観測機器分科会

座長からのメッセージ


物理学の発展は、理論的予測の実験的検証、及び実験から得られた現象に対 する理論構築を繰り返すことでなされて来たと言えます。従って本来、理論と 実験とは区別されるものではありません。しかし、21世紀に入った今日、益 々複雑になった理論のなかには、実験的検証の不可能なものも存在し、また、 大型化、複雑化の進んだ実験装置は、到底全ての物理学者に理解できる代物で はありません。
本分科会では、現在どこでどの様な実験が、どんな課題を克服しようと闘っ ているかを、日本各地で活躍する現場の実験家(つまり学生)の目を通して、生 き生きと語ってもらいたいと考えています。
また、今年のコンセプトとして、実験の現場を理論研究をしている学生にも 聞いて頂きたいと考えています。そのために、例年裏セッションであった、相 対論分科会とは敢えて時間をずらすようにしました。冒頭に述べたように、理 論と実験はその両方がうまく組合わさらなければ意味をなしません。そのため にも、現状の実験でどのような理論が検証できるのか、また現在の理論が求め ている実験とは何なのか、そのような建設的な議論が活発になされる分科会に したいと考えています。

招待講演には、東京大学宇宙線研究所教授の黒田先生と、(株)浜松ホトニク スの職員でいらっしゃる岡田氏をお迎えする予定です。 黒田先生は日本の重力波検出の第一人者で、大型干渉計建設の計画である LCGTの責任者をされています。最先端の重力波検出の現場をお話しして頂ける 予定です。
岡田氏は、実験家なら一度はお世話になる浜松ホトニクスに務めていらっし ゃり、企業の目から見た先端科学との関わりをお話しして頂く予定です。
皆さんの積極的な参加を心待ちにしております。

招待講演

title: 「地上における重力波の検出計画と実験」

speaker: 黒田和明(東京大学宇宙線研究所教授)


重力波は、アインシュタインの一般相対性理論で予言された時空の波動で光速 で伝搬する。連星パルサーの長期観測によりその存在は証明されているが、こ れを直接捉えることにより、中性子星やブラックホールなど重力波源と見なされる 天体の性質が解明され、これらに関わる宇宙観測の新しい手段が誕生することと なる。また、同時に一般相対性理論そのものの検証も可能となる。世界的に検 出器の開発が進んでおり、日本でも一昨年から300m基線長の高感度レーザー 干渉計TAMAが稼働し始めたが、重力波発生の頻度は小さいためより遠くの銀 河まで観測できるように感度を高める必要がある。検出器は極限の感度を得る 設計になっているが、現実にそこまで到達するには試行錯誤による開発研究が 必要とされる。現在進めている将来計画LCGTでは、TAMAで開発された干渉計 技術に加えて世界で初めての試みとして低温鏡をレーザー干渉計に導入するが、 そこでは高品質のサファイア結晶からできた鏡基材を使用し、振動の小さい冷凍 機を用いることになっている。また、外来の振動をカットするための防振装置には これまでにない新奇なアイデアを盛り込む必要がある。これらの開発研究の総ま とめとして、ここ数年の中に神岡地下施設に100m基線長の低温鏡レーザー干 渉計を設置する。講演では、重力波の物理的背景について紹介した後、これら開 発研究の概要と現状について述べる予定である。


title:「検出器の性能をうまく使うために」

speaker: 岡田晃行 (浜松ホトニクス電子管部勤務)


浜松ホトニクスでは、研究者の皆様のご要望に基づき、色々特殊な 製品を開発し、使用していただいております。開発された製品も用途 用途に適した形での設計になっていますので使い方によっては、良い 結果が得られたり、場合によっては当初の目的が達成できず悪戦苦闘す るケースもあり、研究者の皆様の適切なアドバイスにより性能が向上 した製品もあります。今回折角の機会をいただきましたので、製品の 特長とカタログから見えない部分について紹介をします。


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