●CaHK+Hα中分散分光器
GAOES-RV の観測波長域外の紫外側にある CaII HK 線(395nm) と Hα(656nm) を波長分解能1万以上で GAOES-RV と同時観測できるようにするもの。できる限りシンプルな構造で小型装置として開発する。
光学設計のポリシー
反射型の回折格子は偏光特性が強く高い効率が得られないので可能な限り高効率の透過型素子を用いる
GAOES-RV の前置光学系ユニットから光を分岐して、ファイバーでナスミス台下の装置へ送る
観測波長域は 395nm と 656nm 付近のみに限定し、汎用装置にすることは考えない
透過型分散素子
CaHK 用分散素子としてまず検討したのが Plymouth Grating Laboratory の VB Grating だが、φ180mm のものの見積を依頼したところ予算的に厳しい価格であったため、断念して Wasatch Photonics の VPH で製作することに。効率予測は以下の通り。
。
。
656nm 付近の透過率変化は 800nm に最適化されている AR コートの影響である可能性もあり、入射角を何度にするのが最適かは現物で調整するしかない感じだ(AR コートは無しで発注し、こちらで 656nm に最適化したコーティングを行う)。
(以下の部分、リンク先は "Not Found" となりますがファイル名の "." を手動で追加して下さい)
その後、磯貝くんが LightSmyth の技術者に問い合わせた結果、上記透過率変化はコーティングの影響ではなく回折格子の構造により生じていて不可避とのことだった(AOI 27°での理論的な透過率 )。
LightSmyth の技術者からの新たな情報として、T-1850-800s であれば 660nm 付近の効率は高いとのことで、AOI 42° , AOI 37° , AOI 32° の理論的透過率の情報をもらうことができた。これを見ると、T-1850-800s の方が圧倒的に素性がいい。検出器の暗電流の影響が気になるがとりあえずは効率を上げることが重要なので、T-1850-800s の方を採用することにする。
LightSmyth の VB grating は量産品の厚さは 0.9mm しかなく、単独の水平置きは自重変形でできないし(20μm たわむと致命的)、面積が大きいだけに垂直置きもちょっと心配だ。特注で厚さ10mm の基板上に形成できないか問い合わせたが、LightSmyth に依頼しても張り合わせになるとのこと。しかも有効口径は経験上 109mm とのことだった(この外側でも若干の効率低下がある程度らしいが)。0.9mm ではコーティングをすると反りが発生する可能性もあるし、立てた状態で単独で固定して使うのはやや心配。ということで、直接 LightSmyth の技術者に大面積の場合にどうしているか聞いてみたところ、6.35mm 基板で製作することも可能とのことだった。高出力レーザーなどと併用する場合は薄い方がいいので、大面積でも薄いままで製作する場合もあるが通常は 6.35mm らしい。
しかし、6.35mm 基盤の場合は経費が倍以上かかり、少数製作の場合は張り合わせの方が安い(経費2倍弱)とのこと。LightSmyth はこの回折格子の張り合わせに十分な経験があり、張り合わせの場合は LightSmyth に頼むしかないので、結局は 0.9mm のまま保持するかかなりの経費を追加して張り合わせるかの選択となった。まずは、何とか 0.9mm 板の状態で安全に保持できないか、厚さ 0.7mm のガラス板を購入して保持方法の試験をすることにした。
とりあえず、ホルダーを作ってみた。プランジャはバネ力最弱のもの。写真では先端が少しずれているように見えているが、目視ではちゃんと先端で接触しているように見えている。150x100x0.7 のガラスが間もなく来るので、来たら挟んでみる。
カラスをはめてみたところ。思ったよりもしっかり保持できていて、ある程度の加速度をかけても問題なさそうだ。
(この部分、要差し替えです...)波長分解能は CaHK が約1.3万、Hα が約1.6万。下図は○がファイバーコアの像サイズ(直径55μm)で、3つの●がその位置でのスポットサイズ。395/0.03=13167、656/0.04=16150。
光学素子 pdf 図面
Hα レンズ1の図面寸法入力時に、CAD でレンズ面が正しく選択されていなかったため、図面中の曲率半径にミスがあったことが判明、修正加工が必要に...
納品
穴空き平面鏡、ダイクロイックミラー、放物面鏡が納品された。
ミラー検査結果はここ (要パスワード)。
機械設計
温度変化の影響を抑えて可動部をできるだけ減らしたいので、すべて鉄系のステンレス SUS430 (熱膨張係数 1e-5) で製作することにした。これでも 20℃ の温度変化で 500mm に対し 100μm の変化があるので、約1pix 分の像サイズ変化は温度変化で起こる。そのため、入射スリット部分にのみ焦点移動機構を設け、温度変化の補正は入射部で行うことにする。ステンレスは重いので、できるだけ板を使わずに、カメラ系部分はパイプ構造にする。LightSmyth 回折格子は結局 0.9mm 厚のまま使うことになったので、最終設計が確定した。
機械部品 pdf 図面(30種、52点)
納品されたので、コーナーの丸シャフト無しでとりあえず仮組みしてみたところ、3ヶ所で修正が必要なことが発覚した(上記 pdf 図面の「→ 修正」の部分)。自力で加工できないかちょっと試してみたが、ステンレスは固くてドリルの刃が立たないため製作業者に依頼することに...
修正加工の間に昔購入したVelvet でチューブ内面など塗装しようかと思ったが、いざ塗装の段階で塗料が完全に成分分離していて使い物にならないことが判明(溶剤で溶かせば使えるかもと思っていたが、そもそも色が変色している)。再度購入して無風の晴天日を待っている状況。
晴天の日に2回に分けて、プライマー+塗装2回を行った。筒が内部まで入り込む部分の側面は塗装すべきかどうか考え中(引き抜くと塗装が剥がれるため)。筒の外側の隙間を何かで塞ぐ必要があることに気がついた...
ファイバーバンドル
OPTRAN WF NA=0.12 コア径 50μm 61本、大体 4" 程度の視野がカバーできる。
下図のままだと filling factor 63% だが、融着してできるだけ接近させることで 80% 近くまで filling factor を上げられるはず(若干の cross talk は伴うことが予想されるが)。
コア径 50μm のファイバーは、ジャケットを外して扱うことが結構難しいようで、CeramOptec では 50μm ファイバーではジャケットを外した状態でのバンドルが作れないとのこと。国内の他のメーカーで加工が可能か、国内代理店が調査中...。このバンドルが製作できない場合は、太いファイバーでイメージスライサを使うか、マイクロレンズアレイと組み合わせるしかない。
案の定、2ヶ月近く何も進展しないと思っていたら、「加工できる業者がありません」との回答が来た。OPTRAN を使うのは諦めて、まずは NA=0.12 50μm ファイバーでバンドルが製作できる会社を探すことにした。
その後、ファイバー同士の平行度がどうなるかわからないが一応作れるという業者は1社見つかった。使用するファイバーは OPTRAN とのこと。大変そうだったが一応できて納品された。ファイバーが細いので、取り扱いにはかなりの注意が必要。ビームの平行度は実際の装置に組み込んで確認する方が無難そうだ。両端のプローブのサイズは φ6 x 40 だった。
バンドル側に均一に光を当て、スリット側のファイバーの並びと明るさを調べた。61本のファイバーを端から8本ずつずらしてイメージを見たものが下。ファイバーの先端面が傾斜しているのか、X ステージで横にずらしていくとフォーカスが少しずれるようだったので、横に動かしてもフォーカスが変化しないようにプローブの傾きをかなり調整してから画像を取得した。
大体等間隔で一直線に並んでいることが確認できた(向きが問題だが...)。平均的な間隔は 72μm。
バンドル側を見てみる。
並びが崩れているが、50μm ファイバーの難易度は非常に高いようなので、まあ仕方がないというところか。この1本1本にレーザー光を入れてスリット側との対応を見ると同時に、スリット側の射出ビームの向きがどの程度揃っているかを調べてみる。ファイバー中心の位置を画像から計測し、XZ ステージを動かして61本のファイバーを順に視野中心に移動させることができることを確認後、カメラを光量可変のレーザーユニットに置き換えてフォーカス合わせと原点位置合わせを行い(下右)、カメラはスリット側に移動させて X ステージで順に射出ファイバーが視野中心に来るように座標を調べていく(下左)。
ファイバーのバンドル側とスリット側での位置関係(単位 μm)。
Bundle No. Bundle X Bundle Y Slit X Slit No.
1 -120 -209 -1331 12
2 -62 -229 1691 55
3 -2 -235 1904 58
4 59 -232 1833 57
5 -167 -171 -1897 4
6 -83 -161 697 41
7 -26 -180 -702 21
8 35 -177 1044 46
9 104 -190 -1472 10
10 -200 -121 -1966 3
11 -129 -122 -1194 14
12 -40 -120 -562 23
13 20 -115 72 32
14 78 -135 834 43
15 139 -141 -2109 1
16 199 -125 2113 61
17 -222 -65 -1544 9
18 -161 -70 -1122 15
19 -90 -75 -135 29
20 -25 -60 281 35
21 36 -54 141 33
22 92 -76 -841 19
23 152 -80 -1263 13
24 222 -68 976 45
25 -243 -8 -2036 2
26 -183 -13 1117 47
27 -122 -23 -633 22
28 -63 -12 -65 30
29 -1 -4 350 36
30 61 1 -344 26
31 117 -22 -206 28
32 179 -25 -773 20
33 241 -10 -1616 8
34 -220 48 -1687 7
35 -160 43 -487 24
36 -99 37 -415 25
37 -39 43 3 31
38 23 51 -275 27
39 83 60 419 37
40 137 35 -910 18
41 199 32 628 40
42 -195 103 -1403 11
43 -134 98 1404 51
44 -74 93 -1051 16
45 -13 99 211 34
46 47 113 -981 17
47 113 113 905 44
48 168 88 489 38
49 228 85 1621 54
50 -161 156 1474 52
51 -97 150 557 39
52 -37 155 1258 49
53 22 172 766 42
54 82 165 1545 53
55 145 164 1330 50
56 200 139 2045 60
57 -125 204 -1755 6
58 -64 210 1974 59
59 -6 228 -1826 5
60 55 226 1762 56
61 114 216 1187 48
上右図は、制御ソフトや解析ソフト上でのバンドルの表示。40x40 サイズで表示可能そうだ。
スリット端面より 3.4mm 離れたところでのビーム位置61個の gif アニメ。ファイバー位置は画像中央で、ビーム半径の半分ほどほぼ全てのビームが傾いて射出される。とにかく、瞳を通過する平均光量を最大にするとスリットに沿って焦点深度が変化すると思われるが、検出器をスリットに沿った方向に傾けて対処するしかない(そういう機械設計にはなっていないが...)。
ここまでまとめてから、fits だと画像が上下反転することに気がついた。上の画像は全て上下反転している ので、番号とともに上下反転したものがそれぞれを正面から見たときの図になっていることに注意。
スリット側からレーザー光を入れ、バンドル側で焦点位置を 3.4mm ずらした像が以下。入射側は y 方向の調整ができないため、入射状態にはばらつきがあり、明るさや射出ビーム形状がかなり変化するのはそのため。致命的なずれはないので、全ファイバーがちゃんと使える感じだ。
ファイバースリットを3°傾けて入射させる部品ができたため、とりあえずファイバースリットを固定してビームの向きが合っているかどうかを確認。小型 X ステージを固定するネジ穴の間隔が違っていてネジ留めできなかったので、トルクを減らすためにアクチュエータを外して軽いファンピッチスクリューに交換し、アルミテープで簡易固定した。大体想定どおりであることが確認できた。これで最初の3つのミラーの調整は可能だが、板バネなど細かい部品の入手待ち。
光学調整
入射部からダイクロイックミラーまでの光学系を取り付けて、Hα 側分散素子部分でのビーム状況を確認した。入射slit の傾斜を3°にしたが、ちょっと角度が大きすぎた感じだったので、シムで少し戻して 2.7°程度にしている。右下動画では、右上と右下にダイクロイックミラーの抑え板の端が見えているが、回折格子のサイズはこれよりも少し内側になるので修正はしていない。こう見ると結構はみ出ている量が多いかもしれない。将来的にはもう少し短焦点のコリメータミラーを準備して交換してもいいかも(効率が上がる分、波長分解能が落ちるが)。
こんな感じ。光源は高輝度白色 LED で、ピンホール径は 200μm。スポットを調べてみる。
下左図は焦点位置を挟んで -1mm〜+1mm を 0.1mm ステップでスキャンしたもの、下右図は -6mm〜+6mm を 1mm ステップでスキャンしたもの。フォーカス位置では、200μm のピンホール像に全幅で 40μm 程度の収差が乗っている感じで、ハーフミラーの反りが非点収差として出ているようだが、この程度であれば問題なく使える。隣には面輝度 1/10 程度のハーフミラー裏面でのゴースト像が出るが、まあ、これも問題ないだろう。
ADC
天体の追尾は、GAOES の天体ガイド機能を用いるため、550nm での天体の位置が固定される。また、GAOES の観測は Instrument Rotator は固定されるため、視野回転も大気分散方向の回転もどちらも発生する。低高度(EL=20°)では 550nm と 395nm では大気分散量は 3" 強となるため、上記バンドル内に入らない上に、入ったとしても露出中に天体が流れてしまう。そのため、ADC は必須ということになったので設計してみた。S-FPL53 と S-LAH97 の組み合わせは、運よく大気分散の波長変化によく合った屈折率変化を再現できる(後に、オハラの硝材リストを使って UV 透過率の高い全てのクラウンとフリントの組み合わせで調査したが、熱膨張率が同程度でアッベ数の差が大きく、大気分散と似たような屈折率変化となる組み合わせは存在しないことが確認できた)。これで EL=20°までは大気分散補正ができるはず。ただ、熱膨張率の違いが大きすぎて張り合わせはできないので、どのように配置するかは要検討だ。
S-FPL53 の代わりに CaF2 を用いると、S-LAH97 の頂角は 6.298°となり、上記3つのスポットの間隔の比は 1:0.303 と、より大気分散に近い値が出せることがわかった。フリントの方は CaF2 の方が良さそうだ。温度変化10℃に対して、屈折率変化によるスポット位置の移動は 5μm なので、温度変化の影響は無視できる。
光学素子 pdf 図面
回転ステージはシグマ光機の回転ステージ OSMS-60YAW 2個でいけそう。カタログ上の中央穴の内径はφ25mm だが、内部の筒を取り外すと内径はφ28mm 確保できる。望遠鏡の高度が変わると瞳位置が移動すると思うが、その移動量は 1mm もないそうなのでこれで OK。
前置光学系のコリメータレンズ
前置光学系のコリメータレンズは、できれば GAOES で現在使用しているものが使えることが望ましいが、確認してみた。Edmund Optics TS アクロマティックレンズ 30 x 150 とシグマ光機 SLB-30-2000PM との組み合わせとのこと。両方の光学パラメータを Zemax に入れて、GAOES の波長域 500-600nm で平行光を入れた際のフォーカスを調べたものが下左図(昨年計算したときには1つの面の曲率の入力を間違えていたことが判明...)。光軸上の1天体のみの観測なので光軸上のみの設計かと思っていたが、平凸レンズは狭い範囲ではあるがコマ除去の役割を持っており、視野1分で設計されているようだ(下左)。これに 390nm と 660nm の光も入れたものが下右図。660nm の方は何とか大丈夫だが、390nm では全く使えないことがわかる。
市販品では良いものがなさそうなので、現在使われているレンズとの交換で使えるアクロマートを考えてみる。最も都合がいいのは2枚玉の張り合わせでの製作だが、直径30mm のレンズの場合、熱膨張係数の大きい S-FPL53 や CaF2 を通常のレンズと合わせると 40K の温度変化で 10μm の直径差が生じるため、張り合わせはちょっと危険。 S-FSL5 と色消しの相性のいい、S-NBH52V の組み合わせで試してみる(分光器本体でも用いた組み合わせ)。この2つは 40K の温度変化で 30mm に対し 1.6μm しか変化しないので、多分張り合わせても問題ないだろう。2枚の凸レンズ両方に S-FSL5 を用いたものが下左、右側のコマ補正レンズは分離しているのでそちらを CaF2 にしたものが下右(S-FPL53 でもほぼ同じものになる)。全長と F 値が同一になるように、レンズの配置位置は微調整してある。
一番左の面と一番右の面は平面にしてもそれほど性能は落ちないので、2面を平面にしたもの。下右は CaF2 の代わりに S-FPL53 を用いたもの。
390-660nm 全体だと、GAOES で現在使われているレンズよりもスポットが広がっているが、GAOES の波長帯とその両側の波長帯で別々にフォーカスを合わせるとより性能は良くなる。焦点位置を 54μm 左にしたものが下左(GAOES の波長のみ plot)、100μm 右にしたものが下右(390nm と 660nm のみ注目)。現在使われているレンズとほぼ同等な性能を維持しつつ、390nm と 660nm でもいい性能が出せていることがわかる。
光学素子 pdf 図面
望遠鏡部分から計算しても結果は大体同じ(望遠鏡焦点の後に上記と逆順で並べて平行光にした後、無収差の理想レンズで結像させたもの)。下図上段が現在使われているレンズ、下段が今回設計したレンズ。望遠鏡の収差分をレンズで修正してもほぼ変化ないので、そこまでは考えないことにする。
レンズ2組と ADC まで含めた全てを配置したものが以下。中心から 2mm 外れるとかなり悪くなるが(下図右上スポット)、そもそもファイバーバンドルの直径が 0.5mm もないので、基本的には使うのは中心付近のみ。
コリメータレンズを置き換えることによる GAOES 前置光学系 BOX 内部の spot の変化。ファイバー焦点(赤〇 )とガイダー焦点(青○ )での比較。spot は視野中心と±7", ±10" で plot。
ファイバー焦点 (左が現在、右がレンズ置き換え後、□は40μm)
ガイダー焦点 (左が現在、右がレンズ置き換え後、□は40μm)
まあ、似たような感じなのでこれで大丈夫そうだ。
前置光学系の機械系
ナスミス装置ロテータ円盤上でビーム分岐するのが良さそう。以下のような感じ。
ロテータ上のユニットは全交換、固定側は GAOES 前置光学系 Box から出ているバッフルにぶら下げ。
頻繁に焦点位置の関係がずれる場合を考えて、ピコモータで微調整できるようにしておく。
筒と望遠鏡焦点位置に配置する調整用の絞りは Thorlabs の
SM30L30 8個
SM30L05 1個
SM1A15 1個
SM1A16 1個
SM30RC/M 1個
SM1D12SZ 1個
を用いる。その後、ロテータの8°回転でレンズ前に LED 光源が来るように筒を追加した。
SM1L35 1個
S120-FC 1個
機械部品 pdf 図面(22種、32点)
組み立て
バンドパスダイクロイックミラー2枚が納品された。ダイクロ面を上にして撮った写真が以下。緑の光だけ透過するはずだが、なぜか緑っぽく見える...。
とりあえず組み立てたところ。レンズやプリズムはまだ。
レンズとプリズムが納品されたので、組み込み。射出光は紫になる。
分光器と組み合わせての調整は最後の方で。
検出器
カメラとしては、時間も予算もないので TriCCS で用いられている CMOS を用いた市販品 BH-60M/BH-67M を用いる。画素サイズは 19μm、2段ペルチェの冷却能力は TriCCS のカメラの冷却性能よりも良い感じだが、最大冷却状態での暗電流の大きさが問題なので、ビットラン株式会社 の協力で 0s,60s,600s でダークを撮ってもらった。
BH67
以下、BH-67M のデータ(BH-60M も依頼中)で、左が20枚平均(900-1200ADU)、右が20枚の標準偏差(0-40ADU)。画像クリックで全体が確認できる。平均は、最も明るいものが0s、時間が長くなるとどんどん平均が下がっていくが、どうやら天体撮影をした際の長い露出でも背景が明るくなりすぎないように、読み出し回路部分で露出時間に応じて原点シフトを行うようになっているらしい。Conversion factor は 1.10217e/ADU とのことなので、ノイズの大きさからダークを逆算できる。
上左画像の median は 0s,60s,600s の順で 1055,1041,982、上右画像は 18.18,18.53,18.79 なので、erms にして2乗すると 401.5,417.1,428.9 → 0,15.6,27.4 で10倍の関係とはなっていないので、暗電流が正しく計測できているわけではないが、0.05-0.26 e/sec という感じだ。この値は、波長分解能1万で観測した際の背景光と同程度のレベルなので、まあ暗電流は合格という感じだが、読み出しノイズが 20erms (TriCCS の5倍だが ADC の bit 数の違いを考慮するとほぼ同等)で、暗電流だけでなくこの値にも注意する必要がある(撮像や明るい天体の分光であれば問題ないが、中分散分光なので...)。
その後、背景レベルのシフト機能を OFF にしてもらって、再度同じ測定をしてもらったのが以下。左が20枚平均(600-900ADU)、中が20枚の標準偏差(0-40ADU)、右が20枚の平均-bias 平均(0-100ADU)。
上左画像の median は 0s,60s,600s の順で 702.6,712.7,740.1、上中画像は 18.34,18.60,19.50 なので、erms にして2乗すると 408.6,420.3,461.9 → 0,11.7,53.3 でまだ10倍となってはいないが、暗電流の大きさは 0.089-0.20 e/sec となった。読み出しノイズは同じく 20 erms。今回は平均値の差からも暗電流が評価できるので、平均画像の差の median (0, 5.81, 30.9)から計算すると 0.057-0.11 e/sec となりノイズから求めた値の半分程度となる。
ゲインを上げれば、読み出しノイズの寄与が減らせる可能性があるので、ゲインx16 でも同じセットを撮ってもらった。左が20枚平均(800-1700ADU)、中が20枚の標準偏差(0-120ADU)、右が20枚の平均-bias 平均(0-300ADU)。
上左画像の median は 0s,60s,600s の順で 989,1055,1208、上中画像は 29.86,39.21,57.49 で、ゲインが正しく16倍になっているものと仮定すると、erms の2乗が 4.2,7.3,15.7 → 0 3.1 11.5 で、暗電流の大きさは 0.019-0.052 e/sec 読み出しノイズ 2.0erms、平均画像の差の median (0, 49.5, 191)から計算すると 0.022-0.057 e/sec となりノイズから求めた値とほぼ一致する。どちらにしても読み出しノイズの寄与は減る感じだ(なぜ暗電流も減るのかは不明)。問題は実際のゲインが何倍かかっているかで、実際に光を入れてカウントが何倍になるかを調べてもらう必要がある。
個々のピクセルに対し、20枚の連続露出データを3σクリッピングをかけながら最小2乗直線 fit してσの評価をしているため、上の画像は宇宙線などの突発的な影響は除いて処理されている(単純平均を取ると、600s x 20枚ではかなりの密度で宇宙線が入る)。
上記ゲイン x1, x16 の結果をまとめると以下の通り。ゲインは正しく16倍かかっているものとし、暗電流は左列がカウント変化から算出したもの、右側はノイズ変化から算出したもの。
Gain x1 Gain x16
露出時間 平均(ADU) σ 暗電流(e/sec) 露出時間 平均(ADU) σ 暗電流(e/sec)
0 702.6(0.00) 18.34 --- --- 0 989(0.00) 29.86 --- ---
60 712.7(5.81) 18.60 0.11 0.20 60 1055(49.5) 39.21 0.057 0.052
600 740.1(30.9) 19.50 0.057 0.089 600 1208(191) 57.49 0.022 0.019
読み出しノイズの大きい1つの可能性として、TriCCS の読み出し回路の ADC は 14bit で、BH-67M の ADC は 16bit という違いが関係している可能性がある。サチュレーションレベルを同じにすると、BH-67M の conversion factor は TriCCS の 1/4 でいいので、その分、高いゲインの状態での読み出しノイズで比較すべきかもしれない。その場合は、上記の感じからすると BH-67M でも 5-6erms 程度になると予想されるので(20erms の 1/4 程度)、TriCCS の読み出しノイズと同程度になる。
読み出しノイズを下げることのできる1つの可能性として、読み出し時のマルチプレクサ切り替え後の AD 変換前に少し間を置く手がある。マルチプレクサ切り替えに伴い、FET にトラップされていたある程度の電子が移動するはずだが、その移動が落ち着く前に AD 変換するとカウントが安定しない。ある程度の読み出し時間を犠牲にして、電子移動の静定時間を設ければ安定する可能性があるが、ビットランからの情報では、マスタークロックの入力だけで 16ch のアナログ読み出し口のデータがどんどん変わっていくそうで、23.8ns 以内に AD 変換しないと次のデータになってしまうとのこと。検出器を製作しているキャノンにこの待ち時間で電子が静定するのか、これを延ばすと読み出しノイズが減る可能性があるのかに関して聞いてみたところ、「可能性はある」とのことだったのでビットランと相談中。
ゲインの倍率をカウント比と Conversion factor の両方から確認するため、光量一定の状態でゲイン x1, x16 の両方で露出時間を変えて 1000 ~ 10000 カウント程度の画像を20枚ずつ取得が完了したとのことだったので、解析してみた。上記の解析と同様、20枚の露出を時間順に並べ、各 pixel のカウントを3σクリッピングしながら1次 fit して平均とσを pixel 毎に評価する。各セットの結果の代表値(画像全体での中央値)は以下の通り。
Gain x1 Gain x16
露出時間 平均 σ 測定順 露出時間 平均 σ 測定順
0.001 721.7 18.41 15 0.001 1022 33.16 14
0.250 1010 23.57 8 0.017 1366 71.45 13
0.500 1289 27.28 1 0.034 1698 94.12 12
1.000 1875 34.28 6 0.068 2352 128.5 11
2.000 3030 44.76 5 0.125 3457 170.4 10
4.000 5368 61.37 4 0.250 5850 237.6 9
8.000 10046 85.72 3 0.500 10595 332.6 2
4.000 5406 61.90 16 1.000 20382 472.9 7
8.000 10188 86.39 17
ゲイン x1 の 4秒と 8秒が2組あるのは、計測中の光源の明るさ変化を確認するためのもの。露出時間 0.001秒は bias 画像。ゲイン x1 と x16 で 10000 カウントの画像から bias を引いたものが以下(8000-11000ADU、クリックで全体表示)。
5000 カウントの画像との比例関係を確認するためそれぞれを bias 差し引き後の 5000カウント画像で割ったものが以下(±10% 表示)。
大体平らになるので、2つ上の画像に見えている細かいパターンはリアルな pixel 毎の感度特性のようだ。当然だが、ゲイン x16 だと 10000 カウントでも結構ノイズがある。
カウント - ノイズ関係 は以下の通り。
ゲイン x1 での Conversion factor は 1.35e/ADU、ゲイン x16 での Conversion factor は 0.087e/ADU で、ここから出したゲイン比は 15.5。ゲイン x1 での値がビットランより連絡頂いた値(1.10217 e/ADU)より少し大きいが、この一部は3σクリッピングの影響でσが過小評価された影響が考えられる(20回で3σは通常はなかなかクリップされないが、20pixel に対し 1pixel 程度の割合でクリッピングされるものがあるはず)。露出時間とカウントの関係から線形性とゲイン倍率を確認してみると、
線型性からのずれは多分光源の明るさ変化で、測定順に従って変化している感じだ(bias は欄外で関係なし)。カウント比から出したゲイン倍率は 16.9倍で上記と少し異なるが、大体 16倍の倍率がかかっている。ということは、暗電流もゲインによって変化するということになり、何だか疑問が残ってしまったが、大体の特性は確認できたので BH-67M の確認はこれで完了。読み出しノイズや暗電流が分光器の性能にどの程度影響を与えるのかはこれから検討。
その後、杉原くんにクリッピングなしで Conversion factor を計算してもらったところ、
ゲイン x1 : 1.266 e/ADU
ゲイン x16: 0.0809 e/ADU
とのこと。クリッピングの影響で 7% 程度大きい値が出た感じだが、こちらの値は逆に突発的な異常値を含んだ評価になるので、過小評価になっているはず。まあ、2つの値の中間くらい(1.31 と 0.084)が妥当と考えるべきだろう。
BH60
以下、BH-60M のデータで、背景レベルのシフト機能を OFF にして BH-67M と同様 0s,60s,600s でダーク画像を取得。左が20枚平均(500-800ADU)、中が20枚の標準偏差(0-40ADU)、右が20枚の平均-bias 平均(0-100ADU)。Conversion factor は 0.9155e/ADU とのこと。
上左画像の median は 0s,60s,600s の順で 604.1,625.6,630.0、上中画像は 13.82,14.54,14.77 なので、erms にして2乗すると 160.1,177.2,182.8 → 0,17.1,22.7 で全然10倍となってはいないが、暗電流の大きさは 0.038-0.29 e/sec となった。読み出しノイズは 12.7 erms。平均画像の差の median (0, 16.5, 19.7)から計算すると 0.030-0.25 e/sec となりノイズから求めた値とほぼ一致するが、1分と10分での結果の違いがかなり大きい。bias のみ取得時間が離れているので、検出器の状態が異なっている可能性がある(ヘッダはどれも CAM-TEMP=-15.0 だが...)が、イメージに見られる上下部分の暗電流パターンは1分と10分ではほぼ同一なので、大部分の暗電流は1分以内に減少すると考えるのが正しい感じだ。すなわち、読み出し時の発熱で大部分の暗電流が決まるということになる。その場合、1分~10分の間の暗電流は 0.008 e/sec となり BH67M (1分~10分の間の暗電流は 0.051 e/sec)よりもかなり小さい感じだ(空乏層が薄いので)。(しかし、このデータは背景レベルのシフト機能が ON だった可能性が疑われ、購入後のカメラのデータとはかなり異なるものだった...)
デモ機での試験
デモ機が借りられたので、Matrox Radient eV-CL に接続して、millite10.53.1354lnx を用いて読み出ししてみる。注意点は以下の通り。
カメラリンク接続にはシリアル通信の機能もあり、Radient eV-CL ではシステム起動時に /dev/RadienteVCLS0, /dev/RadienteVCLS1 というデバイス名でマウントされる。BH60 では /dev/RadienteVCLS0 を用いて設定コマンドを送信し、カメラリンクの主機能を使った部分では主にデータ転送のみが行われる。
millite はシリアル通信部はサポートしていないため、通常のシリアル通信のプログラムに millite のライブラリを混ぜ合わせて制御ソフトを作る必要がある。
BITRAN さんからのヒントなど頂いて、Ubuntu から 16bit で画像取得・fits 書き出しすることができた。あとは連続露出の際の高速化ができたらとりあえずのテスト画像取得用プログラムは完成。
単一の露出プロセスの流れは以下の通り。
カメラとのシリアル通信を確立
露出時間とゲインをシリアル通信でカメラに設定
上記2つの値と検出器の目標温度の情報をカメラ側に問い合わせて確認
millite で受け取り側の環境構築
millite で待受け状態にする
現在の時刻と検出器温度を記録
カメラに露出コマンド送信
露出終了時後に画像バッファポインタ受取と現在時刻確認
画像バッファを2次元配列に移し替え
画像の平均値と分散を計算
fits に書き出し
millite の環境構築を解除
カメラとのシリアル通信を切断
複数枚連続露出は上記 5~11 をループさせて行うことになる。試しに走らせた所、0.1sec x10 枚でピッタリ2秒だった。大半は disk への書き込みを含む後処理時間だと思ったので、より高速化するために 10,11 の部分を fork で分けて子プロセスに引き渡すようにしてみた。しかし、どうやら millite で環境構築した状態では fork は許可されていないらしく(10,11 では millite のポインタなどは一切使っていないが)、fork するためには一旦 millite で構築した環境を解除しなければならないようだ。仕方がないので 4~9+12 をループさせ、10,11 を fork で処理した所、今度は 0.1sec x10枚で 7.5秒もかかる。結局、millite の環境構築は非常に時間がかかることが判明したため、後者のやり方は却下。前者の方法でもデッドタイム1秒の大半は millite の環境構築時間だったことも判明した。
これ以上高速化したとしても10枚あたり約0.3秒の時間短縮が限界だが、共有メモリを介して後処理の専用プロセスに引き渡す手はある。しかし、その場合セマフォなどのプロセス間通信で処理開始のタイミングを知らせ、後処理が手間取った際にもクラッシュしないようにする必要がある。過去の経験上トラブルの元となりそうなので、とりあえずはやめておこうという感じ。
結局、複数回露出の際には 10,11 を直後の露出の 7,8 の間に入れることでほんの少し高速化できたので、これでとりあえずの読み出しソフトの開発は終了。0.1sec 10枚で2秒弱、100枚で約14秒だった。100枚程度では検出器の温度変化(設定温度0℃)やバイアスレベルの変動は無いことも確認できた。
Conversin factor を計測してみる。
安定化光源の光を32枚の紙で減光し、30cm 長の φ5cm チューブを通して検出器全面に当てる。チューブ端の開口を絞れば検出器上の光度分布がより均一になるが、まあ2割程度は違いがあっても変わらないのでこのままで。試験時は蛍光灯は消灯する(外の明るさは少し変わるが影響はほぼないはず)。下右図は、とりあえず安定化光源の光源安定性をモニタしてみたものだが、電源 ON して十分に時間が経過しているにもかかわらず、結構周期的に暴れていることが判明した。まあ、5% レベルのふらつきはありうるという感じか...
杉原くんに Conversion Factor を計算してもらった結果が以下。gain x1 だと 0.9770e/ADU、x16 だと 0.05865e/ADU で、倍率は 16.7倍。
カメラ冷却箱
カメラの暗電流を少しでも減らすため、ペルチェクーラーを用いた冷却箱を大小2種類準備した。使用したクーラーは、オーム電機株式会社 OCE-F80F-D24 と OCE-F40F-D24 で、ミスミの断熱板で箱を作り空の状態での冷却試験をしてみた(下図上段が大、下段が小)。
小の方だとよほどの湿度でない限り表面の結露はそれほど深刻ではないが、大の方だと水が滴る状態になるので断熱版だけではまずい。内と外にハレパネ を貼ってみる。
マイナス4℃まで冷えるようになったが、案の定、電源 OFF にすると最終的には湿度100%になる。この状態で内部を確認してみたが、水が溜まっているほどの状況ではなく、ハレパネなど水分を吸収するところからどんどん蒸発して供給されている感じだ。何らかの方法で内部を乾燥させるか、外部から乾燥空気を入れて強制換気する機構が必要そうだ。
乾燥空気生成に必要なものを購入。
フィルタレギュレータ SMC AW20-02BCG-A
ミストセパレータ SMC AFM20-02BC-A
マイクロミストセパレータ SMC AFD20-02BC-A
メンブレンエアドライヤ SMC IDG1-02
など。内径 2.5mm のエアチューブで少しずつ流してみる(コンプレッサうるさいので、そろそろ実験室に持っていかないとダメかな...)。下左図のように曲がっていると、多分、メンブレンフィルター内の気圧が上がらず、乾燥能力がかなり低下するようだ(以下の実験結果参照)。
始めの状況から判断すると、乾燥空気は1時間程度で内部の空気を全部入れ替える程度の速さで入っている感じだ。冷却開始後は乾燥空気の注入速度よりも体積収縮による流入の方が上回っている感じだと思ったが、温度が落ち着いてきても湿度上昇が止まらないので、メンブレンフィルタの問題の可能性もあるかと思い、開始後4時間のところでメンブレンフィルタが真っすぐになるようにした(上写真左→中)。これで乾燥空気の供給能力が増した印象だが、7.5 時間のところでの湿度上昇は何もしていないので、何が原因で乾燥空気の供給能力が変化するのかはいまいち不明だ。それにしても、内部の湿度は常温で完全に0になるので今度は静電気が気になる...
BH60
BH60 が納品されたので、デモ機ではできなかった内部観察。セットビスで位置決めされている F マウントスリーブをセットビスを外して取り除き、接続部の状態確認(下左)。4つの M3 タップがあり、この面で分光器に接続する。設計値ではこの面から CMOS まで 18.21mm とのこと。この面でピンホールカメラにすればこの値が確認できると思う。
カメラ下側と上側の蓋を取り外して中を見てみた(下中と下右)。思ったよりも内部は一杯詰まっていて、風通しは結構大変そうだ。カメラ冷却箱大の方のファンの風は結構強いので、この中にダクトで導入すると流れが悪くなって冷凍機の性能が十分発揮できない可能性はありそう。直感的には冷却箱小の方が規模的には良さそうだ(カメラの発熱次第)。
杉原くんに Conversion Factor を計算してもらった結果が以下。gain x1 だと 0.9658e/ADU、x16 だと 0.05853e/ADU で、倍率は 16.5倍。デモ機とほぼ同じ結果だ。
ピンホールでフランジ面から検出器までの距離を計測してみる。ピンホールは、HDD 円盤にアルミテープを貼り、中央に針で穴を空けたもの。これをカメラのフランジに押し付けて固定し、曲尺を光学ステージで±50mm 動かして画像サイズの変化を計測する。
130 と 170 の間の4cm のピクセル間隔を計測すると上左図から 433, 264, 190 pix だった。ピクセルピッチ 19μm なので、ピンホール - 検出器間を x mm、上左図状態でのピンホール - 曲尺間の距離を y mm とすると、
y/40=x/(0.019x433)
(y+50)/40=x/(0.019x264)
(y+100)/40=x/(0.019x190)
より、第一式と第二式で解くと x=16.06、第一式と第三式で解くと x=16.08 となるので、18.21mm より小さくなってしまうが、間に厚さ 2mm のカメラ入射窓(B270 屈折率 1.523)と 厚さ 0.7mm の検出器カバーガラス(材質不明)が入っているので、屈折率が同じとしてこの影響を補正すると 2.7x(1-1/1.523) =0.93 だけ増やした距離が実際の距離ということになる。その結果、17.00mm というのがピンホール - 検出器間の実測値となり、これはほぼフランジ - 検出器間の距離に等しいはず(アルミテープのたわみの分だけ前後するが...)。設計値より 1.2mm も距離が近く、ビットランに問い合わせると 1mm も近いと組み立てできないとのこと。何かがおかしい感じだが、ピンホールでの測定は原理が簡単なので間違えようがない。アルミテープで 1mm もたわむとは思えないが、再度確認してみる必要がありそうだ。
とりあえず、冷却箱の中に設置してみる。クーラーの風ができるだけカメラ内部を通過するようにファンのはみ出ている部分をプラ板で囲い、上部を塞ぐ。湿度計を入れる穴がなくなってしまったので、温度計2個のみで湿度を予測してモニタする(乾燥空気が供給されていれば絶対結露はしないと思うが、乾燥空気の供給が止まった場合も検知できるかも試験する)。ケーブルの太さを考えて、カメラの背面の空間をもう少し広くすべきだった...
カメラを入れての冷却試験中の温度変化が上左図。赤 は乾燥空気吹き出し口の温度、緑 は冷風吹き出し口の温度、桃 と青 は室内の温度(2つの違いは Pt 抵抗の場所の違いだと思う)。さすがに、中にカメラが入っているとそれほど低温にはならず、室温から20℃弱までしか下げられない感じ。カメラの2段ペルチェは外気温から40℃下げることができるので、合わせて 60℃までは冷却できそうだがカメラ側の温度設定が -20℃までしか受け付けないことにここで気がついた。下限を -30℃にすることが可能かどうかをビットランに検討依頼した。上左グラフで、6.5時間位でボックス内温度に変化が見られるのは、カメラ側の温度設定を -20℃から -15℃に変更したためで、発熱が減った分温度が下がったと考えられる。15時間過ぎあたりで一旦乾燥空気の供給を止めた所、乾燥空気吹き出し口の温度は速やかに冷風吹き出し口の温度と同じになったので、両者の温度が同じである場合は乾燥空気の供給が停止しているものと判断することができる。
上中写真は、15時間過ぎでの状態。カメラと繋がっている部分の外側は盛大に結露しているが、内部は乾燥空気が供給されているため問題ない。実際の分光器でもこういう状態になることが予想されるので、カメラに近い部分は何らかの結露対策をした方がいいかも。また、乾燥空気のエアチューブは透明なものだと外部の光が入りやすいので、黒にすべき(+アルミテープで穴付近は遮光)だと思った。
冷却ボックスは現状では常にフル運転なので、季節ごとの内部温度の変化が激しい。温度計には温度制御機能がついているので、ペルチェの電源を温度計の機能で制御して内部温度が一定にできるかと思ったが、説明書を見ると、ヒーターでの制御しか想定されていないので使えない。リレーを使ってパラレルポートからの制御してボックス内の温度を 23℃で制御してみたのが上右図。まあ、冬場に内部温度10℃にするとこんな感じになりそう。ペルチェコントローラというものもあるようだが、冷却箱大の方のペルチェは24Vで最大14Aのようで、このクラスのコントローラは20万円は越える感じだ... 購入するかどうかはお金次第かな。
再度ピンホール試験。今度はより中央穴の小さな 2.5インチHDD を用い、中央の針穴は針で突いた後で上から剥離紙で押さえてピンホール部のアルミテープの変形を無くした。また、固定はテープでなくネジで行い、フランジへの密着度をより高めた。測定は時間を置いて2度行い、全く同じ計測値が出ることを確認した。
上図の 75 と 115 の間の 4cm のピクセル間隔を計測すると下図左から 542,305,213 pix だった。上と同じ式で x の値を計算すると、第一式と第二式から x=16.57、第一式と第三式から x=16.67、第二式と第三式から x=16.77 なので、3つの平均の 16.67 を最終値とすることにした。前回の測定よりも 0.6mm 増えたが、この程度はアルミテープのたわみがあった可能性はある。設計値とのずれは 0.6mm で、この程度は F マウントのネジによる調整しろに残しているものと考えられる。
冷却箱小の方での試験もしてみた。冷却箱大の方の試験時と同様、赤 は乾燥空気吹き出し口の温度、緑 は冷風吹き出し口の温度、桃 と青 は室内の温度だが、緑 の温度計の場所が変なところになってしまったようで、箱内の結構温度の高い部分を計測してしまったようだ。エアコン環境下で検出器温度を0℃にして箱内の冷却を開始、途中で検出器温度を -15℃に変更したところ室内温度に対し約5℃低い温度で落ち着いた(〜1h 辺り)。この温度であれば乾燥空気を供給する必要はないと判断し、箱内の温度を少しでも下げるため、乾燥空気の供給を停止したところ箱内の温度は1℃下がって気温差は6℃になった(〜2h 辺り)。その後、検出器温度を -20℃にして更にエアコンを止めて様子を見たところ、箱内の温度は上昇する一方で室内温度と逆転しそうな状況だったため(〜3.5h 辺り)、検出器温度を0℃に戻ししばらくしてカメラと冷却箱の電源を OFF にした。冷却箱小はカメラ側のペルチェ稼働率が上がってくると逆に熱がこもってしまうので、使えないという結果となった(カメラのペルチェの最大発熱量を先に確認しておくべきでした...)。
となると、冷却箱大の方の温度制御を結構お金をかけてしないといけないが、他に優先度の高い支出項目が沢山あるので、これはしばらくは手動スイッチでやることにする。
dark の値が購入前の調査の時よりも数倍大きく、それは-10℃より温度を下げてもほぼ減らない事が判明した。以下の図は、温度、露出時間、gain を変えて dark (e/sec) を 0-1e/sec で表示したもの。スペクトルは中央部水平方向に写るので、〜0.3e/sec 程度の領域を用いることになる。上段は露出時間2000secで温度を 10→-20℃まで-5℃刻みで7枚を表示したもの、下段は温度-20℃で露出時間を2→2000secまで10倍刻みで4枚を表示したもの、左列は gain x1 で右列は gain x16。
温度 10,5,0,-5,-10,-15,-20℃での dark の変化(左:gain x1, 右:gain x16)
露出時間 2,20,200,2000sec での dark の変化(左:gain x1, 右:gain x16)
上段を見ると、dark はパターンも値もどちらも -10℃以下ではほぼ変化しないことがわかる。下段を見ると、以前の調査時のような露出開始直後のみが dark が大きく露出中の dark は小さいというようなことはなく、露出時間が 200sec と 2000sec で dark はほぼ同じ(カウントは露出時間に比例)であることがわかる。また、左右でほぼ同じ結果であることから、dark の値は gain によらないというごく当たり前の結果となった。BH60 の通常の製品は内部で自動的に dark の影響を補正する処理が行われるので、以前の調査の際はその機能を OFF にして画像を取得してもらったはずだが、完全には OFF できていなかったのではないか、という印象だ...。それにしても、dark は冷やせば冷やすほど減っていくと思ったのに、-10℃以下ではほぼ変化しないという結果は結構インパクトが大きい。冷却箱は外気温が30℃を超えた場合に少しだけ効果があるという程度になってしまった。検出器の上下端は読み出し時のみ光るのかと思っていたが、どうやら定常的に光っている感じだ。露出中にどうして光るのか全く理解できないが、仕方がない...
上下端の dark が温度変化しないことを確認するために、2000sec の画像で 10℃と-20℃の差を取ってみたのが下図。左は gain x1 で右は gain x16 で 0-0.5e/sec で表示したもの。
ちなみに 0.3e/sec はこの装置の波長分解能の場合、システム効率20% と仮定するとどちらの波長帯でも 〜15mag/□" の背景光と同程度なので、結構深刻だ。
上下の光の明るさは日によって変化する可能性があるのではないか、という TriCCS での経験に基づく木野くんからの助言があったので、1分 dark を検出器 -15℃、gain x16 で無限ループで取得することにした。カメラの排気温度、湿度、気圧を同時に fits header に記録して明るさの変化がどういう条件で現れるのかどうか調べてみる。
試しに3日ほど走らせてみたが、特に変化はなさそう。キャノンの話でもこの素子の発光には対策はないとのこと... う〜ん、とりあえずはこれでなんとかするしかない。
この解析結果はそのうち...
BH67 2台目
BH60 の検出器を BH67 と同じものに置き換えて、BH67 に作り変えてもらった。
Conversion Factor と Dark のデータを取得してみたが、Dark が変な状況になっているのでとりあえずそれを先に報告。
以下は、3種類の温度と2種類のゲインで 2sec,20sec,200sec の Dark を20回ずつ2セット取得した画像から、バイアスを差し引いた後の画像平均値のグラフ。0℃以下の場合、200sec (以上)の Dark では連続露出の奇数回目にのみ、特別なアンプグローの成分が現れる。
グラフは左から -10℃、0℃、+10℃ の結果で、線の色は以下の通り
gainx1,200sec /
gainx1,20sec /
gainx1,2sec /
gainx4,200sec /
gainx4,20sec /
gainx4,2sec
以下、奇数 frame 平均と偶数 frame 平均の画像を 1sec あたりに換算し 0-0.5 のスケールで表示したもの(2sec の結果は割愛)。gain x4 の画像は gain x1 と同じ傾向だったので、-10℃,200sec の場合のみ表示。一番上の赤い行は1台目のもの。2台目はアンプグロ―そのものがかなり明るい。
温度 時間 奇数frame 偶数frame 奇数-偶数
-10℃ 200sec
-10℃ 200sec
200sec gain x4
20sec (偶奇逆)
0℃ 200sec
20sec (偶奇逆)
+10℃ 200sec
20sec (偶奇逆)
-10℃ で積分時間を 30sec〜190sec にした時の結果が以下(左は gain x1、右は gain x4)。図の上にある数値は、(奇数回ー偶数回)/(奇数回+偶数回)x100 の値で、カウントの何% の振幅が出ているかを示している。これを見ると、60sec 辺りから徐々に出てきている様子で、特に明確な境界は無さそうだ。また、位相は奇数回が必ず大きいという訳ではなく、確率的には半々のような感じだが、10sec x 偶数の場合は奇数回にアンプグローが現れ、そうでない場合は偶数回に出ているようにも見える。
ちなみに、最初の試験での -10℃ ,200sec,での振幅% 値は gain x1 で 27 と 33、gain x4 で 33 と 34 で、今回の 190sec よりもやや小さいが、2回だけ取得した 2000sec の結果だと、
gain x1 で -65,-70、gain x4 で -58,-70 と非常に大きい値になっている(しかも位相は反転)。ここから考えられる特徴として、
位相は直前のアンプグローの状態で決まる(直前の状態を引き継いで始まる)
露出時間が長くなるとアンプグローは明るくなる(露出中に徐々に増光する)
という可能性が考えられる。前者の確認のため、200sec ダークを 20回、19回、20回、21回、20回 と取得して位相反転の状況を調べたところ(但し、-20℃)、偶数回直後は位相が反転、奇数回直後は位相は同じだった(下左)。これで、上記は多分正しそうだということが確認できた。ついでに -20℃ でのダークも取得してみた(下右)。+10,0,-10℃ のダークと位相反転しているが直前の状態で決まるということで説明できる。
この症状が出始める検出器温度を調べるため、+5℃(下図左上)から順次調査。+6℃でややサイクルが不安定になり、+7℃でほぼなくなる感じ。こちらは徐々に無くなるのではなく、+6℃という閾値が存在するようだ。
何が起こっているのか全く不明なので、BITRAN と Canon に問い合わせ中。
現物を BITRAN に送って調査してもらっているが、Canon とも連絡取りながら進めてもかなり難解なようで、最終的にはとりあえず正常に動作する読み出し回路に交換してもらって戻ってきた(もちろん同じ設計で製作で製作された回路)。
冷却箱小は解体し、ペルチェクーラー小をカメラに直結して送り込むことを試してみる。クーラーの冷却板は結露して水滴がつくが、かなり水滴だらけになってもファン側から水滴が送り込まれることはないことを確認してから接続。水は冷却板下にどんどん垂れてくるので、トレーで受ける。この方法だと室温30℃ でも -20℃ まで検出器を冷却でき、乾燥空気の供給はカメラの窓側だけでいいので(今回は Dark なので供給していないが)、乾燥空気供給用のコンプレッサーのトラブル時のカメラ全体の結露の危険性はなくなるが、かなりのサイズの透明水タンクを付けておいて、月1回捨ててもらうとかいう感じになるかも。
波長較正ランプ
波長較正のためのランプは何を使えばいいのか、恒星グループの中で情報収集してもらったところ、本田さんより HDS で用いている Th-Ar でも MALLS で用いている Fe-Ne-Ar でもどちらでも良さそうとの情報を得たが、どちらのランプも現在では入手困難とのこと。Hα 付近の輝線本数では前者の方が良さそうなので、とりあえず、Th と Ar の輝線がどのように混ざっているのかNIST のデータを用いて調べてみた。以下の図は Th , Ar の輝線分布。
これを 395nm と 656nm 付近で拡大して、HDS の Th-Ar ランプデータと比較したのが以下。全て Th の輝線だけのような感じなので、Th のみのホロカソードランプを手配してみる。
Th はどうやら何らかの危険物指定となっていて、ホロカソードランプに使うことができないようだ。Fe -Ne -Ar で考えてみる...
これを 395nm と 656nm 付近で拡大して、MALLS の Fe-Ne-Ar ランプデータと比較したのが以下。Fe-Ne のホロカソードランプの見積を取ってみる。
どうやら、Fe-Ne も特注になってしまうようなので、Co -Cr -Cu -Fe -Mn -Ni というものの見積り依頼してみたがこれも特注品。結局 Fe のみのものを電源とともに手配中...
Fe ホロカソードランプ
電源
電源が来たので、ランプユニットを作ってみた。プランジャでランプの先端位置を決め、筒内部のレンズでリレーして出口の穴部分に光を集めるもの。UV 成分が強いので目で直接覗いてはいけない。
組立調整
Ca アーム
レンズのコーティングが完了したので、早速ホルダーにはめる。φ150 に対して 0.2 のマージンしか取らなかったのではめるのが非常に難しく、少しでも引っかかったら完全にロックしてしまう状態だった。ビクビクしながら何とかホルダーに入れることができた。
分光器本体に VPH グレーティングとともに取り付け。
スリットの位置調整だけして Fe ホロカソードランプを 1sec 露出で撮ったのが以下。
分散方向が傾いている:大まかには VPH 回転、細かい部分はカメラチューブ&スリット回転
像面が少し傾いている(縦横両方):カメラ固定部にシムを入れる(これはまだ)
非点収差が出ている:原因不明?
レンズやスリットの横ずれは全てコマ収差を発生させるので、これらの横ずれが原因ではない。VPH の回転ずれが大きいと非点収差が発生するが、検出器の中心位置の機械的自由度に比べてかなり回転させる必要があるため考えにくく、どこで発生しているか不明だ。分散素子の180°回転や、コリメータ横ずれ、レンズチューブ傾斜等では非点収差は全く変化しなかった。ダイクロイックミラーは90°回転できるが、穴開きミラーは穴が斜めに空いているので回転はできない。とりあえずは原因不明ということで焦点面の傾斜調整を進め、Hα アームで同じ問題があれば最初2枚のミラー部分の可能性が高く、異なる状況になっていればカメラ部かダイクロイックミラーということになる。
fits 画像
とりあえず、計測された焦点面の傾きをワッシャーで補正して画像を取得。焦点面が設計値から 1.75mm 後退するが、今出ている非点収差よりは小さいので気にしない(もちろん最終的には接続部は作り直し)。こう見ると、入射ファイバースリットのビームが傾いて出ている影響は結構ある印象。ダーク差し引き後の画像が以下。焦点面の傾きは大体補正されたことが確認できる。
fits 画像
非点収差を確認するために、外側2本の reference fiber に Fe 輝線を入れる。
fits 画像
左側と右側の明るい輝線の上下スポットに関して、ビームを上下と左右に色分けした状態で focus を動かした gif アニメが以下。普通の非点収差ということがわかる。また、調整途中でコリメータ角度を動かしてしまったので、上下のビームのバランスが悪くなったことも判明した。再度レーザーでの調整確認が必要か。
Hα アーム
レーザーでのファイバースリットの角度確認とコリメータチューブの角度調整は完了したので、とりあえず非点収差の件は保留で、今度は Hαアームの調整に入る。まずはレンズをホルダーにはめるところから。
こちらのレンズは十分な余裕で問題なく入ったが、逆に隙間が広すぎて気になったので、0.2mm のスペーサを下側の2ヵ所に入れておいた。0.1mm のずれはほぼ影響がないので、隙間の大きさの測定はしていない。一番最初に入れたレンズが最も難易度が高かったようだ。
こちらのアームの最大の問題は LightSmyth 回折格子の保持方法だ。最も弱いプランジャで2ヵ所までは押して固定できるが、1ヵ所だけはプランジャを入れると必ずビームに影ができるため、内側の1ヵ所だけは簡易的な固定になる。最初に固定した際、この簡易固定部分に結構ストレスがかかっていたらしく、結構収差が出ていた印象だった。現在は、イメージに影響が出ない程度に抑えばねの下に柔らかいスペーサを入れているが、加速度が加わるとカタカタ音が出る状態なので、何とかカタカタ音だけは出ないようにイメージを見ながら最善の固定状態を作らないといけない...
dark 差し引き後の 0.1sec 画像が以下。3本の明るい輝線は 0.01sec でもサチるため無視。まだ詳しく調べていないが、こちらは非点収差はあまり出ていない感じだ。となると最も怪しいのはダイクロイックミラーなので、次回 Ca アームの画像を取得する際は、ダイクロイックミラーを 90°回転して非点収差が回転するか調べてみるのが良さそうだ。焦点位置は Ca アームと Hα アームでほぼ同じで、カメラ接続部品を作り直したら 100μm 以下のシムでの調整だけで大丈夫そうだ。
fits 画像
1sec 露出をすると、ゴーストが出ていることがわかる。LightSmyth は AR コートしていないので、LightSmyth 裏面での反射の可能性が高そうだが、回折格子ホルダーの固定ねじを緩め上から見てねじ穴の遊びの分だけ時計回り・反時計回りにホルダーを回すと、ゴースト像が左右に動き(下右図)、回折格子のどちらかの面での反射ということがわかる。
検出器表面で反射した光が回折格子面まで全く逆過程で戻り、格子面を0次光で直進通過した後裏面で反射して、回折格子を -1 次で通過すると分散のないゴースト像が発生する(下図)。連続光を入れた際に分散がかかっていなければ、多分この経路でのゴーストだろう。連続光を入れてみる。
予想通り、ゴースト像には分散がかかっていない。回折格子を傾けるしかないのか ...
表裏逆にすると別のゴーストが沢山現れそうだが、上記のゴーストは出ない可能性があるのでとりあえず確認してみる(下左)。結果は、回折格子面での -1次の反射が起こり分散のないゴーストが出現するようだ。たまたまだが、回折格子がホルダーの中で斜めに入っていたらしく、上下反転であおり角が変わり、丁度いい具合にゴーストが分離した感じだ。似たようなゴーストが出るのであれば、回折格子面が検出器側の方がいいと思うので、ホルダー内での固定角を 0.5°程度変えて元の状態に戻してみた(下右)。Zemax では理想値よりも1割弱像サイズが大きくなるが、多分実物はそれ以上の収差は出ていると思うので、2割の像劣化は気にしないことにする。左端になにやらモジャモジャしたゴーストが現れたが、波長の端なのでこちらも気にしない。
連続光の画像。ファイバー間隔(4.5pix)がちょっと狭かったか...
fits 画像
この装置はナスミス台下への取り付けとなるため、観測中の温度変化が激しい。そのため、観測中にセッティングが徐々に変化することが予想される。flat image の取得が重要だが、最も簡単なのはイメージをぼかして取得する方法だ。以下は、入射スリットを前後 ±2mm ずらして白色 LED 像を 10ms x 100枚ずつ取得し、dark を引いて2種類を平均化した画像。下右は中央スペクトルの左端、中央、右端の拡大図(z=0~1.6 で表示)。
拡大図は綺麗な市松模様になっているが、4x4 で同時読み出ししているはずなので、この16系統のアンプのゲインが市松模様になっていることが主要因だと考えられる。ビットランに確認したところ、読み出し回路の16個のアンプのゲインのばらつきは 1% 未満とのことなので、このばらつきはチップ内のソースフォロワ部で決まっており、何らかの理由で市松模様にしてある可能性が高い。4x4 領域毎の flat 値平均値は、
1.065813 0.930590 1.054445 0.929421
0.961260 1.047246 0.938487 1.067147
1.064349 0.945569 1.061726 0.941121
0.947793 1.058776 0.944740 1.060793
なので、これで割り算してみたのが以下(z=0~1.6 で表示)。
結構緩和されたが、まだうっすらと市松模様らしきものが残っている。スペクトルはほぼ水平、スリットはほぼ垂直なので、とりあえず、それぞれの方向の平均値で割って波長方向と空間方向の特性を無くし、残りの市松模様が消せるか試してみる。
波長方向と空間方向の特性を無くしたもの(z=0.95~1.05 で表示)。何やら右の方に丸い凹みが現れるが、検出器前面の窓か第3レンズにゴミが乗っている可能性がある。スペクトルの成分の曲がりが場所により変動するようで、横方向は各行を2次関数位で fit した方がいいような感じ。
上記で割った残り(z=0~1.6 で表示)。まあ、とりあえず滑らかにはなった。
横方向各行を4次関数で fit した補正を追加したものが以下(z=0.95~1.05 で表示)。縦方向にまだ縞が見えているので、縦方向も各列1次関数程度で fit した方がいいかも。
縦方向各列を1次関数で fit した補正を追加したものが以下(z=0.95~1.05 で表示)。これで大体気になるパターンは無くなった。これでどのくらい安定性が出せるか確認。
最終的には、4x4 の Conversion Factor のマップと、上記 Conversion Factor 補正マップの積を flat として用いることになる。フォーカスを合わせた連続光スペクトルの補正前後の様子は以下の通り。下図上が補正前、下図下が補正後(z=0~2.5 で表示)。ゴーストを分離するため分散素子を傾けたため、スペクトルがほんの少し上に反った状態になっている。少し気になるのは、右端では補正後でもスペクトルの裾野に市松模様が少し見えることだ。flat 画像ではほぼ同じカウント数があるので、pixel 毎に線形性からのずれが異なるという可能性もあるが(その場合、左端で見えないのは flat 画像でもカウントが右側の半分程度であるためと解釈できる)、これに関してはとりあえずは保留とする。
ここで、部屋内のエアコンを 18℃ 設定にして ON する。以降は、上で用いた flat を共通で用い、温度変化中に取得した flat と比較していく。検出器は -10℃ 制御、カメラ内の温度は上の状態で 38.0℃。
カメラ内温度 34.2℃。スペクトルが 1pixel 上に移動した(左右は不明)。以下、上段が flat 比(z=0.95~1.05 で表示)、下段が flat 補正後の連続光(z=0~2.5 で表示)。flat に 1% 未満の市松模様が現れ始める。また、光学系の状態変化に起因すると思われる 1% 未満の「しわ」のようなうねりもところどころに現れている。
カメラ内温度 29.8℃。スペクトル位置は上とほぼ同じ。flat の市松模様は 1% 強の状態に。
カメラ内温度 27.9℃。スペクトル位置は 2pixel 下がって最初の状態よりも下になった。flat の市松模様は 1% 強の状態のまま。
カメラ内温度 26.9℃。スペクトル位置は更に 1pixel 下がった。flat の市松模様は 1% 強の状態のまま。
Conversion Factor の変化はカメラ内温度が5℃程度変化すると 1% 程度の変化として影響するような感じなので、観測中は5℃ 変化するたびに flat を取得する方が良さそうだ。市松模様の原因はセンサ内部なのでセンサの温度さえ一定であれば良さそうに思えるが、何らかの要因でカメラ内の温度変化がセンサに影響を与えているようだ。
自動焦点合わせの機能はまだ設けていないが、パット見では焦点位置が変化したかどうかはほぼわからない(設計では 10℃変化に対し1pixel 程度の defocus になるはず)。最後に、温度を元に戻して最初の状態に戻るのかどうかを
調べるため、翌日に再度取得してみる。カメラ内温度は 35.1℃ だった。
Slit 位置を 18700~19700 pulse まで 100pulse (50μm)おきに 11点の画像を取得し、r 方向、x 方向、y 方向の spot の半幅(2次モーメントの平方根)の変化を出力したものが以下(setfocus シークエンス)。
y 方向の focus 位置は大体 19200 pulse 付近にあるが、x 方向の focus 位置が画像左側で検出器の奥、右側で検出器の手前 100μm 程度離れた場所にあり、左右で逆の非点収差が出ている。これはかなり不思議な状況なので Zemax で良く調べてみる必要があるが、spot サイズが小さく pixel 上での中心位置の移動でも結構幅は変化するため、pixel effect の可能性もある(spot は focus を変えても上下にはほとんど動かないが、左右には 0.7pix 程度移動する)。まあ、どちらにしても spot サイズは非常に小さいので、検出器の傾きを更に調整して(接続部品を製作するのが先だが)全面で focus 位置を揃えれば、非点収差が実際にあったとしてもほとんど気にならない程度だ。
スペクトルの分散方向と slit の傾きも同時に測定できるが、分散方向の tan は +0.00015 (反りがあることに注意)、slit の cot は -0.0016 (左回転方向を+)で、どちらもほぼこれ以上の調整は不可能な状況だ。
分光器の下に、ナスミス台下に吊り下げる際の土台となるアルミフレーム枠を入れる。アルミフレームと本体は、脱落しないようなネジは付けるものの、アルミフレームには一切固定しない。ただ載せてあるだけ。ミラー部は完全に突き出た状態となるので、上の測定からスポット位置が移動したことが予想される。
serfocus シークエンスの結果が以下。10pix 下に移動して、なぜか縦 focus の素性が良くなった。分散方向の tan は +0.00005 と更に水平になり、slit の cot は -0.0020 と少しだけ悪化。focus の位置や非点収差量には特に変化はない感じだ。
これで大体 Hα アームで行うべきことは無くなったが、最後にミラー類の固定ねじをゆるめて、ミラーが変形していない setfocus シークエンスで確認する。
穴開き平面鏡とコリメータミラーの固定ネジにバネワッシャを入れ、ロックタイトでねじの緩みを抑えた上で緩めに固定し直した。固定ネジの圧力は setfocus の状態を見ながら有意な変化が現れる直前で止めた。最終的には更に 7pix 下に下がって結構状態が変わったような感じになったが、作業中に結構装置温度が上がったと思われるので、温度変化の影響がある程度あるものと思われる。大局的にはそれほど変化していない。
装置温度の変化の影響を見る。エアコンを18℃ にしてsetfocus の結果の変化を見る。まだ装置に温度計を取り付けていないので、温度は不明。
エアコンを18℃ にして3時間経過後の状態が以下。focus 位置としてはほぼ変化はないが、収差の出方に変化がある感じだ。一方、冷却中のグラフは全てガタガタしていて何か不安定な状態だった。
エアコン 18℃ で装置が冷え切っている状態からエアコンを止めてスタート。下左図は最初の位置からのスピット中心のズレ量を示しており、開始時から1時間毎に装置中央部の温度を添えている。setfocus で使う4つのスポットの左上下、右上下の順で赤 桃 緑 青 。装置温度18.6℃ からスタートし、11時間経過後の 25.2℃ になったところで、再度エアコンを18℃ 設定で動かした。その後、6時間経過して装置温度が最初と同じ 18.6℃ となったところでエアコンを止め、2時間経過したところで終了。ゆっくり昇温している時は比較的静かに動いていくが、冷風で温度変化させると均一に冷えないことが原因と思われるふらつきが見られる。また、温度変化逆転時はかなりの逆進行をしてから反転するようだ。ヒステレシスがあるので、温度だけで状態決定することはできない。動きは縦方向の方が大きく、長時間露出中に数℃ も温度変化することがあると、ファイバーのスペクトル分離が困難になる可能性がある。
下右は各スポットの横幅と縦幅(の半分)がどのように変化したかを plot したもの。大きい丸の中心がスタート位置で、黄色の線は温度反転ポイントを繋いだもの。即ち、ゆっくり温度上昇→急激な温度低下→ゆっくり温度上昇 で3つの折れ線になっている。もちろん、その間はあちこちにふらついて値は変動している。最初の11時間分は実線、その後は点線で繋いでいる。急激に冷却すると幅の変化も大きいが、大きく悪化することはほぼない感じだ。
Ca アーム(その2)
カメラを再び Ca アームの方に戻し、flat 取得後に setfocus シークエンスを走らせてみる。
やはり非点収差が大きく出ている。ガタガタしているのは、スポットの明るさが Hα アームに比べて 1/10 程度だからということもあるが、特に短波長側では flat が暗すぎて S/N が足りていないということが原因だと考えられる。ここで最も怪しいダイクロイックミラーの固定ネジを確実にネジが浮くところまで緩める。
非点収差はかなり緩和されて、Hα アームと同程度になった(縦軸を少し下に拡張している)。穴開きミラーとコリメータと同様、ロックタイト+バネワッシャで緩く固定することにする。slit と分散方向が直交していないので、回折格子とカメラチューブを少し回転させて、分散方向と slit 方向を x y に合わせる。分散方向の像面の傾きは Hα アームよりも少しだけ大きい感じだが非常に小さい値なので最終的にはシムでの調整になるだろう。focus 位置の違い(Hα より 0.4mm 遠い)はカメラ固定部再製作時に反映させる。
回転角調整後の setfocus 結果は以下。分散方向の tan は -0.00029、slit の cot は +0.00042。分散素子の回転角が正しくなったためか、非点収差が少し減った印象。
連続光画像。さすがに白色 LED でも短波長側は急激に暗くなる... UV(395nm) の LED がビーム内に入るようにして、この波長での S/N を確保する必要がある。また、こちらの方が焦点距離が短いので、fiber 間隔も小さい(4.0pix)。
fits 画像
エアコン18℃ の状態から始めて停止で11時間、再度 ON して最後に停止で spot の動きと幅を確認した。Hα アームと同様な動き。像サイズはこちらの方がやや不安定な感じ(spot が暗く、flat の S/N が悪いことが影響していると思われる)。
輝線は良く調べると35本写っているが、暗いもの数本を除いて NIST のデータと比較してみると、輝線密度が少ない所に着目することで大体の対応関係が見えてくる(黄色× の説明は後述)。大体の値を決めてから付近を総当りで7次 fit して最も良さそうなもので決定したが、どうしても1本だけ合わない輝線がある。縦線は NIST の FeI データで、青 が強い輝線、水 が弱い輝線、横線は検出された輝線中心位置で、桃 が強い輝線、緑 が弱い輝線。赤○ の位置が対応する輝線が存在しない部分で、拡大したものが こちら 。ちなみに、0.02nm のずれは PSF 1つ分のずれになるので何かがおかしいようにも思えるが、結構あれこれ考えても他にいい解が見当たらないので、もう少し輝線数の少ない別の元素を使う必要があるかも。
浜ホトに希ガスとして何が入っているか確認したところ Ne とのことだったが、Ne では上記の違和感は説明できないことも判明。
MALLS の波長較正データ と比較してみた。Fe に関しては大体似たような強度比で受かっているようで、波長較正も合っている感じだが、MALLS の方でも同様な問題があるようで、問題のある輝線は波長較正には用いられていないようだ。
UV での白色 LED の明るさ不足を補うために、390nm の UV LED 6個を白色 LED の周囲に並べてみた。また、明るい室内でもスペクトル測定ができるように、分光器カバーを取り付け入射口部分を遮光布で覆った(上にかけてあるものは気休め程度)。
今度は白色 LED に比べて明るくなりすぎたが、395nm のものだと左端の明るさが足りなかったので、まあ、これがベストだろう。390nm と 395nm の LED を3個ずつ交互に配置も考えたが、場所により flat スペクトルが異なる状態になる可能性がほんの少しあるのでやめておく。同様に UV LED の数を3個に減らすのも良くない気がするので、UV LED は6個のまま。
cal 画像の FWHM は約2.6pix で、1pix=0.011nm なので ⊿λ=0.0286nm、λ=395nm では R=13,800 となる。
fits 画像
fits 画像
ここまで来ると、KOOLS と同様に contcal 画像から波長方向を x 軸に、slit 方向を y 方向に揃えることができる。以下は1pix=0.005nm、slit 方向を2倍にした contcal 画像。WCS で波長が確認できる。
fits 画像
reference fiber の cal スポット位置を用いて、cal 取得時からのずれを補正する機能(並進+一次変換)も加えたので、大体使える状態になった。ただ、Fe 輝線での波長較正は、長波長側の半分は絶対おかしいので、とりあえず、Hg が出ていると思われる蛍光灯(0.01sec, 1sec 露出)と、吸収線が沢山ある太陽(0.01sec)のスペクトルを取得してみる。
fits 画像
fits 画像
fits 画像
太陽のスペクトルは、ファイバーバンドルのビーム内にどの程度太陽が入ったかによってカウントが変動するので、効率を計算する際は瞬間最大値を用いるべき。0.01sec x 200frame 測定の間での平均カウントの変動は以下の通りなので、5% 程度のカウントの上乗せが必要。また、上の fits 画像は縦方向に2倍、横方向に2.2倍(⊿λ〜0.011nm → 0.005nm)されているので、4.4倍したカウントが元画像の 1pixel あたりのカウントになっていることに注意。下右は最大値のログで、ギリギリサチっていないことの確認。
蛍光灯の輝線は、強いものから4本は全て Hg I の輝線だったが、一番右の明るい輝線は NIST のデータよりも少し左、右から2番目の暗い輝線は NIST のデータよりも少し右に写っている。この傾向は、NIST のデータで強い Fe 輝線でも見られる傾向なので、もしかすると、長波長側での Fe 輝線は、NIST で強いものだけを使うべきなのかもしれない(NIST で弱いものがなぜずれるのかは不明だが)。これは、太陽の吸収線のデータベースを使えば確認できるはず。地球大気の吸収線のデータも必要だ ...
ここ に何種類かの太陽のモデルスペクトルがあったので、ダウンロードして結果と一緒に plot してみる。モデルスペクトルは真空波長なので、空気の屈折率をかけて波長を合わせて比較。取得データは黒太線、5種類のモデルでは、赤色 が比較的近いので、赤線のモデルと比較することにする。
カメラ内のペルチェは、カメラ内温度が40℃を超えるとパワーセーブされてしまうので、夏場のカメラ内温度を下げるために冷却空気を供給するためのペルチェクーラーを追加した。通常はカメラ側のファンだけを回して送風状態とし、カメラ内温度が40℃に近づいたらペルチェと外側のファンが自動 ON となる。結構大きいファンがついているので、ファンの振動がカメラに影響を与えないか調査が必要だ。影響がある場合はより柔らかく接続する必要があるが、シリコンかテフロン系のシートかな(現在はクリアファイル)...
100回露出毎に外部ペルチェの2つのファンを OFF/ON して4つの spot の幅を調べることで、ファンによる振動の影響を調査した。下図は、4つのスポットの
σx , σy , σr を plot したもので、100回ずつ平均したものを○(OFF),●(ON)で示している。4つの spot 間での幅の違いが結構あるので縦方向のばらつきは結構大きいが、ON/OFF での全体の平均の違いは 1% 程度で、これがペルチェのファン振動の影響だと考えられる。1% なので、まあ気にしないことにする(カメラの接続に修正製作した部品を使えば少し減る可能性もある)。
Hα アーム(その2)
カメラ接続部品の修正再製作が完了したので、Hα アームから試してみる。
setfocus シークエンスの結果は以下。大体予定通り。
連続光と cal 画像。cal 画像に前回は発見できなかったゴースト像が写っている。このゴーストは分散がかかっている像のようで、連続光ではどれだけレベルを下げても見えない。良く見るとゴーストは3本写っていて、中央少し左のもののみフォーカスが合っている。左と右にあるゴーストはかなりボケていて、ほぼわからないレベル。何の輝線が写っているのかは気になるが、非常に弱いのでとりあえずは放置。
cal 画像の FWHM は約3.0pix で、1pix=0.012nm なので ⊿λ=0036nm、λ656nm では R=18,200 となる。
fits 画像
fits 画像
pixel - 波長関係。写っている輝線は全て Ne だった。Fe-Ne ランプと書く方が良さそうだ。縦線は NIST の NeI データで、青 が強い輝線、水 が弱い輝線、横線は検出された輝線中心位置で、赤 が非常に強い3本の輝線、桃 が強い輝線、緑 が弱い輝線。非常に強い3本の輝線も使う必要があったため、ファイバーバンドルを cal 光源の焦点位置よりもかなり奥に入れて光量を減らし、0.01sec,0.1sec,1sec の3種の画像を合成することでカウントの範囲を 100倍に広げたものを用いた(上の fits)。これでも輝線数が少ないので、7次 fit だと残差がほぼ 0 になってしまうが、正しいのかどうかこちらも太陽の吸収線で確認してみる。
以下は1pix=-0.006nm、slit 方向を2倍にした contcal 画像。Ca アームとは異なり、右側が短波長側であることに注意。WCS で波長が確認できる。蛍光灯スペクトルを取得してみたが、こちらは輝線が無く連続光(?)のみだった。
fits 画像
fits 画像
まだら雲越しの太陽に向けてみたところ、予想通り 0.01sec でも簡単にサチって、わざと逸らさないとダメだった。連続1000枚露出の最後の 260枚を使って画像を作ってみる。
fits 画像
一次元化したスペクトルをモデルと比較。この波長域ではモデルの方が分解能が低く、少しずれているのはモデルの分解能不足が原因の印象で、上記7次 fit の結果がどの程度うねっているのかの判別ができない。もう少しいい情報が欲しい...
正常になった2台目のカメラも搭載し、両方のカメラのフォーカス位置が合っていることを確認後、ペルチェクーラーの取り付けまで行った。これで両方同時露出などもできるが、両方が連動して行うスクリプト(自動フォーカス調整や Cal,Cont 画像の取得+変形マップ生成など)を作るには、全体の制御システムを先に作らないとうまく行かないので、制御システムの開発を優先する。入射部のレンズと ADC プリズムが来る前に終わらせないとまずいが、考えれば考えるほどシステムが複雑に...
望遠鏡に取り付けるための部品が全て揃ったので、取付時の状態にしてみた。装置の周りが熱源だらけだが、直接装置に接触しないようにするのが精一杯。AC アダプタなど、熱が出るものは箱に入れて別の場所に吊るす方がいいかも...
これまで、2000sec ダークはなかなかまとめて取得することができなかったので、検出器温度 -20℃, gain x16 で 2000sec ダークを数日間にわたり取得してみた。最初の 49フレーム取得後に両方の PC に同時に Alarm clock が入り(内部で1枚目の露出開始からの経過時間を計測するタイマーの上限時間10万秒に到達...)中断したので、そこまでを groupA、その後の 20枚を groupB、ペルチェクーラーを ON してさらに 20枚取得したものを groupC とする。3つのグループの平均カウントと、カメラ内部温度の変化のグラフが以下。左がカメラ1(Hα カメラ)、右がカメラ2(Ca カメラ)。カメラ2の方が安定しているが、gain x1, -10℃, 200sec では見えていなかったアンプグローがここまで限界の状況では出てくる。しかし、カメラ2の方がアンプグローがある点を除けば安定しているので、解析処理はしやすそうだ。カメラ1の方は交互のアンプグロー変化は見えていないが、高いカウントのグループと低いカウントのグループで差を取ると右下でアンプグロー変化が発生していることがわかる。カメラ内部の何らかの部品の温度に依存しているのではないかと思うが、カメラ内部の温度そのものとは何となく関係しているかな、という程度。また、このアンプグローの変化はカメラ内部の温度が低いと落ち着くようにも見える。
以下、奇数 frame 平均と偶数 frame 平均の画像を gain x1, 1sec あたりに換算し 0-0.5 のスケールで表示したもの。赤がカメラ1、白がカメラ2、3つの行は groupA-C に対応。カメラ2ではカメラ内部温度が低くなった時ほどアンプグローの変化が大きくなっているので(上のグラフでもそれがわかるが...)、カメラ内部の温度は低ければいいというものでもなさそうだ。
以前測定した上の方にあるものと同じ見せ方だが、以前の測定は BH67 を BH60 の設定ファイルで駆動していたため、検出器の右端と下端がカットされてしまっていた。右と右下のアンプグローが良く見えるのはそのためで、以前の測定と基本的には同程度の強度で同じ部分が光っている。また、カメラ1とカメラ2の検出器で、アンプグローの変化が出る場所が異なっているのは不思議だ...
温度 時間 高カウントframe 低カウントframe 差(z x10倍表示)
-20℃ (A) 2000sec
-20℃ (B) 2000sec
-20℃ (C) 2000sec
-20℃ (A) 2000sec
-20℃ (B) 2000sec
-20℃ (C) 2000sec
木野くんから青空を Cal lamp 代わりに使えるのではないかとコメントがあったので、試してみたところ、両方のアームにちょうどいい具合で光が来ることが確認できた。Flat にするには吸収が深すぎるが、ファイバー間の相対効率は青空を使う方が良さそうなので、Cal lamp とも比較してみる。カウントのグラフは、左が Ca カメラ、右が Hα カメラで、赤 が平均値、緑 が最大値。
fits 画像
fits 画像
測定中はバンドルの方向を少しふらふらと振っていたが、その間の光の当たり方の変化をアニメーションにしたのが以下。0.9(黒)~1.1(白) で表示している。左が Ca カメラ、右が Hα カメラ。
Hα カメラの方は最大で±5% 程度の変化があるが、Ca カメラの方は結構(たまたま)安定している変化の雰囲気ではファイバーの曲がり具合によるモード変化ではないかと思われる。スペクトルの傾きなどの変化があるかもと思い、各ファイバーの平均スペクトルに対する変化(波長方向は 1/48 に圧縮)のアニメーションも作ってみたが、スペクトル形状は一定だった。波長範囲が狭いので、モード変化はスペクトル全体の明るさ変化としか作用しないことが確認できた(Hα の方で一瞬全スペクトルの傾きが少し変化する瞬間があるが...)。
太陽スペクトルのモデルは BASS2000 というところを発見したので、そこから持ってきて今回取得した Sky スペクトルと比較してみた。これなら十分使えそうだ。こちらのデータは空気中の波長。
sky flat に対して、LED flat がどの程度異なるのか調べたものが以下。0.8(黒)〜1.2(白) で表示。ファイバーバンドルはピンぼけ位置に置かれるが、その場所でプローブを回転させたり前後に動かしたりしたもの。最大で 20% 強の変化が生ずるので、ちゃんと拡散板を使わないとダメそうだ。
ファイバーのモード変化の寄与がどの程度かを確認するため、プローブ先端の位置は変えずにファーバーの曲げ角やねじり角のみを変えてみた。6m のファイバーはドラムに巻き取られた状態にあるので、伸ばしていた sky 測定時とはファイバーの状態がかなり異なる。また、ビーム中心付近にのみ光が集中している Hα カメラの方が、ビームの周辺部に光がリング状に存在する Ca カメラよりも Sky に近い分布をしている。拡散板でこれがどの程度改善されるか...
ファイバーが消耗するので、モードスクランブルはしない予定だが、手でファイバーをブルブル振ってスクランブルしたものはこちら 。まあ、効果はあるがそもそも観測中のファイバーの曲がりは変化しないはずなので、気にしなくていいと思う。
Sky スペクトルのみで、各ファイバーの相対効率補正と変形マップを作ることができるようにした。モデルの太陽吸収スペクトルは分解能が高すぎて MIDSSAR で観測した際の吸収ピーク位置を算出しづらいので、MIDSSAR の観測データそのものから吸収ピーク位置をリストし、Cal データを生成した。そのデータを用いて変形マップを作成した際の波長のずれマップが以下。自分自身のデータで Cal データを生成しているので、もちろん誤差0で全ての吸収線位置がピッタリ合っている。日を変えてこのマップがどの程度ばらけるのかを調べてみる。
とりあえず、拡散板が来たので、LED 光源の瞳部分に入れてみる。
拡散板なし(左)だと、2種類の LED のビームが別れていくが、拡散板あり(右)だときれいに混ざった状態になる。
拡散板を入れると面輝度が 1/100 以下に落ちてしまうので、露出時間を10倍かつゲイン16倍で取得する(ゲイン変更が flat にほぼ影響を与えないことは確認済み)。上の試験と同様に、バンドルのプローブを前後させたり回転させたりして、連続光の分布が sky flat とどの程度異なるのかを調べてみた。0.8(黒)〜1.2(白) で表示。まあ、拡散板がある方が若干安定する感じだが、やはり sky flat とは 10% 程度は異なるものになるようだ。 ファイバーの状態が同じになるようにして LED flat を取得する必要がある。
大体、解析方法が固まってきたので、ここで3種類の flat に関して説明。
●高周波フラット
ピンぼけ LED 光の画像から低周波成分を除去したもので 50pix スケール範囲内の感度差を補正するもの。光が入らない部分は 4x4 の感度周期パターンで埋めてある。0.8(黒)〜1.2(白) で表示。
●分光フラット
ファイバー間のスペクトルの違いを補正するもので、一次元化の後にこれで割ることでファイバー間の特性の違いを無くすもの。下図は x 方向を 1/48 に圧縮したもので、実際のファイバーフラットのサイズは 4848 x 61。96pix のスムージングがかけてある。0.9(黒)〜1.1(白) で表示。
●ファイバーフラット
ファイバーの透過効率の違いを補正するもの。天体像を表示する際に用いるだけのもので解析ではこの情報は使用しない。0.9(黒)〜1.1(白) で表示。周辺部にある効率が 10% 程度悪いファイバーは、スリットから射出されるビームの向きがずれていることが原因(これ の54番以降)
かなり暗いやや曇りの夕方にファイバーの向きを少しずつ変えながら sky flat を取得してみた。下図は前回の平均 sky で規格化した後、全体の明るさ平均でも規格化したもの(0.9(黒)〜1.1(白) で表示)で、前回の取得時と全然条件が異なるが、やはり LED flat と比べて圧倒的に再現性が良い。こうして見ると、やはり CaII HK 部分と Hα 部分の安定性が気になる。ターゲットでも重要となる波長なので、何とかしたいところ。今の所これらの flat は固定値にしても良さそうだが、まだまだ安定性のチェックの継続が必要...
ちなみに、S/N が悪いせいか Hα の方の波長決定精度が良くない。Hα 以外の個々の吸収線はかなり弱いので、夕方+雲だと最大 0.5pix (2倍拡大して 1pix) 程度のずれが起こっている。夕方の場合は gain x16 で取得する方がいいかも。
翌日午前(やや雲り)にも取得。Hα の方は S/N が上がってばらつきは半分に。まあ、この程度は仕方ないかなというレベル。前日と似たようなずれだが、大体合う瞬間もあるのでこのパターンはファイバーの曲がり方で決まっている印象だ。
QL で以下の図まで自動生成されるようにした。露出コマンドを loop モードで走らせて sxiv で表示していれば、この画像がどんどん自動更新されていくので、天体導入の際などに使えそうだ(最終的には Javascript で Web インターフェースにするが、当面はこれでいけそう)。しかし、ここまで来るとスレーブの PC (mzr2) の方の非力さ(Core i5-10400)が気になってきた。マスター(mzr1)の方は Core i5-13400 で速度比は 5:3 だ。
望遠鏡に取り付けて Sky を取得する際には、シャッターがないとダークが撮れないのでプッシュソレノイドを用いてシャッターを付けた(反対面は黒塗り)。
再度 2000sec ダークを取得してみた。前回の分と続けて平均値を plot すると、どちらのカメラも全体的に平均値が高い。しかも、連続露出の1枚目の露出は特に平均値が高くなっている。
まずは、特にカウントの大きいもの以外でカウントの高いものと低いものに分けて平均化し、差を取ったものが以下。基本的には前回同様、一部のアンプグローの明るさ変化が影響している。
温度 時間 高カウントframe 低カウントframe 差(z x10倍表示)
-20℃ (A) 2000sec
-20℃ (B) 2000sec
-20℃ (A) 2000sec
-20℃ (A) 2000sec
変化するアンプグロー成分のここまでの全平均パターンは以下の通り(左:Ca カメラ、右:Hα カメラ)。
前回と今回の違いは以下の通り。周囲のアンプグローの状況が変化していることがわかる。カメラ内の温度は関係なさそうなので、何が原因で2台とも明るくなったのか(たまたまかも)、もう少し繰り返して計測しないと感触もつかめない。
Ca カメラの方の連続露出1枚目と低カウントグループ平均との差(色表示レンジはかなり大きい)。
Hα カメラの方の連続露出1枚目と低カウントグループ平均との差。こちらのカメラでは、1枚目に限り Ca カメラの方で1回おきに明るさ変化する左側のアンプが光るようだ。右から2枚目は、連続露出の途中で異常に明るくなったもの(色表示レンジはかなり大きい)。
連続露出の1枚目に明るくなるのは、どちらのカメラでも左側の上側が光ることが原因で、BH60 を BH67 に作り変えた方(Ca カメラ)ではこの成分が交互に明るさ変動し、1台目の BH67 (Hα カメラ)ではこの成分が光るのは連続露出の1枚目だけで、右下が不規則に明るさ変化し、時折、非常に明るく光る場合もある、ということのようだ。とにかく、この1枚目の特異アンプグローは致命的なので、何とか回避する方法を見つけないと、毎回1枚目の露出を捨てることになる...
再度、sky の取得(0.9(黒)〜1.1(白) で表示)。始めの10コマほどはビームが建物壁面にかかっていたので乱れているが、ちゃんと空を向いていれば大体同じ状態が再現される感じだ。スペクトル的にも再現性は問題なさそうだ。これまで、バンドル画像の並べ替え順を間違えていたようで、今回のものが正しい並べ替えだと思う(ダミー星を入れれば正しいことが確定できるが、これは導入部のレンズが納品されてから)。
Ca アームの方の波長同定はかなり安定しているが、Hα アームの方は明るくても吸収線によっては結構ずれが大きい場合がある感じだ。検出できなかった吸収線も5本程度あるので、吸収線があまり深くなかったということかも。まあ、全体的には大丈夫そうだ。
以下は、上の sky 取得直後にファイバーの状態をできるだけ変えないようにして LED 連続光を入れたもの(0.8(黒)〜1.2(白) で表示)。ファーバーが巻き取られているかどうかは余り関係がなさそうだ。
flat 取得法の結論は以下の通り。
高周波 flat は LED で取得して問題ない。
分光 flat とファイバー flat はたまに Sky を取得しておけば、かなり長い期間使えるが、分光 flat は CaHK, Hα 吸収部分の S/N を確保するため、大きな変化が無い限りはできるだけ多く重ねるのが望ましい。
ファイバー flat はファイバーの状態変化の影響を受けやすいので、直近に取得したものを使うべき。
ダーク取得時1枚目の特異アンプグローと交互に光る成分を避けるために、連続の 2000sec 露出の直前に毎回 0.01sec 露出を入れてみた。Ca カメラの方では結構効果的に作用し、かなり抑えることができ、Hα カメラの方でも1枚目の特異アンプグローは抑えることはできたが、全体的にアンプグローが明るいままだ。カメラ内温度が高い方がアンプグローを抑えることができる可能性があるので、外付け fan も ON/OFF 制御できるようにする必要があるかな...
dummy Star 光源を入れてみた。光源側のピンホールが 200μm なので、ファイバー7本にほぼ均一な光が入る。並べ替えはこれで正しいことが確認できた。
外付け fan を制御できるようにして内部温度 30℃ 以上で ON、25℃ 以下で OFF となるようにした(ペルチェは 40℃ 以上で ON、30℃ 以下で OFF)。内部温度は初回試験時と同程度にまで上がったが、状況は変わらず。今度はカメラの GND 周りを変えてみる。
GND はカメラ内部フレームから Camera link ケーブルのシールドを経由し、PC に繋がっており、PC の GND のところで切れていたので、壁面コンセントの GND まで繋がるようにして 2000sec x 100枚取得してみたが、状況は変わらず(Hα カメラの方はちょっと安定したかも)。
空読み回数を5回にしてみたが、あまり状況は変わらず。少し安定度がました可能性はある。Hα カメラの方で最初の方が良くないのは、カメラを冷却した直後にスタートしたことが原因の可能性が高い。
外付け fan を回してみたが、似たような感じ。Ca カメラの方は、空読み回数が増えると安定するようだ。それにしても、なかなか最初の状態が再現できない...
2000sec dark では、かなりの数の宇宙線が入る(下左)。天体ではあり得ないほど尖ったピークを持つものが大半なので、それらを先に NaN で置き換えてから(下中)、拡大変形後に KOOLS と同じ手法で、天体のスペクトルを消し(dark の場合は天体はないので意味がないが)、残りの宇宙線と併せて、他の部分から推定できる値に置き換える修正を行うようにした(下右)。
カメラの状態をモニタするため、露出中も1分おきにカメラにステータスチェックのコマンドを投げていたが、その影響を調べるために露出中のステータスチェックはしないようにしてみた。しかし、Hα カメラでは結果は逆に悪化。そろそろ打てる手がなくなってきた...
お正月期間中も延々と 2000sec ダークを取り続けてみたが、何がアンプグローの明るさを決めているのかは不明のまま... 感触としては、光を全く入れずに連続動作していると徐々にアンプグローが暗くなる印象なので、光を入れるとどうなるかも試してみる。
やはり、光を入れたり電源 OFF したりするとその後はしばらくアンプグローが大きくなる...
なかなか、対処療法では難しい感じだ(実際の運用では、使わないときは OFF しておくことになるので)。
入射部の光学系が納品されたので、分光器と組み合わせて dummy Star 光源で試験。
取得してみたところ、ゴースト像が出ていることが判明。
ゴースト像が中心に来るようにずらしてみたものが以下。Hα の方では主像に対してゴースト像の明るさが半分近くもある... ADC のコーティングに問題がある場合、2つの ADC の境目での反射往復でこうなる可能性がある。納品時の測定結果では、2種類のプリズムともに表面反射率は 0.5% レベルだが、もしかするとプリズムの片面しかコーティングされていないのではないかという可能性があるので確認してみる。
ADC を分散0状態から±10°回転させたものが以下。Ca カメラと Hα カメラの像は別れながら横移動する。これも、どうしてこういう事になっているのか、よく考える必要がある(2つのプリズムの分散方向がちゃんと逆方向になっていないものと思われるが、その理由でこの動きが説明できるかどうか...)。
ピンホール像をカメラで見ながら、ADC のプリズムの接合面での回転角をそれぞれ調整する。研磨業者が最も薄い部分に印をつけていてくれたのだが、実際には 0.1mm 以下のレベルで合わせる必要があったようだ。接着にしていたらまずいことになっていたかも。光源はハロゲンランプなので、UV はやや弱い。
以下は、ADC なし(下左)、ADC1 のみ(下中)、ADC2 のみ(下右)で、分散とともに横ずれが発生していた。直進プリズムは2つのプリズムの分散ベクトルを重ねて相殺させるので、少しでも向きがずれていると横移動という形で影響が残るということのようだ。ダルマ状に見えるのは、暗い側が UV 光で明るい側が R バンド光(のはず...)。
分光器で ADC の動作確認。分散なしの状態(180°配置)から互いに10°ずつ逆回転させて5回進める(80°配置)間の動き。配置角度と EL の関係はこれから考えるが、互いに直線的に離れていっているので(ほんの少し左に中心がずれる気もするが...)これなら大丈夫そうだ。ゴースト像もなくなったが、何だったのか...
観測時はロテータ固定なので、大気分散の方向は望遠鏡の高度角だけで決まる。下図は、重力方向を下としたときの装置側から見た焦点面で、地面方向は高度角90°で左、高度角0°で上、と90°回転する。製作した ADC で得られる波長 395nm, 656nm 間での最大の分散量は 4.1" で、これは EL=18°での大気分散量に相当する。プリズムの分散ベクトル間の角度を 2θ とすると、EL=18°で θ=0°、EL=45°で θ=71°、EL=90°で θ=90°となる(計算式は以下)。
ν:波数 (μm-1 )、ps :空気の分圧(hPa)、pw :水蒸気の分圧(hPa)、T:温度 (K) として式で表すと、
Ds = (ps /T)[1+ps (57.90*10-8 -9.3250*10-4 /T+0.25844/T2 )]
Dw = (pw /T)(1+pw (1+3.7*10-4 pw )(-2.37321*10-3 +2.23366/T-710.792/T2 +7.75141e4/T3 ))
(n-1)*108 = [2371.34+683939.7/(130-ν2 )+4547.3/(38.9-ν2 )]Ds
+[6487.31+58.058ν2 -0.71150ν4 +0.08851ν6 ]Dw
(Owens 1967, Appl. Optics, 6, 51)
大気差(R)は天頂角(z)と地球半径を単位とした大気の scale height (H≒0.00130) を用いて
R = (n-1)(1-H)tan z+((n-1)2 /2-(n-1)H)tan3 z
となるので、395nm,656nm での屈折率をそれぞれ nc ,nh とすれば、大気分散 ΔR は以下のようになる
ΔR = (1-H+((nc +nh )/2-1-H)tan2 z)(nc -nh )tan z
この値を arcsec に変換し、4.1cosθ と一致するとして θ を決定することができる。
最後に発注した部品(フラット光源固定部品とカメラ接続部品)が納品されたので取り付け。フラットで拡散板を用いると Hα カメラの方の光量がかなり低下してしまうため、最終的にはコンビニ袋を拡散板代わりに用いることに...
カメラ接続部品はカメラを取り外しやすくするための改良。互いのフォーカス位置もより一致するようになった。
これでこちらでできることはほぼ終了なので、輸送に向けての準備に入る。
望遠鏡に取り付け
分光器本体
予定通りリフトラーで持ち上げて M8 ネジ4本で固定。コンパクトに取り付けることができた。乾燥空気の配管は次回作業時に。
前置光学系
GAOES の入射バッフル径が 49mm ではなく 48mm だったため、とりあえずアルミ板を挟んで固定。年度が変わったら作り直し。ロテータ 8°回転で LED 光源が MIDSSAR 入射部の正面に来る。
試験観測
3/5
FOCUS 合わせや ADC 動作確認など完了し、3天体を観測。アンプグローが結構不規則に変動するが、うまく合うテンプレートがないとかなりの残差が残ってしまう。とりあえずはスペクトルを挟む上下の部分での線形内挿で減らしているが、アンプグローのテンプレートができるだけ多くの種類必要な感じだ。天体が外れていくものがあるのは、GAOES のガイダーが固まって止まっていた部分。ファイル内の数字は露出時間。各図左上の数字はバンドル上での重心(x,y),像の広がり(2σ)[arcsec]、各ファイバーのカウント積分値の平均(ファイバーフラックス)、スペクトル中央部の S/N。各グラフ下端の緑線は3σノイズレベル。
各天体に対してファイバーフラックスで重み付けして平均スペクトルを出し、各スペクトルの平均との比を出してみた。大体水平だが、端の方でアンプグローの補正しきれない部分が出てきたり、吸収の深い部分が少し変化している(原因不明...)。一番下の天体は高度が低く、ADC の残差の影響で星の大半が視野から外れた際にスペクトルの傾きが少し変わっている。
制御方法
装置全体の制御マップは以下の通り。
MIDSSAR は長いので、mzr としている。ポリシーとしては、
毎秒更新のロガーと、非同期のコマンダー+レセプショニストで構成
レセプショニストは受け取ったコマンドを Q0001 などのコマンドIDファイルに書き込んで生成
Q で始まるものは全プロセス正常終了確認後に走るもの、S で始まるものはエラー終了プロセス
が残っていても走るもの
コマンダーは処理したファイルを DQ0001 のように D をつけてファイル名変更
コマンドが走る前のキャンセルは、レセプショニストが C をつけてファイル名変更
ロガー、コマンダーともに、mzr1 の方がマスターで mzr2 の方はスレーブ
マスターは受け取った情報をすぐにスレーブにも伝える
ほぼ全てのプロセスはロガーと関係するメモリを共有する
コマンダーは司令を投げるだけで、その後の面倒は見ない
状況は全てロガーが収集し、ADC や クーラーON などの自動判断を行う
コマンドID は各プロセスからロガーに伝達され、コマンド終了返信はロガーが行う
以下、フォーカス合わせ時の動作例
slit を 17500〜18500 まで 100 pulse 刻みで動かしながら両方のカメラで Cal lamp 画像を取得、
最後にそれぞれのフォーカス位置を計算してその中間に合わせ、Cal lamp を OFF する。
以下はその最後の部分。
コマンド列(Q: 通常コマンド、MZ: 識別子、0/1/2: 両方/マスター/スレーブ へ送信)
QMZ1 SLIT 18400
QMZ0 EXP 1 1 0 focus10
QMZ1 SLIT 18500
QMZ0 EXP 1 1 0 focus11
QMZ0 ./setfocus_calc.sh
QMZ1 CAL off
この部分のロガーの表示は以下、数字は左から
EL / Slit位置 / シャッター / Contランプ / Calランプ / 外付Fan / Cooler1 / Cooler2 / 装置T1〜T4 / 検出器1T / カメラ1T / 検出器2T / カメラ2T / ロガー1 / ロガー2 / コマンダー1 / コマンダー2 / カメラ1T / カメラ2T / 装置T / 露出1 / 露出2 / 電源1 / 電源2 / Slit動作 / PICO / Cont制御 / ADC / cont380通信 / YYYYMMDDhhmmss / コマンドID
で、0:待機中、1:動作中、2:正常終了、3:異常終了、4:無視終了 状態を表す。
検出器とカメラの温度は待機時は温度管理プロセスで、露出中は露出コマンドで1分おきに確認。
ADC 制御は、起動時のみ logger が ADC 制御プログラムをデーモンモードで起動し、望遠鏡 EL 値をロガーが取得することで1秒おきに ADC 制御プログラムが勝手に角度を更新する。
ADC 制御を追加したところ、USB => serial 変換器をPC起動時にマウントする順序が不安定に入れ替わってややこしいことになったので、分光器の温度モニタは mzr2 の方に行わせることにした。変換器の情報をシステムに覚えさせてマウントポイントを固定するのは、変換器を交換した際にややこしいことになりそうなので変換器は各 PC に1つまでとする。