すばる望遠鏡用広視野モザイク赤外線カメラ
1996.11.6 岩室 史英
すばる望遠鏡カセグレン焦点に取り付け、FOCAS と同程度の視野を持
つ近赤外カメラの光学設計を行なった。このカメラは、複数の同じ光学
パラメータを持つカメラをカセグレン焦点面で像面湾曲に沿って並べ、
焦点面に位置するフィールドレンズ部で可能な限り密接に束ねることに
より、広視野でありながら小口径の光学素子だけで製作することが可能
なものである(比較的安く製作することが可能)。
- フィールドレンズ
視野を重複なく区切るため、フィールドレンズは焦点面に置か
れる。大きさは 60mm□でそれぞれが 1K×1K HAWAII 素子1個分の
視野に相当する。このレンズはカセグレン焦点の像面湾曲に沿っ
て可能な限り密接に配置され、迷光が最小となるよう矩形バッフ
ルに接続される。
- コリメータレンズ
この部分は、フィールドレンズ以外で最もレンズ同士が接近す
る部分である。レンズ直径は 57mm(ビーム径+4mm) で、隣同士の
レンズ間距離は最小 4.2mm (カメラ同士は厳密には平行に配置さ
れていないので、ビームの中心間距離はフィールドレンズの場所
に比べ 1.2mm 広がっている)、全体図右上の、検出器側から見た
図にレンズ配置を示す。入射光はここで平行光となり、直進プリ
ズムやグリズムを用いた slitless 分光も可能である。
- カメラレンズ
3:1 縮小光学系で、60mm□ 視野が 20mm□ に変換される。
detector 間距離は、最小 42.5mm (中心間距離は 62.5mm) となる
ので、他のモザイクカメラに比べマウントし易い。
- 問題点など
フィルターの交換機構。特に中央のカメラに対するフィルター
をどのように交換するかは問題。全体を1つの wheel で交換する
と dewar 直径が非常に大きくなる。
スリット分光不可能。フィールドレンズを焦点面からずらせば
スリットを置くことはできるが、周辺視野のビームが分割される
上、それぞれのカメラが独立にスリット機構を持つことは困難で、
dewar の大きさを考えるとスリット無しの方が現実的。
次頁に全体図とスポット図を示す。全体図左側は、すばる望遠鏡カセ
グレン焦点視野(6'φ)の大きさと、フィールドレンズの配置を示す。望
遠鏡からの光で A〜J の点を通過するものに関して、下にスポット図が
示されている。スポット図中の正方形は pixel size (19μm) を表して
いる。上段中央は光学系の縦の断面図、右側は detector 側から見た図
で、コリメータレンズの配置を重ねて図示してある。
