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目に見える光を 可視光 と言います。光の持つエネルギーの違いで色が変わります。

低エネルギー ⇐
赤
橙
黄
緑
青
藍
紫
⇒ 高エネルギー
赤い光よりもエネルギーの低い光や紫の光よりもエネルギーの高い光は見えません。
どのような光でしょうか?
赤外線 は熱として感じられる光です。鉄板焼で顔が熱くなりますよね。
X線 はレントゲンで使われる貫通力の大きい高エネルギーの光です。
もっとエネルギーが低く/高くなるとどういう光になるでしょうか。
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アンドロメダ銀河 (M31)
赤外線:細かい塵
可視光:星
X線:高温ガス
が見えます。
遠くの銀河を詳しく調べるには、色々な光で見る必要があります。
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宇宙からは色々な光がやってきますが、半分程度の光しか地上まで届きません。

地上にある望遠鏡は、地上まで届く可視光や電波で宇宙を観測しています。

他の光は大気で吸収されて地上まで届かないので、宇宙から観測するしかありません。
ここからは主な宇宙望遠鏡について、その歴史とともに紹介していきます。
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X線望遠鏡 
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宇宙望遠鏡の多くはX線で観測を行うものです。
1970年以降、40台近くの衛星が打ち上げられ、現在も数台が稼働しています。
チャンドラX線天文台
©NASA |
1999年にスペースシャトルで
打ち上げられた、重量5トン、
長さが14mもある巨大な衛星です。
現在もまだ活躍しています。
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| X線は貫通力が高いので鏡の
正面で反射することができません。
薄い鏡で浅い角度で反射して集め
るため、長い筒が必要となります。
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チャンドラで見た木星です。
極付近でオーロラが光っていますが、
それ以外ではボーッと暗い感じです。
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日本も1979年以降7台のX線衛星打ち上げに成功していますが、6台目は制御上の
問題により軌道上で分解、他2台が打ち上げに失敗しています。(7台目 9/7成功)
宇宙望遠鏡は打ち上げに失敗すると全てなくなってしまうのが怖いところです。
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γ線望遠鏡
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宇宙からの γ線はアメリカの核実験観測衛星によって 1967年に発見されました。
その謎の解明のため 12台の衛星が打ち上げられ、現在も数台が稼働しています。
フェルミガンマ線宇宙望遠鏡
©NASA |
2008年にデルタIIロケットで
打ち上げられた、重量4トン
長さ3mの大型衛星です。
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γ線と物質との衝突により生まれる
電子と陽電子という2つの粒子の
動きで、γ線の方向を決定します。
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宇宙からのγ線検出の瞬間です。
一瞬~数十秒で消えてしまうため、
検出時は自動でメール送信されます。
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非常に遠い銀河でのビーム状の爆発が
たまたまこちらを向いている現象と
いうことがわかってきました。
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γ線の望遠鏡は光を集める鏡がないので、望遠鏡というよりは放射線の検出器です。
宇宙望遠鏡にもいろいろありますね。
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赤外線望遠鏡
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これまでの赤外線望遠鏡は装置の温度を低く保つための冷却液を積んでおり、それを
全て使い切って蒸発してしまうと、観測をすることができなくなりました。そのため、
衛星の寿命は5年程度であることがほとんどで、望遠鏡としては短命です。
赤外線の望遠鏡は寿命が短いため、ほとんどが1トン以下の小型衛星です。
大きい衛星ほど冷却装置が重くなることも難しい所です。
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電波望遠鏡
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電波は地上からも観測できるので、宇宙に望遠鏡を打ち上げる必要は少ないのですが、
同時に観測する望遠鏡が離れているほど細かいものが見えるという特徴があるので、
地球の大きさの何十倍も離れた所まで望遠鏡を飛ばすと視力が格段に上がります。
はるか は大阪から東京の米粒を見分けられる能力で9年間にわたり活躍しました。
電波の宇宙望遠鏡は非常に少なく、この他はロシアが打ち上げた1台のみです。
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可視光望遠鏡
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可視光も地上から観測できますが、電波とは違い大気で星の像が乱されてしまいます。
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水面のゆらゆらと 同様に空気の揺ら ぎで星が乱れます。
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宇宙からの観測では揺らぎのない像が得られるため、可視光の宇宙望遠鏡のほとんどは
長期観測で明るい星のほんの少しの変化(明るさや位置の変化)を調べる小型衛星ですが、
ハッブル宇宙望遠鏡だけは別格です。
ハッブル宇宙望遠鏡
©NASA |
1990年にスペースシャトルで
打ち上げられた、重量11トン 、
長さ 13m の超巨大衛星です。
鏡の口径は2.4mで現在も稼働中。
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ハッブルは宇宙空間で5回の修理を
行いました。最後の修理(左)から
15年近く経過しており、いつ停止
してもおかしくない状態です。
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ハッブルで見た木星です。
大赤斑は現在縮小しており、
21世紀の中頃には消えるようです。
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ハッブルは至る所が老朽化し、次世代シャトルでの修理も難しいものと思われます。
ハッブルの後継機として2つの宇宙望遠鏡が予定され、1つは観測開始しています。
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新しい宇宙望遠鏡 
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ハッブルの後継となる2台の宇宙望遠鏡は、非常に遠くの宇宙を観測するのに適した、
可視光から赤外線にかけての光で観測するものです。観測の妨げとなる太陽や地球から
の光を避け、かつ望遠鏡の温度を下げるため、月よりも4倍遠い所に打ち上げます。
この場所では太陽と地球がいつも同じ方向に見えているので、1つの日傘で両方からの
光を遮ることができます。太陽光発電のため、地球と月の影を避けて縦にも周ります。
(上の動画ではわかりませんが、この場所では地球と太陽はほぼ同じ大きさに見えます)
ウェッブとハッブルは一度に見ることの出来る範囲は同じくらいですが、ウェッブの
方が 数倍 良く見えるようになります。また、ハッブルでは見ることのできなかった
赤外線でも観測できるため、より遠くの宇宙を見ることができます。
もう1つのハッブル後継機は、
ナンシー・グレース・ローマン 宇宙望遠鏡
©NASA |
2027年に打ち上げ予定の
重量4トンの大型衛星です。
鏡の口径はハッブルと同じ
2.4mですが、100倍広い
範囲を一度に観測できます。
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ウェッブが狭い範囲を非常に詳しく見るのに対し、ローマンは非常に広い範囲を
ハッブルと同程度に詳しく見ることができます。
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この先の宇宙望遠鏡は、2040年台の稼働を目標として以下の4つが検討されました。
2021年に上側の2つの計画を合体させてルベックス望遠鏡として進める方針が 決まりました。
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おわりに
宇宙望遠鏡も地上の望遠鏡と同様、ほぼ限界の大きさになってきました。
大変残念なのは、遠くに打ち上げる望遠鏡は故障しても直すことができないため、
最長でも10年程度しか使えないだろうということです。
これらを上回る望遠鏡は想像もつきませんが、宇宙ステーションのように複数の
ロケットで打ち上げて宇宙空間でドッキングさせるのでしょうか...
ウェッブ望遠鏡の開発には20年近くかかりましたので途方もない道程ですが、
肝心なのは やればできる!! ということですね。
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