全体企画 :「近未来の巨大プロジェクトが成す、宇宙の解明」

招待講演


title: 「The ASTRO-F Project and Impact to the Studies on Galaxy Evolution」

speaker: 竹内 努 (国立天文台 光赤外・観測システム研究系)


ASTRO-Fとは、2004年3月打ち上げ予定の我が国主導の赤外線衛星 である。ASTRO-Fは基本的にサーベイ型の観測衛星で、観測装置は 近・中間赤外をカバーするIRCと遠赤外をカバーするFISがある。 撮像、分光ともにこれまでにない性能を誇るが、中でも遠赤外全天 サーベイは、1980-90年代に天文学のあらゆる分野に画期的な成果 をもたらした赤外線サーベイ衛星IRASの数十倍の感度を誇り、 super-IRASとしての成果が期待されている。 本講演では、まずASTRO-F計画の概観を述べ、これによる観測 データから宇宙物理学にどのようなインパクトがもたらされるか を、銀河進化の話題を中心に紹介する。サーベイの行なわれる遠 赤外は、ダスト(重元素の個体微粒子)が特に若い星からの紫外線 光子を吸収し、熱的再放射をする波長である。即ち遠赤外輻射とは、 星形成率・重元素合成率という銀河進化における重要な問題と 密接に関連する観測量なのである。これに関連する話題、特に 様々なモデルを通じたデータの解釈についても詳述し、理論研究 との関連も強調したい。 また、関連する国際協力や、興味を持たれた方が計画へ関わる ために、各分野が組織している研究グループなどの体制についても 紹介する。


title: 「Astro-E2で探る高エネルギー宇宙」

speaker: 堂谷 忠靖 (宇宙科学研究所高エネルギー天体物理学第一部門)


Astro-E2は、2000年2月に打ち上げに失敗したAstro-E衛星の再製 作機であり、2005年1-2月の打ち上げを目指している。Astro-E2衛 星は、10 keV以下ではX線反射鏡にマイクロカロリーメータおよ びCCDを組合せて撮像分光観測をし、10 keV以上では、アクティブ シールドを用いた硬X線・γ線検出器で観測を行なう。全体では、0.4 −600 keVという広帯域をカバーする予定である。Astro-E2衛星の 第一の特長は、マイクロカロリーメータによる、エネルギースペク トルの高分解能観測(ΔE〜10 eV)である。この分解能により、特に 鉄のK輝線では、数百km/secのドップラー偏移が検出でき、また、 プラズマ診断により電子密度や温度、電離機構の精密測定が可能に なる。これらの能力は、例えば、銀河団中の高温ガスの運動や重元 素の拡散過程などを探るのに有効であろう。第二の特長はエネルギー 帯域が広いことで、非熱的なX線放射を検出するのに威力を発揮 する。超新星残骸からの非熱的X線放射の観測により、衝撃波での 宇宙線の加速の証拠が既に『あすか』衛星で得られている。さらに 大きな銀河団スケールでの粒子加速も示唆されており、Astro-E2衛星 により様々なスケールでの加速現象が探れるものと期待される。


title: 「気候変動の機構解明と予測向上にむけて― 地球シミュレータ上で 可能になる超大規模シミュレーション ―」

speaker: 高橋 桂子 (海洋科学技術センター横浜研究所)


平成14年3月より,地球シミュレータが稼動を開始していま す。地球シミュレータセンターでは,巨大な並列ベクトルマシンである地球シ ミュレータ上で,エルニーニョ現象に代表される数年から数10年の気候変動, あるいは,地球温暖化といった数100年から数1000年にわたる長いタイムスケー ルの気候変動の機構解明と予測精度の向上のために,非常に大規模なシミュレー ションを開始しています。気候変動は,私たちの社会生活に直接関係する現象 であり,地球環境を考える上でも非常に重要なテーマであることは,ご周知の ことと思います。気候変動は,大気,海洋,海氷,雲,陸面過程,植生,人間 活動などのはたらきと,さまざまな時間スケールの現象が相互作用しあって形 成される複雑系の結果と考えられます。これらの過程をモデル化し,シミュレー ションすることで気候変動現象を再現し、その機構解明を目指すために非常に 多くの努力がなされてきました。これまでに何が明らかになり,どこが課題だっ たのかについての知見をご紹介すると共に,地球シミュレータ上での超大規模 シミュレーションにより,新たに何が可能となり,依然として残る課題はなに か,について中心にお話する予定です。また,現段階で行われているシミュレー ションの具体的な内容と,その途中経過および結果も併せてご紹介します。さ らに、地球シミュレータセンターにおける最終目標へ向けた,ステップストー ンと今後の計画についてもご紹介する予定です。


title: 「ALMAで探る天体の形成と進化」

speaker: 阪本成一 (国立天文台 電波天文学研究系 ALMA計画準備室)


 アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) は、直径12mの アンテナ64台などからなる大型の電波望遠鏡をチリの標高5000mの 観測好適地に日本・北米・ヨーロッパが協力して実現する計画である。 速やかに建設を開始し、2006年頃の部分運用開始、2011年の本格 運用開始を目指している。ALMAでは、0.01秒角という高分解能と サブミリ波帯での本格観測の実現により、特に銀河の形成・進化や 星・惑星系の形成・進化、物質の進化 (分子形成など) を中心に、 天体物理学および周辺分野における大きな成果が期待されている。 本講演では、ミリ波サブミリ波の特徴や計画の概要と進捗情況に ついて簡単に触れたあと、ALMAで解明されるであろう研究テーマに ついて、z~10の原始銀河雲から太陽系内天体までを概観する。 同時に、より短期的なプロジェクトと位置づけて大学の研究者と 共同で推進しているアタカマサブミリ波望遠鏡実験 (ASTE) に ついても紹介する。



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