センサ安定性試験3まとめ

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/sensortest3s.html

岩室 史英 (京大宇物)


●センサに関して

日本システム開発株式会社の超小型変位センサ DS2001 のクリアセラム基盤タイプのもの。表面のコーティングが無いため、金属板のシムをスペーサとする事ができない。センサのサイズは 20.3mm x 34.3mm, 厚さ 3.2mm。

●リファレンスに対するカウントの補正方法

木野くんが熱応答の原理に基づいて時間遅れを補正する方法を示してくれたので、そのレポートに基づいて補正した。概要は以下の通り。

  • リファレンスセンサのカウント変化率は周囲環境との温度差で決まると仮定
    C1[n]-C1[n-1]=(C0[n]-C1[n])/τ1
    C1: リファレンスセンサの測定カウント
    C0: リファレンスセンサの温度が周囲環境温度と一致した場合の理想値
    τ1: 温度追従の時定数

  • 補正したいセンサと同じ時定数を持つリファレンスのカウントを同じ式で推定する
    C2[n]-C2[n-1]=(C0[n]-C2[n])/τ2
    C2: 補正したいセンサと同じ時定数を持つリファレンスセンサの推定カウント
    C0: 前項目の式の C0 と同じ
    τ2:補正したいセンサの 温度追従の時定数

  • 上記2式から C0 を消去し、C2[0] に適当な初期値を与えて順次 C2[n] を計算する。

  • 補正したいセンサのカウントと C2[n] の定数倍の残差2乗が最小となるようにファクターを決めてセンサカウントを補正する。

  • 補正したいセンサとリファレンスセンサの時定数 τ1, τ2 は、温度計の出力結果との相関が最も良くなる時間差として計測する。

●試験用治具での試験

3番のセンサを対向板との間隔が 1mm 固定のリファレンスとして、残り7つのセンサの対抗板との間隔をシムで調整(0.2,0.4,0.5,0.7,1.0mm)する。

センサの側面で接着固定すると、接着剤の吸湿・乾燥による体積変化が影響する。

基板上の配線が浮き上がると、温度特性が大きく変動する。

40000~45000カウント(0.7~0.5mm)の間で、リファレンスに対する補正ファクターが大きく変動する。

●センサアームでの試験

背面のリファレンス(2番と4番のセンサ)は間隔 1mm で固定。手前に配置すると対向板との間隔が 1mm、奥に配置すると間隔が 0.5mm になる。1と2、3と4がそれぞれ同じアームに接着されている。センサ間の干渉を抑えるため、フェライトコアがはめてある。

基板上の接着剤の山はセンサの挙動を不安定にする。

様々なカバーを付けて、時間遅れの変化を見る。

個々のセンサを最小体積で薄く囲むカバーはほとんど効果がない。また、リファレンスとの関係も安定しない。

スポンジは最も断熱性能が高い(遅れ~3000秒増加)が、耐久性が気になる...

2重ラップで包むと結構断熱する(遅れ~1400秒増加)が、風などでめくれたり変形したりすると悪影響。

3D プリンタで製作した断熱箱でスポンジに次いで効果がある(遅れ~2400秒増加)。強固だが重量が気になる。

上記の断熱箱に入れ、リファレンスでの補正パラメータを固定した状態で、どの程度の環境変化が許容されるかを現在調査中。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp