経緯

今回新しく問題として認識されたわけではないのですが、現在の運搬用コンテナを用いた 取付方法(右図)では、運搬用コンテナとアダプターが干渉します。 そのためこの部分では、運搬用コンテナの壁ではなく、金属の板等で支える事を考えて いました。

また、アダプターの補強として高さ15cmの板を、分光器をぐるっと 囲むように取付ける事を考えていたわけですが、 それは不可能となっています。 詳細は省きますが、金属の板等を使うにしても、その分のスペースは確保しなければいけない わけで、少なくとも4辺のうち、1辺については15cmの補強は取付けられない 状態になっています(右図)。
ミーティングの時に議論になったのが、今回アダプターをコンテナに上からのせる形になり、 のせる部分に幅約5cm、高さ約8cmのブロックのような構造 が付くことになったわけですが、これに高々4cmの補強板を加えたところで、はたして強度に 違いがあるのだろうか、ということでした。

そこで、この補強板を付けた場合と付けていない場合で強度を評価し、 アダプターの形状を決定することになりました。

計算結果

いくつか試行錯誤はありましたが、ここでは最終的な結果だけを載せておきます。
計算したのは3つの場合で、 こんな感じのモデルを使用しています。

結論から言うと、model1とmodel2ではほとんど結果が変りませんでした。従ってこの 高さ4cmの補強はつけないことにし、それによってアダプターや、アダプターの コンテナへの取付部の製作が楽になります。

model3はmodel2との比較のためにつけました。実を言うと、model2についてる逆側の 高さ8cmの補強板の有無も、強度にはほとんど影響しません。ただし、model3のような 形にする事によって、このアダプターの一番弱いところが狭くなり(下を参照)、 結果的にたわみ量が減りました。


結果1

まず、望遠鏡が天頂を向いている場合です。下の図はアダプターの天板 (これに分光器がくっつく)の変形をプロットしたもので、望遠鏡側から見ています。 重力は画面手前から奥に向かって働いていることになります。
また、ここに出てくるのは全て、画面奥から手前に向かう方向の変形量です。 他の方向の変形はほとんどありません。
左からmodel1,model2,model3の順に並べています。各図の右側に書いてあるのが コントアの値で、単位はcmです。例えばmodel1では、最大44μm (-方向に)たわんでいます。

model1,model2は分布も大きさもほとんど変らないのに対し、model3では下の方 (補強の付いている方)で比較的たわみが小さくなっています。
どの計算でも下の方で変形が大きいのは、アダプターをコンテナに固定している部分 (この図では一番上と下)と分光器との間に距離があるからです。それに対して上の方では、 分光器と固定部との距離がほとんどありません。以前の計算の時にも触れましたが、 これは分光器筐体の強度も、全体の強度に大きく寄与している事を意味します。



結果2

結果1と垂直な方向に重力が働いている場合です。画面上、左から右に向かって重力が 働いています。
分光器の及ぼすトルクによって、左側では-,右側では+の変形量になっています。
分光器基盤は左寄りにあるため、少し左右非対称になっています。
この場合、最大変形量はどのモデルでも約27μmですが、model3では下の方で他の2つより 変形量が小さくなっているのがわかります。



結果3

画面上、上から下に向かって重力が働いている場合です。
形はあまり変りありませんが、model1,2では最大11μmたわんでいるのに対し、 model3では最大のたわみが8μmになっています。