星間現象分科会

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座長からのメッセージ

2002年夏の学校星間現象分科会
「募集要項」

<キャッチフレーズ>
“リンクする星間現象 〜理論と観測をつなぐ橋渡し〜”

 最近の研究により、星々の間に広がる広大な星間空間において、ダイナミックな活 動性を示す数多くの現象が存在することが知られるようになっています。従って 研究テーマは多岐にわたり、さまざまな観測・理論的手法による多角的なアプロ ーチがなされています。将来的には、観測技術の向上や理論研究の成熟に伴い、 ますます多種多様な議論が行われるようになるでしょう。
 私たち星間現象分科会では、日々多様化する研究の間の橋渡しをしたいと考えてい ます。さまざまなテーマが存在する分科会だからこそ、研究の途に入った若手 が自らの研究結果を持ち寄る夏の学校は、自分以外のテーマとのつながりを発見 できるいいチャンスです。こうして、さまざまな星間現象の間にリンクを作り、 より広い視野をもって星間空間を見つめることを目指したいと思います。

<招待講演>
 招待講演では、観測分野より横川淳さん、理論分野より松本倫明さん、高橋順子さ んにお話をして頂く予定です。講演時間は40分(発表30分、質疑10分)を 予定しています。

・横川淳氏(京大:) :
・松本倫明氏(法政大:講師):分子雲コアの重力収縮と連星系の形成
・高橋順子氏(明治学院大学:講師):星間ダストと水素分子雲形成

<一般講演>
 招待講演とは別に、夏の学校に参加される皆様の講演を募集したいと考えていま す。同年代の人に自分の研究を宣伝するいい機会ですし、まだ研究をはじめて間 もない方にとっては発表練習として最適の場だと思います。自らが研究・勉強し たことを形にして、ぜひ星間現象分科会で発表してください。  発表内容については、日頃の御自分の研究、レビューなど、星間現象に関わること であれば何でも構いません。

一般講演には、“口頭発表”と“ポスター発表”のふたつがあります。

・口頭発表  :発表時間15分(発表10分、質疑5分)(注1)
・ポスター発表:ポスター発表の方にも、宣伝をしてもらう時間を 設定する予定です(4分ほど) 宣伝のあとに、優先時間を設定する予定です(注2)

(注1) 発表時間やプログラムは、申し込み終了後に決定します。
(注2) 優先時間とは、ポスター発表者が優先的に自分のポスター前にいてもらう時間のこと です。 ポスター宣伝時間のあとに設定する予定です。

招待講演

title: 「X線天体サーベイで探る小マゼラン雲の星生成史」

speaker: 横川淳(塾講師)


銀河系から16万/20万光年の近傍に、大/小マゼラン雲という2つの銀河が 存在する。銀河系に比べて若い星やガス(=星の原料)が多く存在するこ とから、銀河系と全く異なる星生成を経験してきたと考えられる。  私たちはX線天体のサーベイにより、小マゼラン雲の星生成史を探査した。 その原理を以下に記す。星が超新星爆発を起こすと、中性子星、ブラック ホール、超新星残骸などのX線天体が残される。星の質量や伴星の有無によ ってX線天体の種類は異なるので、X線天体の種類を観測的に識別すれば元 の星が何であったか分かる。よって、これを銀河全体で行えば銀河の過去 の星生成活動を明らかにできるはずである。我々は日本のX線衛星「あすか」 を用いて、小マゼラン雲の全域を観測した。検出された106天体のうち、 約30%は確実に種類を識別でき、残りの天体も放射のエネルギー分布の特徴 などから種類を推定した。その結果、銀河系や大マゼラン雲に比べてHMXB パルサーが異常に多いなど、際だった特徴が明らかになった。詳しくは講演 で述べるが、これは小マゼラン雲でつい最近(数千万〜1千万年前)に爆発的 に星生成が起こったことを示唆する。なぜ小マゼラン雲だけで?それに答え てあげるほど私はお人好しではないので、各自考えて下さい(冗談です)。  なおHMXBパルサーは全天で80個程度しかない稀少な天体であるが、本研究 中に8個も新発見した。発見には裏話がつきものであるが、講演中に述べる 時間はなさそうなので、興味のある人は後で聞きに来て下さい。


title: 「分子雲コアの重力収縮と連星系の形成」

speaker: 松本倫明(法政大学人間環境学部講師)


本講演では、分子雲コアの重力収縮と星形成、特に連星系形成に焦点を当て る。講演は、観測的研究と理論的研究、特に数値シミュレーションを用いた研 究のレビューを織り混ぜながら進める。 まず、分子雲コアの重力収縮の物理についてレビューを行う。分子雲コアは 星形成の母体であり、その重力収縮の理解は星形成を理解する上で大変重要で ある。分子雲コアの物理を考えるためには、自己重力、星間磁場、回転、乱流 など様々な要素が必要である。本講演では、最も簡単なモデルから出発し、そ れぞれの効果について順に述べる。 つぎに、連星系形成について講演する。星の過半数は連星や多重星として誕 生することが知られているので、連星系形成の研究は、主要な研究課題のひと つである。連星系形成には、様々な仮説が提唱されているが、主要なものは以 下の3つである;(1)分子雲が自己重力の過程で分裂する(fragmentation)、 (2)別々に形成した星が伴星を捕獲して連星になる(capture)、(3)星が複数に 分裂する(fission)。本講演では、これらの仮説の成功例と問題点を挙げ、連 星系形成の研究における現状を整理する。


title: 「星間ダストと水素分子雲形成」

speaker: 高橋 順子(明治学院大学 講師)


天文化学(Astrochemistry)の立場から、星間ダストと水素分子雲形成に関 連した研究領域を紹介する。星間水素分子はダスト表面上で形成されると考 えられているが、その際、生成熱の再分配によって高い振動回転励起状態と なり、その後、自然発光過程によって赤外線を放射する。これを形成励起 (Formation Pumping)光と言う。形成励起光は、星形成の第1段階である 分子雲形成過程を探るための新しいプローブになると考えられる。詳細な理 論化学的研究によって解明されたダスト表面上での水素分子形成メカニズム、 形成励起光と分子雲形成理論との関係、形成励起光スペクトルの理論的予測 及びその観測計画などについて解説していく。


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