センサ固定方法これまでの経緯 
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岩室 史英 (京大宇物)


●固定方法

    2016年に試験アームを用いての恒温槽試験(センサ試験3)を始めた当初は下図左の固定方法だったが、コスト面・傾き調整面でのでの事を考えて 2017年の試験験(センサ試験5最後)からは下図右の固定方法に切り替えた。最終的には、スペーサの厚さが 2mm 程度になる場所も出てきたため、現在ではこちらの方法しか使えない事が確定している。

    この固定方法に切り前の際、接着強度が問題となったが、実際のセンサ試験で強度確認試験も兼ねられると判断し、とりあえず 3M2216 で接着してみた。

    この状態のまま約2年間、5〜25℃ でのセンサ試験の間、自然に剥離した事は一度もなく、この方法で十分と判断した。

●実際の施工

    3M2216 は固化時間が長く(〜2日)、上向きに接着すると固化までの間の接着剤のタレや、接着物の固定が甘いと接着位置がじわじわと移動する事が先に行った対向板の接着作業で判明した。そのため、もっと個化時間の短い接着剤を用いる事にした。

    サンプルピースに接着後、数日間バネで負荷をかけても問題無さそうだったので、これでもいけそうだと判断し施工した所、3割くらいの確率で接着不良(数日後のバネ取り付け時に外れる)が発生し、5回の接着作業でやっと66箇所全てが接着完了した。接着作業時のガラス表面の水分が接着不良の原因になっていたようだ。

    この間、もっと早く個化するものを使えば、その場で接着不良が判断でき、作業の成功率も上がるのではないかと考え、瞬間接着剤も試してみることにした。

    これも数日の試験で問題なかったため、上記5回の接着作業の最終回で接着不良の判明した1本を瞬間接着剤で接着してみた。

●1ヶ月で問題発生

    接着後、1ヵ月経過したころより毎週1~2本の頻度でクイック30,クイック5 で接着したものが外れ始めた。その都度、瞬間接着剤で再接着を行い、それらは外れなかったので、全て瞬間接着剤で接着しなおす作業を行った。しかし、今度は作業後1ヵ月の間に8本、接着力確認と接着力が弱かったもの10本を再接着し直し、を挟んでその後の1ヵ月の間に更に10本が外れた。

●接着剤試験と専門家に相談

    高温・高湿度のドーム内環境下でどういう接着剤が耐えられるのかを確認するため、まずは市販のガラス用接着剤を使って、センサ固定時の倍以上のバネ圧をかけて、0〜50℃の温度変化(8サイクル/日)を与えた。結果は、

    • ロックタイトは常温でもバネ圧に耐えられない
    • ハイスーパー5は2サイクルで 29/48 が主にガラス側で外れる
    • 3M2216 は4サイクルで 72/100 が主に金属側で外れる
    • 瞬間接着剤は毎日少しずつ12日で 22/51 がガラス側で外れる

    この時点でアラルダイトは未試験で不明だが、エポキシ系の接着剤は50℃には耐えられない感じだった。

    その後は最高温を40℃にして、アラルダイト、瞬間接着剤+硬化促進剤、3M2216、更に接着の研究者である原賀氏より紹介頂いた電気化学工業(デンカ)社製の2種の2液式アクリル接着剤(金属側のみプライマー処理)を試してみる。その後続けて0~45℃16サイクル+水没2日を繰り返す。結果は

    • 最高温40℃までであれば、大体の接着剤は耐えられる
    • 水没2日+0〜45℃ x16 の2回目で瞬間接着剤と 3M2216 は全て外れた。
    • デンカの柔らかい方は水没2日x2 で 1/37 外れ、固い方は外れていない。
    • アラルダイトは45℃でガラス破壊で 1/50 が外れたのみ。

    原賀氏(の著書)によると、

    • 外れた際に両方に接着剤が残る「凝集破壊」率4割以上が理想
    • できるだけ柔らかい接着剤を選ぶ(硬いものほど「界面破壊」が増え不安定に)
    • 固化中の固定圧力の変化は接着不良の原因になる
    • ガラスよりもステンレスの方が接着しにくい
    • 引っ張り力がかかり続ける状況では、通常接着力の100倍の安全度が欲しい

    とのことで、結構接着剤にとっては厳しい使用方法とのこと。過去のロッド脱落は全て界面破壊で、接着力のばらつきが大きい事と、温度や湿度などの環境変化が剥離の引き金になっているようだ。結局、デンカ接着剤の柔らかい方を採用し、下写真のような接着治具を準備して全て接着しなおした。


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