センサ安定性試験4

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/sensortest4.html

岩室 史英 (京大宇物)


●ここまでのまとめ

センサ安定性試験3が案の定長引いて年度を跨ぐことになったため、一旦ここまでの状況をまとめて今後の方針を示す。

センサに関して注意すべきこと
  • センサ側面で接着剤を玉状にして接着すると、吸湿して安定しない
  • 基盤面やコネクタ内部のゴミには非常に敏感で、作業後は必ずプロアが必要
  • 基盤面の配線が浮くと温度特性が大きく変化する
  • ケーブルは結束バンドで強く固定しても問題ない
  • フェライトコアで干渉をある程度緩和できる
  • 風の当たり方はリファレンスセンサとの時間差にかなりの影響を与える
  • 対向板との間隔はリファレンスセンサとの時間差には余り影響しない
  • 対向板との間隔変化によるリファレンスの補正倍率の変化はありそうだが詳細は不明
というわけで、リファレンスと計測用センサの温度に対する時間遅れさえ測定しておけば、風が当たらないようにカバーで囲む事によって安定した計測ができるものと期待できる。カウントの違いによる補正倍率の変化に関しては、まだちゃんと計測できていないので、対向板を作りなおして間隔が狭い場合の補正倍率を求めることと、望遠鏡にセンサを取り付けた状態でどのようにセンサの時間遅れを計測する方法を確立することが今後の課題となる。とりあえずは、対向板無しで密閉環境の場合に時間遅れが正しく計測できるか調べることにする。

しかし、計測を始めるとセンサが不安定な状況が続いているため、その原因を詳しく調べる事にした。まずは、関係のないセンサを全て外して不安定なセンサのみ単体で動かす。

相変わらず不安定なので、制御ボックスのコネクタを4番(青)から3番(緑)に差し替える。

不安定が移動したので、途中で元々3番に繋がっていたケーブルに交換して4番のセンサの計測を続けた所回復した。どうやらケーブルが怪しい。この状態でとりあえず1番と2番を再度制御ボックスに接続する。

2番の挙動も不安定だが、とりあえずは気にせず、4番(ここでは3番の入力に繋がったままなので緑)が他のセンサの影響を受けていない事が確認できた。次に問題のない1番を外して不安定な2番のケーブルを1番の入力に差し替え、4番を正常なケーブルの状態のまま正しい4番の入力に差し替える。

4番は正常なままで問題ないが、2番(ここでは赤)が正常になった。う〜ん...。とりあえずこの状態で問題あるケーブルを3番に接続し、1番のセンサを2番の入力に繋いでみる。

やはり3番は不安定になった。ケーブルに問題ある可能性が高くなってきた。2番(赤)は始めは不安定だったがその後回復している。次に3番の不安定性が1、2番の有無で変わらない事を確認するため、1、2番を外す。

3番は益々不安定になった。継続すると良くなる場合と悪化する場合があるので、たまたま悪化しただけだと思う。次に、3番に繋がっている問題のケーブルを2番のケーブルと交換する。

不安定性は2番に移動した。これで、ほぼ間違いなくケーブルの問題だと確認できた。しかし、2番は最近不安定を示しているので、センサそのものの信頼度が少し低い。最後に2番と1番のケーブルを交換して継続する。

3番が不安定になったが、これは以前2番が不安定だった原因がケーブルにあった可能性を示している。3番のケーブルをこれまで使ったことのない新しいケーブルと交換してみる。

ここで恒温槽がなぜか待機状態に入ってしまったようだ。故障でなければいいが、一旦電源を落として計測も止め、少し待ってから運転開始と計測再開した。

恒温槽内部での結露が原因だったようだ。再開したがやはり3番の状態が悪いため、センサそのものの問題と判断して3番のセンサを新しいものに交換することにした...

しかし、間違えて4番のセンサを新しいものに交換してしまった(こまめにメモを更新すべきと痛感...)。とりあえずは試験を再開して様子を見る。

不安定は1番に移動した事が確認できたが、新しく入れた4番のセンサがひどい。多分基盤コネクタのハンダ部にある白いものの剥離だと思うが、とりあえず1番と2番、3番と4番のケーブルを入れ替えて再開。

ケーブルを入れ替えただけで解消してしまった...。しかも問題のケーブルは現在2番に繋がっているはずだが、2番は正常で3番の不安定性は相変わらず。とりあえず、これで温度計に対する時間遅れを調べてみると、どちらのペアもリファレンスに対する相対遅れが300秒程度しか無く、対向板があった時には1000秒強の時間遅れがあったことを考えると、この方法では時間遅れを出すことはできないという事になる。センサ前面の隙間だけの問題なのかどうかを確認するため、センサの前にメッキしていない対向板を置いて空気の流れを減らし、様子を見る。

再び、2番が悪化した。ケーブルの微妙な曲がりの変化が安定性を左右するとしか思えない。最近、ケーブルを結束バンドで固定していないので、それが原因で不安定になっている可能性もある。1、2番のペアをちゃんとした結束バンドで、3、4番のペアをモールで固定した。温度計が読めない状態になっていたので、温度計と PC を再起動して再開。

全く改善しないので、2番と3番のケーブルを旧タイプの治具で試験をしていたケーブル(3番、4番)で置き替えて再開。

う〜ん、まだ2番が良くない。温度計も読めなくなっているので、一旦止めて2番とついでに4番のセンサをブロアで掃除し、温度計を再起動して再開。

まだ変わらないので、2番と4番のケーブルを交換してみる。

う〜ん、どちらも回復してしまった。本当にケーブルなのかセンサなのか、どちらが悪いのかよく分からない。相対時間遅れは過去の計測通り1000秒強となったので、測定側センサの前に物体がある事で冷えるスピードにかなりの影響が出ることが確認できた。望遠鏡に取り付けた際には基本的には今回の計測値である 2400秒, 1100秒 程度が標準値だと考えて良さそうだが、望遠鏡上で計測する必要が生じた際は、何らかの方法でセンサ表面近くの空気の流れを遮断する必要がある。

ここで、上記試験で用いたクリアセラムの新対向板は、新たなメッキ業者のメッキ条件試験のため、2個とも送ることになった。

望遠鏡に付いている状態で、キャリブレーションする方法を探るため、重力的に反転させてとりあえず対向板無しで再開する。

今度は4番に異常が現れた。やはり以前2番に付いていたケーブルの問題の可能性があるため、別のケーブルと交換し再開。

う〜ん、センサそのものの問題なのかもしれないが、少なくとも4番は最近交換したばかりの新しいもののはず。何とか不安定の原因を特定しないといけないが手詰まりの状態だ...
とりあえず、新たなメッキ業者のメッキ試作品が来たので、重力的に再度反転させて元に戻し、メッキした対向板とメッキしていない対向板を置いて試験再開。

1番は対向板がほぼ密着している状態なのに、カウントが余り上がらない。メッキの金属層が薄すぎるのが原因のようなので、再度返送し金メッキの下に厚さ10μm の銅メッキを入れてもらう事にした。それにしても今度は2番が回復し、3番が不安定になった。3番、4番をブロアで掃除し、暫く、対向板なしで恒温槽も運転しないで様子を見る。

特に問題なく経過し、対向板が再度メッキされてきたので置いてみた。

金だけだった場合と比べて大して変わらず、最も接近させても 65000 カウント位までしか行かない(以前のものはピッタリつければ 90000カウント程度まで上がった)。再度銅メッキの厚さを増やしてもらう。1番のセンサのカウントが大きく変動しているのは、対向板の一部がセンサに接触していて、それで間隔が決まっていることが原因。また、3番と4番のセンサが不安定で、特に4番は2番とカウントが干渉しているようだ。3番は全く異なるカウントだが、何らかの原因で干渉しているようにも見える。

銅メッキの厚さを増やすと、周囲の部分が土手のようにせり上がって来ることが判明。このままでは密着時のカウントが取れないので土手部分をヤスリで削り、ほぼ密着状態にして確認する。


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