広視野補正レンズ検討


光学パラメータ3で設計された補正レンズは、WIYN 3.5m の補正レンズの設計をベースに設計されている。ここでは以下の2つの観点で設計の再検討を行った。
  • 自重変形を顧慮した中心厚
  • 非球面を用いた場合の改善度合い

半径150mm の円周上での3点支持で、20mm 厚、40mm 厚それぞれの場合に溶融水晶レンズがどの程度変形するか調べてみた。


溶融水晶平面 20mm厚(左 Δz=930nm)、40mm厚(右 Δz=249nm)


溶融水晶凸メニスカス 20mm厚(左 Δz=334nm)、40mm厚(右 Δz=164nm)


溶融水晶凹メニスカス 20mm厚(左 Δz=384nm)、40mm厚(右 Δz=162nm)

立てた場合の変形量(極端な3点支持)

溶融水晶凹メニスカス 20mm厚(左 Δz=178nm)、40mm厚(右 Δz=111nm)

透過レンズの場合は反射ミラーに比べて精度は 1/4 で良いのと、PV値(Δz)の 1/4 程度が1σと考えると、上記Δzの 1/16 程度が反射ミラーの1σ相当という事になる。すなわち、平面に近いレンズの場合は、3点支持での加工を行なうには中心厚40mm程度は必要であるが、メニスカス形状になっていれば30mm程度でも大丈夫そうだという感触である。

レンズホルダ内で縦置きにした場合の自重によるメニスカスレンズの変形量は加工の支持で発生する変形量よりも小さく、問題ない(下の4つ目の解を用いる場合は再評価が必要)。

中心厚20mm、球面レンズ2枚(これまでの解)

中心厚40mm、球面レンズ2枚

中心厚40mm、1枚目は平面/非球面、2枚目は球面

中心厚40mm、1枚目は両面非球面、2枚目は球面

中心厚40mm、全面非球面

どの解でも、焦点面前に 40mm 厚の入射窓+フィルターを入れると、像サイズは 60μm 角一杯に広がってしまう。広視野カメラを想定するなら入射窓+フィルターを顧慮して設計すべきだが、多天体ファイバー分光を考えると顧慮しない設計の方が都合がいい。また、同様に ADC を入れると像は悪化する。

φ400mm の焦点面全面を覆う CCD カメラは実現が困難であると思われるため、上記設計結果の中で考えると、平面/非球面補正板を用いた解が製作しやすさを顧慮して最有力ではないかと思う。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp