活動するクェーサー
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岩室 史英 (京大宇物)


●Quasar 観測の歴史

  • 電波源の可視分光
  • UV excess 法
  • Objective prism などの分光サーベイ
  • 多色測光

●Quasar のスペクトル

 全体:
  • Accretion disk (Big Blue Bump)
  • Hot Dust
  • Host Galaxy
  • Compton Scattering
  • Synchrotron

 紫外~可視:
  • Accretion disk (Big Blue Bump)
  • Broad / Narrow Lines
  • Balmer Continuum + FeII (Small Blue Bump)
  • Host Galaxy or Hot dust

Vanden Berk et al. 2001,AJ,122,549

●AGN 統一モデル

 上記スペクトルと天体の検出頻度などから90年代に提案されたモデル。


Urry & Padovani 1995,PASP,107,803

●Quasar の変光

  • 上記スペクトル成分の内、Host Galaxy と Narrow Line 以外の成分は変光する
  • 短波長ほど短い時間で変光する(中心核付近の Jet から出でている電波は例外)


    Padovani et al. 2017,A&AR,25,2

  • Broad Line の形は変化する場合もある (NGC5548, モデル)

●Reverberation mapping

 中心核の明るさ変動が時間差で BLR (Broad Line Region) に伝わる現象。

  • 中心核から BLR までの距離の実測値
  • 遠方の明るい Quasar での計測は大変(赤方偏移と時間差の増大)

Brewer et al. 2011,ApJ,733,33

 BLR 半径と continuum luminosity の関係の経験則で代用

  • 遠方の Quasar でも同じかどうかは不明
  • 5100Åよりも母銀河の寄与の無い1350Åの方が相関がいいという報告もある

Bentz et al. 2013,ApJ,767,149

 輝線形状の変化も測定できれば、BLR の形状もある程度予想できる


Pancoast et al. 2014,MNRAS,445,3073

 逆に BLR 半径から Quasar 光度を推定し、宇宙論パラメータの検証もできる


Watson et al. 2011,ApJL,740,49

●Changing Look Quasar

 Quasar 活動の ON/OFF の "瞬間"

  • Hβ Broad Line が出現/消滅
  • Accretion disk 成分が出現/消滅
  • 数年で変化

MacLeod et al. 2016,MNRAS,457,389

●何が起こっているの?

 Catalina Surveys では、1m クラスの望遠鏡3台を用いて自動観測を行い、
 天体の変光データを公開している。

 移動天体や変光星の研究が主目的だが、Quasar もかなりの数観測されている。

  • SDSS DR7 Quasar catalog 10.6万天体中、9万天体のデータ有
  • 直近のデータから徐々に遡り、変光率(mag/yr)と継続年数を計測

 変光率(mag/yr)と継続年数の分布と変化の大きい天体の例


-0.38mag/年で 5.1年継続、赤方偏移 z=0.31、BH 質量 2.5x109Mo

 直近に限らず調べた場合


-6.16mag/年で 0.4年継続、赤方偏移 z=0.87、BH 質量 6.3x108Mo

 109Mo 近い超巨大BH 周辺で半年以内(現地時間では3ヶ月以内)に10倍近くも
 明るさが増減している。いったい何が起こったのか?

●どんどん増えるアーカイヴデータ

 Zwicky Transient Facility では、1.2m シュミット望遠鏡を用いて2日に1度の頻度で北天全体のモニタ観測を行なっている。

 1.7TB/年でデータが増えるので、ダウンロードして展開するだけでも一苦労...
 お陰で急激な光度変化を起こす Quasar は次々と見つかっている。

●Quasar の主系列から見た CLQ の性質

 Quasar のスペクトルには大きく分けて2つの種類がある。

  • FeII 強、[OIII]弱、FWHM(Hβ) 小〜中(下図上)
  • FeII 弱、[OIII]強、FWHM(Hβ) 大(下図上)


Sulentic et al. 2007,RMxAC,28,83

 Quasar Main Sequence

  • RFeII=FeII/Hβ と FWHM(Hβ) との関係
  • 右ほど EW[OIII] 小
  • 下(右)ほど質量降着率大、CIV out flow 強
  • 上ほど Radio loud 率大
  • CLQ は上(左)に分布


Marziani et al. 2018,FrASS,5,6

    右下が Quasar 成長期、左上が成熟期と考えると、CLQ は断末魔の状況?

●現場を押さえるしかない

 γ線バーストのような突発現象とは異なり、数ヶ月〜年単位での現象なので、
 アーカイヴに出てからの観測でも何とか間に合う。

 ZTF で増光中の天体をピックアップし、せいめいでのモニタ観測観測進行中...


せいめいでの Quasar 分光観測例


 

 

 

 

 

 

 


●小レポート

    本日の講義で印象に残った内容を具体的かつ簡潔に記述せよ。
    (感想を含んでも良い)

    また、疑問に思ったことや自分で 調べる/考える/試す など
    してみたいと思ったことがあればそれも書くこと。

    提出方法:
    PandA → [2022後期火4] 現代物理学 → 課題 より提出

    締め切り:明日午前9


 

 

 

 

 

 

 


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp