セグメント鏡の PSF 調査7


Structure Function と PSF の関係についての調査。

Structure Function は鏡面上の2点相関関数のことで、距離 r だけ離れた
2点間での鏡面の理想形状からの残差の差の2乗平均の平方根で定義される。

下農くんの考察にあるように、Structure Function は鏡面のパワースペクトル
より初期位相を0に固定したフーリエ逆変換により再生され、初期位相を乱数で与える
ことにより、同じパワースペクトル(すなわち同じ Structure Function)を持つ鏡面
形状をシミュレートすることが可能である。

GMT 鏡面の Structure Function に関する論文にあるように、AO なしの状態で
大気揺らぎに比べて十分に良い望遠鏡の性能を得るには、大気乱流モデルから得られる
Structure Function よりビーム内での tip-tilt 成分を除去し、表面荒さ成分を加えた

が主鏡の構造関数としては適しているものと考えられる。ここでは、λ=550nm, r < D=3.8m,
σ=14nm に加えて r0=7cm(国内), 25cm(マウナケア), 92cm(超好天?)の3種類について
上式で与えられる構造関数を考え、V, H バンドでどのような PSF になるか考察する。

考える構造関数は以下の4種類

以下はそれぞれのモデルの Structure Function で、青線は大気乱流モデル、緑線は
ビーム内の tilt 成分を無くしたもの、赤線は更に表面荒さを加えたものを表している。
また、桃線は10cm以上のスケールでは 150nm、それ以下では理想形状 + 14nm
面荒さになっているモデルのグラフである。

上述の通り、この Structure Function をフーリエ変換して乱数の位相を加えて逆変換
することで実際の鏡の形状をシミュレートする。但し、r 方向だけの情報から2次元化
する方法を思いつけなかったので、ここでは単に x 方向と y 方向に対してこの計算
を行い、両成分を加算することで2次元化とした。以下、計算結果を示す。


r0=7cm モデル、λ=1.65μm の場合 (psf は 2"□)

r0=25cm モデル、λ=1.65μm の場合 (psf は 2"□)

r0=92cm モデル、λ=1.65μm の場合 (psf は 2"□)

Step 関数モデル、λ=1.65μm の場合 (psf は 2"□)


r0=7cm モデル、λ=0.55μm の場合 (psf は 0.7"□)

r0=25cm モデル、λ=0.55μm の場合 (psf は 0.7"□)

r0=92cm モデル、λ=0.55μm の場合 (psf は 0.7"□)

Step 関数モデル、λ=0.55μm の場合 (psf は 0.7"□)

GMT は λ=550nm で r0=92cm を仮定して設計されているが、この結果から判断するとまあ
reasonable であることがわかる。Step 関数モデルは、H バンドでは r0=92cm モデルと違い
はないが、V バンドでは散乱光が増えることがわかる(この計算では十字方向にしか現れて
いないが、実際は全方位に出ることが予想される)。

3.8m 主鏡の構造関数は、国内でのみの使用を考えた場合は r0=25cm モデルで良いが、
技術的にはあくまで r0=92cm モデルを目指すことが望ましい。近赤外に限れば、150nm の
Step 関数モデルでも問題ない。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp