ミラーハンドリング治具

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/Kyoto3m/handling.html

岩室 史英 (京大宇物)


●ハンドリング治具設計

  • 設計方針
    ゴムパッドで接触させる
    ネジによる与圧でしめつけ
    自重による追加の圧力

    という方針で設計してみた。

    水色はアルミフレーム、緑は既にあるもの、黄色は鏡と新たに製作する部品、を表している。自重によりアルミフレームにトルクが生じ、フレーム両端を球面ベアリングで保持することによってアルミフレームに沿って2列に並べたゴムパッドの片方の圧力が増す構造となっている。ゴムパッドはミスミのゴム材の中から、固い/摩擦係数が大きい/アウトガスが少ない、という条件でシリコンゴムを選んだ。

  • アウトガス評価
    真空に入れても大丈夫か蒸着業者に確認した所、ベアリングは分解洗浄、ゴムはアウトガスのできるだけ少ないものなら大丈夫そうだという事だったので、ミスミのシリコンゴムのアウトガス量を調査することにした。真空ポンプのチューブの先に真空ゲージを取り付け、チューブ内にゴムのサンプルを入れた状態で電磁バルブを閉じて圧力の上昇速度を調べる方法で調査した。

    結果は以下の通り。
    赤:何も入れない状態で18時間経過後
    桃:そのまま大気圧に戻し再度真空を引いた直後
    緑:ゴムサンプルを入れ再度真空を引いた直後
    水:そのまま1時間経過後
    青:そのまま4時間経過後
    黄:そのまま22時間経過後
    ▲:ゴムサンプル1回目、●:ゴムサンプル2回目

    黒の実線は、ゴムの表面積(64cm2)とチューブ内の体積(0.49L)を顧慮した際に、全アウトガスがゴム表面積から出ているとした場合のアウトガス速度一定の曲線、破線はその2倍、5倍を表す。圧力の桁が変わる度に、真空計のフィラメントに流れる電流が変化し、その直後に若干不安定な値が出る事に注意。

    様々な材質からのアウトガス量のまとめページの値と上記の結果を比較すると、ミスミのシリコンゴムはほぼシリコンゴムの典型値で、アルミのアウトガス量の約1000倍であることがわかる。上記ハンドリング治具で予定されるゴムパッドの表面積は225cm2でアルミフレームの表面積(フレーム内側の面積を含む)の1/400程度となるため、ミラーハンドリング治具としては、ゴム部が主なアウトガス源となってしまうが、真空釜全体から見た場合は壁面面積はゴムの表面積の約1000倍あるので、真空釜壁面からのアウトガスと同程度となる。真空引き2回目の結果を見ると、ゴム表面からのアウトガスは速やかに低下し、10-6Torr L/cm2s を少し下回ったあたりでほぼ減らなくなるため、真空が大体引けてから1〜2時間待つことで空の状態での真空度の2〜3倍程度の真空度となることが予想される。

● 保持試験

  • 内枠のみでの試験
    とりあえず、上記方式での保持が可能であるかどうかを確認するために、内枠部分のみを先に製作して保持試験を行った。1度目は一部のパッドでの与圧が不足し、ダミーブランクを保持する事ができなかったため、個々のパッドの裏側に与圧を与える押しネジを配置することで保持できることを確認した。15時間後でも同じ状態で保持できていることを確認した。

  • 問題点
    試験後にパッド部分を外して確認した所、ゴムの側面部分が全て削れてしまった事が確認できた。また、一部のパッド保持金具は変形していた。与圧の力加減がわからなかったために、与圧ネジを締めすぎた事が原因。保持金具をステンレスで作り、パッドのゴムの形状も再度検討する事にした。

  • パッドの変形量
    パッドの変形量を確認するため、2個のパッドの上に金属板を置き、その上に乗ってみた時の変形量を確認した(左は無負荷時の写真)。約40kgw ではゴムは完全には潰れないので、1箇所あたり60kgw以上の力がかかっていた印象。

  • 球面ジョイントが破断
    回転バー両端の球面ジョイントの1つがラテラル方向の締め付け力に耐え切れずに破断してしまった。かなりの力で締め付けているので、直接M10ネジで接続することにした(下段右の写真)。


●仕上げ

  • 外枠とターンテーブル
    外枠を製作し、安全に反転させられるようにターンテーブル上に乗せて車輪を付けた。あとは裏返した際の背面の支持機構への接続と全部品の洗浄かな...





●ブランク取り付け作業








●取り付けマニュアル


●外周用



●組み立て時に必要な寸法

この値はあくまで設計値です。
過去の取り付け痕等があれば、そちらを優先して下さい。

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