相対論・宇宙論分科会

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座長からのメッセージ


相対論・宇宙論分科会では、招待講演および一般講演を開催し、一般相対論 や宇宙論に関する研究について積極的に議論をしたいと考えています。

★招待講演

近年、一般相対論が直接関係する現象が多く観測されるようになり、相対論 宇宙論の分野は大きな変化をむかえています。招待講演では、独自の路線を 打ち出して成果をあげている研究者の方々に相対論宇宙論の現状とこれから を展望していただき、若手研究者が目指す方向性を考える機会にしたいと考 えます。 招待講師は観測的宇宙論の分野から小松英一郎さん、一般相対論的天体物 理学から梅村雅之さん、素粒子論的宇宙論から前田恵一さんです。

・小松英一郎氏(Princeton 大学、PD) 「宇宙背景放射から何を学ぶか(個人的意見)」

・梅村雅之氏(筑波大教授) 「銀河中心の巨大ブラックホール」

・前田恵一氏(早稲田大教授) 「ブレイン宇宙論とその展望」

★一般講演募集

講演形式:口頭発表、ポスター発表

相対論・宇宙論に関係していれば内容は限定しません。レビュー講演も可 とします。口頭発表は発表15分,質疑応答5分とする予定です。口頭発表の希 望が多い場合にはポスター発表にまわって頂く可能性があります。

問い合わせ先: ss02soutai@kwasan.kyoto-u.ac.jp

ポスター、口頭発表とも、修士・博士課程を問わず大勢の皆様の応募をお 待ちしています。

招待講演

title: 「宇宙背景放射から何を学ぶか(個人的意見)」

speaker: 小松英一郎(MAP postdoctral research fellow)


宇宙背景放射(CMB)の研究は、観測的宇宙論の柱の一つとなっています。 近年の観測技術の向上に伴い、今後5〜10年の間に角度スケールにして約 1分から90度に渡るあらゆるスケールで、超高精度のCMBマップが手に 入ってきます。これらは、私たちがまだ見た事のないデータです。その時、 CMBの研究はどのような局面を迎えるのでしょうか。この講演では、個人 的意見ながら、これからCMBを研究してゆく上でどのような点がポイント となりそうかを時間の許す限り議論します。 話の内容を大きく分ければ、 (1)CMBの基礎事項のまとめ、 (2)最近の観測とその結果のまとめ、 (3)宇宙論パラメターは本当に決まるのか、 (4)CMBは初期宇宙理論にどこまでせまれるのか、 (5)1分角スケールから何を学ぶのか、 (6)これからの観測的宇宙論において、CMBの果たす独自の役割とは何か。 この機会に、私たち若手にとってのCMBの位置づけを考えてみたいと思います。


title: 「銀河中心の巨大ブラックホール」

speaker: 梅村雅之(筑波大学教授)


ここ数年,銀河中心領域の様々な観測により,銀河中心の巨大ブラック ホールの質量と銀河バルジの性質の間に様々な相関があることが わかってきた。また,巨大ブラックホールを持つと考えられる クェーサーの母銀河が,進化した明るい楕円銀河であることが, 最近の観測でことがわかってきた。 これらは,巨大ブラックホールの形成が銀河バルジの進化と密接に 関係してきたことを示唆している。 巨大ブラックホールは,どのようにして生まれたのか,またそれは 銀河進化とどのように関係してきたのか,これは大変興味深い問題 である。本講演では,巨大ブラックホール‐銀河バルジ関係の観測 についての現状を紹介し,銀河進化と共に巨大ブラックホール を作る物理メカニズムについて考えることにする。 また,その中で銀河中心核進化の物理的描像についても言及する。


title: 「ブレイン宇宙論とその展望」

speaker: 前田恵一(早稲田大教授)


Einstein は重力を幾何学的に解釈することにより一般相対性理論を完成した が,そ のアイデアを5次元時空に拡張し,電磁場も同じ枠組みで統一しよう という試みが Kaluza と Klein によって提唱された。しかし,基本的相互作 用の統一は,新しいミ クロな力(弱い相互作用と強い相互作用)の発見後, 内部対称性を基礎にしたゲージ 理論による考え方が主流となった。さらに素 粒子の統一理論としては,フェルミ粒子を含んだ超対称性理論や超重力理論が その大きな流れをつくっている。これらの理論 は,統一理論が本来もつべき 「簡潔さ」を要請すると,10次元などの高い次元において構成することがよ り自然になる。その高次元理論を基礎に,80年代には Kaluza-Klein 高次元 宇宙論が展開された。その後現れた超ひも理論は,究極の理論 として期待さ れており宇宙初期のシナリオにも大きな影響を与えると考えられるが,これま でのところその宇宙論的応用はほとんどが「4次元有効理論」をもとにしたも のである。ところが近年,超ひも理論の進展により,「ブレイン(brane)」と いう非 自明構造の重要性が明らかになった。その結果,このブレインという 概念をもとに,宇宙初期や強重力現象における従来の考え方を一新するシナリ オが提案されつつある。従来の高次元理論では余分な次元を観測不可能な程度 にコンパクト化することに よって,現在の4次元時空を説明する。ところが 物質を局在させるブレインの存在が余分な次元のサイズを比較的大きくするこ とを可能にし,その検証可能性を与えたことで,高次元統一理論は一躍注目さ れることとなった。さらに,Randall とSundrum による第2モデルは余分な次 元をコンパクト化せずニュートン重力を導いたことで特に注目され,多くの宇 宙論・相対論研究者がそのモデルをもとに新しい宇宙像を求め,その研究を行 っている。本講演では,これらのブレインを基礎にした宇宙論および強重力現 象についてこれまでの主要な考えについてまとめ,さらにこれからの展望につ いて考察する。


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