宇宙の彼方を見る巨大な眼

  
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/LECTURE/FRONTIER/

京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室

岩室 史英


イントロ


宇宙の大きさ


太陽を水素原子の大きさにすると、見ることのできる宇宙の大きさは ...

 

地球程度になります。

太陽系 = 細菌、銀河 = 家〜マンション、銀河団 = 町、といった具合いです。


光と波長


一般に波長が短くなるほど高エネルギー天体が観測されますが、
高エネルギー天体に付随する非熱的放射の一部は電波でも観測されます。

観測する波長により、望遠鏡の形状も様々です。


INTEGRAL
γ 線天文衛星

Chandra
X 線天文衛星

Subaru
可視赤外望遠鏡

SIRTF
赤外線天文衛星

JCMT
サブミリ波望遠鏡

NRO 45m
ミリ波望遠鏡


地上からの観測


地上から見える光は、可視光・赤外線の一部と電波だけです。
それ以外の波長では宇宙からしか観測できません。

赤外線では、大気中の水蒸気や二酸化炭素等の吸収で観測できない部分が多くあります。
観測できる波長帯を「大気の窓」といいます。


すばる望遠鏡


マウナケア観測所


ハワイ島マウナケア山 (4200m) は北半球で最も優れた天文サイトです。

山頂には現在大小13の望遠鏡があります。

銀色の円筒状のドームが日本のすばる望遠鏡です。


すばる望遠鏡


すばる望遠鏡は口径 8.2m の反射望遠鏡で、4つの焦点があります。


主鏡は261本のアクチュエータで能動的に支持されています。


観測紹介


惑星


普通の CCD カメラで撮った火星と木星と土星

ハイビジョンカメラで撮った火星

赤外線で見た火星と冥王星


観測風景


観測は少し離れた制御棟から全てリモートで行なわれます。


星生成領域


オリオン星雲

S106


輝線放射と連続放射



活動銀河


M82(左)、NGC 4388(右)から放出される水素ガス

水素ガスに覆われた遠方の電波銀河

遠方の電波銀河の近赤外線スペクトル


重力レンズ


銀河の重力で背後の天体からの光が曲げられる現象を「重力レンズ」といいます。

この例では、中央の銀河で背後のクェーサーの像が4つに分かれて増光されています。

明るい部分を隠すことで、クェーサーの属している暗い銀河の様子がわかります。


最も遠い銀河


現在知られている最も遠い銀河は、すばる主焦点カメラにより発見されたものです。

水素輝線だけで辛うじて見えている宇宙初期天体。
宇宙膨張により波長が 7.6 倍に引き延ばされて観測されています。


観測装置


OH 夜光除去分光器


すばるには現在7つの観測装置がありますが、OH 夜光除去
分光器とその赤外線カメラは京大で開発されたものです。

他に、可視光の面分光観測装置や近赤外の多天体分光器を製作中。


主焦点カメラ


満月 1 個分の視野を持つ主焦点カメラ。

8000 x 10000 画素の CCD カメラは一度の露出で84メガバイトの画像を出力します。


CCD


光によって励起された半導体中の電子を集めることで、光を検出することができます。
Si のバンドギャップは波長 1.1μm の光のエネルギーに相当し、
これよりもエネルギーの高い光(可視光など)は、Si で検出できます。

CCD とは集めた電荷を転送する方法の略称で、
以下のようにバケツリレー方式で運ばれます。

  

検出器部分と電荷を転送する部分の配置により、様々なタイプがあります。


赤外線検出器


赤外線は Si で検出できないため、HgCdTe や InSb 等のバンドギャップの小さい
半導体と、Si の読み出し回路を組み合わせた検出器が用いられます。


補償光学 (AO)


大気の揺らぎにより星は絶えず瞬いています。

AO は大気揺らぎの効果を光学的に打ち消すものです。

大気揺らぎ

AO の効果


他の大型望遠鏡


VLT


すばると同じ口径 8.2m の望遠鏡4台で、干渉計の能力もあります。

個々の AO の性能はすばるとほぼ同じ。


Keck


直径 1.8m の六角形の鏡を蜂の巣状に並べた口径 10m 望遠鏡2台から成ります。


Gemini


北半球と南半球にある、ほぼ同じ仕様の 8.2m 望遠鏡です。


LBT


すばるより大きい口径8.4mの鏡2枚を用いた双眼望遠鏡です。


最近の話題


ガンマ線バースト


突如としてガンマ線で光る現象で、非常に遠方での爆発という事以外
詳しいことはわかっていません。


星周円盤


生成中の星の周囲にある円盤を横から捕えたものです。


系外惑星


明るい星の周りを回る惑星を捕えたものです。


最近の装置


多天体分光器


天体部分以外を隠して、個々の天体のスペクトルを調べる装置です。

ファイバーで数百天体を同時に選択して分光するものもあります。


IFU


広がった天体を細かく分けて分光する装置を面分光器といい、
ガスの運動の様子を3次元的に調べることができます。

広がった天体像を光学的に分割して並べ直すタイプのものもあります。


可変副鏡


望遠鏡の副鏡の形状を高速でコントロールして AO を行なうものです。


宇宙望遠鏡


HST


口径 2.5m のハッブル宇宙望遠鏡は、可視光では最高分解能の望遠鏡です。
昨年、広視野の新しいカメラが取りつけられ、更にパワーアップしました。


銀河間の相互作用


銀河同士がすれ違って重力相互作用で一部剥ぎ取られているところです。

2つの銀河が衝突しているところです。


銀河団


銀河団全体の重力レンズで背景の銀河が引き延ばされています。


10年後の望遠鏡


地上巨大望遠鏡


海外では口径 20〜100m の超巨大望遠鏡計画が進められています。
すべて、複数の鏡を組み合わせたタイプのものです。


大口径宇宙望遠鏡


口径 6.5m の宇宙望遠鏡の計画も進められています。