スクリプトによりベーキングは自動終了。

下図左は冷却中の傾斜センサのカウント変化。1番()は信号が正常に出ていないセンサ。2番()と4番()はアクチュエータの付いていない傾斜センサ。カウントのピーク付近が冷却が平衡状態に達した辺りで、先に外側の銅パイプが冷え、1日程度の時間差で吊るしている細線が冷えているものと考えられる。2番のカウントが不安定な原因は要調査。4番は冷却途中で中心からカクンとずれた感じで、多分、筒全体を固定している部分がずれた可能性が高い。下図右は冷却開始から5日半経って十分冷えた状態でのアクチュエータ駆動による傾斜センサの値の変化。y 方向を -0.25mm(), 0mm(), +0.25mm() 変えた3か所で x 方向に -0.75mm ~ +0.75mm を30秒で駆動させてスキャンしたもの(は固定してある4番のセンサ)。y=+0.25 での挙動が変だが、2度繰り返しても同じ動きのため、磁石が何かの金属に反応しているものと考えられる(磁石はセンサそのものにも少し反応するようだ)。

ピーク周辺での電圧変化を2次元で調べるため、±1mm の範囲内を 0.05mm ステップで 41x41 グリッドで4秒ずつ停止して3周期を計測して取り出し、その平均値をマップにしてみた。図は左から出力電圧(V), 周期(秒), 波形誤差(dV)。計測に3時間程度要するので、その間に最大電圧が変化して形状に影響が出るため、3回計測して再現性を調べる。ほぼ同じ挙動が再現されていることが確認できたが、振り子の周期が短くなる領域は、磁石が何らかの金属に反応しているものと考えられる。この間、ダミー光学ベンチの温度はモーターの発熱で2〜3度温度上昇した(もちろん、停止の度に保持電流は止めている)



●Prism+Grating の貼り合わせ その3

Grating を裏から使えなかったので、表側に貼り合わせるための S-FTM16 のプリズムを作った。今回は基板を厚く作る必要がないため、5mm 厚さを減らして製作した。届いたので、早速スタイキャストで 接着! 。1年以上の歳月と200万近くかけて入手したものを一発勝負での接着なのでヒヤヒヤものだったが、まずまず上手くできた(非常に小さい気泡が2個入ってしまったが...)。接着剤の量が多すぎて小型の4本の注射器に分けて真空引きしたため、回折格子の中央に接着剤の山を作るのに時間がかかったこと、回折格子の溝が以前練習したテスト回折格子よりも深いため、スタイキャストが溝に沿った方向にしか流れず、全体の傾きを変えるなどしていたためスパっと作業できなかったのが想定外だった。ZnSe との貼りあわせの方が流れやすいという点で多分楽だと思う。下右の写真に模様のようなものが見えているが、接着剤を垂らしたときにその縁部分に痕がついてしまったようだ。目で見た感じでは回折格子としての性能は問題なさそうだが、若干の効率低下はあるかもしれない。結局、バネで吊り下げての接着は行わなかった。

テスト回折格子の接着の際には、いつまでたってもベトベトしていたスタイキャストが、今回は3日でほぼカチカチになった。なかなか固まらないのでいつでも固定治具から剥がせると思っていたのが、既に剥がすのが困難な状態に! こんな事なら全体をもっと持ち上げておくべきだった。接着面を水平にするため、底面を斜めに持ち上げていた狭い方にスタイキャストが入り込んで幅3cm 位で固まっている。力をかけるわけにはいかないので、ガラス面を傷つけないように細心の注意を払って帯のこ盤で切る、冷やすを繰り返すこと2時間、何とか切り離しに成功した。2液の混合比は前回と同じだったが、今回は念入りに混ぜたのと、室温が高くなっている事が固化を早めた要因かもしれない。接着剤の固化にはムラがあるということを学習した。

大体、予定通りの仕上がり(相変わらず裏は灰色...)。
レーザーで効率を測定してみた。下右写真で13次光が写っていないが、素子ホルダの支柱で隠されている。


635nm 10次、17.6%


635nm 11次、23.3%


980nm 7次、48.0%

635nm の方はほぼ常に3モード間をふらふらとふらつく感じで、11次の計測時はいつまで待っても1つのモードに落ち着かなかかったため、モードホップは無視して計測。635nm は2つの次数の和で40%、980nm は48% の効率があるのでこれなら問題なさそう。目で見た感じでは、表面での反射光が10% 弱程度、0〜9次と12次が平均で4% 程度、多重反射成分も考えると大半のエネルギーが説明できそう。ZnSe と貼り合わせて反射ロスを減らし、波長が長くなることによる効率 UP を見こめば、60% 程度以上の効率が期待できる。

I-Fizeau を用い、10次光で面精度を測定した。アパーチャは〇で計算。

接着したことにより、反射波面で1λ中央が盛り上がったかと思ったが、この回折格子は接着前から中央が0.5λ盛り上がっていた(解析ソフトで凹凸が逆だが、被検光と参照光の位相シフトが前回は逆転していたため凹凸反転している)ので、それが増幅された感じ。まあ、分光器の入射ファイバー直径がレーザー波長で20λ相当なので、この量は問題ない。とりあえず、ここまでは何とかなった。

最近、暑い日が続き、不在の間は室内温度が40℃近くに上がったためか、テスト用回折格子がひどい状態に。こうなったら再起不能なので(この回折格子は、ラッカーシンナーに数日漬けておくことでスタイキャストが綺麗に取れて復活したが)、とりあえず本番用回折格子は周囲にカプトンテープを一周巻いておいた。光学素子用のスタイキャストは特に高温に弱いという事が良くわかった。

●Prism+Grating の貼り合わせ その4

回折格子ホルダの内枠ができたので、ZnSe プリズムと回折格子を合わせてみた。接着前にこの状態での効率を調べてみる。


635nm 10次、9.9%


635nm 11次、12.3%


980nm 7次、38.5%

前回の結果と比較して、ZnSe プリズムの往復通過での効率は、635nm で 55~58%、980nm で 80% であることがわかる。この試験の最中に、980nm のレーザーはかなり偏光しており、レーザーのスポット角度により効率が最大2倍程度変動する事に気がついた。回折格子の溝と偏光方向が平行の場合に回折格子の効率は最大となるので、この影響が出ているようだ。この測定値はかなり最大に近い状態にあると思う。

接着完了。結構大き目の泡が1つと小さい泡が3つ入ってしまったが、ZeSe を抜ける角度が全反射になる角度で見ない限りほとんど目立たないので、余り問題とはならないと思う... とここで信じられない痛恨のミス発覚! 回折格子を 90°間違えて貼り付けてしまった。昇温して分離することを考えるしかないと思うが、回折格子のレジンが変形する可能性大なのでかなり無理っぽい...。幸い回折格子と ZnSe の材料はもう1つあるので作り直すしかないか。う〜ん、それにしても何度か練習してからの作業だったのになぜ気づかなかったのだろう。

とにかく何とか昇温するしかないが、机の上で固まっていたスタイキャストを、98℃ の熱湯に漬けても少し柔らかくなる程度だったので(テストサンプルの貼り合わせは明らかに配合比ミスだったという事のようだ)、150℃〜200℃ 程度にまで昇温する必要がある。油で揚げるかトースターで焼くかだ。とにかく ZnSe プリズムだけでも引き離し、回折格子が耐えられれば儲けものというつもりで、たまたま自宅にあった未使用のトースターで30分間は ON/OFF を繰り返してゆっくり昇温し、その後 30分連続加熱(実際はサーモスタットが働いて数分おきに ON/OFF を繰り返す)したところ、ZnSe プリズムの分離に成功した。しかし、案の定、回折格子は明らかにボロボロで使い物にならない。次に回折格子に貼り付いている S-FTM16 のプリズムを外すべくガンガン加熱したが、ビクともしなかったので諦めて、S-FTM16 のプリズムだけ再度製作することにした。ZnSe 側に薄く残ったスタイキャストは、ZnSe が柔らかく毒性のある材料のためシンナーで落とす事とし、AR コート側にシンナーが付かないように注意して10分漬けてティシュで拭くを繰り返し、大体落とすことができた。AR コートはかなり加熱されたが、ZnS で 200℃ までは大丈夫とのこと。見た目の印象は全く変化は無さそうなので、次回の貼り付け前後に計測する効率で数値として確認する。

●Prism+Grating の貼り合わせ その5

再製作したプリズムが納品されたので、もう1つの回折格子に貼り合わせてみる。その前に効率を確認。


635nm 7次、60.4%


635nm 6次、11.5%

635nm で異常なかったので、980nm は省略。
もう接着も慣れてきたので以前よりは上手に接着できた。

効率測定してみる。


635nm 11次、29.3% (以前は 23.3% だった)


635nm 10次、24.6% (以前は 17.6% だった)


980nm 7次(スポット縦)、45.7% (以前は 48.0% だった)


980nm 7次(スポット横)、40.3% (以前の計測はなし)

980nm の方はスポットを回転させるともっと違いが出るかと思ったが、意外と変化は少なかった。以前のものと大体同じ効率が出ているので、ここまでは上手く行っているものと考えられる。

I-Fizeau を用い、10次光で面精度を測定した。アパーチャは〇で計算。

前回と同様、貼り合わせることによって中央部が1λ弱程度凸面に盛り上がったが、この程度であれば問題ない。

前回同様、貼り合わせる前に効率測定してみる。


635nm 11次、10.1% (以前は 12.3% だった)


635nm 10次、9.0% (以前は 9.9% だった)


980nm 7次(スポット横)、43.1% (以前は 38.5% だった)

まあ、これも前回とほぼ同様で、ZnSe プリズムを焼いたことによる AR コートの変化は無かった感じ。往復での ZnSe 透過率は 635nm で 35%, 980nm で 94% と、980nm での値がかなり高いが 980nm レーザーは目に見えないため、詳細な状況が確認できない。今度こそ間違えないように接着する。

4回目の接着でてきぱきやりすぎたのか、細かい泡が結構入ってしまった。泡を追い出すための減圧時間が短すぎたか...

ZeSe を抜ける所で全反射角になる角度で見ると泡がはっきり見えるが、実際に使用する正面に近い角度ではほとんど見えなくなるので、大して問題にはならないと思う。効率測定してみる。


635nm 11次、15.0% (貼り合わせ前は 10.1%)


635nm 10次、12.7% (貼り合わせ前は 9.0%)


980nm 7次(スポット横)、42.7% (貼り合わせ前は 43.1%)

貼り合わせで反射ロスが減ったようにも見えるが、980nm に変化がないのでプリズムのどの厚さの部分を通過したかによる違いもあって、効果があったのかどうかよく分からない状態。まあ、以前の計測とも大体合っているし、特に悪いことは起こっていないと思う。面形状を計測する。

I-Fizeau を用い、10次光で面精度を測定した。アパーチャは〇で計算。

左は tilt 成分だけ除いた結果。ZnSe 貼り合わせでそれまで凸に歪んでいた面が大きく凹んだ。ビームの当たる範囲内では3λ強の変形なので少し気になるが、focus 成分を除くと右のようになるので大した問題ではないだろう。それにしても、泡の影響は目で見える範囲よりも大きく、1/2λ程度の不連続が発生している。今回は問題ないが、なかなか貼り合わせを完璧にするのは難しい事を実感した。

ホルダーに入れた所。マイクロヘッドの付いている所は、最終的にはアクチュエータが付く予定。次は、真空容器に入れて冷却に耐えられるかの試験。

その後、Zemax で回折格子に3λ強の変形(2μm)の凹みを与えて確認した所、focus 合わせだけでは像が 20% 悪化するという結果となった。まだ製作していない凸面のバイコニック2枚を少し修正して対応すれば設計値としての像の悪化は 1% に抑える事ができる事は確認したが、膨張率は ZnSe が 7e-6、S-FTM16 が 9e-6 で、200K の温度変化では約100mm の接触面が 40μm だけ S-FTM16 の方が小さくなるので逆センスの歪みが発生するはず。この歪みの大きさを評価してからの方が良さそうなので、それを計算することにする。

ANSYS で温度変化による回折格子面の歪みを計算してみた。パラメータは以下の通り。

ZnSe

  • ヤング率 67.2 GPa
  • ポアソン比 0.28
  • 密度 5.27 g/cm3
  • 線膨張係数@ 7.57 x 10-6/°C
  • 熱伝導率 18 W/m/K

S-FTM16

  • ヤング率 65.3 GPa
  • ポアソン比 0.238
  • 密度 2.64 g/cm3
  • 線膨張係数 9 x 10-6/°C
  • 熱伝導率 0.947 W/m/K

室温22℃から -200℃ まで温度変化させたときの変形が上図。ビームが当たる部分は薄黄緑と黄緑の中間部あたりまでなので、26.4-17.1=9.3μm 凸面になっている。現状で 2μm 凹面なので、7.3μm の凸面になりそう。バイコニック凸面の形状を変える必要がある...

計算してみたところ、焦点合わせのみでは像サイズが 2.6倍に悪化、凸面バイコニックの修正で J-band で 20% 悪化レベルにまで戻せる事は確認したが、問題は新たに発生する色収差だ。張り合わせ面が平面のまま回折格子面だけが凸面になったとすると、全体として凹レンズになるので、色収差が発生する。バイコニックで 20% 悪化レベルに抑えたとしても、観測波長域の両端ではこれも 2.6倍程度に悪化する事がわかった。

ここまで考えると、ZnSe と S-FTM16 は張り合わせるのではなく、両面に AR コートをして重ね合わせるのが良かったのかもしれないが既に手遅れなので、プリズムの裏面中央に引っ張りを与えて、冷却による変形を補正する事を考える。だんだん無茶な話になってきたが...

計算してみたが、回折格子面を 7μm 凹ませるには 100kgw で中心を引っ張っても不足であることが判明し、外力で変形させることは困難と判断した。変形の影響をより正確に評価するため、他の面の変形も調べてみた。

ZnSe と S-FTM16 の接着面、ZnSe 表面 ともに回折格子面に対し傾斜しているのでわかりにくいが、傾斜に対して直交する方向の変位量を見ると、どちらの面も周辺に対し中心部が 10μm 程度膨らんでおり、ほぼ同じ曲率で変形している事がわかる。この条件で影響を再評価してみる。

メニスカス状に変形する場合、焦点合わせのみでは J-band で像サイズが 40% 悪化、z や K では色収差でやはり 2.6倍程度まで悪化する。バイコニック面形状で J-band は補正できるがそれ以外ではほぼ改善できないので、もうこれで行くしか無い... と思ったが、メニスカスになるのであれば球面波を入射させれば色収差なく球面波で出ていくのではないかと思い、スリット位置も同時に動かすことにした。すると、スリットを 1.3mm 遠ざけ、検出器を 0.088mm 遠ざければ全体的に 4% の悪化で抑えられることが判明。メニスカス形状で変形してくれる限りはこの方法でどのような曲がりにも対応できることがわかった。一安心。あとは本当に 77K にしても割れないのか冷却試験だ。

ZnSe と S-FTM16 は上記パラメータによると熱伝導率に20倍の違いがある。一方、ZnSe は中間赤外で透明なので、放射冷却ではなかなか冷えない。S-FTM16 と ZnSe を同じ速さで徐々に冷却するには、S-FTM16 の方から熱を奪い、ZnSe の熱は S-FTM16 を通して流すのが安全だ。現在のホルダーは下図の赤丸部分で表側では ZnSe, 裏側では S-FTM16 と接触しており(裏側上部の2つの穴にはプランジャが入り、そのバネ力で保持する)、このままでは結構 ZnSe からも接触でホルダーに熱が流れることになる。

表側の ZnSe との接触箇所を全て少しずつ削って触らないようにし、横方向の動きを固定するために S-FTM16 を横から押すバネを背面側に追加する。また、S-FTM16 部分は斜めに傾いているので、斜面に沿って前方に滑る力が発生するが、前面プレート(上図では表示していない)の縁に何か貼り付けて止めたい。0.5mm 小鉄球でもいいが、ZnSe は柔らかいので万が一衝撃が加わると前面が欠ける可能性がある。変に樹脂系の柔らかいものを挟むと接触面積が増して熱接触が大きくなるだろうし、安全に熱接触を断つにはどうしたらいいか思案したところ、普通に紙を挟むのがいいような気がしてきた。熱々の鍋の下に敷くのも紙だし、アウトガスは気になるが熱接触を安全に断てそうだ。ビームの上側の部分は万が一ビーム内に垂れてくると厄介なので切断し、上図右写真のようなもので押さえる事にする。紙からのアウトガスに関してググッてみたが、紙を真空中に入れる人などいないようで、全然情報が出てこない(英語だと "paper" は論文になるのでややこしい事もある)...

さすがに紙はアウトガスが多すぎるのでは、という意見があったのでガラス繊維の布というものを買ってみたが、平織りのため切断すると容易に分解してしまう。結局、太さ 0.25mm のナイロンテグス糸を挟む事にした。接触面を少しやすりで削り、テグス糸を挟んで隙間を確保する。

背面からの写真の右側に見えている筒状の物の中にバネが入っていて、横方向に与圧をかけている。前面は左右各3か所、計6か所にテグス糸を挟んでおり、前面から見ると先端が少し見えるようにしてある。これで紙1枚分の隙間を確保できる。

最後に、ZnSe プリズム表面の形状を I-Fizeau で調べてみた。回折格子面と同様に凹面に凹んでいる事を期待して測定したが、何とほぼ平面だった(下図左)。

これは何としても接着面の形状を見る必要があると思い、頑張って ZnSe 面から下方向48°の角度に来るはずの接着面の反射光を探し I-Fizesu で確認した所、何と 8.5λ も凹んでいる(90°回しての計測のため、横方向が 1/√2 に圧縮されている)。ZnSe のレーザー波長での屈折率は 2.6 なので、実際には 3.3λ の凹みだ。回折格子面の形状を再度確認した所、こちらは変わらず 3λ 強の凹みだったが、S-FTM16 の屈折率は 1.6 で ZnSe の屈折率との差が1なので、実際には回折格子面は変形しておらず、接着面の変形が見えているという事になる。先に確認しておくべきだったが ZnSe プリズムの加工した斜めの面が始めから凸面になっていた可能性もある。Zemax で確認し、対策を考える必要がある...

Zemax で確認した所、メニスカス変形と同じ対処法で解決できることが判明。0.7mm スリットを近づけ、検出器はほとんど動かさない(1μm 遠ざける)事で色収差が抑えられるようだ。J,H,K バンドで 1〜1.5% の悪化、z,Y バンドでは逆に 2〜5% 像質が改善した(冷却時のメニスカス変形で、最終的にはやや悪化となると思うが...)。怪我の功名で助かった...

ところで、ZnSe と S-FTM16 の間に入っている空気の泡は、ZnSe を干渉縞1つ分局所的に変形させていて、ZnSe の屈折率を顧慮すると 0.2λ 相当の変形が泡のサイズよりも大きい範囲で出ている事がわかる。冷却した時に、こういう場所に応力が集中しないかがちょっと心配。

●Buffle 製作

とりあえず、大きい仕切りだけ製作。

●Prism+Grating の貼り合わせ その6

真空容器に入れて冷却試験。ベーキングをして5日後に真空バルブを閉じてみたが、結構アウトガスが多いようで、常温に戻る速さが増した。再度ポンプで引きながら低めの温度で再度ベーキング。10日目に冷却開始。

真空冷却モータの試験後にバルブを閉じたままヒーターで 2℃/h の速さである程度昇温、ヒーターが常時通電になった所でヒーターと冷凍機を止め、真空ポンプで引きながらバルブを全開にした。コールドヘッドからのアウトガスで瞬間的に 0.1Torr にまで真空度が悪化したが、速やかに真空度は下がり大体同程度の速さで温度上昇を続けた。-30℃になった所で再度ヒーターで加熱を試みたが、0℃以下で温度の桁数が3桁以下になるとマイナス符号と数字の間に空白が入ることが判明し、ヒーター制御が上手く行かない(現在温度が 0℃になる)事が判明、これを修正してヒーター制御を再開した。

ヒーターON/OFF 制御で昇温中に、PC がフリーズした。これに気づいたのがフリーズしてから10時間後、PC がリセットされたのは更にその7時間後で、リセット後温度計のログを再開したのは更にその30分後だった。内部は60℃強まで加熱されていた感じだが、思ったほど高温ではなく、これなら内部への影響は出ていないと思う。ヒーターで制御する際は、外部のモニタ PC に温度制御ソフトから定期的に信号を出し、それが途絶えたら PC 電源 OFF/ON を自動で行うようなシステムにしないとダメそうだ。同じ性能のバックアップ PC を準備し、毎日のバックアップを取ると同時に電源制御もさせるのが良さそうだ。

とにかく、冷却試験終了後に開けてみた所、プリズムは割れずに無事生還した。とりあえず、最大の山場を超えたかな。

プリズムとホルダを取り出し、1つのブランクフランジを新しいコネクタ付きフランジに交換して真空試験... と思ったが、いつまで経っても全く引けない。色々調べた結果、コールドヘッドの取り付けネジ数本が振動により脱落しており、フレキチューブの力で隙間がパックリ空いていた事が判明(下写真黄色枠内のネジで写真はネジ取り付け後のもの)。振動する部分は特にネジの増し締めが重要である事を学習した。その後、ここのネジ8本にはロックタイトを入れた(よく考えたら、その上のネジにもロックタイトを入れるべきだった)。

低温冷却時の吸着効果を狙った活性炭が、昇温時の急激なアウトガスを起こしている可能性を考えて、全ての活性炭を取り出してから真空容器を閉じてベーキングしてみた。前回と同様、終了後3日目位に真空バルブを閉じて温度変化を見たが、大体似たような感じなので、少なくとも常温でのアウトガスはほぼ変化なしという感じ。

●真空冷却モータ試験その2

2組4個のアクチュエータ(この写真奥に写っているもの)で冷却真空下での傾斜センサの傾き制御試験をした。±1mm の範囲内を 0.05mm ステップで 41x41 グリッドで4秒ずつ停止して3周期を計測して取り出し、その平均値をマップにした。図は左から出力電圧(V), 周期(秒), 波形誤差(dV)。全てほぼ問題なく動いている事が確認できた。前回の試験時よりもホール素子とネオジム磁石間の距離を離したため、出力電圧は減少したが周期が不安定になる領域が減り、安定したように見える。また、傾斜の検出範囲が増え、ある程度磁石を離しておく方が良いことが確認できた。左側の状態が悪く見えるのは、右端から左端への移動は一度の動作で移動するため、左端では振り子が大きく振れている状態で計測が行われるためだと思われる。


上図上段の電圧マップにある段差が再現性のあるものかを確認するため再度試験を行った所、段差は見られなかった。

●大型ミラーの保持

大型のバイコニックミラー2枚は、インバーのスペーサ(下図青色パーツ)に押し付けた状態で保持する。調整不可の状態で固定する可能性もあるが、とりあえずアクチュエータで位置の微修正が可能なようにしてみた。上下は2枚の鏡の縦方向のサイズの違いの分はクリアセラムのスペーサで埋め、残りのほぼ同じ高さ分を2枚のステンレスプレートとその間に挟んだ鋼球で保持する。背面の支持ロッドの固定点を鏡の裏に接着する必要があるが、市販のスーパーインバーのネジ(インバーのネジは市販されている製品が無いので)2本を購入して接着でも低温に耐えうるのか試験する予定。

クリアセラムのブロックにスーパーインバーのネジをクイック30と 3M 2216 エポキシで接着して、液体窒素に入れてみた。結構ゆっくり入れたつもりだが、クイック30の方は粉々に割れたのに対し、3M 2216 の方は割れなかった。3M 2216 は低温でも使えそうだと思ったが、常温に戻ってからネジを触ると簡単に外れ、接着剤外周部がクリアセラムをもぎ取っている状態となっていた。はみ出ている接着剤を全て外して 3M 2216 で再度試してみる。

今度は、前回剥離しなかったネジ中央部の領域が剥離した。接着剤の厚さが問題なようで、当然と言えば当然か。ネジの頭部分をネジ穴が無くなるまでできるだけ削ったものと、頭部に空気穴用の切れ込みを入れたもので試してみる。

ギリギリまで削ったものは中央付近で剥離しているかどうか微妙な所、切れ込みを入れて接着したものは、ネジの内側で接着剤の山ができており、やはりそこで剥離している。ヒートサイクルで成長するかどうか見るため、液体窒素で急冷・エアコン暖気で温めを4回繰り返してみたが、ほとんど変化は見られなかった。最後に無理やり引き剥がして中央付近を確認したが、剥離ではなかったようだ。というわけで、頭部分をギリギリまで削ったネジで接着すれば問題なさそうという事が確認できた。しかし、かなりの横揺れ地震の際には、接着点が引き剥がされてしまう可能性がある。前面からプランジャで押すことも考えた方がいいかもしれない。

●バイコニックミラーの検査

引きずり3点法での検査状況はこちらを参照。
拡張フーコー法での検査状況はこちらこちらを参照。
球面波 CGH による検査方法はこちらを参照。
超高精度三次元測定機 UA3P による検査状況はこちらこちらを参照。
三鷹光機 NH3 による凸面バイコニック鏡検査状況はこちらを参照。

大型バイコニックミラー製作の現状まとめページはこちらを参照。

●まとめページ

2023年 / 2022年 / 2021年 / 2020年 / 2019年 / 2018年

●Mirror #3 の保持

自由度6の調整可能なホルダ。全てにモーターを付けるかは別として、とりあえず製作してみる。横方向は冷却時に片側しか当てることができないため、左右どちらで接触させて押すかはやってみないとわからない。左右のスペースには余裕がないためこのようになっている。

●Mirror #4 の保持

基本的ポリシーは Mirror #3 と同じ。隣との関係が立体的に入れ子になっているので、かなり窮屈...

●凸面バイコニックミラー

三鷹光機 NH3 による凸面バイコニック鏡検査状況はこちらを参照。

Mirror#3, #4 やっと完成。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp