アクチュエータ駆動試験1


フルストローク試験

アクチュエータをほぼフルストローク(65万パルス)で駆動中に、同時にシグマ光機
センサで20msec間隔でサンプルして駆動状態を check した。

駆動パターンは以下の通り。

試験1: 30000pps で駆動し、上下4往復
試験2: 3000pps で駆動し、上下4往復
試験3: 10000pps で駆動し、上下4往復
試験4: 30000pps で駆動し、上下4往復

結果は以下のようになった。グラフは横軸が時間から換算した送出パルス数で、縦軸は
上段: シグマ光機センサカウント値
中段: 1回目上昇時を基準とした相対カウント値
下段: 連続する隣同士のカウント値の差分を100送出パルスあたりに換算した値
となっている。(試験2が最もサンプル間隔が密となるため、下段の値は最もノイズの
影響を受けやすいことに注意)

グラフの色は
: actuator#1 上昇時
: actuator#2 上昇時
: actuator#3 上昇時
: actuator#1 下降時
: actuator#2 下降時
: actuator#3 下降時
に対応し、4回分のデータはパルスの原点のずれを補正して重ねてある。

以下、左上から順に、試験1〜4の結果


これらからわかることは、

  • 上昇時の動きはほぼ再現性があるが、上下を繰り返すほどアクチュエータ間に再現性の
    ずれが生じる。これは、アクチュエータ駆動ソフト内での、ロストパルス補正項を更に調整
    することで解決できると考えられる。
  • 当然ながら上昇時と下降時の動きには大きい差があるが、下降同士は上昇同士と同程度
    の再現性がある。
  • 全てのアクチュエータで上昇時、下降時とも差分パルスのグラフに大小2ヶ所の段差が
    あり、これがパルス - カウント関係の fitting を困難にしている。また、下降時の
    アクチュエータ#1の挙動は低速時にやや不安定であることもわかる。

次に、送出パルス速度の違いによる動きの違いを、試験1〜4の各1回目の往復データを
比較することで調べた。

ばらつきが大きくなったのは、各データの間に3往復分の上下動が含まれているため、
ロストパルス補正項の誤差が積算したものと考えられる。この部分さえ完全に調整
すれば、駆動速度の違いは特に影響はないものと判断される。

次に、 森谷さんの測定値との違いを調べる。
以下の図は、森谷さんの測定したパルス - カウント関係でのパルス値を横軸にとり、
縦軸をシグマ光機センサのカウントを今回のデータと比較して、森谷さんのデータの
パルス値を換算した変換カウント値である。どちらも正しい場合には、直線になるはず
であるが、結果を見るとかなりうねっている(下段は直線 fit からの残差)。

以下、左上から順に、試験1〜3の結果と比較したもの


この違いは、100パルス送出するごとに停止してサンプルする方法は、連続してパルスを
送出するときに比べてかなり動きが異なることを表しており、その一つにはやはりロスト
パルス補正項が完全でないことも原因として含まれている。また、今回の連続パルス送出
方法の問題点は、本当に等速でアクチュエータが上昇しているかであるが、これに関しては
レーザー変位計を用いてこれから確認予定である。



さらなる解析

カウント - パルス関係は整関数での fitting が難しいため、ΔCount/100pulse の
グラフ(3段グラフの下段のもの)に着目して考える。横軸がアクチュエータのパルス数だと、
整関数では fit しにくい形状であるため、横軸をセンサのカウント値にしてみる。

これだと、2次関数で fitting できる形となった(上図下段の黒曲線)。アクチュエータの
パルス数を x、センサのカウント値を y として、

dy/dx=ay2+by+c=a(y-α)(y-β)=a/(β-α)(1/(y-β)-1/(y-α))

これを積分すると、

x=1/√D log((y-β)/(y-α))+C (D は判別式)

fitting 結果からα,β,D を求め、C を適当に決めてやるとまずまずの結果が出た
(下図上段と下段の黒曲線)。

ここで、ΔCount/100pulse のグラフにはスムージングをかけて見易くしたが、上りと
下りの曲線形状は非常に似ていることに気が付いた。この形状の特徴を用いて上りと下り
のデータを重ね合わせ、上式の逆関数である

y=α+B/(1-exp(√D*x-C))

を用いて非線型 fitting をすれば、上手くいくことが予想された。
非線型 fitting には Numerical Recipesmrqmin を用い、アクチュエータ
#1 の1回目の上昇(青)・下降(緑)時のデータを重ね合わせた後 fitting してみると(赤は平均)

非常にうまく行った。うねりはセンサ起因ではなく、アクチュエータ側のギアやボールねじの
くせであると考えると、fitting 結果の方を正しい位置として信用する方が良さそうである。
個々のセンサーについてパラメータを測定する必要があるが、全アクチュエータ同時のフル
ストローク2回の上下でデータの重ね合わせと fitting を自動で行なうソフトを開発する。


iwamuro@kusastro.kyoto-u.ac.jp